You are on page 1of 11

1 2

(57)【特許請求の範囲】 各フィーダに設けたZCTの一次電流値(零相一次電流
【請求項1】 6.6kV配電線(非接地系統)の母線 値)を地絡していないときの残留分及び1回の母線の1
に設けた接地変圧器(GPT)に接続され母線・各配電 相地絡時について測定に基づき算出し、バンク全体の対
線全体の地絡事故を検出する地絡過電圧継電器(OVG 地零相アドミタンスと対地逆相アドミタンスをGPTで
R)と、前記GPT及び配電線(フィーダ)毎に設けた の測定に基づき算出し、これらの値を既知として各フィ
零相変流器(ZCT)に接続されフィーダ毎の地絡事故 ーダの対地零相アドミタンスと対地逆相アドミタンスを
を各別に検出する地絡方向継電器(DGR)とを用い、 算出し、さらにa,b,cいずれか1相が任意の抵抗又
母線・各配電線の各相(a,b,c)で異なる対地アド はコンダクタンスで地絡したときの各フィーダの零相一
ミタンスを有し、かつ、各線間電圧が平衡している配電 次電流値を算出し、かつ、対地静電容量不平衡を評価す
系統(配電バンク)に対して、前記対地アドミタンスの 10 るようにした配電線地絡保護リレー試験方法であって、
不平衡等に起因する残留零相電流及び残留零相電圧では 少なくとも以下(1)∼(5)の処理手順又は試験手順
動作せず、一定の抵抗値以下又はコンダクタンス値以上 を包含することを特徴とする配電線地絡保護リレー試験
の1相地絡では動作するように、前記OVGR及びDG 方法。
Rの整定(感度調整)と最小動作試験をおこなう配電線 (1)ZCTの一次側の試験用貫通線に数通りの付加電
地絡保護リレー試験方法において、 流を出力する。
(2) 特許第3312172号
3 4

