報 文 Original

J.Soc. Cosmet. Chem. Jpn.

報 文
35(1) 42 49 (2001)

4-n-ブ チル レゾル シ ノール (ル シ ノ ー ル 〓) の メ ラ ニ ン 産 生 抑 制 作 用 と

ヒ ト色 素 沈 着 に 対 す る 有 効 性*

片 桐 崇 行, 大 久 保 禎, 及 川 み ど り, 二 木 希 世 子, 釈 政 雄,
河 合 充 夫, 竹 ノ内 正 紀
ポー ラ化成工業株式会社 研究所**

よ り効 果 の 高 い 美 白剤 を 開 発 す る 目的 で, メ ラ ニ ン産 生 に か か わ るチ ロ シ ナ ー ゼ とTRP-1の 活性 阻
害 に着 目 して研 究 を行 っ た 。 そ の 結 果 見 出 し た4-n-ブ チ ル レゾ ル シ ノ ー ル (以 下BRと 略 す) は, 強
力 な チ ロ シ ナ ー ゼ活 性 阻 害作 用 に 加 えTRP-1活 性 阻害 作 用 も併 せ 持 っ て い た。 BRは 細 胞 毒 性 に よ らず
B16マ ウス メ ラ ノ ーマ 細 胞 の メ ラ ニ ン産 生 を可逆 的 に抑 制 し、 そ の 力 価 は広 く美 白剤 と して応 用 され て
い る ア ル ブチ ン ・コ ウ ジ酸 よ り強 力 で あ った 。 0.3% BR配 合 ロ ー シ ョ ン は, ヒ ト紫 外 線 色 素 沈 着 に対
し, 照 射 前 か ら塗 布 した系 で有 意 な抑 制 作 用 を示 す と と も に, 色 素 沈 着 が 認 め ら れ た後 か ら塗 布 を 開始
した系 にお い て も, 有 意 な色 素 沈 着 消 退促 進 作 用 を示 し た。 ま た, 449名 の健 常 女 性 を対 象 と した1ヵ
月 間 の使 用 試 験 に お い て もシ ミ ・ソバ カス に対 す る有 効 性 が 認 め られ た こ と か ら, BRは 優 れた効果 の
期 待 で きる美 白剤 で あ る と考 え られ た。 さ らに は 肝 斑 を対 象 と した 臨床 試 験 に お い て も83.9% (52/62
例) に やや 有 用 以 上 の有 用 性 が 認 め られ た こ とか ら, 肝 斑 に対 す る臨 床 的 な応 用 も期 待 さ れ る。

既 存 の美 白成 分 は, 主 と して チ ロ シ ナ ー ゼ の活
1. 緒 言
性 阻害 に着 目 して 開発 さ れ て きた が, ユ ー ザ ー に
皮 膚 は, 紫 外 線 に 曝 露 さ れ る こ と に よ っ て, 日 100%満 足 を与 え る ほ どの効 果 は残 念 な が ら得 ら
焼 け ・光 老 化 ひ い て は 光 発 ガ ン を 生 じ る1)。 メ ラ れ て い な い の が 現 状 で あ ろ う。 そ こ で わ れ わ れ
ニ ン は こ う し た 紫 外 線 の 害 か ら皮 膚 を 防 御 す る 重 は よ り効 果 の高 い美 白化 粧 品 を 開発 す る 目的 で,
要 な 働 き を し て い る が, 一 方 で多 くの女 性 は光 老 チ ロ シ ナ ー ゼ活 性 を従 来 の物 質以 上 に抑 制 す る こ
化 あ る い は 日焼 け 後 に 生 じ る 色 素 沈 着 や シ ミ に 悩 と, あ る い は チ ロ シ ナ ー ゼ とTRP-1両 酵素 の活
んで い る。 性 を 阻害 す る こ との二 点 に着 目 し, よ り効 果 的 に
チ ロ シ ナ ー ゼ は メ ラ ニ ン生 成 に か か わ る 重 要 な メ ラ ニ ン産 生 を抑 制 す べ く研 究 を進 め て きた 。
酵 素 で あ る2)。 しか し, 近 年 チ ロ シ ナ ー ゼ 以 外 に レゾ ル シ ンは, チ ロ シ ナ ー ゼ活 性 阻害 作 用 を有
も メ ラ ニ ン産 生 に か か わ る 酵 素 が 見 出 さ れ た 。 そ す る こ とが 報 告 され て い た もの の5),6), 安 定 性 が
の 一 つ がTRP-1 (tyrosinase related protein-1) であ 高 くな い こ とお よび皮 膚 刺 激 性 ・殺 菌 作 用 等 を有
り, 黒 ∼ 茶 褐 色 の ユ ー メ ラ ニ ン産 生 経 路 に お け る す る た め7)美 白 とい う観 点 か らは 深 く研 究 され て
メ ラ ニ ン 中 間 体DHICA (5, 6-dihydroxyindole-2- い な い物 質 で あ っ た 。 しか し, わ れ わ れ は そ の構
carboxylic acid) の 酸 化 を 触 媒 す る 酵 素 で あ る3),4 造 を修 飾 す る こ とで有 効 性 と安 全 性, 双 方 の増 強
が 期 待 で きる の で は とい う考 え の も と, レゾ ル シ
2000. 9. 25受 理

