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日本語の構造論2

目次
パート1
第1章 文の特徴と種類 1
1. 日本語の文の特徴 2
2. 文の種類 4
3. 特殊な構文 6
4. 複文と従属 8
第2章 文の成分 語と語との関係 11
1. 述語と名詞句の関係 12
2. 語句と語句の関係 16
パート2 述部の構造 19
第3章 テンス・アスペクト 21
1. テンス 22
2. アスペクト 24
第4章 ムード 29
1. 推量のムード/ヨウ・ソウ・ラシイ 30
2. 確信のムード/ハズダ・コトニナル・~ニチガイナイ 32
3. 説明のムード/ノダ・ワケダ 34
第5章 ヴォイス 37
1. 受け身 38
2. 可能・自発 40
3. 使役 42
4. 使役受け身 44
第1章 文の特徴と種類
ここでは日本語の文について、その一般的性質について述べていきます。外国語
と比べて、日本語の文はどのような特徴があるのでしょうか。また、どのような種
類があるのでしょうか。

例えば、日本語には「今、3 時だ」などという文があります。「今」が主語なの
でしょうか。「桜がきれいだね」と「桜はきれいだね」では意味が違っています。
「僕はウナギだ」などという、論理的に変な文もあります。これらはどう考えたら
よいのでしょうか。

ここで「文」とは、句点(「。」)で区切られる単位を指し、「文章」とは区別
します。文にも長いもの短いものがあり、長いものは複雑な構造を持つことがしば
しばです。この章では主に単文を扱い、複文と文章(談話)に属する問題はそれぞ
れの章に譲ります。とりあえずその文が単文なのか、重文/複文なのかを区別でき
るようにしてください。

また、この章では「あいまい文」というものが登場します。「僕は“いし”にな
りたい」では、なりたいものが「石」と「医師」の二つの解釈が出来ます。これは
「いし」という語が複数の意味を持つためですが、一つ一つの語は一つの意味しか
ないのにもかかわらず、文全体として複数の解釈ができる文もあります。「警官は
血まみれになって逃げる泥棒を捕まえた」のような文です。「血まみれ」などはど
ちらでしょうか。ここではこのように構造のためにあいまいになっているものを扱
います。

o 第1章のポイント
 日本語の文にはどのような特徴があるか
 日本語の文にはどのような種類があるか
 「僕はウナギだ」のようなウナギ文
 文の統語構造が分析できるか。主節と従属節の区別
 あいまい文の解釈と分析ができる

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1 日本語の文の特徴

ここでは、日本語の文の一般的な性質について述べます。

1. 語順
 述語が最後に来る

日本語は、語順が自由だと言われますが、動詞が目的語より後ろに来るので、英
語と対照して“SOV 言語”とよく言われます。厳密に言うと、日本語の文末は動詞
だけでなく、イ/ナ形容詞や「名詞+だ」もあります。これらをまとめて文の「述語」
と呼びます。日本語の文の特徴の第一は、述語が常に文末に来ることです。

 修飾・被修飾の語順

語順に関するもう一つの特徴として、日本語では修飾する語句と修飾される語句
の語順が常に同じで、修飾語が被修飾語の直前に来ます。これは修飾語や被修飾語
がどういう品詞であっても同じです。

【例】高い 本 an expensive book

私が買った 本 the book which I bought

2. 「主題」がある

日本語には「…は」で表される“主題”という単位があり、これは主語とは異な
る概念で、その文が何について述べている文であるかを表します。

あの病院は 院長が 名医だ。

主語 述語 (二十主語構文)

主題 述部

これとは対照的に、英語などではいつも必要とされる“主語”は、日本語は存在
しないことがあります(無主語文)。これは次に述べる「省略」とは別です。【例】
火事だ!焼芋の恋しい季節になりました。

3. 省略がかなり自由にできる

話が通じる限り、日本語はかなりの省略が可能性です。英語では主語や目的語を
省略することはできず、そのために she や him といった代名詞を使いますが、日

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本語ではそういった意味では代名詞は不要です。余談ですが、日本語の代名詞は
英語などと違い、0-=‘;「m9=」=うぇdげrsw「可愛そうな彼女」「魚
になった私」など、修飾語がつく点で一般名詞と変わりありません。

 省略のあれこれ
a. 文脈上の省略(詳しくは第9章2.「省略」を参照
「(あなたは)行く?」(名詞句の省略)
「私(は)、行かない。」(格助詞の省略)
「先生は(来る)?」(述語の省略)
b. 習慣としての文末の省略(文の後半が省略)
…たら。 …のに。 …だけど。 …んですが。 …から。

不特定主語:特に誰という限定がない主語の場合、いちいち主語を表しません。こ
れは上記の無主義分とは別のものです。以下は主節や従属節の主語が不特定の場
合です。

【例】(誰かが)風邪をひくと熱が出る。

(誰かが)芝生に入ると(誰かが)罰せられる。

4. 無生物主語を嫌う

無生物名詞は他動詞文・使役文などの主語にはあまり使われません。

【例】X バスが私を駅まで連れて行きました。

X 薬が私を治しました。

ただし、翻訳調の文や人に準ずるもの(機械・車・台風など)は例外。

【例】あの事件が彼女を変えた。 台風が大雨を降らせた。

問題1 日本語の特徴として適切なものを選びなさい。
1. 語順の制限はない。
2. SVO 言語である。
3. 主語がないときは、省略されているのである。
4. 連体修飾節もイ形容詞も共に被修飾名詞の前に来る。

問題2 主語に関して文の種類が違うものを一つ選びなさい。
1.今、3時です。 2.困ったことになった
3.誰でも死ぬ。 4.じめじめしますね。

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2 文の種類

ここでは、日本語の文を色々な観点から分類します。

1. 述語による分類 名詞文・形容詞文・動詞文

名詞文(コピュラ文) 【例】私は 学生だ。


イ形容詞文 【例】教授は 女学生に 甘いです。
ナ形容詞文 【例】桜は きれいです。
動詞文 【例】花子が 本屋で 本を 買います。
動詞文は 、「名詞句+名詞句+…動詞。」の形で名詞句を多くとりますが、
原則として「…を」は一つだけです。

【例】外国人を教えます+日本語を教えます

→ 外国人に日本語を教えます。

2. 文の形態による分類 平叙文・疑問文・命令文
平叙文 【例】本を読みます
疑問文 【例】本を読みますか
命令文 【例】本を読みなさい
「はい、そうです」で答えることのできる疑問文は、名詞文だけです。

【例】本ですか?-〇はい、そうです。

元気ですか?-Xはい、そうです。

「映画に行きませんか?」は、形は疑問文ですが意図は「行きましょう」と
いう誘いです。従って「はい、行きません」とは答えられません。

3. 主語・主語の有無による分類 現象分・判断文・無主語文

「が」の主語の文=現象文

有主語文 無題文
「は」の主語の文=判断文

主語の有無 題目の有無
による分類 による分類
もともと主語のない文=述語文

無主語文 有題文
「は」の主語の省略された文=準判断文

(永野覧『文章論総説』より)

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現象文: 【例】象があそこにいる。桜がきれいだ。
判断文: 【例】象はおとなしい動物だ。桜はきれいだ。
述語文: 【例】あ、雨だ。いよいよ夏だ。
準判断文: 【例】(僕は)行くよ。 (→第9章3.「主題」参照)
“判断文”は主題として提示されたものに対して自分なりの評価・解釈・判
断を述べるのに対して、“現象文”はそういった主観的判断を一切加えず、
目の前の出来事を客観的に描写した文です。このため「君が幹事だ」は現象
文の形をとりますが、意図としては「幹事は君だ」であるため、判断文の特
殊な例とした方がよさそうです。
なお、名詞文「A は B だ」は以下のように二つに分けられます。
倒置指定文: 同定する。 【例】幹事は私だ。(=私は幹事だ)
上の例では、「幹事は誰かと言うと、私だ」の意。
(参考)指定文:同定する。 【例】私が幹事だ。
措定文:属性を述べる。【例】私は幹事だ。
上の例では、「私について述べると、幹事だ」の意。

4. 文の構造による分類 単位・重文・複文
くじら ほにゅうるい
単文 「S」 鯨 は哺乳類だ。 (S=節)
はちゅうるい
重文 「S」+「S」 鯨は哺乳類で、恐竜は爬虫類だ。
複文 [[S]] 鯨が哺乳類だということを知っているか。
日本語では重文と複文の区別が難しいので、しばしば両者を一括して複文として扱
います(→第3章参照)。

問題1 主題の有無に関して性質の異なる文を一つ選びなさい。

1.机の上にりんごがある 2.国会は主民主義の根幹である
3.田中さんて変な人ね 4.葉書ならあそこにあるぞ。

問題2 次の構文に関して性質の異なる文を一つ選びなさい

1.私は社長だ。 2.司会は石田ひかりだ。
3.鯨は哺乳類だ。 4.紅白は人気番組だ。

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3.日本語の文法的な特徴

3.1. 日本語の語順

日本語では文の述語(動詞、形容詞、名詞+コピュラ)が、常に文末に置く。基本的な語
順としては SOV(主語ー目的語ー述語)語に属する。また、日本語では常に修飾する語句
が修飾される語句の直前に来る。

例 新しい 本

今朝買った 本

3.2. 日本語の文とその基本構造

日本語の文は述語、補語(補足語)、主語、修飾語、状況語、主題などからなっている。

3.2.1.述語

述語は文末の位置で文を与え、中心的な要素である。述語の内容によって文の大枠が決
定される。それは家屋を与える柱が家屋全体の形を決めるのに似ている。

例 田中さんが本を読んでいる。

上の文では文末の「読んでいる」が述語であり、「読んでいる(読む)という述語は文
の骨格を決める働きを持つ。述語は 【名詞-だ/です】、【形容詞】、【形容詞- だ/です】、
【動詞】などのうちのどれかからなっている。

