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Cast

ヴォルフガング・モーツァルト

ナンネール

コンスタンツェ

ヴァルトシュテッテン男爵夫⼈

コロレド⼤司教

レオポルト

セシリア・ウェーバー

エマヌエル・シカネーダー

アントン・メスマー

アルコ伯爵

アマデ
第⼀幕
プロローグ ウィーン/聖マルクス墓

♪プロローグ♪

メスマー どこか⼼当たりは?マダム。

コンスタンツェ さあ、⻑い間来ていなかったものですから。

メスマー あなたはご主⼈の埋葬に⽴ち合われなかった。

コンスタンツェ ドクトル・メスマー、あなたまでそんな話を信じるなんて。どこか、あ
の向こうのような気がする。

メスマー ここから先に墓はありませんよ。⼗字架も墓⽯も。

コンスタンツェ 彼の墓に⼗字架は⽴っていないわ。

メスマー せめて墓⽯をおくべきだ、マダム・モーツァルト。

コンスタンツェ ニッセン!今の私はマダム・ニッセン。

メスマー そう、あなたは再婚なさった。

コンスタンツェ この辺りだわ!

メスマー 確かですな。

コンスタンツェ そろそろ私失礼するわ。
メスマー ここに埋葬されているんですね。ジャピエール!

コンスタンツェ 案内料の 5000、ここでいただけるかしら。

メスマー おー、魔法のようだ。聞こえますか。

コンスタンツェ 早くして!私寒くて。

メスマー マダム、聞くのです。

コンスタンツェ 何を?

メスマー 果てしない⾳楽の宇宙。彼はそこからやってきた。星のように地球に落
ちてきた。神が使わした⼦供、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァ
ルト!

第1場 ウィーン/メスマー邸

♪ピアノソナタヘ⻑調(KV280)♪

♪奇跡の⼦♪

All 神の申し⼦ 奇跡の⼦だ


神が宿ってる ⾳楽の神が

レオポルト 3歳でなんと ピアノ弾いた 教えていないのに

All 凄い!

レオポルト 5 歳にして 曲を書いた 落書きがわりに


All まさか!

レオポルト 我が⻑⼥のナンネールも 奇跡の少⼥です


私の曲をお聞きください

All 演奏ミスがない 奇跡の⼦だ


⼈間技じゃない とりこになりそうだ

レオポルト あらゆる⾳を 聞き分けられる 絶対⾳感

All 素晴らしい!

レオポルト 難しいフーガも ⾒ないで弾ける どういうわけか

All 本当か?

レオポルト 我が娘がこの布で⽬隠しします

All それで?

レオポルト ⾒ずに演奏します

All ⾃信に満ちている 奇跡の⼦だ


神が遣わした ⼩さなプリンセス

男1 ⾃由な響きで誘う

⼥1 天使の奏でる⾳⾊

男2 稀に⾒る
⼥2 才能よ

レオポルト 残念ながらもうじき
ただの⼤⼈に なってしまうかもしれない
⼦供のままなら

男1 ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトに!

All 乾杯! 神の⼦に この⼦の未来に


どこにいようとも 奇跡を忘れない
その名は モーツァルト!

男1 ブラーボ!

レオポルト ありがとうございます。ありがとうございます。

ナンネール パパ、この⼦具合が悪いみたい。

レオポルト なに、疲れたんだな。私の⼦は天才だ。天才は感じやすいものだ。⼤丈
夫か?ゆっくり⽴って。

レオポルト 息⼦のために

All モーツァルト

アマデ ありがとうございます。

レオポルト この才能に

All モーツァルト
アマデ 慈悲深いお⽅。

レオポルト 感謝と報酬として。

アマデ お⼼ありがとうございます。

レオポルト アマデ、何を持っているんだ?誰にもらったんだ?

男爵夫⼈ それはその⼦のものよ。

レオポルト これはヴァルトシュテッテン男爵夫⼈。あなたが下さったのですか?

男爵夫⼈ いいえ、私があげたのではありません。⽣まれた時からアマデのもので
す。あなたの息⼦は天才よ。

レオポルト もちろんです。私が作り出し磨き上げたんですから。さあ、渡しなさい。

男爵夫⼈ いけません。その箱は彼だけのもの。アマデ、あなたが持っているのは、
⻩⾦よりも眩く、光よりも崇⾼なもの。

♪⼈は忘れる♪

男爵夫⼈ ⼈は忘れる 現世を 思い出は溶けて 夢となる


時が流れて 残るものは ⽬に⾒えないものだけ
信ずる道歩むの 踏み外さずに
神様に愛され 光を放つ
⼈の記憶は⾊あせて 拍⼿もいつしか遠ざかる
⽔に流されず 耐え忍べれば
神様に愛され 光を放つ

第2場 ザルツブルク/タインツマイスターハウス(モーツァルトの家)
♪⾚いコート♪

ヴォルフガフ うわ〜、ナンネール。

ナンネール 誰!ヴォルフガング!

ヴォルフガフ 姉さん、外国へ⾏こう。昔みたいに。ねえ、覚えてる?

