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分类号: H36 单位代码: 10346

密级: 公开 学号: 20161101007016

硕士学位论文
(学术学位)

中文论文题目: 现代中日语的移动表现到趋向表现语法化
路径的对比研究——以「〜てくる」
「〜て
いく」和“〜起来”“〜下去”为中心
日文论文题目: 日中現代語における移動表現から趨向表現へ
の文法化経路の対照研究 ——「〜てくる」「〜
ていく」と“〜起来”“〜下去”を中心に——

申请人姓名: 王婧

指导教师: 刘琛琛副教授

合作导师:

专业名称: 日语语言文学

研究方向: 日语语言学

所在学院: 外国语学院

论文提交日期 2019 年 5 月
现代中日语的移动表现到趋向表现语法化路径的对比研
究 —— 以「〜てくる」「〜ていく」和“〜起来”“〜
下去”为中心

论文作者签名:

指导教师签名:

论文评阅人 1:
评阅人 2:
评阅人 3:
评阅人 4:
评阅人 5:

答辩委员会主席: 毛文伟 教授 上海外国语大学


委员 1: 王忻 教授 杭州师范大学
委员 2: 孙立春 副教授 杭州师范大学
委员 3: 彭佳 副教授 杭州师范大学
委员 4: 郭玉英 博士 杭州师范大学
委员 5:

答辩日期: 2019 年 6 月 5 日

ii
日中現代語における移動表現から趨向表現への文法化経路の
対照研究—「〜てくる」
「〜ていく」と“〜起来”
“〜下去”を
中心に—

Author’s signature:

Supervisor’ s signature:

External Reviewers:

Examining Committee Chairperson:


Professor Mao Wenwei Shanghai Inernational Studies University
Examining Committee Members:
Professor Wang Xin Hangzhou Normal University
Associate Professor Sun Lichun Hangzhou Normal University
Associate Professor Peng Jia Hangzhou Normal University
Doctor Guo Yuying Hangzhou Normal Univerisity

Date of oral defense: June.5th.2019

iii
杭州师范大学研究生学位论文独创性声明

本人声明所呈交的学位论文是本人在导师指导下进行的研究工作及取得的研究
成果。除了文中特别加以标注和致谢的地方外,论文中不包含其他人已经发表或撰写

过的研究成果,也不包含为获得 杭州师范大学 或其他教育机构的学位或证书而使

用过的材料。与我一同工作的同志对本研究所做的任何贡献均已在论文中作了明确的
说明并表示谢意。

学位论文作者签名: 签字日期: 2019 年 6 月 7 日

学位论文版权使用授权书

本学位论文作者完全了解杭州师范大学 有权保留并向国家有关部门或机
构送交本论文的复印件和磁盘,允许论文被查阅和借阅。本人授权 杭州师范大学
可以将学位论文的全部或部分内容编入有关数据库进行检索和传播,可以采用影印、
缩印或扫描等复制手段保存、汇编学位论文。
(保密的学位论文在解密后适用本授权书)

学位论文作者签名: 导师签名:

签字日期: 2019 年 6 月 7 日 签字日期: 2019 年 6 月 7 日

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日中現代語における移動表現から趨向表現への文法化経路の
対照研究 ——「〜てくる」「〜ていく」と“〜起来”“〜下去”
を中心に——