例 田中さんは先生です/だ。

あの人は親切だ。

田中さんの本は面白い。

田中さんがご飯を食べた。

3.2.2.補語(補足語)

述語が表す意味を補う要素を補語、あるいは補足語と呼ぶ。

例 太郎が 荷物を 運んだ。

上の例では「太郎が」、「荷物を」は補語である。補語(補足語)は原則として名詞+格
助詞(主格助詞の「が」、体格助詞の「を」など)でできている。しかし、格助詞と副助
詞が付いている場合、格助詞がなくて副助詞だけが付いている場合もある。補語(補足語)
には基本として主語と目的語が含まれる。他には修飾語、状況語がある。

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例 鈴木さんが きれいなカバンを 買った。

主語 目的語 述語

補足語 補足語

主格助詞(が) 名詞+体格助詞(を)

金子さんが ご飯だけを 食べます。


主語 目的語 述語

補足語 補足語

名詞+格助詞 名詞 +格助詞(を)+副助詞(だけ)

多くの場合は補足語の成文が他の要素が含まれる。その要素は補足に付加てきな情報を
加える機能を持つ。

例 太郎が重い荷物を運んだ。

上の例では「重い」が補足語の「重い荷物」の成分に入り、「修飾語」だと呼ばれる。

補足語には基本的に主語と目的語が含まれるが、状況語や述語の修飾語が含まれる場合
もある。

例 太郎が 駅で 重い荷物を 軽々と 運んだ。


主語 状況語 目的の修飾語 (述語の)修飾語 述語

(補足語) (補足語) (補足語)

3.2.3.修飾語

修飾語とは与えられた表現に付加的な情報を加え、より精密な記述を与える働きをする
文の要素である。

修飾語は「大きな」、「大きく」、「だんだん」などの連体詞や形容詞、副詞からなっ
ている。
例 おいしいご飯 おもしろい本

私が買ったペン 早く走る

若い 女性が 速く ご飯を 食べている。


修飾語 修飾

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3.2.4.修飾語と被修飾語

「きれいな景色」、「ゆっくり歩く」、「きれいにかく」、「とてもたくさん」のよう
な(a)形容詞―名詞、(b)副詞―動詞、(c)形容詞―動詞、(d)程度副詞―副詞の関
係を修飾語と被修飾語の関係という。

3.2.5.連体修飾語と連用修飾語

修飾語には名詞を修飾するものと動詞や形容詞、副詞などを修飾するものがある。

名詞を修飾する語は連体修飾語と呼ばれる。動詞、形容詞、副詞などを修飾する語は連
用修飾語という。

上の(a)、(b)、(c)、(d)の例の中で(a)は連体修飾、(b)、(c)、(d) は連用修飾という。

3.2.6.状況語

状況語は時、所を表わす表現である。

例 今日、秋に、学校で

子供の時 アメリカに住んでいました。

3.2.7.目的語

目的語は動詞の表す動作・作用の対象である

例 本を読む。 ご飯を食べる。

3.2.8.主語

主語は動詞が表す動作をする者や形容詞が表す状態、属性などの主体を表す語である。
主語は普通格助詞「が」で表されるが、「は」で表される場合もある。

例 あ、バスが 来た。
主語 述語

太郎が 学校に 行った。


主語 状況語 述語

居間は 広い。
主語 述語

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東京の 田中さんが 昨日 部屋で 面白い 本を 速く 読んでいた。
修飾語 被修飾語 修飾語 被修飾語

主語 状況語 状況語 修飾語 目的語 修飾語 述語

(補足語) (補足語) (補足語) (補足語)

3.2.9.主題

その文が何について述べるかを示す部分が主題と呼ばれる。主題は基本的に名詞と「は」
や「も」などのような取立て助詞表される。

例 雨はまだ降っているかい。

明日も行きます。

3.3.単文と複文

つなぎ合わされた文を複文と呼び、つなぎ合わされない文は単文という。

例 太郎が重い荷物を軽々と運んだ。

次郎は仕事で忙しい。

3.3.1.単文

単一の述語を中心として構成された文を「単文」という。主語、目的語と述語が文の骨
格を作る。このような文は単純な事柄を表わす。

例 鈴木さんが本を読んだ。

文の骨格に修飾語や状況語が加わったら、より細かい事柄が表現される。

例 鈴木さんがきのう面白い本をよんだ。

受け身、使役、やりもらい、アスペクト、ムードなどの形式が文末に付け加わると、複
雑な出来事、現象を言い表すことができるようになる。

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3.3.2.複文

複数の述語からなる文を「複文」という。

例 太郎が重い荷物を軽々と運んだので、花子は驚いた。

上の文は「運んだ」、「驚いた」という 2 つの述語を含む複文である。このような文を
二つ以上つなぎ合わせると、条件、並列、逆 接などさらに複雑な事柄を表わすことがで
きる。

複文を構成するところの、述語を中心とした各まとまりを「節」と呼ぶ。先の例文では
「太郎が重い荷物を軽々と運んだので」、「花子は驚いた」が「節」である。

3.3.2.1.主節

複文の各節の中で、文末の述語を中心した節が「主節」と呼ばれる。この節は文全体をま
とめる働きをする。

3.3.2.2.接続節

主節以外の節は接続節と呼ばれる。接続節は、主節に対する関係の違いによって、従属
節、並列節に分けられる。

・従属節とは、主節に対して従属的な関係で結び つくものをいう。

例 太郎が重い荷物を軽々と運んだので、花子は驚いた。

・並列節とは主節に対して対等に並ぶ関係で結びつくものをいう。

例 花子が詩を書き、太郎が曲をつけた。

3.4.主題・有題文と無題文

多くの日本語の文は「何事かについて説明を加える」という姿勢をとっている。こうい
う文は「主題と説明」から成り立っていると考えられる。例えば、「太郎は仕事で忙しい」
という文は、「太郎」という人物を取り上げて、「仕事で忙しい」という説明を与えてい
る。一般に、「X は...述語」の形の文は「有題文」(主題を持つ文)と呼び、「X は」は
「主題」という。例えば、「太郎は仕事で忙しい」という文は主題文と考えられる。主題
を持っていない文は「無題文」と呼ばれる。例えば、「太郎が荷物を運んだ」は無題文の
例文である。

なお、多くの場合、主題になるのは、述語の補語(補足語)である。この場合は主題は
述語の補語を兼ねることになる。

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例 太郎は 本を 読んでいる。
主題/ 補語(主語)

(比較:今は 太郎が 本を 読んでいる)


主題 補語(主語)

この文では主題は述語の補語を兼ねない。

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基本問題

問題 1 次の質問に答えてください。

1.文法は何ですか?普通の文法と広義の文法は違いますか?

2.文の定義をしてください。

3.文を構成する基本的な要素は何ですか?その要素を定義してください。

4.品詞は何ですか?

5.句と節はどう違いますか?

6.日本語の語順と特徴は何ですか?

7.日本語の文の基本的に何と言う成分からなっていますか?

8.述語はなんですか?何からなっていますか?

9.補語について論じなさい。

10.修飾語はどのような成分ですか?文中にどのような働きを持っていますか?

11.状況語は何ですか?例を挙げてください。

12.単文と複文はどう違いますか?例を挙げてください。

13.主節と接続節は何ですか?接続節は何種類に分けられますか?

14.有題文はどのような文ですか?例を挙げてください。

問題 2 次の文の成文を分析してください。(5~15 の文は「中・上級者のための速読の日本語」の引用文)

1.京都の新しい建物はとても有名です。

2.桜がきれいに咲いています。

3.私は昨日大学で昼ごはんを食べました。

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4.私の息子は先週中学校で難しい試験をうまくしました。

5.休日に美術館で絵を眺めるのもよいものだ。

6.美術館にはどのくらいの頻度で行きますか。

かいが
7.美術館のジャンルでは絵画が一番人気があるようだ。

8.災害時に生活情報などの相談窓口や避難所などで活動してもらう。

9.成功に恵まれるというラッキー線はどれですか。

10.自分で感じ、思い、考えたことを大事にする。

ちゅうしゃくしょ
11. 注 釈 書 に書かれてあることでも、納得できなければこだわってみる。

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がてん
注:*こだわる:よく考える、気にする
12.合点のゆかぬまま暗記しても意味がない。

*合点のゆかぬ:わからない、賛成できない

13.春は桜、秋は紅葉がきれいで気候もよいので、どこへ行っても人でいっぱいで
す。

14.このごろは拝観制限(お寺の中に入れる人の人数を制限すること)をする

お寺も出てきたそうです。

15.現代はストレスの時代と言われ、ストレスで悩んでいる人は多い。

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語彙リスト 3
広義 こうぎ Nghĩa rộng

句点 くてん Dấu chấm câu

構成する こうせいする Cấu thành, cấu tạo

完結 かんけつ Hoàn thành, hoàn chỉnh

無限 むげん Vô hạn

副詞 ふくし Phó từ

形容詞 けいようし Tính từ

句 く Cụm từ, ngữ

節 せつ Mệnh đề

述語 じゅつご Vị ngữ

常に つねに Thông thường

修飾する しゅうしょくする Bổ nghĩa

補語 ほご Bổ ngữ

補足語 ほそくご Bổ túc ngữ

修飾語 しゅうしょくご Từ bổ nghĩa

被修飾語 ひしゅうしょくご Từ được bổ nghĩa

連体修飾語 れんたいしゅうしょくご Từ bổ nghĩa dạng liên thể

連用修飾語 れんようしゅうしょくご Từ bổ nghĩa dạng liên dụng

状況語 じょうきょうご Trạng ngữ

目的語 もくてきご Mục đích ngữ (tân ngữ)

主語 しゅご Chủ ngữ

主題 しゅだい Chủ đề

骨格 こっかく Phần chính, nòng cốt

出来事 できごと Sự việc, sự kiện

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並列 へいれつ Liệt kê

逆接 ぎゃくせつ Đảo, nghịch, đối lập

事柄 ことがら Sự việc, nội dung

単文 たんぶん Câu đơn

複文 ふくぶん Câu phức

主節 しゅせつ Mệnh đề chính

接続節 せつぞくせつ Mệnh đề tiếp nối, mệnh đề phụ

従属節 じゅうぞくせつ Mệnh đề phụ thuộc

並列節 へいれつせつ Mệnh đề đẳng lập (liệt kê)