(2)前記付加電流とZCTの一次電流との合成電流の うに装置系を構成するとともに、
二次電流を測定する。 前記装置系が、
(3)付加電流に係る数通りの出力条件から、各別にZ ZCTの一次側の試験用貫通線に数通りの付加電流を出
CTの一次電流と変流比を変数とする連立方程式を立 力し、該付加電流とZCTの一次電流との合成電流の二
て、その解としてZCTの一次電流値であるそれぞれ残 次電流を測定するための第一の測定手段、及び前記付加
留零相一次電流値及び1回の母線の1相地絡操作に対す 電流に係る数通りの出力条件から、各別にZCTの一次
る零相一次電流値を求める。 電流と変流比を変数とする連立方程式を立て、その解と
(4)GPTにおいて、いずれか一組の相の線間電圧、 してZCTの一次電流値であるそれぞれ残留零相一次電
残留零相電圧、及び1回の母線の1相地絡操作に対する 流値及び1回の母線の1相地絡操作に対する零相一次電
零相電圧を測定し、これら線間電圧、残留零相電圧、及 10 流値を求めるための第一の演算処理手段と、
び1回の母線の1相地絡操作に対する零相電圧、並びに GPTにおいて、いずれか一組の相の線間電圧、残留零
地絡時の抵抗又はコンダクタンスの関係から導出される 相電圧、及び1回の母線の1相地絡操作に対する零相電
計算式に基づき、バンク全体の対地零相アドミタンス及 圧を測定するための第二の測定手段、及びこれら線間電
び対地逆相アドミタンスを求める。 圧、残留零相電圧、及び1回の母線の1相地絡操作に対
(5)上記手順(3)において求めた残留零相一次電流 する零相電圧、並びに地絡時の抵抗又はコンダクタンス
値及び1回の母線の1相地絡操作に対する零相一次電流 の関係から導出される計算式に基づき、バンク全体の対
値と、上記手順(4)において求めたバンク全体の対地 地零相アドミタンス及び対地逆相アドミタンスを求める
零相アドミタンス及び対地逆相アドミタンスとの関係か ための第二の演算処理手段と、
ら導出される計算式に基づき、各フィーダの対地零相ア 各ZCTにおける残留零相一次電流及び1回の母線の1
ドミタンス及び対地逆相アドミタンスを求め、さらに 20 相地絡操作に対する零相一次電流を測定するか、又は前
a,b,cいずれか1相が任意の抵抗又はコンダクタン 記第一の演算処理手段の結果を参照取得するための第三
スで地絡したときの各フィーダの零相一次電流値を求め の測定手段、及び該第三の測定手段により得られた残留
る。 零相一次電流値及び1回の母線の1相地絡操作に対する
【請求項2】 付加電流の出力条件が、合成電流の大き 零相一次電流値と、前記第二の演算処理手段の結果であ
さがZCT電流のしきい値(既知)以上となるように設 るバンク全体の対地零相アドミタンス及び対地逆相アド
定され、大きさが同じで位相が異なる3通りの電流であ ミタンスとの関係から導出される計算式に基づき、各フ
る請求項1記載の配電線地絡保護リレー試験方法。 ィーダの対地零相アドミタンス及び対地逆相アドミタン
【請求項3】 付加電流の出力条件が、合成電流の大き スを求め、さらにa,b,cいずれか1相が任意の抵抗
さがZCT電流のしきい値(既知)以上となるように設 又はコンダクタンスで地絡したときの各フィーダの零相
定され、位相が同じで大きさが異なる3通りの電流であ 30 一次電流値を求めるための第三の演算処理手段を具備し
る請求項1記載の配電線地絡保護リレー試験方法。 てなり、
【請求項4】 付加電流の出力条件が、合成電流の大き 装置系から、OVGRに対し前記第二の演算処理手段に
さがZCT電流のしきい値(既知)以上となるように設 より得られたバンク全体の対地零相アドミタンス及び対
定され、異なる2通りの電流である請求項1記載の配電 地逆相アドミタンスから算出されるa,b,cいずれか
線地絡保護リレー試験方法。 1相が任意の抵抗又はコンダクタンスで地絡したときの
【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか1項記載の配 零相電圧値を入力し、DGRに対し該零相電圧値を入力
電線地絡保護リレー試験方法を、コンピュータ支援によ し、かつ、ZCTを介して前記第三の演算処理手段によ
り総合的にリレー試験手順を実行可能とした配電線地絡 り算出されるa,b,cいずれか1相が任意の抵抗又は
保護リレー試験装置であって、 コンダクタンスで地絡したときの当該フィーダの零相一
母線・各配電線の各相(a,b,c)で異なる対地アド 40 次電流値を入力して、それぞれ動作信号の有無を取得す
ミタンスを有し、かつ、各線間電圧が平衡している配電 ることにより、少なくともOVGR及びDGRの整定と
系統(配電バンク)に対して、 最小動作試験をおこなうようにしたことを特徴とする配
GPT、ZCT、DGR及びOVGRに端子接続した入 電線地絡保護リレー試験装置。
出力回路と、該入出力回路に接続した計測・出力装置 【発明の詳細な説明】
と、該計測・出力装置に接続したコンピュータ及びプリ 【0001】
ンタを配備して、母線の1相地絡操作を含み、前記コン 【発明の属する技術分野】本発明は、6.6kV配電線
ピュータからの指示操作により計測・出力装置及び入出 (非接地系統母線)に対して、接地変圧器(GPT)、
力回路を介してGPT、ZCT、DGR及びOVGRに 零相変流器(ZCT)、地絡方向継電器(DGR)、及
対する入出力をおこない、かつ、これらの装置出力をデ び地絡過電圧継電器(OVGR)とを用いてする配電線
ータ取得して演算処理及び表示・出力処理をおこなうよ 50 地絡保護リレー試験方法及び装置に係り、詳しくは、母
(3) 特許第3312172号
5 6