现代中日语的移动表现到趋向表现语法化路径的对比研究

——以「〜てくる」「〜ていく」和“〜起来”“〜下去”为中心

Wang Jing

Under the Supervision of Professor Liu Chenchen

Submitted to School of Foreign Languages, Hangzhou Normal University

In Partial Fulfillment of the Requirements

For the Degree of Master of Arts

Hangzhou, China

May, 2019

v
日中現代語における移動表現から趨向表現への文法化経路の
対照研究
-「〜てくる」「〜ていく」と“〜起来”“〜下去”を中心に-

要旨

本稿では「〜てくる」、
「〜ていく」と“~起来”
“~下去”を研究対象として取り上げ、認
知意味論の視点から、コーパス調査に基づき、それぞれ空間的な移動から時間的な移動(アス
ペクトの標識化)、最終的に主観的な移動への文法化プロセスを対照分析してみた。また文法化
動機付けも探求し、それらの意味項目を日本語学習者と中国語学習者が習得しやすいように体
系的にまとめてみた。
本稿は次の六章から構成されている。
第一章では、研究の背景を述べた上で、本稿の位置付けを紹介した。
第二章では、
「〜てくる」
、「〜ていく」と“~起来”,
“~下去”の先行研究と文法化理論を紹
介しながら問題点を指摘した。
第三章では、「北京言語大学現代中国語コーパス(ネット版)
」と日本国立国語研究所の「現
代日本語書き言葉均衡コーパス」を利用し、検索した「〜てくる」、
「〜ていく」、
“~起来”,
“~
下去”とよく共起できる動詞を、従来の先行研究に基づき、大まかに物理的な空間移動、抽象
的な空間移動、時間的な移動、主観的な移動と心理的な方向性の五つに分類した。
第四章と第五章では、第三章の調査結果と分類に基づき、
「〜てくる」、
「〜ていく」と“~起
来”,
“~下去”の文法化経路を分析した。動機付けから見れば、
「〜てくる」、
「〜ていく」は主
にメタファー、語用論的な推論、“~起来” 、“~下去”は主にメトニミーと語用論的な推論
によって、文法化の度合いが進む。それぞれ具体的な文法化経路は異なっても、文法化過程に
見られる主観化の傾向は共通である。
第六章では本稿の研究成果をまとめ、今後の課題を提起した。

キーワード: 文法化;動機付け;メタファー;主観化;語用論的推論

vi
现代中日语的移动表现到趋向表现语法化路径的对比研究
——以「〜てくる」「〜ていく」和“〜起来”“〜下去”为中心

摘要

本论文以日语的「〜てくる」、
「〜ていく」和中文的“~起来”、“~下去”为研究对象,
从认知语义学的观点出发,通过对从语料库收集的大量例句进行分析,探明了它们从表示空间移
动到虚化为体标记,最终发展成为表示主观判断的语法化演变过程。在此基础上,还揭示了其各
自的语法化动因,对各个义项进行了系统的总结。希望本研究的成果可以让日语学习者和中文学
习者高效地掌握辅助动词和方向补语的用法。
本论文总共由六个章节构成。
第一章叙述了研究背景并在此基础上明确了本论文的研究目的和意义。
第二章对「〜てくる」、「〜ていく」和“~起来”、“~下去”以及语法化理论的先行研究
进行归纳总结并指出不足点,最后提出本论文的分类方法。
第三章通过对北京语言大学现代汉语语料库(网络版)和日本国立国语研究所开发的现代日
本语书面语均衡语料库的检索,对出现在「〜てくる」、「〜ていく」和“~起来”、“~下去”
前的高频动词进行了分类。大致分为“具体的空间移动”、“抽象的空间移动”、“体标记”、
“带有主观色彩的用法”和“心理的方向性”这五类。
第四章和第五章在第三章的基础上,分析了「〜てくる」、「〜ていく」和“~起来”、“~
下去”的语法化路径。从语法化机制来看,隐喻和语用推理是「〜てくる」
、「〜ていく」语法化
的主要动力。而在“~起来”、“~下去”的语法化过程中转喻机制和语用推理发挥了重要作用。
虽然它们各自的具体语法化路径有所不同,但是在语法化过程都出现了主观化倾向。
第六章总结了本稿的研究成果,并提出了今后的研究课题。

关键词:语法化;语法化动因;隐喻;主观化;语用推理

vii
目次

要旨 ........................................................................... vi

摘要 .......................................................................... vii

目次 ......................................................................... viii

表の目次......................................................................... x

第一章 はじめに ................................................................. 1

第二章 先行研究の紹介 ........................................................... 3


2.1 日本語の「~てくる」と「~ていく」に関する先行研究 ............................ 3
2.2 中国語の“〜起来”と“〜下去”に関する先行研究 ............................... 5
2.3 文法化に関する先行研究 ...................................................... 6
2.3.1 文法化の定義 ............................................................. 6
2.3.2 文法化の動機づけ.......................................................... 7
2.3.3 文法化を判断する基準...................................................... 8

第三章 調査概要 ................................................................. 10


3.1 調査概要 ..................................................................... 10
3.2 調査結果 ..................................................................... 12
3.2.1「〜てくる」と「〜ていく」の再分類 ....................................... 12
3.2.2 “~起来” と“~下去”の再分類 ........................................ 13

第四章 「〜てくる」と“〜起来”の文法化プロセスに対する分析 ...................... 16


4.1 物理的かつ空間的な移動―本動詞の用法 ........................................ 16
4.2 本動詞と補助動詞の中間的なタイプとしての「〜てくる」 ......................... 16
4.3 補助動詞としての「〜てくる」と方向補語としての“〜起来” ..................... 17
4.3.1 具体的な空間移動......................................................... 17
4.3.2 抽象的な空間移動......................................................... 18
4.4 時間的な移動—アスペクトの標識化 .............................................. 19
4.4.1 始動相の標識化........................................................... 19
4.4.2 継続相の標識化―「〜てくる」だけの用法 ................................... 20
4.4.3 変化相の標識化........................................................... 20
4.4.4 完了相の標識化........................................................... 21
4.5 主観的な移動を表わす ......................................................... 22
4.6 心理的な方向性を表わすー「〜てくる」だけの用法 ............................... 23

viii
4.7 まとめ ....................................................................... 24