結びつく むすびつく Kết nối, nối

主題文 しゅだいぶん Câu có chủ đề

無主題文 むしゅだいぶん Câu không có chủ đề

兼ねる かねる Trùng lặp, trùng hợp, kiêm

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3 特殊な構文
1. X は Y が Z 構文 象は鼻が長い

主題「X」について、「Y が Z だ」と説明する文型です。

 X・Y・Z の関係
a. いづみさんは目が大きい。(X の Y は Z)
b. 彼の病気はストレスが原因だ。(Y が X の Z)
c. 冷蔵庫は大型がいい。(Y の X が Z)

*「あの家は敷居が高い」、「魚は鯨がいい」のように上記にあってはまらな
いものもあります。

 「X の Y は Z」との違い

象は鼻が長い:主題は「象」なので、「象」に関する文。「象は鼻が長いが、
嗅覚は弱い」「象は鼻が長いが、キリンは首が長い」のように続く。

象の鼻は長い:主題は「象の鼻」なので、「象の鼻」に関する文。「象の鼻
は長いが、(象の)足は短い」「象の鼻は長いが、キリンの鼻は短い」のように
続く。

「X の Y は Z」の全てが「X は Y が Z」になるわけではありません。「Y が Z」
が新しい主題「X」の説明になる場合だけです。以下では、2番目の「弟が走っ
ている」は「太郎」の説明になりません。

太郎の奥さんは入院中だ→ 太郎は奥さんが入院中だ。

太郎の弟は走っている → X太郎は弟が走っている。

2. ウナギ文 僕はウナギだ

一見直感的なこの文はしばしば外国人の耳には非論理的に響きますが、子の構文
は述語を「ダ」で代用する、もしくははしょるパターンです。

僕はウナギ を食べる。 会議は3時から 始まります。

だ です
似たものとして、「…する」「…になる(尊敬)」の部分だけをはしょった
ものもあります。これらを一括して疑似名詞述語文と言います。

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【例】 船は6時に出航する。 ご注文はお決まりになりましたか。

だ です

3.「いる・ある」 私には弟がいる

「いる・ある」は「台所に母がいる」「机の上にりんごがある」に用に人や物
の存在を示しますが、これとは別に血縁関係などを示すのにも使われます。この
時、人に対しても「ある」を使うことができます。「いる」はもともと人が自ら
の意志で「どこかの場所に存在する」ことを表すからです。

【例】私には 妹が いる/ある。(血縁関係)

家にはお手伝いさんがいる/xある。(存在)

反対に人は いませんか/ありませんか。(x具体的場所)

私には心強い味方がいる。(所有)

私には時間がある。(所有)

問題1 文型の性質が異なるものを一つ選びなさい
1. レコードは LP がお買い得です。
2. あいつは話が面白くない。
3. その時計は電池が切れている。
4. A 新聞は夕刊がつまらない。

問題2 文型の性質が異なるものを一つ選びなさい
1.私の大学はキャンパスが狭い。 2.信州はそばがうまい。
3.彼は背が高い。 4.牡蛎は広島が本場だ。

問題3 文型の用法が異なるものを一つ選びなさい
1. 大切なのは辛抱です。
2. 社長に電話です。
3. フロッピーディスクはソニーです。
4. 社長はカナダです。

問題4 文型の用法が異なるものを一つ選びなさい
1. 居間に古い壷がある。
2. 父は庭にいる。
3. 彼女には婚約者がいる。
4. 知らない犬が門のところにい

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4 複文と従属節

ここでは、前学複文についても少し詳しく見ていきます。

1. 節とは

複文とは、主節と従属節を含む文を言います。節とは、文としての成分(最低限、
述語を含みます)を持つひとかたまりの部分を言います。

妹は 友人が明日ハワイからくることを 親に報告した。

従属節

主節

2. 節の種類

主節:他の節に含まれないもの

従属節:他の節に含まれるもの

節は、一つの語ではありませんが、文の中の役割は語と同じで、名詞と同じよう
に全体として動詞の主語や目的語になったり、形容詞や副詞のように他の名詞や
述語を修飾したりします。その働きに応じて、以下のような名称もあります。

名詞節:節全体が名詞として扱われるものを言います。上の例では「友人が明日ハ
ワイから来ることを」は「を」という格助詞がつき、それ全体で主節の「報告し
た」の目的語になっています。

修飾節:他の部分を修飾する働きを持つ節です。ある節が他の名詞を修飾すれば連
体修飾節ですし、述語の動詞や形容詞を修飾していれば連用修飾節です。連体修
飾節につて第7章で詳しく扱います。

3. 複文の構造

上の例に見るように、主節は従属節に分断されることもあります。また、それぞ
れの節の境界を越えない限り、語順は自由です。冒頭の例では、主節では「妹
は・親に」の、従属節では「友人が・明日・ハワイから」の語順は自由です。

[・・・[・・・・・]・・・・・]

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4. 複文の構造とあいまい文

ある要素が主節にあるのか、従属節に属するのかは語順で判断します。前ページ
で見たように、主節の要素を従属節の中に入れたり、従属節の要素を外に出して
主節の要素と一緒にしたりすりと、おかしな文になります。以下 a では、「明日」
は従属節にあることがわかります。ところが b では、「きのう」は主節にあるの
か従属節にあるのか、はっきりしません。ただし、「きのう」がどちらの節にあ
るかによって、意味は異なります。このように、同じ文で二つ以上の違った意味
で解釈されるものを“あいまい文”と呼びます。この場合、あいまい文の原因は
文の構造にありますので、より詳しくは“構造的あいまい文”です。

a. 明日友人が来ることを報告した。
解釈 [[友人が来ることを]報告した]
ⅹ[[友人が来ることを]明日報告した]
b. 昨日友人が来たことを報告した。(あいまい文)
解釈 1 [友人が昨日来たことを]報告した]
解釈 2 [友人が来たことを]昨日報告した]

問題1 それぞれの文の従属節を[ ]で囲みなさい

1. 仕事で博多を訪れた幸子は大学時代の友人を見かけた。
2. ねじが曲がらないように穴をまっすぐあけます。
3. 多分きのう来た人物が犯人だろう。
4. きれいな部屋では仕事ができないので困る。

問題2 次のあいまい文の解釈をそれぞれ[[ ]]で示しなさい

1. 花子と海に行く計画を立てた。
2. 親米レポーターは急いで帰る人にインタビューした。
3. 警官は血まみれになって逃げる泥棒を逮捕した。
4. あそこに置いてある車のキーは特別注文だ

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コラム10:あいまい文と語順

あいまい文に関して、平成3年度の検定試験に面白い出題がありました。

1. 先月ヤンさんたちと海へ行く計画を立てた。

2. 来月ヤンさんたちと海へ行く計画を立てた。

1 はあいまい文だが 2 はそうではない、というものです。構造を示すと確
かに下のようになっています。

1の解釈 a[先月ヤンさんたちと[海へ行く計画を]立てた]

1の解釈 b[先月[ヤンさんたちと海へ行く計画を]立てた]

2の解釈 [[来月ヤンさんたちと海へ行く計画を]立てた]

ところが、2の文をちょっと語順を入れ替えてやると、1と同じようなあ
いまい文になります。構造を見るとそれがわかります。

2’ヤンさんたちと来月海へ行く計画を立てた。

[[ヤンさんたちと来月海へ行く計画を]立てた]

[ヤンさんたちと[来月海へ行く計画を]立てた]

平成4年度の検定試験には、あいまい「文」ではないのですが、名詞句の
あいまいな構造が出題されました。

「若い社長の臨時の秘書」

a [[A+N][N+N]] b [A[N[N+N]]]

a, b を立体的に表すと、こうなります。

a b

A N N N A N N N

冒頭の A が修飾する N は、A から昇って最初の分岐点で落


ちた所の N です。こうやって見ると複雑な構造もわかりや
すくなります。

21
第2章 文の成分 語と語との関係

主語 目的語
手塚治虫は コンビニのおにぎりを よく 食べた。
連体修飾 連用修飾

いよいよ「統語論」の分野に入っていきます。

この章では、ある語句が文の中でどのような働きをするか、また、他の語とどの
ような関係にあるかを論じます。例えば「主語」とは何でしょうか。主語は名詞句
ですが、ある名詞句がそれ自体で主語であるわけではありません。動詞だったら動
詞といった述語があって、それとのかんけいではじめてあるめいしくが“その文の”
主語だ、と言えるのです。

例えて言うなら、品詞とは、人間で言うなら「太郎は男だ」「太郎は成年生まれ
た」と言うようなものです。これらは「太郎」だけで説明できるからです。ところ
が、「主語」「目的語」「修飾語」といったものは、「太郎は次郎の兄だ」「太郎
は一郎の息子だ」のように、他の人間との関係で規定されます。主語や目的語に話
を戻すと、「手塚治虫がおにぎりを食べた」という文では主語が「手塚治虫」、目
的語は「おにぎり」ですが、厳密に言うなら、これらは「食べた」の主語であり、
目的語です。

また、日本語には主語と似て非なるものとして“主語”というものもあります。
この二つはよく混同されるので注意が必要です。特に主語は日本語文法で極めて重
要で、しばしば日本語の特徴として第一に挙げられます。「主語」については第9
章でも取り上げますが、この章でよく理解しておいて下さい。また、この章ではど
の要素がどれを修飾しているかといったことにも触れます。修飾するものは、何を
修飾するかによって連体修飾と連用修飾に分けられます。

o 第3章のポイント
 「主語」と「主語」の違い
 「主語」「目的語」と、それらを表す格助詞
 修飾とは何か。連体修飾と連用修飾の違い
 文の統語構造が分析できるか