⼦供の頃の 演奏旅⾏っで いつも着てた あのコートさ


真っ⾚なコスチューム

ナンネール 覚えているわ

ヴォルフガング 頂き物

ナンネール マリア・テレジア様

ヴォルフガング 背が伸びて 着れなくなった


今の⾐装は 地味で嫌いさ
もうこれから これしか着ないぞ

ナンネール 昔とおんなじデザイン

ヴォルフガング どうだい、よく似合うだろう

ナンネール ⾦の刺繍だわ 貴族だけが着れるの 貴⽅はプリンスよ


いつまでもあのままよ

ヴォルフガング パパが⾒たらなんて⾔うだろう 演奏旅⾏で⾦持ちになろう


「息⼦よ⾺⾞に乗れ、いざ」
ナンネール 私も⾏くわ

ヴォルフガング ママも⼀緒さ

ナンネール パリにロンドン 世界の都

ヴォルフガング この街ザルツウルグは退屈 ⼤司教様に媚びへつらうんだ

ナンネール 世界に⾶ぶの もう⼀度

ヴォルフガング ⾃由にはしゃいで お祭り騒ぎ


花束 拍⼿ 輝くパレス
あふれるミュージック 僕の頭は アイディアでいっぱい
このコートきて

レオポルト ヴォルフガング!

ヴォルフガング ボンソワール、パパ!

レオポルト ⼤司教様……。

なんだ その服

ヴォルフガング 懐かしいコート 真っ⾚な

レオポルト そのコートでは ⾏けぬ


買ったのか?

ヴォルフガング ⾃分の⾦で
レオポルト その⾦はどこで?

ヴォルフガング サイコロ⼀つ

レオポルト なに!

ナンネール またついてたのね

レオポルト 博打はやめろ

ヴォルフガング 楽勝なんだ

レオポルト ⾔うことを聞け

ヴォルフガング つぇ、たまには遊んだっていいでしょ?みんなやってるんだ。

レオポルト 我々は他の⼈間とは違うんだ。

ヴォルフガング でしょうとも。

レオポルト ⼤司教コロレド猊下に依頼された仕事は!

約束のセレナーデはできたのか?

ヴォルフガング もちろん パパも⾃慢にできる

レオポルト どこだ?

ヴォルフガング ここ、頭の中!

譜⾯に書いてないだけさ
レオポルト 私を狂わせたいのか
⼤司教様がお待ちだ 今書くんだ

ヴォルフガング はい、書きます。

レオポルト コートを脱ぎなさい

ヴォルフガング なぜ?

レオポルト 貴族だけが許されたコート

ヴォルフガング 奴らより僕の⽅が上

レオポルト 早く 譜⾯を書け コートを渡せ

ナンネール、処分しておきなさい。

ナンネール でも!

レオポルト ほら!

ヴォルフガング パパ!

レオポルト いいか、我々⼀家はコロレド猊下にお使えしていることを忘れるな。
猊下は⼤司教様であらせられるだけでなく、このザルツウルグを治め
る、領主でもあるんだ。猊下のご機嫌を損じては仕事を失い、⽣きて
はいけないんだ。

ヴォルフガング 猊下、猊下、旅に出るにも許可がいる。まるで奴隷だよ。あんな奴の
ためにセレナーデ書くなんて……。
レオポルト 黙れ!お前が正しく⽣きてゆく道は、私が⽴てる。怠けずに曲を書く
んだ。今すぐだ。

ヴォルフガング ちっくしょう、もう、どうして分かってくれないんだ!まったく!

♪僕こそ⾳楽♪

分かってる。あいつは僕の親⽗。でも頭にくることもあるんだ。あり
のままの僕を⾒てくれないから。

詩は書けない 感じたまま喋る ⼼に浮かんだまま


何かに動かされて
絵も描けないさ 光と影の⾊をパレットに作れない
夢の中で描くだけだよ
役者じゃない 芝居はできない
⾒かけ通りのヤツだよ この僕 ありのままなんだ
このままの僕を愛して欲しい

メジャーとマイナー コードにメロディーも
僕は語ろう 感じる全てを⾳に乗せ
リズムにポーズ 響くハーモニー
フォルテにピアノ 紡ぐファンタジー
僕こそミュージック

ミュージックだけが⽣き甲斐
哲学なんて 何も知らないさ
⾺⿅騒ぎが⼤好き それが僕なんだ
礼儀知らず無礼者と⾔われても
訳もなく叫びたくなる 退屈ぶっ⾶ばす
爆発しそうなんだ ⾃由と輝き求め歩もうどこまでも
⾏く先は知らない 僕が誰かさえ知らない
このままの僕を愛して欲しい

メジャーとマイナー コードにメロディーも
僕は語ろう 感じる全てを⾳に乗せ
リズムにポーズ 響くハーモニー
フォルテにピアノ 紡ぐファンタジー
僕こそミュージック