第五章 「〜ていく」と“〜下去”の文法化プロセスに対する分析 ...................... 26


5.1 物理的かつ空間的な移動―本動詞の用法 ......................................... 26
5.2 本動詞と補助動詞の中間的なタイプ(「~ていく」しか持たない用法) ............. 26
5.3 補助動詞としての「〜ていく」と方向補語としての“〜下去” ..................... 27
5.3.1 具体的かつ空間的な方向性................................................. 27
5.3.2 対象の移動を表す“~下去”............................................... 27
5.3.3 抽象的な空間移動......................................................... 28
5.3.4 離脱の状態を表す場合(“〜下去”しか持たない用法) ....................... 28
5.3.5 社会階層の関係を表す場合(“〜下去”しか持たない用法) ................... 29
5.4 時間的な移動―アスペクトの標識化 ............................................. 29
5.4.1 消滅を表す .............................................................. 29
5.4.2 継続を表す .............................................................. 30
5.4.3 漸次的な変化 ............................................................ 31
5.5 主観的な移動 ................................................................. 31
5.6 まとめ ....................................................................... 32

第六章 終わりに ................................................................ 34

例文出典........................................................................ 36

参考文献........................................................................ 37

付録 ........................................................................... 39

付録1:日本語の「〜てくる」と共起しやすい先行動詞 ................................ 39

付録 2:日本語の「〜ていく」と共起しやすい先行動詞 ................................ 41

付録 3:中国語の「〜起来」と共起しやすい先行動詞 .................................. 43

付録 4:中国語の“〜下去”と共起しやすい先行動詞 .................................. 45

謝辞 ........................................................................... 47

PUBLICATIONS .................................................................... 48

ix
表の目次

表 1「〜ていく/〜てくる」の分類………………………………………………………… 4
表 2「〜てくる」に前接する動詞上位 161 語………………………………………………10
表 3「〜ていく」に前接する動詞上位 161 語………………………………………………10
表 4“~起来”に前接する動詞上位 161 語…………………………………………………11
表 5“〜下去”に前接する動詞上位 161 語…………………………………………………11
表 6「~てくる」の分類………………………………………………………………………12
表 7「〜ていく」の分類………………………………………………………………………13
表 8“~起来”の分類…………………………………………………………………………13
表 9“動詞+不下去”の中の動詞の出現傾向………………………………………………14
表 10“~下去”の分類……………………………………………………………………… 15
表 11「〜てくる」と“〜起来”の文法化のまとめ……………………………………… 25
表 12「〜ていく」と“〜下去”の文法化のまとめ……………………………………… 33
表 13「〜てくる」、「〜ていく」と“~起来”、“~下去”文法化の対照………… 34

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外国语学院 硕士学位论文

第一章 はじめに

現代日本語において、移動動詞「来る」と「行く」は、方向性を持ち、物理的な空間移動を意味する本動詞
であるが、とくに「来る」は1直示性をもつのに対し、「行く」が非直示的な移動を表すことができる。また、
補助動詞「〜てくる」と「〜ていく」になると、具体的な空間移動という意味だけでなく、抽象的な意味も付
与されるということが、これまで多くの先行研究の中で指摘されている。まず例を見てみよう。
(1)「隣へ行って煙草を買ってくる。すぐに戻るから。」心配そうな、ためらうようなその声に、クラレン
はにっこりした。 『ルールは無用』
(2)すると、自分がまるで自然と一体化していくような気持ちになってくる。
『もの忘れを防ぐ朝 1 時間のワークブック』
(3)「分かり合いたい」という気持ちだけで、自分に合ったコミュニケーションの方法が見えてくる。
『西日本新聞』
(4) 付き合いの長い取引先が一方的に契約を解除してきた。 (Google 検索)
例文(1)において「来る」は用言としての自立性を保有し、本動詞として用いられ、また「ある場所から
他の場所へ向かって移動する」という「移動による位置変化」に重きが置かれ、変化後の状態維持を表さない。
それに比べ、例(2)では、本動詞「来る」が補助動詞「〜てくる」になると、私が自然と一体になる気持ち
が生まれ、それにその精神的な状態が進むことをも表すことができる。つまり先行動詞が示す動作や行為を方
向づける役割を担うことが観察される。
このように日本語の
「くる」
は補助動詞化による意味拡張が見られる。
例(3)の場合「〜てくる」が表すのは話者がコミュニケーション能力を向上させる方法に対する認識の推移
であり、主観的な色合いが濃く感じられるため、主観化の傾向が見られると言えよう。「主観化」の定義につ
いて、Traugott(1995)は語義が話者の命題に対する主観的な態度に根ざすという傾向が顕在化の語義から語
用への変化のプロセスであると指摘している。寺村(1984)は例(3)の「てくる」が文法形式に変わること
を言及した。さらに例(4)の「契約を解除してきた」の中の「解除してきた」には実際に物理的な移動が含
意されず、本動詞「来る」の直示性を受け継いでもっぱら行為自体が話者に向けられ、その結果、話者はその
事態から不利益を受けて心理的に悪い影響を被るという方向性を表すのではなかろうか。それについて吉川
(1989)は本動詞の場合も、その本動詞らしさに段階があり、補助動詞の場合には、その文法的な意味が重要
になってくることを述べている。それに加え、青木博史(2011)は自立性を持った語彙項目(名詞・動詞)が
文法的要素(助詞・助動詞・補助動詞)に変化する場合は、典型的な文法化であることを指摘している。また
例(2)と例(3)では「〜てくる」の意味用法は客観的か主観的な方向性に焦点を当てることから、「趨向表
現」と認められるが、そして「〜ていく」も「〜てくる」と同じように移動表現と趨向表現という二つの意味
用法を持っている。

