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2(2015)
「絵本の読み聞かせ」の効果の脳科学的 析
―NIRSによる黙読時,音読時との比較・ 析―
兵庫教育大学大学院連合学 教育学研究科 森 慶 子
余郷(2010)は,絵本とその読み聞かせが心地よさを
1 問題の所在と研究の目的
もたらす効果について10の仮説を提示している。
中学生・高 生2万人余りに行った読書実態に関する これらの「絵本の読み聞かせ」に関する指摘は,母子
調査(2013)では,
「就学前から中学時代までに読書活動 間のみならず実母子以外の関係であっても,
「絵本の読み
が多い高 生・中学生ほど,「未来志向」,「社会性」
,「自 聞かせ」による情緒的な結びつきによって,心の安定や
己肯定」,
「意欲・関心」,「文化的作法・教養」
,「市民性」, 心地よさが生じる可能性があると示唆している。
「論理的思 」のすべてにおいて,現在の意識・能力が 村中(1998)は,病院に入院している子どもや,不登
高い。特に,就学前から小学 低学年までの「家族から で児童相談所に来ている子どもたちと絵本を読みあう
昔話を聞いたこと」,
「本や絵本の読み聞かせをしても ことは,人間と人間とのかかわり合いの場をよみがえら
らったこと」,「絵本を読んだこと」といった読書活動は, せる場であると述べている。
現在における「社会性」や「文化的作法・教養」との関 谷木(2011)は,中学 において毎朝教師による「絵
係が強い。」との結果が出ていた(国立青少年教育振興機 本の読み聞かせ」を行ったことにより,不登 の症状を
構,2013)。 呈する生徒がいなくなり,全員が登 できるようになっ
このように,子どもの頃からの「絵本の読み聞かせ」 たとの実践報告をしている。教育実践の場で行った「絵
などといった読書活動がその後の社会生活の質を高める 本の読み聞かせ」の活動は情緒的な結びつきを生み,不
のに有効であることが明らかになっている。 登 の原因となる何らかのストレスを緩和したのではな
ただし,Bus, Belsky, Van Ijzendoorn & Crnic, (1997) いかと えられる。
は,読書活動に関して,心の安定のためには,読み聞か このように,実践の立場からも「絵本の読み聞かせ」
せる大人と子どもとの相互関係が大切であることを指摘 による情緒的な結びつきが,実母子間に限定されないこ
している。 とが報告されている。
横山・秋田(2002)は,読み聞かせをすることの意義 増田(2010a)は,
「絵本の読み聞かせ」の効果が生体
を,母親は,
「子どもがゆったりとした情緒的な結びつき 指標によって確認されたという報告をしている。
それは,
を大切にすること」であると えていると示している。 幼児に「絵本の読み聞かせ」を行った後,鼻の温度が上
居(2000)は,
「読み手の声が心の不安な子どもの心 昇したことである。この指標は副 感神経の働きが亢進
に,どれだけ強くやさしくひびくことか」と述べ,絵本 したことを示している。同時に行った心理テストでも,
を読み聞かせることが,心の安定につながるとしている。 読み聞かせの後は精神の安定度が高まり,不安やストレ
スが緩和されることを確認したということである。そし
A brain-scientific analysis of the effects of picture-book storytelling by
means of NIRS て,増田(2010b)は,不登 生徒への面談に絵本を利用
MORI, Keiko (The Joint Graduate School (Ph.D. Program) in Science
of School Education, Hyogo University of Teacher Education) し,成果を上げたとの報告もしている。
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「絵本の読み聞かせ」の効果の脳科学的 析
これらの先行研究の知見により,絵本を読み聞かせる ているNIRS(近赤外光スペクトロスコピーnear-infrared
ことが,情緒的結びつきにより,心が落ち着き,リラッ spectroscopy,以後NIRS)を 用することとした。その
クスする可能性があるのではないかと えた。 理由としては,NIRSは完全非侵襲性であるため,生体へ
近年,ストレスなどに関する脳活動の計測に,脳機能 の影響がないことや,小型の装置であり,自然な姿勢で,
イメージングの手法が多く取り入れられている。音楽や 発声や視聴ができる装置であることがあげられる。
朗読の聴取,におい,マッサージといった様々な課題に NIRS計測におけるoxy-Hbは局所脳血流変化の良い指