線・各配電線の各相(a,b,c)で異なる対地アドミ 値)と、動作しない最小地絡抵抗値を250Ω刻みで調
タンスを有し、かつ、各線間電圧が平衡している配電系 べる。
統(配電バンク)に対して、残留分と1回の母線の1相 【0008】
地絡時の各配電線〔以下、フィーダ。〕に設けたZCT 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
の一次電流(被測定電流)の値を高精度に算出し、か 来試験の手法では、安全に対する十分な配慮が必要であ
つ、各フィーダの対地零相アドミタンスと対地逆相アド ると同時に、多大な労力と時間を要してきた。このた
ミタンスを高精度に算出することにより、任意抵抗地絡 め、より安全で、効率的な試験手法が望まれる。
時の各フィーダの零相一次電流及び対地静電容量不平衡 【0009】こうしたなかで本発明者は、研究過程で以
を算出又は評価可能とする配電線地絡保護リレー試験方 下の知見を有するにいたり、新たな試験方法及び装置の
法、及び該試験方法(試験手順)をコンピュータ支援に 10 開発を進めてきた。
より実行可能とする配電線地絡保護リレー試験装置に関 【0010】①地絡抵抗値に対する零相電圧、及びフィ
する。 ーダの零相一次電流(値)を高精度に算出できれば、そ
【0002】 の結果をGPT三次側、ZCT一次側に出力して試験が
【従来の技術】従来より、6.6kV配電線(非接地系 おこなえること。
統母線)の地絡保護リレー試験では、活線作業である母 【0011】②また、残留分と人工地絡時のフィーダの
線の人工地絡操作を数十回試行することにより、地絡保 零相一次電流(値)を知得できれば、フィーダの対地零
護リレーの構成機器であるOVGR(バンク一括)、D 相アドミタンスと対地逆相アドミタンスを高精度に算出
GR(フィーダ毎)の整定や動作・不動作試験をおこな できること。
っている。 【0012】③さらに、これらの値を用いれば、任意抵
【0003】図8に示すように、従来試験ではそれぞれ 20 抗地絡時の各フィーダの零相一次電流(地絡電流)及び
の機器の操作や測定に作業員が必要であり、通常6名を 対地静電容量不平衡を算出又は評価できること。
要している。実施する試験項目は、①残留測定(零相電 【0013】④上記プロセスは、コンピュータ(パソコ
圧・零相電流測定)、②母線地絡特性、③線路位相特 ン)の機能を利用して、計算、測定、制御がおこなえる
性、④最小動作試験である。これらの目的と方法は以下 こと。したがって、より安全で、かつ、効率的なリレー
のとおりである。 試験がおこなえること。
【0004】①残留測定(零相電圧・零相電流測定) 【0014】本発明はこのような事情に鑑みなされたも
〔目的〕地絡保護リレーの誤動作がないようにリレーを のであって、上記課題を解消し、コンピュータ支援によ
整定するため。 り総合的にリレー試験手順を実行可能な配電線地絡保護
〔方法〕GPT3次側に常時発生している零相電圧と、 リレー試験方法及び装置を提供するものである。
ZCT2次側に常時発生しているフィーダ毎の零相電流 30 【0015】
を測定する。 【課題を解決するための手段】課題を解決するために本
【0005】②母線地絡特性 発明は、6.6kV配電線(非接地系統)の母線に設け
〔目的〕バンクの地絡特性の把握と、OVGR,DGR た接地変圧器(GPT)に接続され母線・各配電線全体
の零相電圧の整定値を定めるため。 の地絡事故を検出する地絡過電圧継電器(OVGR)
〔方法〕各相について3∼16kΩの範囲で人工地絡し、 と、前記GPT及び配電線(フィーダ)毎に設けた零相
地絡抵抗に対する零相電圧、地絡電流を測定・記録す 変流器(ZCT)に接続されフィーダ毎の地絡事故を各
る。また、零相電圧、地絡電流からバンク全体の充電電 別に検出する地絡方向継電器(DGR)とを用い、母線
流を求める。 ・各配電線の各相(a,b,c)で異なる対地アドミタ
【0006】③線路位相特性 ンスを有し、かつ、各線間電圧が平衡している配電系統
〔目的〕DGRを内部地絡(自フィーダの地絡時)では 40 (配電バンク)に対して、前記対地アドミタンスの不平
確実に動作し、外部地絡(自フィーダ以外の地絡時)で 衡等に起因する残留零相電流及び残留零相電圧では動作
誤動作しないように整定するため。 せず、一定の抵抗値以下又はコンダクタンス値以上の1
〔方法〕地絡抵抗6kΩで人工地絡させ、内部地絡時と 相地絡では動作するように、前記OVGR及びDGRの
外部地絡時の零相電圧、零相電流及び零相電圧基準の零 整定(感度調整)と最小動作試験をおこなう配電線地絡
相電流の位相(差)を測定する。 保護リレー試験方法において、各フィーダに設けたZC
【0007】③最小動作試験 Tの一次電流値(零相一次電流値)を地絡していないと
〔目的〕OVGR,DGRの整定後、これらが目標の検 きの残留分及び1回の母線の1相地絡時について測定に
出感度になっていることを調べる。 基づき算出し、バンク全体の対地零相アドミタンスと対
〔方法〕人工地絡により、それぞれのリレーが動作する 地逆相アドミタンスをGPTでの測定に基づき算出し、
最大地絡抵抗値(零相電圧、零相電流における最小動作 50 これらの値を既知として各フィーダの対地零相アドミタ
(4) 特許第3312172号
7 8