1
清水啓子(2010)によると、「直示性とは、発話場面(話者、聞き手、発話の場所と時間)に直接関係づけられた概念である」
(清水啓子 2010:51)ことがわかる。
1
外国语学院 硕士学位论文

一方、現代中国語において日本語の「〜てくる」や「〜ていく」と意味構造の仕組み、及び文法構造が極め
て類似している“~起来”と“~下去”がある。これらも主に二つの用法がある。一つは独立語として述語の
役割を担い、物理的かつ空間的な移動を示すことであり、もう一つは動詞のあとに結び付き、述語の補充成分
とし、移動を抜きにして客観的な方向あるいは主観的な傾向を表す用法で、ここでは趨向表現と呼ぶ。
現代日本語であれ、現代中国語であれ、移動表現とそれと対応する趨向表現は意味的な側面において差があ
るものの、それらの間に必ず何らかの関係があると思われる。すなわち、通時的には、移動表現から趨向表現
への文法化には、一定の発達経路があると思われる。共時的に観察される文法構造は通時的な文法化の結果で
あり、共時的な文法構造も通時的考察によって最もよく説明されるというのは文法化の考え方である。本研究
では共時的な構造の中から、通時的な文法化の様子を導き出そうと試みている。
このように日中両言語の移動表現から趨向表現への文法化過程の対照分析を行うことで、それぞれ移動表現
と趨向表現の区別に対する学習者の理解の深化につながっていき、さらに本動詞および補助動詞を新たに分類
することに意義があると思われる。

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第二章 先行研究の紹介

2.1 日本語の「~てくる」と「~ていく」に関する先行研究

寺村(1984)は、「〜ていく」・「〜てくる」と先行動詞との結びつき方によって、①V+V(並列関係と
なって動作の順序を表す)②v+V(修飾関係)③V+v(先行動詞に文法的な意味を添え、その動詞のアスペク
トを表す)との 3 類に分かれてそれぞれ並列構造、複合構造と補助構造であると呼んでいる。住田(2011)は
③の移動を表さない「〜てくる」には逆行態の用法もあることを述べている。住田(2011)によると、この用
法の「〜てくる」は移動の本動詞「くる」が本来持っていた移動の意味を失い、前項動詞のあらわす動作、行
為の(ソトからウチへの)直示的な方向のみをあらわし、逆行態の「〜てくる」の前項には、主に、動作主(主
体)の実質的な移動を意味せず、事態参与者のインターアクティブな他動的事象を表す対象移動動詞、非明示
的移動動詞、行為動詞がくる。また、文法化について、寺村(1984)は「ピアノの音が聞こえてくる。」とい
う例文を取り上げながら、「〜て」が述語の主要部分であり、クルは、その「〜」が表わす事象が、物理的、
心理的に話し手のほうに近づくという意味を添える副次的な成分になり、文法形式に変身するということを論
じている。そして、「くる」と逆方向の動きである「いく」の場合、それと元来は共起しない無情のもの、意
志を持たない「もの」が「〜ていく」の主格に立つとき、また、本来移動とは縁のない動詞につくとき、アス
ペクト形式としての性格がはっきりすることを指摘しながら、「年々松の木が枯れていく。」という例を挙げ
ている。
「〜てくる」と「〜ていく」の用法について、浜田真理子(1989)ではそれらの中心的な用法から非中心
的・抽象的な用法へと意味拡張されていく過程を<移動空間>と<移動主体>という要素の変容によって説明
されている。(<移動空間>と<動く主体>の中心性の度合いを図1で示される)