このままの僕を愛してほしい

第 3 場 ザルツブルク/⼤司教のレジデンツ(居城)の⼤広間

♪何処だ、モーツァルト♪

All(男) ナイフ フォーク スプーン ピカッ


燭台 ⾷器も
⾦ サテン 床もピカッ ⼥ 時間を守るはずはない
⾜りないものは 思い上がってる

アルコ伯爵 何処だ モーツァルト


⼤司教様がすぐみえる All 外国で⾦儲け
⾃ら準備を確かめる 息⼦売り出す 神の⼦だと
グラス ワイン 礼儀作法を守らない
キャンドル ⾳楽
何処だ モーツァルト (男) 無礼者め(⾜りないものは)

コロネド⼤司教 さぼるなどこを⾒てるんだ
パラダイスじゃないぞ ここは
謙虚さと勤勉 規律 守れぬ奴は収容所へ
準備万端か ワインのデカント
シェフのコースメニューをチェックする
ミュージシャンは新曲さらったのか
何処だ モーツァルト!

レオポルト 只今 ここに

ヴォルフガング 猊下のため作りました 天国の調べです


猊下でも聞いたことのない
皇帝陛下でも聞かせようか迷う

コロネド⼤司教 訊かれないのに答えるな

レオポルト そんなつもりは

ヴォルフガング ⼤有りだ

コロネド⼤司教 息⼦の礼儀はなってない All バカ ドジ アホ まぬけ


作法と服従たたきこめ 傲慢 ⽣意気 無礼者め
私を怒らせたならば バカ ドジ アホ まぬけ
お前の才能など紙くずだ 傲慢 ⽣意気 無礼者め

ヴォルフガング 決して忘れないぞ

レオポルド 黙るのだ

ヴォルフガング ⾳楽じゃ 僕は貴族と同等さ


あなたの僕じゃない

コロネド⼤司教 出て⾏け ⾳楽家は星の数ほどいる


⾸だぞ 直ちにひざまづいたとして
レオポルド ヴォルフガング、謝るのだ。

ヴォルフガング いいや、謝るのは彼の⽅だ。

レオポルト 私を殺す気か?

ヴォルフガング アルコ伯爵。

コロネド⼤司教 他の作曲家を All バカ ドジ


連れてくるのだ アホ まぬけ
早く うんざりだ 傲慢 ⽣意気 無礼者め
モーツァルトの名は バカ ドジ
聞きたく無い アホ まぬけ
⽗親も 息⼦も 親 息⼦も
モーツァルトの計画は失敗だ

コロネド⼤司教 アルコ伯爵、拾うのだ。

♪セレナード第 6 番⼆⻑調(KV239)♪

驚異的だ。

アルコ伯爵 猊下。

コロネド⼤司教 これを、オーケストラにあたらせるように。

第 4 場 ザルツブルク/アーケード⼩路

ヴォルフガング 待って、パパ。あいつはパパをクビになんかしない。脅しただけだ。待
ってください、⽗上様。ひどい扱いから解放されると、僕の⼼は⽻根の
ように軽くなる。僕は⼤都会に出ます。⾃分⼀⼈の⼒で!パパ……。
レオポルト 構うな!お前の気の短さは、私を殺しかねない。⼀⼈旅だと靴の紐も結
べないくせに。

ヴォルフガング 僕には才能があるんだ、他の⼈にはない。それを埋もれさせたくないん
だよ。芸術家は⾃由でなければ。

レオポルト 芸術家は⾃らに厳しいものだ。お前の無分別は、私の築いたものを潰し
てしまう。

♪私ほどお前を愛するものはいない♪

ヴォルフガング 全て良くなってゆく 才能潰す 古巣をたとう

レオポルト ⼤司教の⼿が!

ヴォルフガング 逃れてみせる 僕は書く


壮⼤なシンフォニー コンチェルト オペラ

レオポルト 私以外の誰が ⼿助けできる


私ほどお前を ヴォ 僕だってパパを
愛するものはいない 神様の次に
世渡りには ⼦供すぎる
⽗親が必要だ 愛してる
私以外 僕以外
いない いない

第 5 場 ザルツブルク/野菜市場

♪まぁ、モーツァルトの娘さん!♪
⼥1 あら、ナンネール。

ナンネール おはよう。


⼥2 元気?

ナンネール ええ。

⼥3 聞いたよ弟が

⼥4 ⼤司教様に逆らって ⾸になった

⼥1 ホントかい?

ナンネール 弟から⾔い出したの ザルツブルクは⼩さすぎる


⼥2 親⽗さんも⼀緒?

ナンネール 残ったわ コロレド様のもと


⼥3 弟⼀⼈で?

ナンネール ママが⼀緒よ


⼥4 で?仕事は⾒つけたの?

ナンネール 今彼はマンハイムにいて 王様に気に⼊られたの
雇われればお⼿当ては⾼い 貴族と同じ 贅沢な暮らし
私も⾏くの 夢の王国
私がプリンセスで 弟はプリンスよ
魔法の国の物語よ

アルコ伯爵 あんなでくの坊雇う君主など何処を探してもいない

ナンネール 必ずいるわ

アルコ伯爵 今に分かる 愚かな⾏為だったと

ナンネール 正しかった

アルコ伯爵 コロレド様が裏で⼿を回せば 全て終わるのだ

All 奇跡の⼦ モーツァルト 故郷を捨て モーツァルト

ナンネール ヴォルフガング、あなたがマンハイムで成功すると、姉さん信じてるわ。

第 6 場 マンハイム/ウェーバー家の居間兼台所

セシリア ヨゼファ。ゾフィー。

はーい、ママー。……

セシリア ……コンスタンツェ!