ンスと対地逆相アドミタンスを算出し、さらにa,b, 流と変流比を変数とする連立方程式を立て、その解とし
cいずれか1相が任意の抵抗又はコンダクタンスで地絡 てZCTの一次電流値であるそれぞれ残留零相一次電流
したときの各フィーダの零相一次電流値を算出し、か 値及び1回の母線の1相地絡操作に対する零相一次電流
つ、対地静電容量不平衡を評価するようにした配電線地 値を求めるための第一の演算処理手段と、GPTにおい
絡保護リレー試験方法であって、少なくとも以下(1) て、いずれか一組の相の線間電圧、残留零相電圧、及び
∼(5)の処理手順又は試験手順を包含することを特徴 1回の母線の1相地絡操作に対する零相電圧を測定する
とするものである。 ための第二の測定手段、及びこれら線間電圧、残留零相
(1)ZCTの一次側の試験用貫通線に数通りの付加電 電圧、及び1回の母線の1相地絡操作に対する零相電
流を出力する。 圧、並びに地絡時の抵抗又はコンダクタンスの関係から
(2)前記付加電流とZCTの一次電流との合成電流の 10 導出される計算式に基づき、バンク全体の対地零相アド
二次電流を測定する。 ミタンス及び対地逆相アドミタンスを求めるための第二
(3)付加電流に係る数通りの出力条件から、各別にZ の演算処理手段と、各ZCTにおける残留零相一次電流
CTの一次電流と変流比を変数とする連立方程式を立 及び1回の母線の1相地絡操作に対する零相一次電流を
て、その解としてZCTの一次電流値であるそれぞれ残 測定するか、又は前記第一の演算処理手段の結果を参照
留零相一次電流値及び1回の母線の1相地絡操作に対す 取得するための第三の測定手段、及び該第三の測定手段
る零相一次電流値を求める。 により得られた残留零相一次電流値及び1回の母線の1
(4)GPTにおいて、いずれか一組の相の線間電圧、 相地絡操作に対する零相一次電流値と、前記第二の演算
残留零相電圧、及び1回の母線の1相地絡操作に対する 処理手段の結果であるバンク全体の対地零相アドミタン
零相電圧を測定し、これら線間電圧、残留零相電圧、及 ス及び対地逆相アドミタンスとの関係から導出される計
び1回の母線の1相地絡操作に対する零相電圧、並びに 20 算式に基づき、各フィーダの対地零相アドミタンス及び
地絡時の抵抗又はコンダクタンスの関係から導出される 対地逆相アドミタンスを求め、さらにa,b,cいずれ
計算式に基づき、バンク全体の対地零相アドミタンス及 か1相が任意の抵抗又はコンダクタンスで地絡したとき
び対地逆相アドミタンスを求める。 の各フィーダの零相一次電流値を求めるための第三の演
(5)上記手順(3)において求めた残留零相一次電流 算処理手段を具備してなり、装置系から、OVGRに対
値及び1回の母線の1相地絡操作に対する零相一次電流 し前記第二の演算処理手段により得られたバンク全体の
値と、上記手順(4)において求めたバンク全体の対地 対地零相アドミタンス及び対地逆相アドミタンスから算
零相アドミタンス及び対地逆相アドミタンスとの関係か 出されるa,b,cいずれか1相が任意の抵抗又はコン
ら導出される計算式に基づき、各フィーダの対地零相ア ダクタンスで地絡したときの零相電圧値を入力し、DG
ドミタンス及び対地逆相アドミタンスを求め、さらに Rに対し該零相電圧値を入力し、かつ、ZCTを介して
a,b,cいずれか1相が任意の抵抗又はコンダクタン 30 前記第三の演算処理手段により算出されるたa,b,c
スで地絡したときの各フィーダの零相一次電流値を求め いずれか1相が任意の抵抗又はコンダクタンスで地絡し
る。 たときの当該フィーダの零相一次電流値を入力して、そ
【0016】また、上記試験方法(手順)をコンピュー れぞれ動作信号の有無を取得することにより、少なくと
タ支援により総合的に実行可能とした配電線地絡保護リ もOVGR及びDGRの整定と最小動作試験をおこなう
レー試験装置であって、母線・各配電線の各相(a, ようにしたことを特徴とするものである。
b,c)で異なる対地アドミタンスを有し、かつ、各線 【0017】
間電圧が平衡している配電系統(配電バンク)に対し 【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を添付図面を
て、GPT、ZCT、DGR及びOVGRに端子接続し 参照しながら以下説明する。なお、この欄で参照する添
た入出力回路と、該入出力回路に接続した計測・出力装 付図面は実施例においても参照される。
置と、該計測・出力装置に接続したコンピュータ及びプ 40 【0018】上記発明方法の処理(試験)手順(1)∼
リンタを配備して、母線の1相地絡操作を含み、前記コ (3)〔及び上記発明装置の第一の測定手段及び演算処
ンピュータからの指示操作により計測・出力装置及び入 理手段〕において、付加電流の出力条件は、合成電流の
出力回路を介してGPT、ZCT、DGR及びOVGR 大きさがZCT電流のしきい値(既知)以上となるよう
に対する入出力をおこない、かつ、これらの装置出力を に設定され、大きさが同じで位相が異なる3通りの電流
データ取得して演算処理及び表示・出力処理をおこなう を採用するものである。
ように装置系を構成するとともに、前記装置系が、ZC 【0019】この場合の手法〔以下、手法I〕を以下に
Tの一次側の試験用貫通線に数通りの付加電流を出力 述べる。あわせて、手法Iの測定回路の構成例を図1に
し、該付加電流とZCTの一次電流との合成電流の二次 示す。図示するように、ZCT一次側の試験用貫通線に
電流を測定するための第一の測定手段、及び前記付加電 付加電流を出力して、該付加電流とZCT一次電流(被
流に係る数通りの出力条件から、各別にZCTの一次電 50 測定電流;未知)との合成電流の二次電流を測定し、出
(5) 特許第3312172号
9 10