よりストレスが緩和された状態の計測がなされている。 標である
(星2009)。NIRSにおいて脳活動が亢進すると,
(川島2004ab,須田・森・山岡・八田原・片寄2006,古 同部の局所脳血流は増加するが,それは,NIRSではoxy-
谷・魚住2009,飯島・谷崎・中原2000,上馬場・許・王 Hb濃度の増加として捉えることができる。
2008) 脳活動をNIRSによって 析した先行研究をまとめる
そこで,黙読時,音読時,
「絵本の読み聞かせ」を聞い と次のようになる(表1)。
た時のそれぞれの脳活動を,脳科学的手法を用い比較し 川島(2004a╱表1-1,2)は,NIRSを 用し,大脳皮
て 析を行いたいと えた。従来,「絵本の読み聞かせ」 質における前頭前野の血流を計測したところ,黙読時,
に関する心理状態は,
「なんとなく心が落ち着く」という 音読時に前頭前野の血流が増加したという報告をしてい
ように個人の経験をもとに語られてきた。その心の落ち る。血流の増加をもって,脳が活性化しているとの判断
着きをもたらす効果については,脳科学的に立証されて がなされている。しかし,一方では,同じ音読という課
はいない。そこで,本研究では,脳機能イメージングの 題であるにもかかわらず,漢詩に熟達した人が漢詩の朗
手法を用い計測することで,心が落ち着いている状態を 読を行ったとき,前頭前野での血流が減少していること
脳科学的に裏付けることを目的としている。 を報告している。この血流の減少した状態を「こころが
本研究では先行研究において音読時の脳活動を計測し 癒されることイコール前頭前野の血流が下がることなの
(表1) NIRSによる計測結果(課題と脳部位)―先行研究―
課題
右前頭前野 左前頭前野
部位
1 黙読をする(川島2004a) oxyHb↑ oxyHb↑
2 音読をする(川島2004a) oxyHb↑ oxyHb↑
3 会話をする(川島2004a) oxyHb↑ oxyHb↑
4 慣れた漢詩朗読をする(川島2004a) oxyHb↓ oxyHb↓
5 独唱をする(川島2004a) oxyHb↑ oxyHb↑
6 合唱をする(川島2004a) oxyHb↓ oxyHb↓
7 物語の朗読聴取(古谷・魚住2009) oxyHb↓ oxyHb↓
8 音楽受動聴取(下茂ら2008) oxyHb↓ oxyHb↓
9 好きな音楽聴取(須田ら2006) oxyHb↓ oxyHb↓
10 不快感情の写真刺激(星2010) oxyHb↑ oxyHb↑
11 快感情の写真刺激(星2010) oxyHb↓
12 絵本の読み聞かせを聞く・子(泰羅2009) oxyHb↓ oxyHb↓
13 絵本を読み聞かせる・母(泰羅2009) oxyHb↑ oxyHb↑
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読 書 科 学 第56巻 第2号
です。」と述べている(川島・安達2004a,pp.191-193╱表 を示し,血流減少は,脳がリラックスしている状態を示
1-4)
。 していると えられる。
この他に,前頭前野において血流動態を調査した先行 前頭前野は,欲求のままに行動することを抑制する,
研究としては,合唱をしたり(川島・安達2004a,p.194╱ つまり目標を設定し,計画を立て,論理的順序だった効
表1-6),物語の朗読を聞いたり(古谷・魚住2009╱表1-7), 率的行動を起こすといった高次な機能をつかさどってい
音楽を受動的に聴取したり(下茂・菅生・揚原・杉田・ る部 である。様々なタスク(課題)に対して欲求では
石井・岩坂2008╱表1-8)すると血流が減少したことが報 なく,理性的な論理によって解決することをマネジメン
告されている。また,音楽の聴取の際には,好きな音楽 トする機能があると えられる。
に没入すればするほど血流が減少することも報告されて このことを前提にして音読というタスクに関して え
いる(須田・森・山岡・八田原・片寄2006╱表1-9)。 てみると,音読に不慣れなものが音読するのであれば,
また,視覚刺激においての脳血流動態について,星 音読というタスクをこなそうとマネジメントするのが前
(2010)は,快感情をもたらす写真を見せたとき,左外 頭前野である。したがって,音読のタスクでは,前頭前
側前頭前野の血流が減少し,不快情動をもたらす写真を 野において血流が増加する。では,漢詩の朗読の熟達者
見せたとき,腹側前頭前野において血流が増加したとい が漢詩の朗読をするというタスクに対して前頭前野の血
う報告がなされている(星2010╱表1-10,11)。 流が減少するという,同じ音読であるにもかかわらず全
泰羅(2009)は,実母子間において「絵本の読み聞か く逆の結果が報告されていることはどのように えれば