アロイジア ただいまぁ。

セシリア お帰り、アロイジア。

アロイジア 歌ってきたわ。

セシリア どうだった?
♪マトモな家庭♪

アロイジア 伯爵の前で

セシリア それで?

アロイジア ⾒つめあって 彼の⼿が伸びて胸元へ 次にスカート

セシリア それで!

アロイジア 逃げた!

セシリア なぜ?!

アロイジア キモい親⽗!

セシリア なんてバカな娘
誰⼀⼈⾦を貸してくれない 思いやりのない娘たち
歌えるくせにチャンス逃す 怠け者に不細⼯にノータリン

All マトモなうちは苦労だらけ 勤勉上品効果なし


何故だか貧乏どん底 救いの彼⽒を待ってる

ウェーバー 救世主現る

セシリア 何?

ウェーバー マンハイムに 来てるぞモーツァルトが

セシリア 誰?
ウェーバー ⾦のロバ うちに招いた

セシリア アロイジア!

アロイジア 何よ

ウェーバー 若い作曲家だ

セシリア お前ならイチコロさ

セシリ・ウェーバ 誰⼀⼈⾦を貸してくれない 思いやりのない娘たち

セシリア コンスタンツェ 化粧を

コンスタンツェ 何で?

セシリア 念のため 外れた時には

ウェーバー 別の⽟を

All マトモな家庭は苦労だらけ 勤勉上品効果なし

セシリ・ウェーバ 何故だか貧乏どん底 救いの彼⽒を待ってる

娘たち ママはお酒が⼤好きよ 強いお酒しか飲まないわ バーウィン


パパは務所帰りだけれど たった1度だけよ
ドジ踏んで仲間に 垂れ込まれたらしい

ウェーバー しぃー、親しい友よ。

ヴォルフガング こんにちは、ウェーバーさん。
ウェーバー あ〜、モナミーと呼んでくれたまえ。⾃分の家だと思って、くつろいで。

ヴォルフガング ⼀家団欒はうらやましいな

ウェーバー 慎ましい幸せな家族だ

セシリア 貧しいけど

ヴォルフガング お気の毒に

ウェーバー 勤勉実直

セシリア 誠実質素

ヴォルフガング こちらは?

ウェーバー 私の妻、セシリア・ウェーバー

ヴォルフガング ボンジュール・マダム。

ウェーバー 娘たちです これはヨゼファ

セシリア エンジェルね

ウェーバー コンスタンツェ

セシリア よく働く

ウェーバー これはゾフィー
セシリア お利⼝さん

ウェーバー そしてアロイジア

セシリア カナリヤ

ウェーバー 君と同じようにモナミー、この⼦は⾳楽を愛している。

セシリア あなたの才能を尊敬してるわ。

ヴォルフガング 光栄です。マドモアゼル。

セシリア あの、マンハイムには、お1⼈で?

ヴォルフガング ⺟と⼀緒に。

セシリア まあお⺟様?!

ヴォルフガング でも、部屋で気⻑に待ってくれています。

セシリア あっそう。それじゃあ、アロイジアの歌をお聞かせしましょう。

アロイジア Ah〜

セシリア ブラボー!

All アロイジアに⾔うことは?

ヴォルフガング 沢⼭あります ファンタジックな声 好きになりそう


僕は出世を狙ってます 夢を⼿に⼊れようと
みんなも⼀緒に成功めざそう
セシリア アロイジアお庭にご案内

ウェーバー 語り合えば

セシリア 満⽉だよ

コンスタンチェ 寒そう

セシリア お⾷事の⽤意を

コンスタンチェ 材料もないのに

ウェーバー 少し借りれるかい

ヴォルフガング どうぞお使いください

All 徳の⾼い友達を持てば 家族の絆は強まる


だって マトモな家庭は苦労だらけ 勤勉上品効果なし

コンスタンチェ ほんの少し運がよけりゃ

All お⼈よしの好⻘年を捕まえられる 平和な家庭築ける

セシリア …かもね!