力条件ごとにZCTの一次電流値と変流比を変数とする に計算式を示す。
連立方程式を立てて演算処理し、その解によりそれぞれ 【0020】
の値を求める。(手法II及びIII において同じ。)以下 【数1】

【0021】以上の計算式により、I0 ,φ,nが求まる 〔及び同装置の第一の測定手段及び演算処理手段〕にお


が、(1−5)式から、計算結果の精度を考慮すると、 いて、付加電流の出力条件は、合成電流の大きさがZC
Q<<−1,すなわちI0 >>I0A 又はI0 <<I0A となるように T電流のしきい値(既知)以上となるように設定され、
I0A を与えなければならない。このとき、I0 のおよその 位相が同じで大きさが異なる3通りの電流を採用する場
値としては、ZCT二次値に、ZCT電流のしきい値以 合がある。
上のときの変流比の概ねの値を乗じた値を用いればよ 30 【0023】この場合の手法〔以下、手法II〕を以下に
い。なお、ZCT電流のしきい値の概ねの値と、しきい 述べる。手法IIの測定回路の構成例を図2に示すととも
値以上のときのZCT変流比の概ねの値を予め測定等に に、以下に計算式を示す。
より求めておく必要がある。 【0024】
【0022】また、同処理(試験)手順(1)∼(3) 【数2】

40

50
(6) 特許第3312172号
11 12

20

【0025】また、同処理(試験)手順(1)∼(3) 【0026】この場合の手法〔以下、手法III 〕を以下


〔及び同装置の第一の測定手段及び演算処理手段〕にお に述べる。手法III の測定回路の構成例を図3に示すと
いて、付加電流の出力条件は、合成電流の大きさがZC ともに、以下に計算式を示す。
T電流のしきい値(既知)以上となるように設定され、 【0027】
異なる2通りの電流を採用する場合がある。 【数3】

【0028】また、上記発明方法の処理(試験)手順 ダの零相一次電流を求めるための導出過程(以下の数5
(4)〔上記発明装置の第二の測定手段及び演算処理手 及び数6)を述べる。
段〕において、バンク全体の対地零相アドミタンス及び 【0030】ここで、対象とする三相不平衡な対地アド
対地逆相アドミタンスを求めるための導出過程(以下の ミタンスをもつ配電バンクを図4に示す。また、以下の
数4)を述べる。 40 導出過程(数式)で使用する添字kに関し、k=0は母
【0029】さらに、同処理(試験)手順(5)〔上記 線、k=1,2,・・・nはフィーダの号数である。な
発明装置の第三の測定手段及び演算処理手段〕におい お、線間電圧は平衡しているものとする。
て、各フィーダの対地零相アドミタンス及び対地逆相ア 【0031】
ドミタンスを求めるとともに、任意抵抗地絡時のフィー 【数4】

