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3D CADの基礎知識4

パーツモデリングのコツ

もくじ
1. 基準の取り方 …2
2. よくある不具合 …5
3. フィーチャーの履歴 …8

株式会社イプロス
Tech Note 編集部
前回は、2D 作図機能のスケッチについて解説しました。今回は、パー
ツモデリング(部品形状のモデリング)を効率的に行うためのコツを紹
介します。パーツモデリングを効率的に行うには、部品の機能や形状に
応じて、
フィーチャーやスケッチをうまく使いこなす必要があります。
また、
フィーチャーを管理する履歴を適切に扱うことも重要です。

1. 基準の取り方
CAD を使って部品形状を設計する場合、形状の位置を決める基準を明
確にする必要があります。基準は、部品に要求される機能によって決め
られます。2D CAD 製図では、基準は中心線や寸法記入によって表現し
ます。一方、ソリッド CAD ではフィーチャーで形状を表すため、スケッ
チや押出方法など、フィーチャーの設定内容で基準を表現します。その
ため、モデリング作業の前に、フィーチャーの形状と基準を検討しなけ
ればなりません。ソリッド CAD で基準を決定する際の検討方法を紹介
します。

・部品の向き
基準を決定するには、初めに、CAD の座標に対する部品の向きを決め
ます。部品の向きは、一般的に、部品を使用するときの向きや、製図
で正面図とされる向き、または、加工工程の作業のしやすさなどに基
づいて決められます。2D CAD 製図では、向きを決めたらすぐに作図を
始めることができます。しかし、ソリッド CAD では、引き続き検討を行
います。

・原点(基準面)
次に、部品の機能上の基準を原点(xy 平面、yz 平面、zx 平面)に合
わせます。ここで、最初のフィーチャーのスケッチ面によって、部品の
向きが決まります(第 3 回の図 1 を参照)
。基準が部品の端面にないと
考えられる場合、 スケッチ拘束で基準に合わせます(図 1 の上)
原点は、 。

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押出方向は、スケッチ面が基準となるように設定します(図 1 の下)

図1:部品の基準とモ 30
デリング 10

30

15
10
基準

15

基準
15

20
原点に寸法拘束

形状図面と基準 スケッチ拘束(平面図)

対称に 20mm

スケッチ面
(基準平面)

2 方向に押出 穴あけ(カット)

・フィーチャーの構成
フィーチャーの構成の検討も重要です。形状が持つ役割をできるだけ単
純化し、1 つの役割を 1 つのフィーチャーで表すように考えます。そう
すると、フィーチャーの形状も単純化し、基準を考えやすくなります。た
だし、フィーチャー数は多くなるため、重要な役割のフィーチャーから
順番に作成します。

図 2 の形状図面の部品は、1 つのスケッチで作成することも可能です。
しかし、単純形状フィーチャーを複数組み合わせると、作成時も編集時
も、モデリングが容易になります(図 2 の右)

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図2:フィーチャーの
構成

押出 押出カット 押出

押出カット パターン
形状図面 形状の作り込み

このように、部品の向き、原点(基準面)
、フィーチャーの構成を検討
することで、部品の最初のフィーチャーのスケッチ面が決まり、モデリン
グ作業を開始できます。

ところで、モデリング中に基準を取りたい位置に適切な要素がない場合
はどうしたらよいでしょうか? この場合、参照要素を利用します。例え
ば、図 3 の形状図面のような斜めのアームをスケッチするには、スケッ
チ面として参照平面を利用します(図 3 の右)

図3:参照要素の利用 アーム

参照平面に
参照平面 スケッチ

形状図面 参照平面とスケッチ面

参照要素には参照平面、参照軸、参照点があります。よく利用するの
は参照平面です。代表的な参照平面の作成方法は、オフセット、角度、
3 点、カーブ上の 4 つです(図 4)

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図4:代表的な参照平

オフセット 角度

3点 カーブ上

2. よくある不具合
2D CAD での不具合のほとんどは作図ミスです。これに対し、ソリッド
CAD では、スケッチやフィーチャーの設定内容の不整合が不具合の原
因です。ソリッド CAD におけるありがちな不具合を 5 つ紹介します。

・空間のカット
押出によりカットする領域がそもそも空間である場合、形状に変化はあ
りません。意味のない処理なので、CAD から警告が出されることもあり
ます。フィーチャー作成時に、この手のミスが起きることはないものの、
形状変更では起こりえます。図 5 は、直方体の押出後、円でカットして
穴を作成したモデルです。直方体の長手方向を大幅に短くすると、カッ
トする領域にソリッドが無い状態となります(図 5 の右)

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図5:空間をカット 短く変更

端面が移動

カットする
ソリッドが無い

押出後、穴をカット 押出形状を変更

・無理のある形状
図 6 のようなスイープフィーチャーで、断面の円の半径がパスの曲がる
半径より大きいと、曲がった内側の表面で交差が生じます(図ではつ
ぶれた形状として作成されています)
。場合によっては、
エラーが出たり、
面が交差したままの不正な形状となることもあります。

図6:無理のある形状

小さい曲率
つぶれ

大きい断面

・細部の形状
図 7 の形状図面は、製図の投影図としては問題ありません。ところが、
これをソリッド CAD で作成すると、斜面が円柱上面に達する箇所で、
図 7 のモデル例 1 ∼ 3 のように、さまざまな解釈が生じます。製造上、
無視できる違いだとしても、ソリッド CAD ではいずれかの方法で作成
する必要があります。もちろん、後工程に影響がなければ、どの方法で
も構いません。