第7場 ザルツブルク/タインツマイスターハウスの⾳楽室

♪⼼を鉄に閉じ込めて♪

レオポルト この胸は震え揺れる お前は何処に


さまよう旅路 許したことを 今なお悔やむ
未熟ゆえ 危険知らぬ いつまでも我が⼦
傷付きやすく信じやすく 胸を痛ませる
汚れた世間 嘘と裏切りが待ち受けている

⼼を鉄に閉じ込め ずる賢くなり ⽢い誘惑 信じるな


⾔葉に気をつけ 謙虚に振舞え 私の誇りとなれ

運命は私には味⽅しなかった
お前は勝てる 運命に 私は賭けよう
偽善者たちは妬むだろう お前の才能

⼼を鉄に閉じ込め 冷たさ保ち ⾔い寄る輩 かわすのだ


感謝忘れず ⼈の役に⽴て 私の誇りとなれ

強い⼼を 鉄に閉じ込め

第8場 パリ/コンサートホール〜パリの宿

♪ピアノ・ソナタハ短調(KV457)♪

♪残酷な⼈⽣♪

ヴォルフガング 過ぎた⽇の喝采 今はもう誰もいない


⼩さな⼦供じゃない 誰も認めてくれない
昨⽇は奇跡の⼦ 今⽇はただのクズ
あんなに祝福されたのに もう道に捨てられる
振り返るのは愚かだけど 時計を巻き戻したい
まだ愛されると思ってた でも過去は全て消えた

ただいま。⼼配しないで、ママ。早く元気になって。そうしたら、全て
うまく⾏くさ。僕の新しいシンフォニーです。⾃信作です。コンサート
で弾いたら、⼤きな反響にあるに決まってる。成功したら笑って暮らそ
う。ねぇ、ママ。ママ……、ママ?ママ!医者を……、医者を呼ばなき
ゃ。

All Oh〜 Ooh〜

ヴォルフガング ろうそくの⽕みたいに消えた。街はいつも通り、何事もなかったようだ。

⾵がロウソク吹き消し 夜の帳が降り
居酒屋の博打始まり 劇場のにぎわい
⾺⾞は通り過ぎて 教会の鐘の⾳
泉のほとりで 恋⼈たちがくちづけ
⼦供が⽣まれ出て 希望を託されるけど
いつかは傷つき 汚れて苦しみの中で 朽ち果てる

残酷な⼈⽣ 歪んだ世の中
希望を与えられても 深い淵に落とされる

ママは希望を 与えてくれた
命のぬくもりが 今はもう冷たい
涙こらえて 祈ろう 震える⼿で 拳握り
振り上げて気付く 虚しさに ⼈はいつか 息絶える

残酷な⼈⽣ 歪んだ世の中 幸せ求め 欺かれる


答えてはくれない 無駄な問いかけなんだ
愛があると信じても 最後は⼀⼈
⼈は死ぬ時まで ただ語り続け 飲み続けるだけ

残酷な⼈⽣ 歪んだ世の中 幸せ求め 欺かれる


答えてはくれない 無駄な問いかけなんだ
愛があると信じても いつか絶望に泣き叫ぶ
嘘と知って 悟るだろう
最後は⼀⼈ ただ⼀⼈ ただ⼀⼈

第9場 ザルツブルク/居酒屋

♪居酒屋♪

⼥1 ねぇ、聞いたかい?ヴォルフガングが帰ってきたとさ。

モーツァルトの息⼦は

男1 奇跡の息⼦

男2 今じゃただの⼈

⼥2 哀れな親⽗

⼥3 誰も⾒向きもしない

男3 パリから帰ってきた

⼥1 ⼀⽂なしで まるで乞⾷

男2 親⽗は復職を

All 願い出た

男1 ⼤司教様、お願いでございます。息⼦をもう⼀度雇ってください。で
ないと我が家は飢え死にしてしまいます。息⼦はパリで私の蓄えを使
い果たしました。⾼利貸しに借りた⾦までも。
男2 息⼦が私にひざまずくなら、無礼を忘れて、また使ってやらんでもな
い。

男1 悔い改めさせます 息⼦は天才

男2 博打に負けて

⼥2 ⼥をあさる

⼥3 ホラ吹きの天才

⼥1 パリで⺟親を死なせてしまった

男2 無駄遣いの天才

男3 ついに⼤司教に

All 媚び売る

男1 さぁ、ヴォルフガング。謝るのだ。

男3 私は、天才は貴族より偉いと思っていました。でも、今の私は波以下
の⼈間です。

男2 ひざまずけ、もっと低く。私の靴に⼝づけせよ。アルコ伯爵、並以下
の⼈間に仕事があるか?

⼥2 教会のオルガン弾きなどいかがでしょう。

男2 弾けるのか〜、へたくそが。
ヴォルフガング 弾けるとも!

市⺠ ヴォルフガング!

ヴォルフガング お前ら、この野郎!

シカネーダー ブラボー!!!盛り上がってるね〜!ここ、ザルツブルグの善良で温
和な市⺠の皆さん!芝居が好きな⼈、いる?おぉ、これはこれは、モ
ーツァルトくん⼀⼈か……。ふん、私がこの町で最⾼のエンターテイ
ンメントをご覧に⼊れよう。

♪チョッピリ・オツムに、チョッピリ・ハートに♪

シカネーダー 私が誰だか、ご存知か?

市⺠ 知らない!