図1:<移動空間>と<動く主体>の中心性の度合い

高 中心性・具体性 低

<移動空間>:場所 身体空間 時間

<動く主体>:人間 他の動物 車両 時間 出来事

浜田真理子(1989:55)

浜田(1989)によると、
「上がる、下りる、のぼる、入る」などの移動動詞の後につき、中心的な意味とす
る物理的かつ空間的な移動の代わりに方向性を指し示す「いく」と「くる」が補助動詞と見なされることが分
かる。浜田(1989)では補助動詞の用法の中で、
「〜ていく」と比べ、
「〜てくる」だけが持つ二つの用法が主
張されている。一つは「田中さんは(私に)電話してきた」で示したように個別の主体(田中さん)を含む<

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出来事>全体が比喩的な場所を通って、話者にまで及ぶものであり、もう一つは「雤が降る」というような出
来事が発話時の尐し前に出現し、<時間空間>を移動することによって発話時には話者まで到達し、つまり変
化の開始を表すようなものである。
森田(1994)は意味論的な機能分析という観点から「〜ていく」・「〜てくる」の用法を二種に分類し、そ
れは具体的な空間移動意味を表わす本動詞の機能を有するものと時間的な意味を示す補助動詞としての機能
を果たすものであると述べている。具体的にいえば、助詞「て」を介して動詞に続く「いく・くる」は、本来
話し手を中心に対象との関係性を動詞に与え、その動詞の表す概念に具体性を付与する働きをもつ。特に、複
合して一つの動作・作用、継続、発生、変化を表す「くる・いく」は、「くる・いく」そのもの本来の意味で
ある「人や事物の場所的移動」を表さず、単に「話し手との関係」のみを示すという特性をもち、かつ、他語
の挿入を許さないという緊密性を有していることを指摘している。

森田(2002)は動詞 V で表した場合、「V ていく/ V てくる」は、「いく/くる」が本動詞相当の移動そのも


のを表すのか、派生的な抽象的意味に転じるのかについて、後者は、先行動詞 V の意味内容次第で、それに付
加する表現的意味に差が生ずることを指摘した。森田(2002)の「V ていく/ V てくる」に対する分類を以下
の表 1 にまとめた。
表 1「〜ていく/てくる」の分類
意味用法の分類 先行動詞 V の特徴
空間的(具体 移動
(補助動 ① 順次性 移動と並行しえない行為の動詞で、意志的行為が本来で、他動
的意味) 詞ではない) 詞がたつ。例:集めて〜、買って〜など。
② 平行性 移動と並行する行為の実現状態で移動が行なわれるため、意志
的継続行為として他動詞が立つ。例:抱いて〜、連れて〜など。
③ 状態性 移動主体自身の行動であるため、自動詞がたつ。例:歩いて〜、
走って〜など。
④ 複合動作 移動行為そのものの有り様を V で示し、V それ自体に移動の意
味が備わる。例:上がって〜、降りて〜など
時間的(抽象 時間的な状 ⑤ 継続・経験 行為主体の継続動作で、行為行動が外形に現れないと時間的移
的意味) 態継続 動となる。例:生きて〜、暮らして〜など。
時間的な状 ⑥ 出現・生起 出現・生起の瞬間動作で、無意志動詞が立つ。例:現れて〜、
態変化 蘇って〜など
⑦ 消滅 外の世界の対象が己の認識領域から離脱していく現象ゆえ、専
ら「〜ていく」で表現される。例:失って〜、消えて〜など
機能的作用 変化 ⑧ 開始 己の認識として「〜てくる」の変化開始の意識を、「〜ていく」
⑨ 進行 の変化進行の意識を、それらの先行動詞に添えることで、表現
者の認識判断が加えられる。例:痛みが薄らいで〜、薬が効い
て〜など

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森田(2002)は語意⑦について、己の内部感覚や感情の場合、対象の見送り意識とはならず、当事者として
の主体的な感情受け入れ意識で消滅現象の開始感覚となり、次の⑧開始の「〜てくる」で表現される。そして
⑧と同じく表現者の認識判断を表す「〜てくる」の前に人間の思考活動や視覚・聴覚などの意味を持つ動詞が
たつ。山本(2000:17)は、「この種の「〜てくる」が認知の変化を表し、メタファーによる派生用法として
「くる」の移動の到着点を認知領域とする。」ことを指摘した。つまり、「~てくる」と「~ていく」は実質
的な移動を表すタイプから認知の変化を表すタイプまで、移動性が次第に弱まるにつれ、主観性が次第に強ま
るものだと考えられる。