〒244-0812 横 浜 市 戸 塚 区 柏 尾 町 560: 560, Kashio

ンの4位 に種 々 の ア ル キ ル基 を導 入 した誘 導 体 に
cho, Totsuka-ku, Yokohama 244-0812, Japan つ い て 検 討 を行 い, n-ブ チ ル 基 を導 入 した4-n-

42
 ル シ ノ ー ル〓の メ ラ ニ ン産生 抑 制作 用 と有 効 性

Seijiら の 方 法9) に 従 っ て 細 胞 分 画 を 行 い, LGF

(Large Granule Fraction) を 調 製 し た 。 LGFは1

mM PMSF含 有05% DOC (sodium deoxycholate)

に 懸 濁 し, 時 々 攪 拌 し な が ら4℃ に て20分 間可

溶 化 した 。 そ の 後105000×gで1時 間 遠心 分 離 し
てDOC可 溶 化LGFを 得, こ れ をTRP-1粗 酵 素

F ig. - 1 Structure of 4-n-butylresorcinol (BR). 液 と した 。 TRP-1活 性 はJimenez-Cervantesら の方

法3) に従 い, 基 質 と し たDHICAの 減 少 量 をHPLC

ブ チ ル レ ゾル シ ノー ル (Fig. -1) を見 出 した。 で 定 量 す る こ と に よ り測 定 した 。

本 報 で は, BRの メ ラ ニ ン産 生 抑 制 作 用 な ら び 2.4. B16マ ウ ス メ ラ ノ ー マ 細 胞 の 細 胞 数 ・メ

に ヒ ト色 素 沈 着 に 対 す る 効 果 に つ い て 報 告 す る ラニ ン量 に対 す る作 用

75cm2培 養 フ ラ ス コ に 培 地25mLを 加 え, 2×
2. 実 験
105cellsのB16マ ウス メ ラ ノ ーマ 細 胞 を播 種 した
2.1. 試 薬 48時 間 後, DMSO (dimethylsulfoxide) に溶 解 し
BRは ク ラ レ, Eagle's minimum essential medium たBRあ る い は ア ル ブ チ ン, コ ウ ジ酸 を添 加 した

(MEM) とPBS (-) は 日水 製 薬, Fetal bovine se 培 地 中 に 添 加 す るDMSO量 は25μLと なる よ う

rum (FBS) はMoregate, ト リ プ シ ン はDifco, Tri 調 製 し た 。 添 加 後72時 間 培 養 を 継 続 し, トリ プ
ton X-100と3-methyl-2-benzothiazolinone hydra シ ン を 用 い て 定 法 に 従 っ て 細 胞 を 回 収 し, 細 胞
zone (MBTH), 合 成 メ ラ ニ ン はSigma, pronase 数 ・メ ラ ニ ン 量 の 測 定 を 行 っ た 。 細 胞 数 は コ ー ル
はCalbiochemか らそ れ ぞ れ購 入 した。 そ の 他 の ター カ ウ ン ター を用 い て測 定 した。 ま た メ ラ ニ ン