22
1 述語と名詞句の関係

1 – A 主語と主語

主語と主題は紛らわしいので区別が必要です。

表示 働き
普通、格助詞「が」で表され 述語が動作動詞の場合、その動作をする者
主 る。そうでない時も「…こと」 (動作主、行為者)。述語が形容詞なら状
語 をつけた時に「が」になる 態・属性などの主体のことが多い。述語との
(例・太郎が行くコト)。 論理的な関係を示す
主 とりたて助詞(「は」「も」な
その分が何について述べているかを示す。
題 ど)で表される。
 この他にも実際の会話では「は」と「が」の使い分けがありますが、そちら
は第9章「談話」で扱います。
主語と主題は、上に見るように実際は次元の異なる概念ですが、実際の文の中
では重なることが多いので混同されます。
主語 主題
O X 太郎が学校に行った。
O O 太郎は学校に行った。
O O 太郎って素敵ね。
O O 居間は広い。
X O 居間は白で統一する。
X O 居間には段通のカーペットを敷く。
X O 居間は段通のカーペットを敷く。
X O 新聞は日経を読んでいます。

1. 主語を表さない「が」 対象格

格助詞[が]は通例、主語を表しますが、例外的にいくつかの述語(下線部)に
おいては述語の対象(動詞の場合は目的語)を表します。これを対象格と呼びます。

【例】 彼は韓国語がわかる。 会社設立には資金が要る。


太郎は英語が話せる。 私は国産米が食べたい。
私は国産米がほしい。 太郎は花子が好きだ。
私はふるさとが恋しい。

23
2. 【主題】を示す助詞 とりたて助詞

とりたて助詞、または取り立ての機能句を持つ表現には次のようなものがあり
ます。

は・も・こそ・なら・って:と言えば…

主語は(そして目的語)どのような助詞をとるかということが本質なのではあ
りません。格助詞「が」で表されることもあれば、とりたて助詞「は」で表され
ることもあるのです。しかし主題はいつもとりたて助詞で表されます。そして、
とりたて助詞というものがあること自体が日本語の特徴になっています。英語に
も“主題”という概念はありますが、それを指し示す特別な表現(「は」などの
とりたて助詞に相当するもの)がありません。

日本語の「は」に相当する語を持つ言語は、他にも韓国語、ビルマ語、などが
あります。

問題1 次の太字部分の中で性質の違うものを一つ選びなさい。
1. 犬は賢い動物です。
2. 加藤さんは今、アメリカにいます。
3. その本はもう読みました。
4. その雑誌は面白い。

問題2 次の太字部分の中で用法の違うものを一つ選びなさい。
1. 田中さんなら図書館です。
2. 雨なら家にいよう。
3. 写真を撮るならカメラを貸そうか。
4. 女の子なら「恵」と名付けよう。

コラム11:「りんごが食べたい」と「りんごを食べたい」

「~たい」がつくと、目的語は「を」でも「が」でもよくなります。でも、意
味の違いはないのでしょうか?上記の例では、「りんごが食べたい」は「りん
ご」という目的語だけに注目して「食べたいものは何かというと、りんごだ」と
いう意味、「りんごを食べたい」は動作全体に注目して、「何をしたいかと言う
と、りんごを食べることだ」と考えることができます。

24
1 – B 目的語

目的語:動詞の表す動作・作用の対象。

目的語を表す動詞
目的語は多くの場合「を」で表されます。しかし主語と同様、目的語も述語との
関係であり、本質的には形式で判断できるものではありません。

格助詞 目的語の例 目的語でない例


を 彼を殺す・柿を食べる 銀座を歩く・橋を渡る
に 犬に噛みつく・彼女にあげる 東京に行く・医者になる
が そばが食べたい・歌が歌える 彼が来る・野菜が高い
 「を」と移動動詞
「を」はたいてい目的語を示しますが、目的語を表さない「を」もあります。こ
れらは、動詞が“移動動詞”の時の「を」です。移動動詞は、移動の種類によって
以下のように分けられます。
移動を表す「を」:1. (範囲)登る・歩く・走る・曲がる・飛ぶ…
2.(離脱店)(車を)降りる・出る・卒業する…
3.(通過)通る・抜ける・渡る・越える…

1 2 3
 「に」と目的語
「に」が目的語を表す場合、直接目的語の場合と間接目的語の場合とがあります。
鼠が 猫に 噛みついた。 彼女に 花束を あげる。
直接目的語 間接目的語 直接目的語
 二重「を」格制約
「を」は節の中に一つだけという原則があります。
外国人を教える+日本語を教える→外国人に日本語を教える
壁を塗る+ペンキを塗る→壁にペンキを塗る
先生を案内する+銀座を案内する≠先生を銀座に案内する

異なる節にまたがる場合は「を」は二回以上現れます。

「私は「彼女を殺した」真犯人を知っている。」

25
問題3 次の太字部分の中で性質の異なるものを一つ選びなさい

1. 家をくまなく探したが、見つからない。
2. 安い家をあちこち探したが、手頃な物件はもうない
3. 空を見ると、雲一つない
4. 東京の空を汚しているのは誰だ。

問題4 次の「を」に中で用法の異なるものを一つ選びなさい。

1. タクシーを降りる 2. 山道を降りる
3. 階段を登る 4. 激動の昭和を生きる
ヒント:移動動詞の「を」の下位分類

問題5 次の太字部分の中で性質の異なるものを一つ選びなさい

1. 子供に話しかける 2. 首相案に反対する
3. 相手に感謝する 4. 格下の相手に負ける
ヒント:目的語の「に」と、そうでないもの。

問題6 二重「を」格制約を破っていると思われるものを一つ選びなさい

1. 彼女を殺した犯人をつかまえてくれ。
2. 我が党は、民主主義を、ことに議会制民主主義を尊重していきます。
3. 豪雨の中をこれ以上犯人を追うのは危険だ。
4. この道をまっすぐ行って、信号を右に曲がってください。

26
2 語句と語句との関係

2 – A 修飾語と補足語

1. 修飾語とは

文は述語と補足語で成立します。これまで見てきた主語や目的語も補足語に入り
ます。補足語同士の語順は原則的に自由です。修飾語(または句)は文の成立に
は不要ですが、述語や補足語をより詳しく述べます。

主語 補足語 述語

田中さんが

今年20才になる 弟と 3本 飲みました。

きのうは 銀座で 修飾語

(目的語)

新発売の ビールを
修飾語

修飾語(句)の原則:修飾語は修飾語の前。それも直前につく。

より広く捉えれば、補足語も述語の「係る」ものですので、述語が文の最後に来
るのもこの原則のためだと言えます。

2. 修飾語(句)の種類

修飾語(句)の種類は、それ自体の品詞ではなく、それが何を修飾しているかに
よって分類されます。

連体修飾語:本言、即ち名詞などを修飾する語。

【例】青い花、元気な人、病気の犬、母からの手紙

連用修飾語:用言、即ち動詞・イ/ナ形容詞・副詞などを修飾する語。

【例】早く走る、元気に働く、とてもよい、走って帰る、

泣きながら帰る、銃を手に戦う

連体修飾節:連体修飾の働きをする節。(→第7章)

【例】きのう来た人、私があなたに挙げた指輪
27
3. 省略できない修飾語

修飾語は原則として、なくとも文は成立しますが、例外的に次のような例では修
飾語(太字)を削除すると文が成立しません。これには、次のような場合があり
ます。

1. 連用修飾語が注意上、述語の“補語”になっている場合。
風が激しくなる。 トウガラシがピリッとする。
2. 修飾される名詞が意味的に希薄なものである場合。
階段を上品ぶった足取りで登る。 題ところで変な匂いがする。
あんな家は行く気がしない。 彼女はきっと来るはずだ。

問題1 次の文章から修飾語をその被修飾語とともに指摘しなさい。
その際、修飾語が連体修飾語か連用修飾語かの区別もしなさい。

“けし切りそば”は、何よりもそののど越しと香りが身上。一口すすれば、その
のど越しの爽やかなこと、けしの実の香ばしいことにハッとさせられる。これを普
通のそばで味わうことなど、到底できはしない。(柴田書店『OYSY そば』より)

問題2 太字部分の中で性質の異なるものを一つ選びなさい

1. 隣の車が派手に見える。 2. 派手に生きるのは嫌いだ。
3. 今夜は派手に遊ぼう。 4. 彼は派手に金を使う。

コラム12:修飾語に関する外国人の誤用例

1.「ⅹ寒いの日」
れんたい修飾をする時に「の」を用いるのは、修飾語が名詞の時ですが、そ
れを他の品詞にもつけてしまった例。中国語では連体修飾に「的」をいつも使
うので、「の」と「的」を同じと考えた誤用。

2. 「ⅹビールを3本を飲みました」
「数詞・助数詞」(第1章5.)でも述べましたが、「3本」は「飲む」の
数量を示す連用修飾語ですが、これを目的語と考えてしまった例。数量は目
的語の中に含める外国語が多いため、こういう誤用が起きます。

28
2 – B 並列の関係

「並列」とは、2つ以上の要素を並べて示すことです。英語では“and”を使います
が、日本語ではつなぐ品詞によって手段が違います。

o 名詞+名詞:並列助詞「と」「や」「か」「とか」「なり」や、「及び」
「あるいは」などを用いる。
o 動詞・イ/ナ形容詞:
1 テ形 歌って+踊れる、早くて+安い
2 連用形 よく遊び+よく学べ、短く+はかない(人生)
3 「たり」 晴れたり+曇ったり、甘かったり+辛かったり
4 「し」(動詞のみ) 掃除もしたし+洗濯もした
o その他:列挙する。
桃太郎は犬・きじ・猿を連れて鬼退治に出かけた。
並列関係にある語句は原則として前後の入れ替えが可能です。従って、次のよう
なものは、並列関係として考えません。
デパートに行って、買い物をする。(=行ってから)
新聞を読み、法相の辞任を知る。 (=読むことによって)
これらの用法については第8章「接続」を参照してください。
並列と構造:並列関係にある語句は、構造も並列です。