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図7:細部の形状

形状図面 モデル例 1

モデル例 2 モデル例 3

・モデリングの順序
フィレットは、作成順序によって形状が変わることが、
しばしば起こります。
図 8 の 2 つのモデル例は、
同じフィレット半径で作成しています。しかし、
作成順序によって形状が異なっています。どちらが良いかは一概に言え
ません。順序によって形状が異なる可能性があることを意識し、どれを
選択するか検討しましょう。

図8:モデリングの順

モデル例 1 モデル例 2

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・システムの誤作動
まれに CAD が原因不明の誤作動を起こすことがあります。このような場
合、CAD の再起動、または端末の再起動を試します。

これまで紹介した以外にも、実際に直面する不具合は多岐にわたり、
解決するためには不具合の原因を切り分ける必要があります。切り分け
のコツは、不具合が出ている作業中のモデルに固執せず、別途、単純
形状のモデルを用意して、コマンドの実行や設定方法を確認することで
す。CAD のヘルプやチュートリアルに準じた形状で確認するのもよいで
しょう。

3. フィーチャーの履歴
ソリッド CAD は、フィーチャーの順序に従って形状が構築されます。作
成時だけでなく、修正時も、フィーチャーの順序と設定内容に基づき、
形状が再構築されます。この仕組みを、
履歴と呼びます。履歴では、
フィー
チャーのほか、スケッチや参照要素なども管理されています(図 9)

図 9:ソリッドCAD の
履歴
パーツ 1

スケッチ 1
押出 1
スケッチ 2
押出 2
フィレット 1
シェル 1
スケッチ 3
押出カット 3

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・履歴と親子関係
ソリッド CAD の形状は、履歴の順序によって構築されます。そのため、
履歴には依存の関係が生じることがあり、これを親子関係と呼びます。
親子関係を説明するために、図 10 のフィーチャーの作成順序と出来上
がった形状を見てみましょう。なお、説明を簡単にするため、スケッチ
はフィーチャーに含むものとします。ここで、寸法拘束を作成した場合、
3 押出カットの穴のスケッチ形状は、2 押出の円柱形状に依存すること
になります(図 10 の右)
。これが親子関係です。

図10:親子関係 1 押出(直方体) 1 押出
2 押出(円柱) 2 押出(3 の親)
3 押出カット(穴) 3 押出カット(2 の子)

2 の形状への
2 押出
寸法拘束
3 押出カット

1 押出

3 のスケッチ形状

フィーチャーと形状 親子関係の発生

このモデルで、2 押出の円柱の位置を変更すると、3 押出カットの穴の


位置も追従します。一方、2 押出の円柱を削除すると、寸法拘束の設
定が不正となるため、3 押出カットの穴にはエラーが発生します。この
ように、親子関係はパーツモデルの扱いやすさに大きく影響します。モ
デリングの考え方としては、先述したように、フィーチャーの基準を意識
すると扱いやすいモデルになります。

・履歴の順序変更
履歴の順序によって、同じフィーチャーの組み合わせでも、得られる形
状が異なります。履歴の順序を入れ替える操作を、順序変更と呼びます。

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図 11 の上に示すモデルは、1 押出、2 カット、3 シェルの順序で作成
したものです。履歴の順序を、1 押出、2 シェル、3 カットに入れ替えると、
得られる形状も変わります(図 11 の下)

図11:履 歴 の 順 序 変

1 押出 2 押出カット 3 シェル
履歴の順序

1 押出 1 押出
2 押出カット 2 シェル
3 シェル 3 押出カット
2 と 3 の順番変更

順序変更

・ロールバック
ロールバックは、履歴の構築位置を指定する機能です。通常、新規に
作成するフィーチャーは履歴の最後に追加されます(図 12 の変更前)

1 押出にロールバックすると、2 シェル以降の履歴は未構築の状態にな
ります(図 12 のロールバック)
。この状態でフィレットを追加すると、1
押出の次に新規フィーチャーが追加されます(図 12 のフィレット追加)

その後、履歴の最後までモデルを再構築すると、通常の状態になりま
す(図 12 のロールバック解除)

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1へ
図12:ロールバック ロールバック
1 押出 1 押出 1 押出 1 押出
2 シェル  ←新規フィーチャー 2 フィレット 2 フィレット
3 押出カット (2 シェル) 未構築  ←新規フィーチャー 3 シェル
 ←新規フィーチャー (3 押出カット) (3 シェル) 4 押出カット
(4 押出カット)  ←新規フィーチャー

変更前 ロールバック フィレット追加 ロールバック解除

・削除と抑制
フィーチャーを削除すると、履歴から削除されます。ただし、
フィーチャー
を削除せずに、モデルの構築から除外する機能があり、これを抑制と
呼びます。抑制では、フィーチャーは履歴に保持されます。そのため、
フィーチャーの抑制を解除すれば、再び形状に反映させることができま
す。

いかがでしたか? 今回は、パーツモデリングを効率的に行うためのコ
ツを紹介しました。次回は、製品設計に欠かせないアセンブリ機能を
解説します。お楽しみに!

3D CAD の基礎知識 4:
パーツモデリングのコツ
初版 2019 年 2 月 8 日

著者: D2FORM 代表 榎本 実

発行元: 株式会社イプロス Tech Note編集部


E-mail:media@ipros.jp
URL:https://technote.ipros.jp/

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