2.2 中国語の“〜起来”と“〜下去”に関する先行研究

劉芳(2015)は単独で述語として用いられる“〜起来”が基本的には人か動物が寝てから座り、あるいは座
ってから立つという動きを表すことを言及した。さらに“〜起来”の歴史的な拡張について、それの通時的な
文法化過程を打ち出した。つまり「基本的な意味→趨向意味→結果意味→状態意味」の順に従い、“〜起来”
の文法化が進み、文法化の最後の段階として、状態意味がアスペクト標識になることを述べている。

また、移動表現と趨向表現の関係に関しては、移動動詞の“〜起来”と“〜下去”は単独で述語として使わ

れ、それらの前にVがたつと、Vが述語の中心となり、“〜起来”と“〜下去”は述語を修飾する補助的な役割

を担うことになる。この点について、劉堅(1995)は、もしこの動詞は文の中で常に非焦点的な動詞として使

われ、またこの文法位置が固定されれば、語彙的な意味が変化し、漂白化しつつある。それに、主動詞を修飾

する機能が生じ、述語の補充成分に成り立つことを主張している。それゆえ、趨向表現としての“〜起来”と

“〜下去”の中で“〜起来”と“〜下去”の動詞性が弱まり、文法化の道を歩んだといえる。

劉月華(1998)は趨向補語としての“〜起来”の意味用法を「趨向意味」、「結果意味」、「状態意味」と
「評価意味」に分け、これに対し、“〜下去”を「趨向意味」、「結果意味」と「状態意味」の三つに分類し
て論じているが、それぞれ、各語意の関連性について述べていない。

吕叔湘(1999)では“〜起来”の文法的な意味を、①人・事物が動作によって下から上へ向かうことを表す
もの、②動作の実現を表わし、それに「集中する」「目的・結果に達する」意味も表すもの、③動作の開始を
表し、あわせて継続の意味も表すもの、④挿入語として使われ、推測、あるいは「ある面に着目すれば」の意
味を表すものの4種類に分類される。また「〜下去」の意味を、①人・事物が動作によって上から下へと移動
するもの、②人・事物は動作によって社会等級の高いところから社会等級の低いところへと変化するもの、③
動作が依然として続けているものの3種類に分けている。それから、“〜起来”は動作の開始およびその動作
が続くことを表し、動作の開始にポイントが置かれるが、“〜下去”は動作が進行中であることを表し、動作
の継続を強調する。

劉月華(2003)では趨向補語の「結果意味」や「状態意味」という二つの意味に注目を集め、「状態意味」
は「結果意味」よりさらに文法化され、空間的な方向という意味から時間軸での展開へと変化することを指摘
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外国语学院 硕士学位论文

し、すなわち、“〜起来” と“〜下去”の場合では、空間的な方向という意味から時間軸上で動作と行為の
状態を方向付けるという意味へと拡張される。このように劉月華(2003)の“〜起来” と“〜下去”が空間
的な移動から時間的な移動へと移行すると同時に文法化の度合いも高めるという説明は参考になるが、主観的
な移動に言及していないのは物足りないと感じられる。これを補うために住田(2011)の「〜てくる」の分類
に従い、“〜起来” と“〜下去”を再分類することにしたい。

高順全(2005)は“〜下去”と“〜下来”の比較を通して、「我看不下去了,走到瓦刀脸跟前」という例を
出しながら、“〜下去”が話し手の主観的な感情を表すことを指摘している。

王媛(2011)では先行動詞の方向性と趨向動詞“〜起来”と“〜下去”の文法化の関連について、以下のよ
うに指摘している。①先行動詞は趨向動詞の方向性と一致すると、趨向動詞はそれ自体の趨向意義に焦点が当
てられ、先行動詞の方向性を補助的に示す。つまり、趨向動詞の動詞性は実質的に弱まる。②先行動詞は趨向
動詞と同じ方向性を持たない場合、趨向動詞の方向性が前景化されたため、その動詞性をほぼ保っているが、
やや弱化している。③先行動詞は趨向動詞の方向性を持たず、その上、趨向動詞は先行動詞の語義特徴の影響
で新しい語意を持つようになる場合、この新たな語義は先行動詞のために生まれたので、文法的な意義と見な
すことができる。それゆえ、この趨向動詞の動詞性はほとんど失われるといえる。ここに②>①>③のような
文法化過程が見られる。