【例】 掃除もした し、洗濯もした から、寝よう。

問題3 太字部分の中で用法他と異なるものを一つ選びなさい。

1. 涼しくて食べ物のおいしい所に行きたい。
2. 台風が来て新幹線が遅れた。
3. 京都は静かで美しい。
4. 彼は心が広くて穏やかな人だ。

29
パート2
述部の構造

30
第二部では、述語の部分に関係した文法事をまとめて扱います。日本語は同市な
どの述語が文末に来ますが、たいていの場合、その語末は助動詞や助詞がついてい
ます。これらは述語に結びついて様々な意味を付加します。以下では助動詞の働き
に限定し、主なものを種類別に取り上げていきます。

レミは 親方に 芸を 見え ― させ ― られ ― てい ― た ― らしい


使役 受け身 進行 過去 推量



ス テ ム

ペ ン |

ク ス ド

31
第3章 テンス・アスペクト
最初の章ではテンス(時制)とアスペクト(相)を見てい行きましょう。この二
つはともに「時」に関係するので混同しやすいのですが、下の英語の例を見てもら
えば、この二つが異なる次元の概念であることがわかると思います。「現在進行0
とか「過去完了」というものは、実はテンスとアスペクトの組み合わせなのです。

テンス
過去 現在 未来
進行 過去進行 現在進行 未来進行
アスペクト
完了 過去完了 現在完了 未来完了

ところでこのテンス、お隣の中国語にはありません。「我吃飯(私は食事をす
る)」「我昨天吃飯(私はきのう食事をした)」で違うのは、「昨天(きのう)」
という時の副詞だけです。つまり、中国語は過去を表す文法手段(語ではない)、
即ちテンスがないのです。「過去・現在・未来」といった“概念”はあっても、そ
れを文法的に表す手段がありません。

実は日本語でも店ストアスぺクトの区別が判然としない場合があります。「映画
を見タか」に対して「いや、見なかった(過去))「いや、まだ見ていない(完了)」
の両方が答えられます。つまり、「タ」は過去、完了の両方の意味を持つのです。

o 第4章のポイント
 テンスとアスペクトの区別を明確にすること
 継続動詞と瞬間動詞は重要。例も言えるように。また、この分類方法でどち
らともつかない例、分類と実際の用法が食い違う例なども重要。
 「ている」「た」などの用法を理解すること。

32
1 テンス

テンス:会話の時点、即ち[現在]を基準にして、その文で表す事柄がそれより前か
後かを示す文手段。

1. 終止形の表すテンス

終止形が表すテンスは、その述語の性質によって異なります。このため、「行く」
や「書きます」の形を“現在形”と呼ぶのは適切ではありません。これらはそれぞ
れ辞書形、マス形と呼ばれます。

A 動作性述語:動作動詞。未来を表す。

明日は学校に行きます。[未来]

B 状態性述語:上記以外。現在(及び未来も)を表す。

象がいる。いい本がある。[現在](状態動詞)

桜は美しい。桃はきれいだ。[現在](イ/ナ形容詞)

彼は独身だ。「現在」(名詞+ダ)

明日は東京にいる。未来から大学生だ。[未来]

タ形 ル形
過去 現在 未来
動作動詞 書いた (書いている) 書く
あった ある (ある)
状態性述語 若かった 若い (若い)
学生だった 学生だ (学生だ)

上の表からもわかる通り、基本的に日本語のテンスは過去、現在、未来を表すの
にル/タの対立―非過去/過去の対立しか持ちません。このため、「行く」や「書
きます」の形を“非過去形”と呼ぶことがあります。

2. テンスのない文―超時制

全ての文が「過去・現在・未来」のいずれかのテンスを表すわけではありません。
時に関係なく、過去から未来永劫真理であるような内容の文は特定のテンスを持た
ず、“超時制”の文と呼ばれます。この時は、述語が動作動詞であっても時制は未
来ではありません。

33
← 超時制 →
時制 過去 現在 未来
t

会話時
【例】蟹は横に歩く。1たす1は2だ。水素が燃焼すると水になる。

3. 従属節の中のテンス一相対テンス

従属節の中の「タ」は過去ではなく、“主節の述語より前の時点”を指します。
主節が過去であっても、それより“前”を指します。会話の時点ではなく、主節の
「時」を基準にしてその前後を問うので“相対テンス”と呼ばれます。

明日来た人にはチョコレートをあげます。(来る→あげる)

ハワイに行った時、ビギニを買った。(行く→買う)

上記太字の「た」を「ル」形にすると事柄の順序が逆になります。

この相対テンスがある代わりに、日本語には英語のような「時制の一到」があり
ません。ですから「ⅹ坂を登ると、大きかった家がありました」などとは言いませ
ん。ただし「大きかった家も火事で跡形もなっかた」のように、主節との時制のズ
ルがある場合には可能です。

問題1 太字部分の中で用法の異なるものを一つ選びなさい。
1. 明日友達に会います。 2. 大根はもうすぐ茹で上がります。
3. 今日は出かけます。 4. 大根は塩水で手早く茹でます。

問題2 太字部分の事柄の順序をそれぞれ考えなさい。
1. テストの出来た人は帰ってもいいです。
2. ごはんを食べる時、いただきますと言います。
3. 友人の家に行く途中でおみやげを買った。
4. 初めてさしみを食べた時、まずいと思った。

34
2 アスペクト

2 – A アスペクトとは

アスペクト・(相):動作や出来事がどの段階まで来ているかを示す文法手段。例
えば「走る」という動作の始まりなのか、最中なのか、終わった所なのか、等。
それが「いつ」のことかはテンスが指定する。

1. アスペクトの表現例

下図はそれぞれの表現のテンスが「現在」の場合。
走 走
る り 走
こ 出 っ
と す た

走っている

2. アスペクト表現のいろいろ

開始直前 これから行くところだ
開始 原橋を書き始める・雨が降り出した
馬が走っている・今書いているところだ
進行
只今会議中です・何時間も歩き続ける
中断 観客が席を立ちかけた時、銃声がした
今来たばかりだ・丁度今来たところだ
完了・結果 名前が書いてある・人が殺されている
全部飲んでしまった
これまで平和憲法を守ってきた(現在に至るまで)
変化
これからもそうしていくだろう(これから先)

これらの表現からもわかる通り、「ている」などは一つの表現が様々アスペクト
を表すことがあるので注意が必要です。また、一つの表現がアスペクトを表したり、
そうでなかったりすることもあります。以下はアスペクト表現ではありません。
*「タ」の用法については 74 ページを参照。

35
先生はきのう来ませんでした。(過去:テンス)

明日はテストがあるんだった。(想起:ムード)
しまう 水性インクだと水に流れてしまう。(反期待:ムード)
だす 手品師が帽子から鳩を取り出した。(複合動詞の一部)
いく 伯父さんの家に寄って行こう。(複合動詞の一部)
ところ この劇所は大統領が暗殺された所です。(=「場所」)

3. 連体修飾節中のアスペクト

連体修飾節の中に限って、結果完了の「ている」は「た」で置き換えることが出
来ます。進行の[ている]は「た」に変わりません。

眼鏡をかけている→眼鏡をかけた人(=眼鏡をかけている人)

走っている→走った人(≠走っている人)

なお、連体修飾節の中の[た]は性質・状態を表すものもあります。「曲がりく
ねった道」「尖った鉛筆」は、それぞれ最初からまがって/尖っていたのですか
ら、完了や過去ではありません(→本省 2-B「第 4 種の動詞」を参照)。また、
「朝日にはためく日章旗」のように連体修飾節の中の「ル」で進行(=はためて
いる)の意味を表す例もあります。

問題1 太字部分がアスペクトのものを選びなさい(いくつでも)。
1. 外国人が私に話しかけてきた。 2. やっと原橋ができた。
3. 急に雨が降り始めた。 4. 日本は長い間外光を拒否して来た。
5. 道路に飛び出してはいけません。 6. 母は今、電話中です。

問題 2 次の太字部分の中で用法が他と異なるものを一つ選びなさい。
1. 初めて月面に立った人 2. 帽子をかぶった人
3. べっこうのめがねをかけた人 4. 赤い車に乗った女性

36
2 – B 「ている」

「ている」の意味:「ている」は状態を表しますが、どの状態かは、動詞によって
異なります。

瞬間動詞+ている→結果・完了相:動作が完了し、その結果が何らかの形で残
っている。

継続動詞+ている→進行相:動作が行われている最中である。

「進行」の―ている
V-ている

例:走っている

【結果・完了】の―ている

V-ている

例:結婚している

〈アスペクトによる動詞分類〉

名称 定義 特徴 例
動作・出来事 普通「てある」がつかな 結婚する・死ぬ・
瞬間動詞 が一瞬で完了 い。「する」→「した」→ 起きる・開(あ)く・
する動詞 [している]の順。 閉まる
「する」→「している」→
動作が一定以
「した」の順。共起する表 着く・走る・開ける・
継続動詞 上の時間かか
現:「長時間」「ゆっく 閉める
る動詞
り」「…し続ける」等。
普通は「ている」の形で使
ある・いる・要る・
状態動詞 状態を表す えない。可能形もここに含
できる・書ける
まれる。
第 4 種の動
状態を表す いつも「~ている」の形で
詞(状態・ すぐれる・そびえる・
(「~てい 使われる(連体修飾節内で
性質を帯び ばかげる
る」の形で) は「~た」が普通)。
る動詞
*このほかに、「存在する」「実在する」「関与する」「違う」「適する」など、
「ている」がついても意味が変わらない動詞もあります。

37
なお、動詞によっては瞬間動詞・継続動詞の区別がつけにくいものまります。こ
のような動詞の場合、「ている」の意味も二通りになります。

【例】彼女はいい和服を着ている。(結果・完了)

今、便衣室で服を着ている。(進行)