試 薬 は す べ て 和 光 純 薬 か ら購 入 し た 。 B16メ ラノ 量 の 測 定 は 以 下 の 方 法 で 実 施 した。
ー マ 細 胞 は 名 古 屋 大 学 医 学 部 富 田 靖 教 授 よ り分 与
pronase溶 液 (50mM Tris-HCl緩 衝液 (pH 7.0)
して い た だ い た 。 に0.5% sodium dodesyl sulfate, 1mM 1-phenyl-2-
2.2. チ ロ シナ ー ゼ活 性 に対 す る作 用 thiourea, 2mg/mL pronaseを 溶 解 した 溶 液) を細
BRの チ ロシナーゼ活性 に及ぼす直接作 用 につ 胞 ペ レ ッ トに1mL添 加 し, 37℃ で 一 晩 イ ンキ ュ
い て 検 討 し た 。 75cm2培 養 フ ラ ス コ に 培 地20mL ベ ー ト し た 。 そ の 後 蒸 留 水 を2mL加 え て よ く攪

(MEM+10% FBS) を 加 え, B16メ ラノーマ細胞 拌 し, 105000×gで10分 間 遠 心 分 離 した 。 沈 殿

を3.0×105cells播 種 し た 。 37℃, 5% CO2下4日 に 蒸 留 水 を2mL加 え再 度 遠 心 分 離 した 。 沈 殿 に

間 培 養 後, セ ル ス ク レ ー パ ー で 細 胞 を 剥 離 ・回 収 1N NaOHを 加 え 全 量 を1mLに して15分 間加 熱

しPBS (-) で 十 分 に洗 浄 した 。 こ の 細 胞 ペ レ 処 理 し, メ ラ ニ ン顆 粒 を 完 全 に 溶 解 し た 。 こ れ の
ッ トに, 1% Triton X-100, 1mM phenylmethylsul 400nmに お け る 吸 光 度 を 測 定 し, 合 成 メ ラ ニ ン
fonyl fluoride (PMSF) を 含 む10mMリ ン酸 緩 衝 を 用 い て 作 成 し た 検 量 線 か ら メ ラ ニ ン量 を 求 め た

液 (pH 6.8) 1mLを 加 え ソ ニ ケ ー シ ョ ン し た。 メ ラ ニ ン 産 生 抑 制 作 用 に 対 す る 可 逆 性 試 験 は,

そ の 後12000×g, 10分 間 遠 心 分 離 し, 上 清 を チ 1.5×104cells/75cm2フ ラ ス コ で 細 胞 を 播 種 し,

ロ シ ナ ー ゼ 粗 酵 素 液 と した 。 チ ロ シ ナ ー ゼ 活 性 の 上 記 培 養 ス ケ ジ ュ ー ル に 従 っ て10μMのBRを

測 定 はWinderら の 方 法8) に 従 い, L-ド ー パ を 基 質 作 用 さ せ た 後 に 培 地 を 除 去, PBS (-) で十分 に

と し, 生 成 し た ドー パ キ ノ ン とMBTHと の反応 洗 浄 し, BRを 含 ま な い 新 鮮 な 培 地25mLを 加 え
生 成 物 の505nmに お け る 吸 光 度 増 加 を測 定 す る て さ ら に 培 養 を 継 続 し た 。 2あ る い は3日 後細 胞
こ とに よ り求 め た 。 を 回 収 し, 上 記 方 法 で 細 胞 数 ・メ ラ ニ ン 量 の 測 定

2.3. TRP-1活 性 に対 す る作 用 を行 っ た。
上 記 方 法 と 同 様 にB16細 胞 ペ レ ッ ト を 調 製 し,

J.Soc.Cosmet. Chem. Japan. Vol.35,No. 1 2001 43

 粧 技 誌 第35巻 第1号 200 1

2.5. ヒ ト紫 外 線 色 素 沈 着 に 対 す る 効 果 に 効 果 判 定 を 行 っ た 。 基 準 は 以 下 に 示 す と お りで

2.5.1. 人 工 サ ンバ ー ン 予 防 効 果 を か ね た色 素 あ る。

沈 着 抑 制試 験 有 効: 黒 化 度 に明 らか な差 が 認 め られ る

試 験 は 二 重 盲 検 法 に て 実 施 し た 。 男 性23名, (ス コ ア 差0.5以 上)