シカネーダー 知らない!?無知蒙昧こそ⼈間の最⼤の悲劇なり。君たちの前にいるの
は、あの有名な俳優にして偉⼤な劇作家、演出家、そしてプロデューサ
ーでもある、エマニュエル・シカネーダー、その⼈である。

私の芸術は 観客の拍⼿が好き
客席満杯 懐いっぱい お客様は神様だ
エンターテイメントは 芸術じゃないと ⾔うけど
娯楽ほど 難しいものはない 作る側にたてば

チョッピリ・オツムに訴えて
チョッピリ・ハートにアピール
派⼿な仕掛 嘘とギャグ 悪⽟とヒーロー
チョッピリ・オツムにチョッピリハートに
チョッピリ・ドタバタに ケレンも
セットにコスチューム ライトに仕掛け
花形スター 総出演 オレモ

愛 嘘 苦しみ 陰謀に奇跡
本当の⼈⽣なんて みたくない
客電がおちて スポットライトきらめいて
芝居がはじまる

チョッピリ・オツムに チョッピリ・ハートに
チョッピリかちまけつけて
「ブルータスよ、お前もか」
全ては娯楽だ

亡霊と悲劇の王⼦ 魔⼥が告げる予⾔
こしょう少々 きかせて お代は⾒ての お帰り

知ってるだろ この世界は 舞台と同じカラクリ


うまく⽴ち回ったヤツが 成功収め ⽣き抜く だから

シカネーダー どうだい、いつか俺と組んでオペラを作らないか。

ヴォルフガング 喜んで。

シカネーダー ああ、ただし⼤衆が喜ぶヤツだぞ。

ヴォルフガング おっけー、まかせて!

シカネーダー よし〜!
チョッピリ さ〜
オツムに チョッピリ・ハートに
チョッピリ・ドタバタいれて

All チョッピリ ⽬と⽿にアピール


セットにコスチューム ライトに仕掛け
悪⽟とヒーローに 勝ち負けをつけて

シカネーダー お代は⾒てのおかえり 花形スター 総出演 俺も

第10場 ザンツブルク/⼤聖堂のパイプオルガンの前

♪オルガン・ソナタ(KV336)♪

レオポルト ヴォルフガング!どこにいるんだ!ヴォルフガング!

ヴォルフガング 何、パパ?

レオポルト そこで何をしているんだ?

ヴォルフガング あの……、作曲してたんだ。愛の喜びについて。

レオポルト せっかく⾒つけたオルガン奏者のん仕事をなくしたらどうする?少し
はわきまえろ!

ヴォルフガング 何、パパ?

レオポルト ヴァルトシュテッテン男爵夫⼈がお前にお話があるそうだ。何か新し
い仕事の依頼だといいのだが……。

ヴォルフガング パパ、そしたらパパからの借⾦すぐに返すよ。
レオポルト 借⾦、残額は 1236 ブルガン。しかし⽇増しに増え続けてる。⼀体いつ
になったらお前の才能をもっと⽣かすことができるんだ。

ヴォルフガング もっと?

レオポルト 最近の曲は複雑すぎる。もっと単純な曲を書け。

ヴォルフガング これ以上、単純には書けないよ。

ナンネール パパ、いらしたわ。

レオポルト これは、男爵夫⼈。

男爵夫⼈ 私は明⽇の朝早く、ウィーンに帰ります。ヴォルフガング、あなたを
ウィーンに連れて帰りたいのよ。

レオポルト 息⼦は、コロレド⼤司教様にお使えしています。

男爵夫⼈ コロレドの了解はとりつけました。私はあなたをウィーンで世に出し
たいのよ。

レオポルト 論外でございます。

男爵夫⼈ ウィーンの1流どころと才能を競ってみたいと思わない?皇帝陛下に
コンサートを聞いていただくこともできる。オペラを作曲してみたく
はないの?

ヴォルフガング もちろん、全部やってみたいです。⾏きます、ウィーンへ。

レオポルト 恐れながら、男爵夫⼈。私は息⼦にとって何が必要か承知いたしてお
ります。⽗親でございますから。

男爵夫⼈ あなた⽅に 1 つおとぎ話を聞かせてあげましょう。

ヴォルフガング おとぎ話?

男爵夫⼈ 昔々、あるところに、魔法の森がありました。そこには勇気や希望、
恐れや憧れの精が⽣きていたのです。森の城には王様と王⼦様が住ん
でいました。

♪星から降る⾦♪

年⽼いた王様 この世を嘆き ⾨を閉じ 塀を⾼く築いた


王⼦様に⾔い聞かせたの 「ここより他に良い国はない」と
夜の森で憧れの精が王⼦に囁く「旅⽴て」と

夜空の星から降る ⾦を探しに 知らない国へ


なりたいものになるため 星からの⾦を求め ⼀⼈旅に出るのよ

「道は険しい」と王様は⾔った
「この城に共に留まるのだ お前を守るため城を閉ざした」
王様は息⼦を愛していた
憧れの精はもう⼀度 王⼦に告げた「旅⽴て」と

夜空の星から降る ⾦を探しに 世界の果てへ


望むように⽣きるなら
星からの⾦を求め ⼀⼈旅に出るのよ

愛とは解き放つことよ 愛とは離れてあげること
⾃分の幸せではなく 涙こらえ伝えよう
夜空の星から降る ⾦を探しに 知らない国へ
なりたいものになるため
星からの⾦を求め ⼀⼈旅に出るのよ

険しい道を越えて 旅に出る

レオポルト お前はここにいるんだ。借⾦もまだ残っているんだ。

ヴォルフガング ウィーンに⾏けば、1ヶ⽉でここの⼀年分は稼げるさ。

レオポルト パリではどうだった?⺟を亡くし、⾦を使い果たし、世間の信⽤を失
った。

ヴォルフガング ザルツブルクなんて⼤嫌いだ。

ナンネール そんなこと⾔わないで!