瞬間/断続の区別はコトバの区別ですので、例えば「太っている」が結果・完了
相だからといって、ある一瞬に「太った」というわけではありません。また、特別
な文脈の場合、「瞬間動詞+ている」が“断続相”を「継続動詞+ている」が“結
果・完了相”を表すこともあります。

【例】自動ドアがゆっくりと閉まっている。 (断続)

芥川派はこの旅館であの「河童」を書いている。 (結果・完了)

 「窓が開いている」と「窓が開けてある」の違い

「自動詞+ている」と「他動詞+てある」はほぼ同じ意味を表しますが、前者は主
語の「状態」を表し、後者はそれに加えて動作主の存在を暗示します。以下の例の
違いを見てください。

新鮮な空気が入るように、窓が開けてあります。

鍵が壊れているので、この窓はいつも開いています。

 「ている」のその他の用法

(職業)私は日本語を教えています。

(習慣)毎朝瞑想をしています。

(服す主語による同一動作の繰り返し)

この美術館は毎日多くの人が訪れている。
以上のような時、英語では現在形を使います。

左のページの動詞分類に基づいて、この他に瞬間動詞、継続動詞の例を三
問題 3
つずつ挙げなさい。

問題 4 次の各文のテンスは結果・完了か、進行が判断しなさい。
1. にわか雨が降っている。 2. お客さんが来ている。
3. 彼はずいぶん痩せている。 4. あそこで待っているよ。
5. 彼女の住所を知っていますか。 6. 珍しい本を持っている。

38
コラム
13:アスペクト関連表現
次のような表現の対は似てはいますが、それぞれ性格の違う述語と結びつきます。
間は/間に
夏休みに間は九州にいます。(状態)
夏休みの間にレポートを完成させます。(完了)

うちは/うちに
学生のうちは勉強は第一だ。(状態)
学生のうちに将来の計画を立てなさい。(完了)
同じ動詞でも次のような表現と一緒に使うとアスペクトが違ってきます。
まで/までに
夜までお酒を飲む。(断続)
夜までにお酒を飲む。(完了)

これらの対では「に」のついた方はいずれも時間上の一点を指し、「に」のつかない
方は時間の範囲を指します。一字違いでたいへんな違いですね。

14:「中」あれこれ
このごろテレビで「考え中」という言い方が流行っています。進行を表す「…中」
は、本来は「会議中」のように漢語と結びつくのでおかしな形態なのですが、動詞の連
用形が全て「中」と結びつけないわけではありません。「着替え中」「ペンキ塗り替え
中」など、「…をする」と言えるものなら可能のようです。「着替えをする」は言えま
すが、「考えをする」とは言えませんね。
ところで、この「…中」というのは、
動作を表す名詞+「中(ちゅう)」
という表現で、動作の「進行」でしたね。ところが「故障中」、「妊娠中」、「停車
中」「来客中」などの表現は「結果・完了」の意味を表し、例外となります。一時的な
状態を指すようです。
この他にも、時の名詞とともに用いて、「一日中」「一年中」「夏中」など、ある状
態や動作が断続する時間の長さを表す場合、「今年中に」「12 月中に」「春休み中に」
などのように“締め切り”を表す場合もあります。後者の場合は上のコラムで述べた
「に」がついていることに注目してください。

39
第4章 ムード
ムードは別名「陳述」「法」「モダリティ」とも呼ばれ、「話者の心的態度」を
表します。これは、文の中の「事柄」以外の話者の主観的な部分で、たいていは文
末に位置します。

ことがら ムード
うまいそばを食べ +ない(願望)
うまいそばを食べ +よう(意志)
うまいそばを食べ +なさい(命令)
うまいそばを食べ +ませんか(勧誘)
うまいそばを食べる +だろう(推量)

ムードを表す単位は助動詞が多いですが、この他にも「形式名詞+だ」が全体と
して様々な意味を持ちます。見過ごされることが多いのですが、重要チェックポイ
トです。巻末に付録として主なものを挙げておきましたので、そちらを参照してく
ださい。

本省では、これらムード表現の中でも、日本語教師にとって難しいもののみを取
り扱うことにします。

o 第 5 章のポイント
 推量のムードのヨウ・ソウ・ラシイの特徴をそれぞれ把握する
 ヨウ・ソウ・ラシイそれぞれのムード以外の用法を区別する
 ハズダ・ワケダの用法の整理
 「~んです」の使い方を理解する

40
1 推量のムード/ヨウ・ソウ・ラシイ

ヨウ・ソウ・ラシイの複雑さは、推量のムードとしてのこれらの使い分けに加え
て、それぞれがムード以外の用法も持っていることによります。 1.

ヨウダ
比況

伝聞 典型
ソウダ ラシイ

(斜線部がムードの用法)

1. ヨウ・ソウ・ラシイの使い分け

ヨウ・ソウ・ラシイの使い分けは、表そうとする状況がどの表現の典型的使い方
に最も近いかで決まります。以下にそれぞれの表現の典型例を示します。

用例 :(アメダスの面象を見て)明日は雨が降るようだね。

用法 :話し手の判断、意見を述べる時など。

情報源:話し手自身が見たこと・体験したこと

確信度:中程度
用例 :(空が急に暗くなったのを見て)今にも雨が降りそうだ。
(冷え切ったカレーを見て)まずそうだなあ。
用法 :(動詞)ある状況が今にも起こるという時。

(イ/ナ形容詞)見た目に「いかにも…だ」という時に使う。動詞

でも「いる・ある・できる」などは状況性述語なので形容詞と同

じ扱いになる。
情報源:話し手自身が見たこと
確信度:高い
用例 :(他の人の話を又聞きして)明日は雨が降るらしいね。

情報源:話し手が他人から聞いたこと、本などで読んだことなど、間接的

に得た情報

確信度:低い
上記の特徴は典型的な場合のものであり、これらが全て満たされていないとそれ
ぞれの表現が使えないというわけではありません。なお、口語では、「…みたいだ」
の形もあります。

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2. 活用などの問題点

ムードはそれぞれも主観的表現なので、しばしば活用に制限があります。

ヨウダ・ラシイ:否定・疑問形なし(ⅹ行くヨウダハナイ/行くラシイデスカ等)

ソウダ:1.2 つの否定形あり。(行きソウニない/行かナサソウダ)

2.品詞によって否定形が違う。

動 詞:行きソウモ/ニ(ハ)ナイ

イ/ナ形容詞:辛ソウデハナイ・元気ソウデハナイ

3.「いい・ない」→「よさそう・なさそう」になる。

3. ヨウ・ソウ・ラシイのムード表現以外の用法

ヨウ:1 比況(比喩・例示)

【例】君の瞳はまるで真珠のようだ。

2 例示:引き合い・前置き

【例】「花に嵐」の喩えもあるように、いいことずくめではないだろう

3 「方法」【例】このテレビは直しようがない

ソウダ:(伝聞)【例】田中さんは来年定年だそうだ。

ラシイ:典型(いかにも…)

【例】学生らしい格好・女らしい人・田中さんらしいやり方

問題 1 次の各組の太字部分で用法の異なるものを一つ選びなさい。
A.1.どうやらあいつは女らしい 2.彼はとても男らしい
3.あそこにいるのは田中らしい 4.明日は雨ラシイ
B.1.体が氷のようだ 2.この計画は失敗のようだ
3.店は休みのようだ 4.どうやらこれは縄文土器
C.1.罠にかかった鼠のようにもがく 2.蝶のように舞う
3.彼が言うように、帰った方がいい 4.飛ぶように売れた

コラム 15:推量としていない推量のムードの用法

森昌子の歌に「痩せたみたいねお母さん」というのがあります。母親を今、背負っ
ていて「みたいね」もないのですが、はっきりとした判定を避ける時にも推量のムー
ドが使われることがあります。

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2 確信のムード/ハズダ・コトニナル・~ニチガイナイ
ある事柄に確信を抱いているときに用いる表現です。

1. ハズダとそのほかの表現
 はずだ

話し手が客観的な証拠に基づいて推測した結果の確信。

話し手自身の確信なので、相手に対する質問には使わない。

【例】ⅹ先生、あしたは来るはずですか。

自分自身のことにも使えない。自分の行動は自分が決定できるので、推測すること
自体がナンセンスである。

【例】ⅹ私はあしたここに来るはずだ。

【例外】確かここに置いたはずだけど…(記憶が不確か)

何度も君に忠告したはずだよ。(確認・皮肉)

否定形の違い

1.~ナイハズダ――否定を含む事柄を確信。

「田中は今日は来ない」+はずだ。

2.ハズガナイ―――確信自体の否定。1 より強い否定。

「田中が今日来る」+はずがない。(=わけがない)

 ことになる

「ハズダ」が話し手の推論の色彩が濃いのに対し、「ことになる」は論理的・客観
的な帰結として結論を導く性格が強い。本章で扱う「ワケダ」とも共通点を持つ。

誰しも、信条というものがある はずである/ⅹことになる。

24 日ですと仏滅 ということになります/ⅹのはずです。

 ~にちがいない

同じ確信だが、主観的な「思い込み」でもかまわない。客観的な証拠を必要とし
ない。

あしたは雨が降る に違いない/はずだ。

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「ハズダ」は証拠から確証を抱く時に使うので、その逆の、結果から原因を推論
する時には使えない。「にちがいない」はそのような時にも使える。

地面が濡れている。きのう雨が降った ⅹはずだ/にちがいない。

2. ハズダの「確信」以外の用法 質問氷解・納得・当然

不思議に持っていた事柄の理由が後からわかって納得する時に使う。「道理で」
「なるほど」などがつく。「ワケダ」「~のも当然だ」に置き換え可能。

【例】うまいはずだ、これ松坂牛だって。

問題 1 太字部分の用法が他と異なるものを一つ選びなさい。
1. 「彼女も今回の調査に参加するのかい」
「はい、そのはずです」
2. 「彼女、フランス語うまいねえ」
「うまいはずよ、3 年もパリに留学していたんですって」
3. 「上州室、俺の顔を見忘れたわけではあるまいな」
「貴様、死んだはずでは…」
4. 「きのう、久しぶりにに田中さんを見かけましたよ」
「そんなはずはない、田中は一週間前に死んだんだ」