女 性21名 の 計44名 の 上 腕 内 側 に, 各1.5×1.5cm や や 有 効: 黒 化 度 にわ ず か な差 が 認 め られ る

の 隣 接 し た2ヵ 所 の 試 験 部 位 を 設 定 し, 1日3回, (ス コ ア 差0.2∼0.4)
一 方 に0 .3% BR配 合 ロ ー シ ョ ン, 他 方 に プ ラ セ 無 効: 黒 化 度 に 差 が 認 め ら れ な い, また
ボ ロー シ ョンの 塗 布 を開 始 した。 ロ ー シ ョ ンに は は黒 化 度 に逆 の 差 が 認 め られ る

BR以 外 の 美 白 成 分 や 紫 外 線 散 乱 ・吸 収 剤, 色素 2.6. 使 用 試 験

香 料 は 配 合 し な か っ た 。 塗 布 開 始 よ り2日 後, 試 2.6.1. 健 常 女 性 に対 す る使 用 試 験

験 部 位 に0.7 MED相 当 のUVB (ラ ン プ は 東 芝 製 449名 の 健康 な 女 性 を対 象 に した 使 用 テ ス トを

FL 20 SE 30を 使 用) を1日1回3日 間連 続 して 実 施 し た 。 使 用 上, 他 の 美 白化 粧 品 の 使 用 を禁 じ
照 射 し た 。 3日 間 の 照 射 中 は, 照 射 前 に2回, 照 る 以 外 特 に 制 限 は つ け ず, 日常 の 化 粧 品 と同様 に

射 後 に3回 の1日5回 の 塗 布 と した。 塗 布 は照 射 0.3% BR配 合 ロ ー シ ョ ン を1日2回 使 用 させ た

終 了 翌 日 よ り1日3回 に 戻 し, 照 射 開 始 か ら数 え 1ヵ 月 後 使 用 実 感 に つ い て ア ン ケ ー ト調 査 を行 っ

て21日 後 ま で 継 続 し た 。 1週 間 ご と に 色 素 沈 着 た。

の 程 度 を 肉 眼 観 察 ・ス コ ア 評 価 し, さ ら に 色 彩 色 2.6.2. 肝 斑 に 対 す る 臨 床 試 験10)

差計 (ミ ノ ル タCR-300) を 用 い てL* valueを 測 8施 設 の 皮 膚 科 外 来 を 受 診 した 患 者 の う ち, 19

定 した 。 ス コ ア評 価 は以 下 の 基 準 に て行 っ た。 名 の 担 当 医 が 適 当 と 判 断 し, か つ 十 分 な 説 明 の う
ス コ ア0: 変化 な し え 試 験 参 加 の 同 意 の 得 ら れ た 肝 斑 患 者67名 を試

ス コ ア0.5: 境 界 不 明 瞭 な 弱度 の 黒化 験 対 象 と した。 試 験 対 象 者 はす べ て 女 性 で あ った
ス コ ア1.0: 境 界 明 瞭 な弱 度 の 黒 化 原 則 と し て24週 間 連 続 し て1日 朝 夕2回 以 上,
ス コ ア1.5: 境 界 明 瞭 な 中等 度 の 黒化 0.3% BR配 合 ロ ー シ ョ ン を 全 顔 に使 用 させ た

ス コ ア2.0: 境 界 明 瞭 な 強度 の黒 化 試 験 開 始 日 よ り4週 間 ご と に, 肝 斑 の 濃 さ ・範 囲

(な お, 各 ス コ ア基 準 に適 合 しな い場 合 は 試 験 開 始 時 と 比 較 した 改 善 度, 副 作 用 につ い て 観
±0.2を 加 え た) 察 ・評 価 し た 。 ま た 試 験 終 了 時 に, 経 時 的 改 善 度
2.5.2. 人 工 サ ンバ ー ン後 の 色 素 沈 着 抑 制 試 験 な ら び に 副 作 用 と の 総 合 的 判 断 に よ り, 下 記 の5

試 験 は 二 重 盲 検 法 に て 実 施 し た 。 17名 の健 康 段 階 に て 有 用 性 を 評 価 した 。

な 男 性 の 上 腕 内 側 に, 各1.5×1.5cmの 隣接 した 非 常 に 有 用, か な り有 用, や や 有 用, 無 用,
2ヵ 所 の 試 験 部 位 を 設 定 し, 1日1回3日 間連続 好 ま し くない
し て0.7 MED相 当 のUVB (ラ ン プ は 東 芝 製FL 20
3. 結 果 と 考 察
SE 30を 使 用) を 照 射 し た 。 照 射 開 始 か ら7日 後,