ヴォルフガング もし僕が旅⽴ったら。

レオポルト 私を殺す気か?

ナンネール 覚えてる?あんた、いつも⾔ってたじゃない。神様の次に⼤切なのは
パパだって。

♪私ほどお前を愛するものはいない(リプライズ)♪

レオポルト 私ほどお前を 愛するものはいない


世渡りには ⼦供すぎる
この私が 必要だ 私以外いない
⼼配しているのだよ ナ パパには経験がある
私なしでどこへ⾏く 家族を守ってくれる
⼈は皆敵 あなたがいないと

ヴォルフガング 時が来たら僕は⾏く

レオポルト 道を信じる パパは嘆くわ

ヴォルフガング ここから出ていくぞ

レオポルト 家族の分裂 許しはしない

第11場 ウィーンへ向かうコロレドの⾺⾞

♪神が私に委ねたもの♪

コロネド⼤司教 アルコ伯爵。ミュンヘンから報告は。

アルコ伯爵 モーツァルトのオペラは⼤成功です。

コロネド⼤司教 当然だ。

アルコ伯爵 バイエルン国王は、モーツァルトを貸してくださった猊下に、感謝の
意を伝えてきました。

コロネド⼤司教 約束どおりバイエルン王は モーツァルトを監視しているか


褒め⾔葉で⼿なずけた上 引き抜くつもりはないのか

アルコ伯爵 王の返事はいつも同じです。空いている職はなし。

コロネド⼤司教 モーツァルトはいつウィーンに来るのだ。

アルコ伯爵 はい。すぐ準備をするように命じたので、まもなく到着する事でしょ
う。

コロネド⼤司教 ヴァルトシュテッテン男爵夫⼈が、彼をウィーンに連れてくるよう薦
めたのだ。

アルコ伯爵 モーツァルトは、ウィーンの話題を独占するでしょう。

コロネド⼤司教 私が独占するのだ。

彼のコンサートで都は沸きかえる ウィーンの町中が私を妬む

アルコ伯爵 あの若造、頭に乗りそうですな。念のためウィーン滞在中は猊下の館
に寄宿させ、しかた監督いたします。

コロネド⼤司教 お前に任せよう。

アルコ伯爵 は、はぁ……。もし、皇帝陛下が奴を譲れと⾔われたら……。

コロネド⼤司教 陛下の前では演奏させない。

アルコ伯爵 やつは、御前でフーガを演奏したいと切望しています。そして、⾃分
のオペラも……。

コロネド⼤司教 それは許さない。もーが書くのは、私の為のオペラだ。

神がこの私に委ねた 彼の⽣き⽅は私が決める
⾳楽の魔術に 神の摂理が敗北するはずはない

第12場 ウィーン/プラター公園の⾒世物⼩屋

♪全てがイカサマ♪
All 夜のウィーンで⼀番 ⾯⽩い場所 プラター公園
⾒世物⼩屋が軒を連ね 怖いものも⾒たいさ
スリルとサスペンス ⽕を吹く男に シャム双⽣児
この世は驚き 不思議だらけさ

シカネーダー 全てがイカサマ 信じちゃダメさ 騙されるな


夜の⼥は魔物だよ 昼間⾒たら別⼈かも

コンスタンチェ ヴォルフガング!

シカネーダー おい!知り合いか!

セシリア わお、アトゥール〜!

♪セシリアとヴォルフガング♪

⾝上の快楽味わってみない? ⽣と死の境を経験
箱の中の美⼥を刺してみない?
エクスタシィをお約束するわ
勇気ある殿⽅ ⼿をあげてよ どこにいる?

コンスタンチェ はい!

セシリア モーツァルト!

ヴォルフガング ウェーバーの奥さん!

セシリア 久しぶり。会えて嬉しいわ。 All 本⾳か?

ヴォルフガング アロイジアは元気? ためらい


セシリア 結婚して有名な歌⼿になったの。

ヴォルフガング そう……。 嘘か誠か

セシリア あの、ご主⼈は?

ヴォルフガング 死んだわ。新しい亭主。 現実
トーアバルトよ。

トーアバルト よろしく。 決意

ヴォルフガング あの、コンスタンチェは今……

セシリア ウィーンじゃどこに泊まってるの? 腹を探る

ヴォルフガング コロレド⼤司教の館です。 弱み

セシリア 居⼼地は?

ヴォルフガング 最悪! ⾒つけ

セシリア じゃ、うちに来れば。家庭の温もりが
たっぷり味わえるわよ。 ツボをくすぐる

ヴォルフガング いや無理だそんなこと。

セシリア なぜ? 我慢

ヴォルフガング ⽗が⼼配します。 煽る
コンスタンチェ ⼦供みたい。

ヴォルフガング もう⼤⼈だ。

セシリア それなら。

コンスタンチェ うちへ来る? 罠に掛かる

ヴォルフガング ああ。

アルコ伯爵 なにが、「ああ」だ。

シカネーダー アルコ伯爵、さては、あとをつけてきたな?