せ」を聴取したときの子どもの脳の血流動態を計測し, よいだろうか。川島・安達(2004a)によると,漢詩の朗
前頭前野で血流が減少したと報告している(泰羅2009╱ 読において血流減少が見られた被験者は,気持ちよく読
表1-12)。 んでいたということであった(川島・安達2004a,p.177)。
以上のように,NIRSによる脳機能イメージングの先行 漢詩に慣れ親しんでいた被験者にとって漢詩朗読は好ま
研究では,黙読や音読,独唱といった課題を行っている しいものであり,マネジメント機能をもつ前頭前野が活
とき,大脳皮質における前頭前野の血流増加を以て脳の 発に活動する必要のないタスクであるので,むしろリ
その部 が活性化しているという知見が示されている。 ラックスし,血流が減少したのではないか。
また,不快な情動を知覚したときも前頭前野の血流が増 ただし,これらの先行研究は,それぞれ別の条件下で
加している。反対に快の情動を知覚したときや,朗読を 測定されたものである。今回,同じ条件下で,同じ絵本
聞いたとき,音楽を聞いたときには前頭前野の血流が減 のテキストを 用し,黙読時・音読時・「絵本の読み聞か
少しており,リラックスしているという報告がなされて せ」聴取時の3つの読書活動をしているときの脳活動を,
いる。 NIRSによる計測を行い,比較・ 析することで仮説の検
証を行いたい。
2 仮説の導出
3 計測の方法
このように,
NIRSを用いて脳血流動態を計測した先行
研究の結果を 察することで,黙読時,音読時には前頭 被験者:
前野の血流が増加し,実母子間に限らず,
「絵本の読み聞 被験者は,大学生,
院生13名である。全員が成人(20―36
かせ」を聴取したときには,前頭前野の血流が減少する 歳)である(男性4名,女性9名)
。頭部に直接機器を設
という仮説が導出できる。先行研究の結果より,前頭前 置するため,検査の主旨や目的が十 に理解できる成人
野の血流増加は,脳に何らかの負荷がかかっている状態 を対象とした。教育研究科国語コース院生11名,工学部
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「絵本の読み聞かせ」の効果の脳科学的 析
学生1名,医学部学生1名という構成であった。被験者 座り行った。テキストは,実験者がもち,被験者の指先
との関係は,工学部学生1名を除き,親 のある間柄で の合図で実験者がめくった。これは,体動が血流に影響
ある。また,国語コースの院生は,ひらがなの多い絵本 を与えること(アーチファクト)を避けるためである。
を読み慣れている。 被験者にも大きく動かないように指示を出した。
実験者: NIRSの機器は,絶対値評価ではなく,安静時と比べて
実験者は,同じ大学院に所属している院生で,女性で どれだけ差異があるかという相対値評価であるため,安
ある。絵本の読み聞かせは,定期的に小学 ,中学 , 静課題の設定が必要である。そこで,赤い●を何も え
立図書館でおこなっており,読み聞かせには慣れてい ずに漫然と見つめてもらうことを安静課題とした。タス
る。 クは,①黙読,②音読,③「絵本の読み聞かせ」聴取の
場所: 3種類について独立して行った。それぞれのタスクの施
場所は静かな個室で,実験者,被験者,医師の3名で 行60秒に際して,
安静課題30秒をタスクの前後に設けた。
行った。 つまり,安静(R)30秒―タスク(T)60秒―安静(R)
タスク(課題)
: 30秒のセットを3回繰り返した。繰り返すのは,3回の
音読,黙読は,絵本の文章を文字テキストとして作成 加算平 をとる目的で行った(図1)。
したものを 用した。絵本は,
『だいじょうぶだいじょう 測定部位:
ぶ』(いとうひろし作絵 2006,講談社)を 用した。こ 測定部位は,前頭前野であり,プローブの配置は,鼻
の絵本を選定した理由は,
「だいじょうぶだいじょうぶ」 根位置を中心に,
左右のブローカ野
(運動性言語野:チャ
という言葉の繰り返しが多く用いられ,どの場所を切り ンネル(以後,CH)8,CH27)から前頭極部にかけて
取って測定しても,同じような結果が得られると えた 行った。ブローカ野は,言語活動にとって重要な脳の言
からである。ひらがなばかりのテキストであり,改行, 語中枢に当たる部 であり,おもに発語に関している部
かち書きも,絵本の通りとした。音読,黙読,
「絵本の である。ブローカ野より前方部の前頭前野は,計画を
読み聞かせ」は,被験者と実験者が1m位の距離で対面に 立てたり,論理的な判断をしたり,喜怒哀楽などの情動
(図1)課題の測定パターン
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(図2)プローブの装着位置
(図3)プローブの装着位置