以上の先行研究からわかるように、「~てくる」、「~ていく」、“~起来” と“~下去”の移動表現と
趨向表現について詳細な分析がなされてきたが、まだ足りないところがある。例えば、一部は単に一つの言語
を研究対象とし、両言語間の対照研究を行っていない。また、一部は「~てくる」と“~起来”だけの対照研
究があるが、「~ていく」と“~下去”の対照にほとんど触れていない。それから、「~ていく・てくる」と
“~起来/下去”の分類が完全だとは言い難い。最後に、文法化に伴い意味変化についての動機付けについて
の分析もまだ十分ではない。
そこで、本稿では「~ていく/~てくる」と“~起来”“~下去”を森田(2002)、住田(2011)、劉月華
(2003)を参考に再分類した上、日中両言語の移動表現から趨向表現へとの文法化プロセスをコーパスの実例
分析によって、認知意味論の観点から明らかにし、空間移動義から文法化へのプロセスにおける動機付けの相
違点と共通点を考察してみる。

2.3 文法化に関する先行研究

文法化に関しては、これまで意味、形態統語などさまざまな側面に関する先行研究が数多くある。

2.3.1 文法化の定義

籾山(2014)では文法化と脱範疇は、それぞれ「もともと内容語であったものが、機能語としての働きを持
つようになる現象」(2014:58)と「名詞や動詞という本来の範疇の性質を失い、他の範疇である接辞や接続

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助詞などの性質を帯びること」(2014:58)であると定義されている。例えば、「くる」と「いく」は、空間
移動を意味する動詞であったのに、次第に補助動詞としても用いられるようになる。

2.3.2 文法化の動機づけ

籾山(2014)では文法化のより一般的な動機付けとして、「語用論的強化」と「概念メタファー」という認
知的な基盤が取り上げられている。松本曜(2003)はそれらに加え、メトニミーも文法化における意味変化の
要因として指摘している。ここでは以上の三つの動機づけを見てみる。
「語用論的強化」について、籾山洋介(2014)は「みる」という本動詞が、「やってみる」などのように、
文法化の一種である補助動詞化した場合の動機付けとして、「語用論的強化」を取り上げ、また「紙を陽の光
に透かしてみる」という例を上げながら、それを説明している。「てみる」が本来<視覚把握>という意味を
持ち、それに加え、文脈によっては<結果志向>という意味も読み込むことができ、「てみる」がこの二つの
意味を含む意味で繰り返して用いられるという過程を経て、さらに、<結果指向>のみ焦点化された意味が固
定するに至ったというケースである。なお、文脈に依存した意味が繰り返し用いられることによって定着する
プロセスも語用論的強化であると指摘している。
籾山(2014)では「概念メタファー」について以下の例を挙げながら定義している。
(5)大雤の中、今帰ってきたところだ。 (籾山 2014:69)
(6)よく考えたうえで、結論を出すべきだ。 (籾山 2014:69)
籾山(2014)によると例(5)と例(6)において「ところ」と「うえ」は、内容語として<空間>に関係す
る意味を表すのに対し、機能語として<時間>に関係する意味を表す。これらの表現の基盤には、「時間は空
間である」(籾山 2014:69)という概念メタファーが存在すると考えられる。この概念メタファーについて、
籾山(2014)は以下のように述べている。

この概念メタファーの前提になるのは、「空間」が時間を比べた場合、「空間」は私たちが直接身を置き、視覚で捉えること

ができるという意味を持つため、具体的で理解しやすい存在であるのに対し、「時間」は直接把握できない、「空間」より抽象的

で理解しにくい存在であるということである。つまり、ある対象(=目標領域)を、別のよくわかっている物事(=起点領域)を

通して理解するという認知の仕組みである概念メタファーの1つとして、《空間を通して時間を捉える》という概念メタファーが

存在し、この概念メタファーが、空間の意味の内容語から時間の意味の機能語に文法化する場合の基盤となっているわけである。

(籾山 2014:70)

「存在」の概念メタファーについて、籾山(2014:102)では以下のような例文を用いて説明している。
(7)大きな荷物を抱えて歩くのは大変だ。 (籾山 2014:102)
(8)不安を抱えて生きていく。 (籾山 2014:102)
例(7)において「抱える」の対象は荷物などの物である。一方、例(8)のように「不安を抱える」と言う
こともできるが、「不安」などの心理的な状態を「物」として捉えるのは、『「抽象的な状態やこと」は「物」
である』(籾山 2014:103)のような概念メタファーが存在するからだと指摘されている。
7
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また、方向づけメタファーについて河上(1996:56)では以下のように指摘されている。

概念同士が互いに関係し合って全体的な概念体系を構成している場合を「方向づけメタファー」と呼ぶ。それは上/下、内/

外、前/後などの空間方向性と大きく関わっている。これらの概念は、私たち人間が二本足で立ち、前後の方向性をもつ存在であ

ることから必然的に認識される概念である。上/下の「空間関係づけのメタファー」の例の一つとして挙げられているのは“HAPPY

IS UP;SAD IS DOWN”<楽しきは上、悲しきは下>という例で、またその例では「楽しい」の概念に「上」という空間的方向性(spatial

orientation)が与えられている。

河上(1996:56)