50
(7) 特許第3312172号
13 14

30

【0032】 【数5】

【0033】上記(21)、(22)、(24)、(25)、 にGPTの変圧比を考慮した式を用いる。また、(27)
(27)∼(30)式での電圧は、GPT一次電圧で表して ∼(30)式での零相電流はZCT一次電流で表してい
いる。ただし、線間電圧はGPT二次端子、零相電圧は る。
GPT三次端子で測定されるので、実際にはこれらの式 50 【0034】ここで、(24)、(25)式よりa,b相線
(8) 特許第3312172号
15 16

間電圧、残留零相電圧、1回の地絡に対する零相電圧を 【0035】さらに、任意抵抗地絡時(a,b,c相が
測定すれば、バンク全体の対地零相アドミタンスと対地 任意のコンダクタンス<G>で地絡したとき)のフィー
逆相アドミタンスが求まることがわかる。さらに、(2 ダの零相一次電流<Ik0aout >,<Ik0bout >,<Ik0cout > (外
9)、(30)式よりフィーダの残留零相電流、1回の母 部地絡); <Ik0ain >,<Ik0bin >,<Ik0cin > (内部地
線地絡に対する零相電流を測定すれば(この2つは上述 絡)は以下により求まる。
の手法Iにより測定できる)、そのフィーダの対地零相 【0036】
アドミタンスと対地逆相アドミタンスが求まることがわ 【数6】
かる。

20

【0037】上記(31)∼(36)式での電圧は、GPT 動作信号も直接取り込む。出力は各地絡抵抗値に対して
一次電圧で表している。ただし、線間電圧はGPT二次 計算された<V0 >、一次側<I0 >で、<V0 >はリ
端子、零相電圧はGPT三次端子で測定されるので、実 レー盤試験端子を経由してOVGR及びDGRに入力
際にはこれらの式にGPTの変圧比を考慮した式を用い し、一次側<I0 >は各フィーダのZCTに貫通させ
る。また、零相電流はZCT一次電流で表している。な る。なお、GPT二次側線間電圧<Vab >は位相基準と
お、これらの式で求めた値をZCT一次電流として出力 する。
するときは、残留零相一次電流分を差し引いておく必要 【0042】また、本発明の構成手段に係る実施例ブロ
がある。 ック図を図6に示す。図中、1がGPT、2がZCT、
【0038】ここでは、式の導出のために、a相を人工 3がDGR、4がOVGR、5が入出力回路、6が計測
地絡した場合の零相電圧・零相電流測定を用いたが、地 30 ・出力装置、11が第一の測定手段、12が第二の測定手
絡相はb相あるいはc相でも同様に式を導くことができ 段、13が第三の測定手段、21が第一の演算処理手段、22
る。また、<Vab >を電圧の基準として用いたが、上述 が第二の演算処理手段、23が第三の演算処理手段、PCが
の(23)式により<Vbc >,<Vca >を用いることもで コンピュータ(パソコン)、LPがプリンタ、及びXが本
きる。 試験装置である。
【0039】 【0043】2.零相一次電流測定
【実施例】本発明の一実施例を添付図面を参照して以下 2−1.測定手法
の順序で説明する。なお、以下の説明文中、<>はベク ZCTの変流比は零相電流がある値〔しきい値〕以上に
トル量である。 なるとほぼ一定値となる。〔ZCT二次電流vs. 変流比
【0040】1.装置構成 のデータプロットは図示を省略する。〕この特性を用
2.零相一次電流測定 40 い、ZCT一次側の試験用貫通線に、フィーダの零相一
2−1.測定手法 次電流との合成値の大きさがしきい値以上となるような
2−2.有効性の検証 電流を2,3通り出力すれば、ZCT一次・二次電流に
3.模擬配電バンクでの試験(説明一部省略) 関する連立方程式が得られる。〔上記の手法I∼III に
4.実配電バンクでの試験(説明一部省略) おいて既述。〕
5.まとめ 【0044】2−2.有効性の検証
【0041】1.装置構成 上記2−1の測定手法の有効性を検証するために、模擬
図5に回路構成として示すように、本試験装置(X)へ 配電バンクのZCTを用いて試験を行った。試験回路を
の入力信号は、GPT二次側線間電圧<Vab >、GPT 図7に示す。
三次側電圧<V0 >、各フィーダのZCT二次側<I0 【0045】ここで、フィーダは停電しておき、商用1
>でリレー盤の試験端子から入力される。また、リレー 50 00V電源、抵抗器、スライダックを用いてZCT一次
(9) 特許第3312172号
17 18