問題 2 太字部分の用法が他と異なるものを一つ選びなさい。
1. 指紋が残っているので、彼はここにいたことになる。
2. 今年は 94 年ですので、この会社にも 10 年いることになります。
3. 指紋があるからといって、彼が犯人だということにはならない。
4. 来年から転勤することになりました。

コラム 16:「こんなバスでは…」の不思議
形式名詞によって否定の形は一様ではありません。

‥ではない ‥はない
そんなことを言う もの O X
彼は今日、来る はず X O
首相が辞任する わけ O O

しかも、「はず」に関して言うと、「こんなはずではなかった」という形が過去に限って
現れます(現在ならば「そんなはずはない」)。「こそあど」の使用も何かの制限がある
ようです。

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3 説明のムード/ノダ・ワケダ

相手に説明したり、説明を求めたりする時の表現です。

1. のだ(…んです)

のだ:前述の文や状況に対する補足説明をする。

「名詞+だ」につくと、「だ」が「な」になる。

【例】学生だ+のだ→学生なのだ

「…んですか」は単なる Yes-No 疑問文ではありません。なにらかの説明を求めて


いる質問です。

【例】田中さんは来ませんか。 →はい、来ません。

田中さんは来ないんですか。→ええ、病気だと言ってました。

 「のだ」の文型
a. Q?→Aんです:質問等に対する説明を提供する。
【例】「熱心に勉強しますね」「あしたテストなんです」
b. S1。S2んです:前の文に対する補足。
【例】ちょっと待ってください。話があるんです。
c. (状況)→Sんです(か):状況に対する説明(を求める)
【例】(町で偶然友人に会って)「今から映画に行くんだけど、一緒に行かな
い?」
(遅く帰宅した夫に)「遅かったのね」「会議だ」
d. Sんです:何かを言外にほのめかす。
【例】(買い物を頼まれて)「今勉強しているんだ」(断り)
なお、この説明のムードの他に「車に気を付けるんですよ」など、子供に注意す
るときの用法もあります。
文章の中では「のだ」は段落を締めくくるときによく使われるようです。
‐文章が、ばらばらの文の集まりでなく、まとまった内容を構成していることを
示す特性結束性と言います。結束性は談話文法の領域に属するので、「のだ」は談
話でも扱われるべきかもしれません。

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2. わけだ

わけだ:推論の結果、当然そうなる事態(論理的帰結)を表す。「ことになる」と
置き換えられる。

【例】京都の伯母が「ゆうべ泥棒はんが来はって…」と言っていた。

泥棒に敬語を使っているわけだ。

なお、この説明のムードの他に「疑問氷解」のハズダと同じ用法もあります。

→本章2.ハズダのムード以外の用法を参照

【例】静かなわけだ(=はずだ)、もうみんな寝ている。

〈ワケダの否定〉

可能性そのものの否定(0%)。(=ハズガナイ)
ワケガナイ
【例】あんなに小さい関取が横綱に勝てるわけがない。
自分が言ったことを相手が間違って解釈しないよう、相手が
考えかねないことを先取りして否定する。
ワケデハナイ
【例】来月から地方の支社に転勤だ。と言っても左遷される
わけではない。
時としてあることをしたいという欲求に駆られるが、それは
主として道徳的・倫理的理由からしてはいけない、という意
ワケニハイカナイ
味を持つ。
【例】少々の病気で仕事を休むわけにはいかない。

問題1 太字部分の種類が他と異なるものを一つ選びなさい。
1. 急に黙ってしまって、一体どうしたのですか。
2. その様子ではずいぶん苦労されたのですね。
3. 僕の辞書を取ってください、その赤いのです。
4. その魚はじっとしていますが、それが普通なのです。
ヒント:「種類」とあることに注意。品詞が違うものがある。

問題2 太字部分の用法が他と異なるものを一つ選びなさい。
1. また円高。いつまでも不況が長引くわけだ。
2. 冷房が「強」になっている。道理で寒いわけだ。
3. 今日は父の日か。子供達がやさしいわけだ。
4. 明日は入社式。僕もいよいよ社会人になるわけだ

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コラム17:「これから寒くなっていくでしょう」と
「これから寒くなってくるでしょう」

上の二文は同じ事柄を表していますね。「いく」を「くる」に変えても意味
が変わらないのは、どうしてでしょう。

前者は、アスペクトとしての「ていく」で、“これから先の変化”を表しま
すが、後者の「てくる」はアスペクトではありません。もしそうなら“現在に
至るまでの変化”を表すはずですが、上の文はこれから先のことについて述べ
ています。この「てくる」はムードとしてのもので、話し手にある事態がふり
かかると考えれば説明がつきます(「雨が降ってきた」と同じと考えればよい
でしょう)図示すれば以下のようになるでしょう。結果として同じですが、意
識は違うのですね。

18:「タ」 の表すムード

1. ぞんざいな、さし迫った命令
【例】邪魔だよ、どいたどいた!
2. 想起(状態性述語のみ)
【例】しまった、あしたは試験だった!
3. 期待・予期していたことの表現
【例】「バスはまだ?」「ほら、来た来た。」
4. 過去の事実に対する反想
【例】普通の人間なら即死していたよ。
5. 主観的な感情の表出
【例】それはよかったですね。ああ疲れた。さあ困った。
6. 意志決定
【例】よし、そいつは俺が買った!

「タ」はテンスあり、アスペクトあり、ムードありと用法が様々です。区別で
きるようにしておきましょう。この他にも「てしまう」などもテンスとムード
の用法を持ちます。注意しましょう。

(→第4章2-A.「アスペクト」参照)

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第5章 ヴォイス
ヴォイスは「態」とも言います。お馴染みのものとしては受動態・使役態があり
ますが、そもそも「ヴォイス」とは一体何でしょう。

ヴォイスを一言で説明するのは難しいのですが、大ざっぱに言えば「ある事柄を
誰(何)を中心に述べるかによって動詞の形が変わることです。実例を挙げて説明
しましょう。

(1)子供が育つ というのは子供が一人で成長する述べ方ですが、実際は育て
る人間がいます。つまり、育て側から述べれば。

(2)親が子供を育てる になります。よってこの二文は違う態を持ちます。
(1)は自動詞で、(2)は他動詞ですね。自他に対立は態の一種なのです。

次に、ある事柄を述べるのに何人の人物が登場するかによっても動詞の形は変
わります。(1)は子供の側から述べられ、登場するのも一人ですが、(2)では
親の側から述べられ、登場人物も親と子供の二者です。では、子供の側から述べ、
しかも親も登場させたい時はどう表現するのでしょう。

(3)子供が親に育てられる になりますね。これは受動態です。この観点から
言えば、(3)に対する(2)は能動態です。育てることを命ずる人間がいれば、
登場人物は三者になり、「王は子供を乳母に育てさせた」「乳母は王に子供を育て
させられた」などの言い方が出てきます。前者を使役態、後者を使役受け身態と言
います。

これらの動詞の形の変化は、基本的に同じ動詞から派生していることを前提にし
ています。ですから、「死ぬ」と「殺す」が上の(1)と(2)の関係と同じでも、
これらを態とは言いません。実際、自他の対立に関して言えば、「育つ」と「育て
る」が同じ動詞から派生していることは言いにくいので、自他の対立をヴォイスに
含めない場合もあります。いずれにしても自他は第1章で扱いましたので、ここで
は扱いません。なお待遇表現もヴォイスに入るますが、ここでは扱いません。

o 第6章のポイント
 それぞれのヴォイス氷原の形を正確に把握すること。特に受け身・可能の形の
作り方の規則をしっかり覚えること
 それぞれのヴォイス氷原の分類や用法を理解すること

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1 受け身

1. 受け身形の作り方

受け身の形は、元の動詞の活用によって異なります。この形は尊敬語にも使われ
ます。受け身形は元の動詞の活用に関わらず、RU–verb です。・

U-verb RU-verb 不規則動詞


kak-U tabe-RU する 来る 大文字は
-are-RU -rare-RU される 来られる 活用語尾

2. 受け身構文の種類
 直接受け身

能動態の目的語を主語にしたもの。英語にそのまま直訳できる。

現金が 何者かに* 盗まれた

何者かが 現金を 盗んだ (能動態)

*動詞よって行為者を表す格助詞(普通は二)が変わります。
授受動詞:優勝者が市長カラ/(ニ)花束を渡された。

感情に関係する動詞:鹿野城は多くの人々ニ/カラ愛させられた。

生産・破壊に関係する動詞:この寺は中国の名工ニヨッテ建てられた。

直接受け身にできないもの
自動詞:飛行機が空を飛ぶ→ⅹ空が飛行機に飛ばれる

(参考)犬が子供に噛みついた→子供が犬に噛みつかれた

相互動詞:「と」を取るもの(花子と結婚する、仲間と競い合う)

再帰動詞:動作が主語自身に及ぶもの(シャワーを浴びる、足を折る)

受け身形に相当する語彙がある動詞(貸す―借りる、預ける―預かる)

直接受け身と被害の意味:直接受け身は多くの場合、直接被害の意味が付随するが、
それは元々の動詞の意味による。「褒められる」などは「恩恵」になる。

特殊なタイプ 非情の受け身:主語が無生物の直接受け身。被害の意味なし。

【例】会議が開かれる・花火大会が行われる

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 間接受け身

主語がある行為・出来事によって間接的な迷惑を被る。自動詞も間接受け身にでき
る。英語の直接受け身に直訳できない。別名迷惑受け身、被害受け身。直接受け身
と異なり、[ ]内の行為者を表す格助詞は二のみ。