肉 眼 観 察 に よ り2部 位 の 色 素 沈 着 が 同 レベ ル に あ 3.1. チ ロ シ ナ ー ゼ な ら び にTRP-1に 対 す る活

る 者13名 を 選 別 し, 試 験2.5.1と 同 様, 一 方 に0.3 性 阻害 作 用

% BR配 合 ロ ー シ ョ ン, 他 方 に プ ラ セ ボ ロ ー シ ョ B16マ ウス メ ラ ノー マ細 胞 由 来 チ ロ シ ナ ー ゼ に
ン の 塗 布 を 開 始 し た 。塗 布 は1日3回, 6週 間 継 対 す るBRの 直 接 阻 害 活 性 を, 既 存 の 美 白 成 分 と

続 し た 。 1週 間 ご と に 色 素 沈 着 の 程 度 を 肉 眼 観 比 較 し な が ら 検 討 し た 。 チ ロ シ ナ ー ゼ 活 性 を50

察 ・ス コ ア 評 価 し, さ ら に色 彩 色 差 計 を 用 い て %阻 害 す る 濃 度 (IC50値) をTable-1に まとめ た

L* valueを 測 定 した 。 ス コ ア 評 価 は 前 述 の 基 準 に が, BRのIC50値 は44μMで あ り, コ ウ ジ 酸 ・ア

従 った。 ル ブ チ ン の そ れ ぞ れ 約5.6倍 ・380倍 強 力 に チ ロ

ま た, 2部 位 問 の 肉 眼 観 察 ス コ ア 値 の 差 を も と シ ナ ーゼ 活 性 を 阻害 す る こ とが 示 され た。

44
 ル シ ノ ー ル〓の メ ラ ニ ン産 生抑 制 作 用 と有 効性

T ab le- 1 Inhibitory activity against B16 mela

noma tyrosinase.

F ig. - 3 Effects of BR, arbutin and kojic acid on cell

growth and melanin contents in B16 mela
noma cells.
Control represents the cell number and mela
nin contents when cultured without against as
100%. Each data point represents the mean
SD of four determinations. p<0.05,
<0.001 (Student's t-test).

Fig. - 2 Inhibitory effect of BR on TRP-1 activity.

Each point represents the meanSD of
three determinations.

さ ら に, BRはTRP-1に 対 して も濃 度 依 存 的 に

直 接 阻 害 作 用 を 示 し, そ のIC50値 は0.93μMで

あ った (Fig. -2)。 調 査 し た 限 り で は, TRP-1活

性 を直 接 阻害 す る成 分 は報 告 され て い ない 。 以 上

の 結 果 よ り, BRは よ り低 濃 度 で 効 果 的 に メ ラ ニ

ン産 生 を抑 制 す る こ とが 示 唆 され た 。
F ig. - 4 Recovery of melanin synthesis in B16 mela
3.2. B16マ ウ ス メ ラ ノ ー マ 細 胞 の 細 胞 数 ・メ noma cells after the removal of BR.
ラ ニ ン量 に対 す る作 用 B16 melanoma cells were cultured with 10
M BR for 5 days. After the addition of
次 に, BRが 実 際 に メ ラ ニ ン産 生 を抑 制 す る こ
fresh medium without BR, the cells were cul
と を培 養 細 胞 を 用 い て 確 認 し た 。 同 時 に , 白 斑 物 tured for additional 2-3 days. Control repre
質 と して 知 られ る フェ ノー ル お よび カテ コー ル誘 sents the cell number and the melanin con
tents of BR-untreated cells as 100%. Data
導 体 の 脱 色 素 作 用 は, そ れ らが持 つ チ ロ シナ ー ゼ
points represent the meanSD of four deter
活 性 阻 害 作 用 に よ る も の で は な く メ ラ ノ サ イ トへ minations. p<0.01 (Student's t-test).
のcytotoxicな 作 用 に 基 づ く も の と考 え ら れ て い

る こ と か ら11) 化 粧 品 に 応 用 す る メ ラ ニ ン 産 生 抑 む し ろ 促 進 す る 傾 向 が 認 め ら れ た 。 3H-チ ミジ