アルコ伯爵 こんなことだろうと思ってたんだ。館を出ることはまかりならん。

セシリア ご来場の皆様、忘れちゃいけない、美⼥の剣刺し。

アルコ伯爵 美⼥に剣を刺すって、やめてくれ、そんな残酷な。えっ、何、私が刺
されるの?

セシリア そうよ。

アルコ伯爵 助けてくれ〜。

ヴォルフガング ザルツブルクの皆に⾒せてやりたいよ。

アルコ伯爵 この〜、豚野郎!

ヴォルフガング 豚野郎?
♪並の男じゃない♪

僕が豚なら、あんたは⽼ぼれ
豚の⽅がまし 上等だよ 僕は並みの男じゃない
上品でナイーブ ⽣娘みたいに
コロレド様にも ケツむける 僕は並の男じゃない

⽯頭はマッサージ うるさい奴は真っ⼆つ
命乞いはきかないぞ 助けてほしけりゃ⾔うこときけ

僕を監視するな 後をつけるな
追い出したいなら 蹴⾶ばしてみろよ
その前に1つ⾔わせて欲しい

アルコ伯爵 なんだ?

ヴォルフガング くそくらえ!

アルコ伯爵 貴様、誰に向かって〜!

All とっとと失せろよ のぼせた親⽗め


威張り散らすなよ 脅すのはやめろ
お前は場違い クソ⾷らえよ
確かにおまえは並みのヤツじゃない

ヴォルフガング 並みの男じゃない

All 並じゃない!

シカネーダー ヴォルフガング。
セシリア コンスタンチェ。

All 全てがイカサマ 信じちゃダメ 騙されるな


夜の⼥は魔物

コンスタンチェ アルコ伯爵っていう⼈をやつけるところ、かっこよかったよ。

ヴォルフガング 本当?いや、もっと前にやるべきだった。でも、早すぎるよりは遅い
⽅がマシで、しないよりは早すぎる⽅がマシだ。権⼒を持ってる奴と
才能を持ってる奴がいて、どっちも持ってない奴は何も持ってないの
と同じ。何も持ってないっていうのは、ほとんどないってことで、ほ
とんどないっていうのは、何もないよりほんのちょっと多めってくら
い。つまり僕は……。

コンスタンチェ やめて。何⾔ってんのかサッパリ分かんない。あんたって本当に波の
男じゃないんだね。

ヴォルフガング 僕はピエロだ。幕が降りる⼨前の役⽴たずだけど、作曲家でピアニス
トでほんのちょっと天才かも。

コンスタンチェ 私には、うん、誰にも⾒えないけど、あんたは凄い才能を持ってる。
それだけは確かよ。

♪このままあなた♪

他の⼈と全然違う ⼤⼈じゃないけど
はじけてる ⾵に唾を吐き いたずら好きで 戯けてばかり
やんちゃなの お⾦なんて持ってないけど
もっと⼤事なものを持ってる
純粋なこのままのあんたが好きなのよ
第13場 ザルツブルク/タインツマイスターハウス

レオポルト ナンネール、⼤司教様に、ヴォルフガングをザルツブルクに戻すよう
にお願いしてきた。

ナンネール でも、まだ皇帝陛下の前で演奏してないわ。

レオポルト あいつは⾃ら機会を逃してしまった。許可なく⼤司教様の館を出て、
ウェーバーの家に引っ越したんだ。

ナンネール マーハイムにいた、あのウェバー⼀家。

レオポルト 悪魔は奴らをウィーンに送り込んだんだ、息⼦を破滅させるために。
どうした、弟が帰ってきた⽅がいいだろう?

ナンネール ええ、でも……。

レオポルト 家族が揃えば、昔通りうまく⾏くようになる。

ナンネール 終わりのない⾳楽が この世にあるかしら


⾃分に⾔うの ⾳に戻れると あり得ないと知っても
朝が来ても消えない夢は ないと分かってても
パパと⼀緒よ 願ってる 昔に戻ることを

レオポルト 家族を⾒失ったら 希望はない


⼿を取り合ったならば 世界は我に

ナンネール 永遠に⼤⼈にならない ⼦供はいるかしら


弟と⼆⼈ 神の⼦と⾔われ 私も愛された
もし私が男なら ⾳楽を続けた
うちでピアノを弾くだけ 私に⾃由はない
レオポルト 未来を諦めたのは 私も同じ
でも息⼦に 全てを託して 彼を通し⽣きよう

ナンネール 終わりのない夜は来ない レオ 家族⼀緒なら


この世にあるかしら 怖くはない
パパと⼀緒よ 信じなさい
願ってる もうすぐ戻る
叶わぬ夢と知っても 全てが元に

ナンネ・レオポル 昔通りになる

第14場 ウィーン/ドイツ館のコロレドの官邸

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