(自動詞から) 母親が[子供に泣か]れた

(他動詞から) 社長が[泥棒に現金を盗ま]れた

迷惑を被る人 行為・出来事

ヲ格名詞がついても授受動詞などの直接受け身のことがあるので注意。

【例】優勝者が市長から花束を渡された。(直接受け身)

自動詞にも間接受け身にできるものとできないもの(所動詞)がある。

受け身になる(能動詞- 受け身にならない(所動詞-inactive)
active)
ある・見える・聞こえる・要る・似る・似合う・
見る いる
起こる・異なる・伝わる・可能動詞(「できる」
消す 死ぬ
「読める」など)
他動詞 自動詞

特殊なタイプ 持ち主の受け身:

ヲ格名詞が「(主語)の~」の関係にあるもの。

【例】私は足を踏まれた。「部分」私は財布を盗まれた。「持ち物」英語話者は
間接受け身構文を持たないため、「私の財布が盗まれた」と直接受け身で表現して
しまうことがある。

問題1 受け身の形として正しいものを選びなさい
働かれる・信じられる・聞かれる・借りれる・読める・
行かれる・開(あ)けられる・開(ひら)かれる
問題2 次の文は直接受け身か間接受け身か、区別しなさい。
1. 主君を敵方に殺された 2. 頭を殴られた
3. おかしを食べられた 4. 手紙が届けられる
5. 人がワニに食われた 6. 親に怒られる
7. おばさんに席をとられる 8. 警察から感謝状を贈られる

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2 可能・自発

可能は、下に述べる可能形と「ことができる」で表されます。自発(後述)の時
も同じ形を使うことが多いので、ここで一括し扱います。

2 – A 可能

1. 可能形の作り方

可能の形は、元の動詞の活用によって異なります。RU-verb は受け身と可能の形
が同じです。「見れる・着れる」などのいわゆる「ら抜き言葉」は正しい形ではあ
りませんので注意しましょう。可能形は、元の動詞の活用に関わらず RU-verb です
(活用部分を大文字で示してありません)

U-verb RU-verb 不規則動詞


kak-U tabe-RU する 来る
-e-RU -rare-RU される 来られる
(*ら抜き言葉) *-re-RU *来れる

「見える」「聞こえる」は可能形ではなく、後述する自発の形です。可能形は「見
る→見られる」、「聞く→聞ける」になります。

なお、国語辞典巻末などの動詞活用表には、「五段動詞+れる、一段動詞+られ
る」として、受け身・尊敬・可能・自発が同じ形になっています。これは「五段動
詞語幹+れる」がかつて可能の意味で使われていたためで、「行ける、書ける、読
める」などの五段動詞の形をこれと区別して可能動詞ということがあります(上の
表の U-verb の形です)。現在では五段動詞には可能動詞の形を使うことがほとん
どですが、「明日は忙しくて行かれない」などの言い方が残っています。

2. 可能構文の特徴
 可能構文を作れるのは意志動詞のみ。
【例】ⅹ雨が降れる、病気が治れる、犯人が捕(つか)まれる
 主語は有生名詞のみ。 【例】ⅹこの机は大きすぎて部屋に入れない
 目的語の「を」が「が」に変わることがある(任意)。
【例】英語を話す→英語を/が話せる(参考:駅を出る→ⅹ駅が出られる)
 主語が「ニ」になることがある。
【例】あなたには信じられますか?貴様にできるものか

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2 – B 自発

自発とは、「何かが自然に、ひとりでにある状態になること」を表します。自発
を表す形は固有のものを使わず、動詞のよって可能形を使ったり受け身形を使った
りすることが多いので、ふつう「自発形」という各前は特に使いません。自発は
「ことができる」で置き換えられません。

自発を表す形
可能形を使う:下の場合を除くほとんど全ての場合
魚が釣られる、糸が切れる、家が焼ける、あの映画は泣ける
受け身形を使う:思考の動詞、「待たれる」
犯人はこの道を通ったと考えられる/思われる、夏休みが待たれる
独身の形を使う:「見える」、「聞こえる」、「煮える」
今日は富士山が見える。

問題1 可能の形として正しいものを選びなさい(いくつでも)。
切れる・起きれる・書けれる・塗られる・借りれる・
遊べる・走れる・死ねる・捕(つか)まえられる

問題2 次の太字部分で用法の異なるものを一つ選びなさい。
1. 原稿が全部書けた。 2. ボタンが取れた。
3. 格安航空券が買えた。 4. 生まれて初めて泳げた。

問題3 次の中で種類の異なるものを一つ選びなさい。
1.燃える 2.汚れる 3.枯れる 4.破れる
ヒント:自動詞か他動詞か。自発の形はどんな形

コラム19:「あいつは話せる奴だ」―可能構文の特殊な用法

可能形では「話せる奴だ」「この酒は飲める/いける」「このはさみはよく切れ
る」などの用法もあります。これは「我々が十分に…できる、とてもいい」とでも
いう意味で、自発とも少し違いますね。

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3 使役

1. 使役形の作り方

使役の形は2種類あり、長さによってそれぞれ長形・短形としておきますが、特
に断らなければ長形の方を一般に「使役形」と呼びます。受け身形や可能形と同様、
長形は RU-verb ですが、面倒なことに短形の方は U-verb です。ただし短形はテ
形・タ形以外はほとんど使われません。タ形で言えば「書かせた」は長形の活用、
「書かした」は短形の活用形です。

U-verb RU-verb 不規則動詞


kak-U tabe-RU する 来る
(長形) -are-RU -rare-RU させる 来させる
(短形) -su-U -sas-U さす 来さす
「その仕事、私にやらさせて下さい」なんて聞いたことがありませんか?「やら
させる」は余分な「さ」がついているので、ここでは「さつき言葉」と呼んでおき
ましょう。正しい形ではありません。許可の意味(後述)の時に時々使われるよう
です。

2. 使役構文の特徴

(自動詞から) (他動詞から)

太郎 が 働く 太郎が 歌を 歌う

親方が 太郎に/を 働かせる 母親が 太郎に 歌を 歌わせる

この助詞の違いによって、それぞれ もともと目的語のヲ格がるので、他
のニ使役・ヲ使役と呼びます。意味 動詞の場合はヲ使役はありません。
や用法の違いは特にありません。

3. 使役構文の用法

使役(強制):行為者の意志に関わらず強制する場合です。

先生は罰として嫌がる子供に歌を歌わせた。

許可・放任:行為者が何かをやりたがっている場合です。

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マイクを独り占めしないで、僕にも歌わせてくれ。(許可)

言いたい奴には言わせておけばいい。(放任)

 使役の特別な用法:誘発

彼女が花を咲かせる、ドラ息子が親を泣かせる

主語が、行為者(ヲ格)がそうする(なる)原因となる時に使います。後者の例で
は親に「泣け」「泣いていいよ」と言っているわけではありませんから、強制使役
でも許可・放任でもありません。主語は必ずしもそうさせたいと思っていません。

自動詞文から作られ、ヲ使役のみです。主語が無生物(又はそれに準ずる)か、述
語の内容が行為者が自立的にできないようなもの―感情など―に使います。

4. 使役と他動

「着せる」と「着させる」:「寝かせる」は使役形でしょうか。違いますね。
「書かせる」から使役の部分(-aseru)を取り除けば基本形「書く」は求められま
すが、「寝かせる」はそうなりません。「寝る」の使役形は「寝させる」です。こ
のように、見かけ上使役形とよく似た他動詞があるので注意が必要です。

これらが紛らわしいのは、単に形が似ているからだけでなく、意味や用法も似
ているからですが、例えば「着せる」と「着させる」には次のような違いがあり
ます。(太字部分が行為者)

母親が子供に服を着させる 母親が子供に服を着せる

ⅹ子供が人形に服を着させる 子供が人形に服を着せる

問題1 使役の形として正しいものを選びなさい(いくつでも)
勉強させる・行かさせる・表す・借りさせる・乗せる・
歩かさせる・磨かせる・読ます・逃がす・食わせる・見せる

問題2 次の太字部分で用法の異なるものを一つ選びなさい。
すみませんが熱があるようなので早退させてください。
お子様には毎日日記をつけさせて下さい。
子供がうるさいな。少しだまらせてくれ。
お疲れ様。只今お茶を持って来させますので。

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4 使役受け身

使役形を、さらに受け身にしたものです。ですから、結局は使役文のもとの文と
事実関係は同じなのですが、ある行動を自分からしたのではなく、強いられたとい
う意味は加わります。

歌を歌った ≠ 歌を歌わせられた

使役受け身の作り方

使役形を受け身にした形です(下線の部分が受け身の部分)。

短形の使役受け身は U-verb のみです。


U-verb RU-verb 不規則動詞
kak-U tabe-RU する 来る
(長形) -ase-rare-RU -sase-rare-RU させられる 来させられる
(短形) -as-are-RU X
なお、U-verb でもサ行五段活用(-s-u のもの)の場合は、短形は使えません。

【例】壊す(kowas-U)→kowas-ase-rare-RU・ⅹkowas-as-are-U

問題1 次の動詞を使役受け身の形にしなさい(複数ある時は全て)
読む・信じる・走る・並ぶ・起こす・教える

コラム20:受け身のような使役

一人息子を死なせてから出不精になった。

上の文は「一人息子に死なれて」としても事実は変わりません。さらに、上の文が
自動詞の使役だとすると二使役にもできるはずですが、これができません(ⅹ一人
息子に死なせて…)。「使役」の所で挙げた“誘発”の用法だとして、もう一つ気
になるのが「恋人を1時間も待たせる」という言い方です。「待つ」は他動詞です
が、同様に二使役にできません。確かに待たせようと思って待たせるわけではない
ので、“誘発”は他動詞の使役にもあるのかもしれません。ついでに言うと、負け
惜しみのように言う「今回は勝たせてやったんだ」のような武者詞にも類似点があ
ります。

そう言えば他動詞で、意志動詞であっても「財布を落とした」「花瓶を壊した」
のように無意識動詞のように使えますが、これに一脈通じるものがあります。

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