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「絵本の読み聞かせ」の効果の脳科学的 析
部位におけるoxy-Hbが増加した人数,oxy-Hbが減少した
人数を数えて,図4にまとめてみた。この際,ほとんど
増減のなかった人は数に入れなかった。
(図4)oxy-Hbの変化
(図5)NIRS計測結果 ①黙読時
(教育研究科国語コース院生A)
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(図6)NIRS計測結果 ②音読時
(工学部学生B)
(図7)NIRS計測結果 ③「絵本の読み聞かせ」聴取時
(教育研究科国語コース院生C)
でほぼ半数の例で,oxy-Hb濃度の増加がみられたこと
5 察
は,実際言語を発しなくても運動性言語野であるブロー
oxy-Hb濃度の増加は,その部位の脳血流量の増加を反 カ野が活性化していることを示している。このことは,
映しており,脳血流の増加は同部位の神経活動の活性化 黙読の得意不得意の個人差を反映している可能性が え
を反映している。 られる。
黙読時には,全体的に変化はわずかながらも,ほぼ半 本研究では,音読のとき,ブローカ野において約半数
数の例で脳の言語を生み出す部 (ブローカ野:運動性 の例でoxy-Hb濃度の増加が見られた。このことは,先行
言語野)が活動していた。ただし,実際に言語を発して 研究における,音読課題では前頭葉の血流が増加したこ
いないにもかかわらず,運動性言語野であるブローカ野 との再確認となった。oxy-Hb濃度の増加が見られた7例
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「絵本の読み聞かせ」の効果の脳科学的 析
のうち,音読時,特に血流が増加していた工学部院生1 ことは,音読指導をする際にどのようなテキストにあっ
例では,実験後に行ったアンケートにより,ひらがな文 ても,繰り返し音読し,音読に熟達させることで,精神
が読みにくいとの感想があった。この例では,ひらがな 的に落ち着きを持たらす可能性があることを示唆してい
のみで書かれた文章の音読に困難を感じたことが,oxy- る。
Hb濃度の増加に影響することが推測された。それは,音 次に,
「絵本の読み聞かせ」聴取時において,ほとんど
読課題において音読に困難を感じる課題ほど脳の血流を の例で,前頭前野における血流減少が見られたことは,
増加させることを示唆するものである。このことは,先 絵本の読み聞かせ聴取時に「こころが癒されること」が
述した川島(2004a)の報告で,漢詩の熟達者が漢詩の朗 起こっていると えることができる。
読を朗々と行ったときには,血流が減少したという例の 泰羅(2009)は,実母子間の「絵本の読み聞かせ」課
逆とも えられる。また,本研究では,音読をしている 題において,NIRSにより血流を計測したところ,「絵本
にも関わらず,ブローカ野においてoxy-Hb濃度が増加せ の読み聞かせ」を聴取した子どもの前頭前野で血流が減
ず,前頭前野においてoxy-Hb濃度が下がった例は,すべ 少したと報告しているが,本研究では,読み手,聞き手
て,絵本に触れる機会が多くひらがな文の音読に困難を が実母子という関係になくても,また,成人であっても
感じていない国語コースの院生であった。このことは, 「絵本の読み聞かせ」聴取時において前頭前野の血流が
音読課題において困難を感じないときは,血流の増加が 減少するデータが得られた。
見られないことを示すものである。つまり,音読課題に つまり,実母子間に限らず,成人においても,
「絵本の
困難を感じるときは,血流が増えて神経活動が活性化す 読み聞かせ」を行うことで,聞き手は,精神的に落ち着
るが,課題に熟達し,困難を感じないときには血流が増 いたといえる。
えないという傾向にあるということを示している。さら 今回の実験の結果,従来の実践において,
「絵本の読み
に,熟達を通り越し,音読課題に心地よさを感じるレベ 聞かせを行うと精神的に落ち着く」という経験的な尺度
ルになると,血流減少に転じるのではないかと推測され でしか測れなかった「絵本の読み聞かせ」の(精神的に
る。また,音読課題が絵本であったことが,従来の実験 落ち着く)効果について,脳科学的に立証することがで
データと異なる前頭前野の血流減少を起こしているとも きたと えられる。
えられる。
6 問題点と今後の課題
川島(2004a)は,漢詩の熟達者の漢詩の朗読課題にお
ける前頭前野の血流減少に関して「こころが癒されるこ 今回の計測結果より,黙読,音読,
「絵本の読み聞かせ」
とイコール前頭前野の血流が下がることなのです。
」と結 聴取という読書活動のスタイルの違いにより,脳反応の
論づけている(川島・安達2004a, p.193)。 異なる結果が得られた。