制 剤 で は その 抑 制 効 果 が 細 胞 毒 性 に起 因 した結 果 ン ・14C-ア ミ ノ 酸 の 取 り込 み で 見 た, DNA合 成

で は な い こ と を 確 認 す る こ とが 必 須 で あ る 。 そ こ タ ン パ ク 合 成 活 性 に も変 化 は 見 ら れ な か っ た
で わ れ わ れ はBRに よる メ ラニ ン産 生 抑 制 濃 度 と (data not shown)。 こ の と きの 細 胞 あ た り の メ ラ
細 胞 毒 性 との 関 係 につ い て検 討 した (Fig. -3)。 ニ ン量 を 定 量 し た 結 果 , 0.5μMで コ ン トロ ー ル
BRは, 1∼10μMで は 細 胞 毒 性 を 発 揮 せ ず, の85.6%, 1μMで72.4%, 5μMで49.9%, 10μM

J.Soc. Cosmet. Chem. Japan. Vol.35, No.1 2001 45

 粧 技 誌 第35巻 第1号 2001

で42.1%とBR濃 度 に依 存 し た 抑 制 が 認 め ら れ 3.3. ヒ ト紫 外 線 色 素 沈 着 に 対 す る 効 果

た 。 ま たBRの メ ラ ニ ン 産 生 抑 制 力 価 は, アルブ 3.3.1. 人 工 サ ンバ ー ン 予 防 効 果 を か ね た 色 素

チ ン ・コ ウ ジ 酸 よ り強 力 で あ っ た 。 沈 着抑 制作 用
さ ら に 培 地 か らBRを 除去 す る とメ ラニ ン産 生 プ ラ セ ボ ロ ー シ ョ ン と 比 較 し0.3% BR配 合 ロ

はcontrolと 同 程 度 ま で 回 復 す る こ と か ら, BR → ョ ン塗 布 部 位 で は, ス コ ア 値 ・L* valueと も

に よ る メ ラ ニ ン 産 生 の 抑 制 は 可 逆 的 で あ る こ と, に 照 射7日 後 よ り試 験 終 了 時 ま で 有 意 差 が 認 め ら

す な わ ち 細 胞 毒 性 に よ る も の で は な い こ とが 強 く れ た (Fig. -5)。

示 唆 され た (Fig. -4)。 UVB照 射 前 に は 試 験 部 位 を微 温 水 で 洗 浄 し残

以 上 よ り, BRに 強 力 な メ ラ ニ ン産 生 抑 制 効 果 存 す る ロ ー シ ョ ン を 可 及 的 に 除 去 して い る こ と,

が 認 め ら れ た た め, 安 全 性 を 十 分 に 確 認 し た 後, UVB照 射 に 使 用 し たFL 20 SE 30ラ ンプ の最 大 エ

ヒ ト紫 外 線 色 素 沈 着 に 対 す る 効 果 に つ い て 検 討 を ネ ル ギ ー 波 長 は300nm付 近 で あ り, BRは 同波

加 えた 。 長 に 紫 外 線 吸 収 を 示 さ な い こ と, ま たBRの 極 大

Fig. - 5 Time course of BR's inhibitory effect on UVB-induced hyperpigmentation.

The change in the score value (A) and L* value (B) were plotted. Data
points represent the meanSD. Significant difference (p<0.01, Wil
coxon signed-rank test), significant difference (p<0.001, paired t-test).

F ig. - 6 Depigmenting effect of BR lotion on UVB-induced hyperpigmentation.

The change in the score value (A) and L* value (B) were plotted. Data
points represent the meanSD. Significant difference (p<0.01, Wil
coxon signed-rank test), significant difference (p<0.05, paired t-test).