回路に<I0 >模擬電流を流した(出力)。I0 の値は50∼ I0 値に対して4回おこなった。なお、試験に使用したリ


1995mAとした。通常、零相一次電流は多少変動してお レー試験器、位相計、ZCT二次電流測定用電流計は、
り、その変動を模擬するため、各回の試験の初めにスラ 本発明装置の構成要素と同様のものである。
イダックによりI0 の値を決めた後は、その調整をおこな 【0047】試験結果を表1に示す。I0 入力値はスライ
わなかった。 ダックで調整した初期値であり、多少変動している。
【0046】また、リレー試験器を用いて付加電流<I I0 ,φ測定(算出)値は、4回の試験の変動範囲を示し
0Am >=I0A exp(jθm )[m=1,2,3]を流した。電流の大 ている。I0 入力値と測定値の差はI0 で約1%以下、φで
きさI0A はI0 の値により適当に決め、位相θm は<I0 > 2°以下であり、付加電流<I0 Am >を適当に選べば、非
の位相φを基準として位相計で測定し、3通りの付加電 常に高い精度で零相一次電流値が求まることがわかっ
流の位相差が互いに120 °となるように調整した。ZC 10 た。
Tの二次電流は、通常のリレー回路の中に電流計(内部 【0048】
抵抗 1.2Ω固定)を挿入して測定した。試験は、各々の 【表1】

20

【0049】このあと、3.模擬配電バンクでの試験、 【図1】本発明における手法Iの測定回路の構成例を示
及び4.実配電バンクでの試験を実行した。試験項目は す説明図である。
零相電圧・零相電流測定、対地アドミタンス計算、母線 【図2】同じく手法IIの測定回路の構成例を示す説明図
地絡特性計算、線路位相特性試験、及びリレー最小動作 である。
試験である。それぞれの試験方法(機器操作)及び試験 【図3】同じく手法III の測定回路の構成例を示す説明
結果については説明を省略する。 図である。
【0050】5.まとめ 【図4】本発明が対象とする三相不平衡な対地アドミタ
①任意抵抗地絡時の零相一次電流をバンク全体・各フィ ンスをもつ配電バンクを示す説明図である。
ーダの対地アドミタンスから精度よく求めることができ 【図5】装置構成を説明する回路構成概要図である。
た。 30 【図6】装置構成を説明する実施例ブロック図である。
【0051】②残留分及び3kΩ母線地絡時の零相一次 【図7】零相一次電流測定に係る試験回路の構成例を示
電流を、ZCT二次電流測定値から精度よく求めること す説明図である。
ができた。 【図8】従来の試験例を示す説明図である。
【0052】③しきい値以上の零相電流に対するZCT 【符号の説明】
の変流比を表示し、零相二次電流測定回路の良否を判断 1 GPT
することができた。 2 ZCT
【0053】これにより、線路位相特性試験、及びリレ 3 DGR
ー(DGR)最小動作試験でZCT一次回路への電流出 4 OVGR
力が精度よくできるようになり、効率的なリレー試験が 5 入出力回路
可能となった。 40 6 計測・出力装置
【0054】 11 第一測定手段
【発明の効果】本発明は以上の構成よりなるものであ 12 第二測定手段
り、これによればコンピュータ支援により総合的にリレ 13 第三測定手段
ー試験手順を実行可能なので、より安全で、かつ、効率 21 第一演算処理手段
的なリレー試験をおこなうことができる。しかも、少人 22 第二演算処理手段
数(3名)で短時間(15分前後)に試験を遂行でき、リ 23 第三演算処理手段
レーをロックする時間の短縮が図れるので、運用上有益 PC コンピュータ(パソコン)
である。 LP プリンタ
【図面の簡単な説明】 X 配電線地絡保護リレー試験装置(本試験装置)
(10) 特許第3312172号

【図1】 【図2】 【図3】

【図4】
【図5】

【図6】 【図7】
(11) 特許第3312172号

【図8】

フロントページの続き

(58)調査した分野(Int.Cl.7 ,DB名)
G01R 31/00
H02H 3/00 - 3/52

You might also like