今回の音読の実験データからすると,前頭前野におけ ただ,今回は,一冊のテキストである故に,読んだテ
る血流の減少は,熟達した漢詩の朗読をした際に限るこ キストによる違いや,読む人による違いが生じる可能性
となく,その他のテキストにおいても,比較的楽に行え も否めない。様々なジャンルのテキストで,確認してい
る課題,リラクゼーションが得られる課題に対しては, くことも必要であると思われる。音読に関しては,一回
前頭前野の血流は減少することが明らかになった。 のみの計測であったので,今後繰り返し音読をし,音読
先行研究において述べられていた,音楽などを聞いた について熟達した場合の変化にも着目することも必要で
時に,前頭前野に血流が減少しリラックスしている状態 ある。また,苦手な課題の場合の計測も被験者の属性を
と同様の精神的状態であると えられるのである。この 変え,人数を多くして行うべきだと えた。
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cross-sectional study. Child Development, 59, AHRENS, K., (2011). Where literature appreciation
1262-1272. begins. Emergent Literacy: Children s Books from 0
BUS,A.G.,VAN IJZENDOORN,M.H.(1992).Patterns to 3, Bettina Kummerling-Meibauer (Ed.) (pp.77-89),
of attachment in frequently and infrequently reading John Benjamins Publishing.
mother-child dyads. The Journal of Genetic Psy- 川井蔦栄・高橋美知子・古橋エツ子(2008)絵本の読み
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MORI, Keiko (The Joint Graduate School (Ph.D. Program) in Science of School Education,
Hyogo University of Teacher Education)
Abstract
The purpose of this paper is to analyze the effects of picture-book storytelling in terms of brain science. The
adopted method is to measurethebrain activities associated with reading picturebookssilently,reading them aloud,and
listening to them read by others, by means of near-infrared spectroscopy(NIRS), and compare and analyze them with
reference to previous studies. The measured point is the bilateral prefrontal cortex. The prefrontal cortex has the
management function ofdoing things rationally. Thetask ofreading a picturebook aloud increased blood flow,while
the task of listening to reading of a picture book decreased it. From the results and independent reports that listening
to a picturebook reading has a relaxing effect,and looking at pleasant pictures reduces blood flow,it is considered that
while passively listening to a picture book reading, one feels comfort . That is, brain-scientifically, picture-book
storytelling has been found to have the potential for healing .
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