46
 ル シ ノー ル〓の メ ラニ ン産 生 抑 制 作 用 と有 効 性

同 一 個 体 内 で の2部 位 の 黒 化 度 に統 計 的 有 意 差 が

認 め ら れ な か っ た13名 を選 別 し試 験 を 継 続 した
そ の 結 果, プ ラ セ ボ ロ ー シ ョ ン と比 較 し0.3% BR

配 合 ロ ー シ ョ ン 塗 布 に よ り明 ら か に 色 素 沈 着 改 善

効 果 が 認 め ら れ, 6週 塗 布 後 の 黒 化 度 ス コ ア に 統

計 的有 意差 (p<0.01) が 認 め られ た (Fig. -6A)。

ま た 塗 布 開 始 時 か ら のL* valueの 変 化 に つ い て

も, 6週 後 に 有 意 差 (p<0.05) が 認 め ら れ た (Fig. -

6B)。 有 効 率 に つ い て も, や や 有 効 以 上 が 塗 布1

週 後 の23.1%か ら6週 後 に は61.5%に 増 加 した

(Fig. -7)。

以 上 の 結 果 よ り, BRは 酵 素 ・細 胞 レ ベ ル で 有

F ig. - 7 Summary of inhibitory effect of BR lo 効 で あ る だ け で は な く, ヒ ト紫 外 線 色 素 沈 着 に 対

tion on UVB-induced hyperpigmentation. し て も有 効 で あ る こ と が 示 さ れ た 。 な お, 試 験 期

間 中 を通 じて問 題 とな る よ うな皮 膚 反応 は認 め ら

吸 収 波 長 で あ る279nmで はFL 20 SE 30ラ ンプ れ な か っ た。

の 強 度 は 最 大 値 の10%以 下 で あ る こ と か ら, 本 3.4. 使 用 試 験

試 験 で認 め られ た色 素 沈 着 抑 制 効 果 は紫 外 線 吸 収 3.4.1. 健 常 女 性 に 対 す る使 用 試 験
に よ る も の で は な く, UVBに よ り活 性 化 さ れ る 18∼55歳 ま で の 健 康 な 女 性449名 を 対 象 に1

チ ロ シ ナ ー ゼ お よ びTRP-1活 性 の抑 制作 用 に よ ヵ 月 間 の 使 用 試 験 を 実 施 し た 。 1ヵ 月 と い う 短 期

る も の と 考 え ら れ た 。 な お, BRの 抗 炎症作 用や 間 で あ り な が ら, シ ミ ・ くす み ・ソ バ カ ス 各 々 が

抗 酸 化 作 用 に よ り色 素 沈 着 が 抑 制 さ れ た 可 能 性 も 気 に な ら な くな っ た と 自己 申告 した人 の 割 合 が 増
否 定 で き な い が, この 点 につ い て は今 後 の 検 討 課 加 し て お り, BR配 合 ロ ー シ ョン の有 効 性 が 示 さ
題 で あ る。 れた (Fig. -8)。

3.3.2. 人 工 サ ンバ ー ン後 の 色 素 沈 着 抑 制 作 用 3.4.2. 肝 斑 に対 す る 臨床 試 験

最 初 の 紫 外 線 照 射 か ら7日 後, 16名 す べ て の 67名 の 試 験 対 象 者 の う ち, 使 用12週 未 満 の4

被 験 者 に 明 瞭 な 色 素 沈 着 が 認 め ら れ た 。 そ の 中 で, 名, 使 用 不 十 分 者1名 の 計5名 を 除 い た62名 を

Pre-treatment After 1 month

F ig. - 8 Summary of self-reporting for effectiveness of BR lotion on various skin

pigmentation.

J. Soc. Cosmet. Chem. Japan. Vol. 35, No. 1 2001 47

 粧 技 誌 第35巻 第1号 200 1

美 白剤 で あ る と考 え られ た 。 さ らに肝 斑 に対 して
も高 い有 用性 を示 した こ とか ら, 臨床 的 な応 用 も
期 待 され る。

引 用 文 献

1) N. J. Lowe, Sunscreens-Development, Evaluation

and Regulatory Aspects, edited by N. J. Lowe, M. A.
Shaath, M. A. Pathak, Marce Dekker (1990) p.37-42
2) G. Prota, J. Invest. Dermatol., 75, 122-127 (1980)
3) C. Jimenez-Cervantes, F. Solano, T. Kobayashi, K.
F ig. - 9 Usefulness of BR lotion on liver spot.10)
Urabe, V. J. Hearing, J. A. Lozano, J. C. Garcia
Borron, J. Biol. Chem., 269, 17993-18001 (1994)
-
解 析 対 象 と し た 。 肝 斑 の 濃 さ ・範 囲 と も使 用4週 4) T. Kobayashi, K. Urabe, A. Winder, C. Jimenez
後 よ り有 意 に 低 下 し, 試 験 開 始 時 と比 較 し た 改 善 Cervantes, G. Imokawa, T. Brewington, F. Solano,
-
度 も経 時 的 に 上 昇 し た (data not shown)。 医師の J. C. Garcia-Borron, V. J. Hearing, EMBO J., 13,
判 定 に よ る 有 用 度 で は, 「や や 有 用 」 以 上 が83.9 5818-5825 (1994)

%, 「非 常 に 有 用 」 も145%に 認 め ら れ, 肝斑 に 5) Y. M. Chen, W. Chavin, V. Riley, Pigmentation

Its Genesis and Biologic Control, edited
- by V. Riley,
対 す るBRの 有 用 性 が 示 され た (Fig. -9)。
Appleton Century Crofts (1972) p.593-606
4. 結 論 6) I. Kubo, I. Kinst-Hori, Y. Yokokawa, J. Nat. Prod.,
57, 545-551 (1994)
4-n-ブ チル レゾル シノー ル (BR) は, 検 討 し
7) A. Rook, D. S. Wickinson, F. J. G. Ebling, Text
た 既 存 の 美 白 成 分 よ り高 い チ ロ シ ナ ー ゼ 活 性 阻 害
book of Dermatology, Blackwell (1972) p.2072 -
作 用 を 有 す る と と も にTRP-1活 性 阻害 作 用 を 有 8) A. J. Winder, H. Harris, Eur. J. Biochem., 198, 317
し て い た 。 そ し て よ り 低 濃 度 でB16マ ウス メ ラ 326 (1991)
ノ ー マ細 胞 に対 す る メラ ニ ン産 生抑 制作 用 を示 し 9) M. Seiji, K. Shimano, M. S. C. Birbeck, T. B. Fitz
た 。 BRは, 紫 外 線 色 素 沈 着 を は じめ とす る さ ま patrick, Ann. N. Y. Acad. Sci., 100, 497-533 (1963)
10) ル シ ノ ー ル 〓 研 究 会, 西 日 皮 膚, 61, 813-819
ざ ま な ヒ ト色 素 沈 着 に 有 効 で あ り, か つ 使 用 期 間
(1999)
を通 じ て 問 題 と な る よ う な 皮 膚 症 状 は 認 め ら れ な
11) A. B. Lerner, Am. J. Med., 51, 141-147 (1971)
か っ た こ と か ら, 安 全 か つ 十 分 効 果 の 期 待 で き る

Inhibitory Action of 4-n-Butylresorcinol (Rucinol•¬) on Melanogenesis

and Its Skin Whitening Effects*

Takayuki Katagiri, Tadashi Okubo, Midori Oyobikawa, Kiyoko Futaki,

Masao Shaku, Mitsuo Kawai, Masaki Takenouchi

POLA Laboratories, POLA Chemical Industries, Inc.**

We have reasoned that by either enhancing inhibition effectiveness of tyrosinase activity or by inhibiting the
activities of both tyrosinase and TRP-1, we should be able to develop more effective whitening cosmetics. We
found 4-n-butylresorcinol (BR) to have strong inhibitory effect against melanogenic enzymes which are respon
sible for hyperpigmentation. BR reversibly inhibited melanin production in B16 mouse melanoma cells without

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 ル シ ノー ル〓の メ ラニ ン産 生 抑 制 作 用 と有 効 性

any effects on cell growth, and its potency was stronger than that of arbutin or kojic acid which are widely
used in whitening cosmetics. Topical application of 0.3% BR lotion prior or posterior to UVB-irradiation effec
tively suppressed UVB-induced hyperpigmentation in human. In our extensive consumer usage test involving
449 healthy females, a large proportion of subjects felt there were improvements in conditions of pigmentation,
skin darkness, and freckles increased in as little as 1 month. These experimental data indicated that BR is an ef
fective skin whitening agent which can be safely used in cosmetics. Furthermore, a trial to evaluate clinical ef
fects of 0.3% BR lotion in patients with liver spot was made. BR lotion was evaluated as slightly useful or bet
ter in 52 (83.9%) out of 62 subjects. Accordingly, we concluded that BR can be used in the clinical treatment
of liver spot.

Key words: 4-n-butylresorcinol, rucinol, melanogenesis, whitening, tyrosinase, TRP-1, UVB, hyperpigmen

tation, liver spot, resorcinol

J. Soc.Cosmet. Chem. Japan. Vol.35, No. 1 2001 49