更に、河上(1996)は「議論は戦争である」のような、ある概念が他の概念に基づいてメタファーによって
構造を与えているようなケースを、「構造メタファー」と呼んでいる。
最後に、メトニミーについて、松本(2003:83)では「二つの物事の外界における隣接性、さらに広く二つ
の物事・概念の思考内、概念上の関連性に基づいて、一方の事物・概念を表す形式を用いて、他方の事物・概
念を表す比喩である」と説明している。例えば、「部屋を片付ける」という例の場合、「部屋」そのものをど
こかへ移動させるのではなく、「片付ける」対象は部屋の中にある何らかのものであることから、「部屋」と
いう名詞で、<部屋の中にある何らかのもの>を表していると考えられる。

2.3.3 文法化を判断する基準

文法化の規定について、三宅(2005)では、文法化には、二つの異なった側面が存在する。一つは、実質的
な意味が抽象化、希薄化、あるいは消失する、という意味的な側面であり、この意味的な変化は「漂白化」と
呼ばれることもある。もう一つは、自立性を失い、専ら文法機能を担う要素になる、という形態・統語的な側
面であり、この形態・統語的な変化は、名詞や動詞などの本来的なカテゴリーへの帰属度が希薄になるという
点で、脱範疇化と呼ばれることがある。また、共時的研究における文法化研究の意義を次の二点にまとめてい
る。①同一の形式における内容語的な用法と機能語的な用法との連続性、及び両者の有機的な関連性を捉える
ことが可能になること。②文法化後の機能語としての意味・文法機能を説明する際に、文法化前の内容語とし
ての意味からの類推が可能になること。意味の抽象化、動詞からの脱範疇化に加え、形態的な緊密性も考えに
入れる。
松本(2003)では文法化が連続的で段階性をもつ変化であるということも多くの文法研究で共通に主張され
ている点が述べられている。文法化においては、元の意味・機能から急に新しい文法的な意味・機能に変わる
のではなく、元の意味・機能が徐々に希薄化するにつれて、新しい意味・機能が成立するのである。このこと
は、文法範疇が実際には境界のはっきりしない連続的なものであることからも分かる。文法化がこのような変
化であるのは、ある形式が語彙的要素から文法的要素へと至る途中に両方の用法が共存する段階があるからで
ある。これは A>{A、B}>B によって示される。
これは、もともと語彙的要素として A という意味・機能をもっていた要素(=A 段階)が、ある段階で文法
的な B の意味・機能をもつようになり(=A、B の共存段階)
、A の意味・機能の消失にともなって、文法的要
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素としての B の意味・機能が確立する(=B の段階)


、というプロセスを表している。しかし、それぞれの文
法化段階はどのように決められるかについては言及されていない。
沈家煊(1994)では共時的な面から、以下のような 5 つの判断基準ををあげ、文法化の度合いの比較を行
っている。
(文法化の度合いを「<」で示す。

①文法成分の中で空間を表すものは文法化の度合いが最も低い
②三次元(空間)<一次元(時間)<ゼロ次元(原因、手段など)
③特殊<一般、たとえば、
「道具」
(特殊)<「手段」
(一般)
④名詞に関連するもの<フレーズに関わりを持つもの
⑤人に関わるもの<人に関わらないもの
その中の②はただ文法化の度合いに関して、三次元がもっとも低く、一次元が最も高いと言っているが、
系統的な分析がされていない。
Diehl(1975)は広い意味での空間関係を四つのランクにわけ、その中で、「社会空間」の文法化の度合いが
最も低く、「ロジック空間」が最も高く、四つの空間関係はどれも「話者」自身を参照点とし、社会空間>物
質空間>時間空間>ロジック空間の順に文法化の度合いが進んでいるとしている。これらの文法化過程には
「主観化」という意味変化の一般的な傾向が見られる。
以上挙げた先行研究からわかるように、それぞれの基準に違いがあるほか、各基準にいい点も足りない点
もあるから、本稿ではこれらの研究を参考に、以下のような文法化の判断基準をまとめ、本研究の判断基準と
する。
①文法成分の中で空間を表すものは文法化度合いが最も低い。
②社会空間<物質空間<時間空間<ロジック空間
③名詞に関連するもの<フレーズに関わりを持つもの。
④文法化の過程は連続的なので二つの文法範疇が共存する段階がありうる。
⑤文法化のプロセスに動詞が意味の漂白化するとともに形態的な面での脱範疇化も伴う。
⑥文法化が進むにつれて、主体化が顕在している。

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第三章 調査概要

3.1 調査概要

「〜てくる」、「〜ていく」、“~起来”と“~下去”の意味・用法をより全面的に把握するために、本
研究では「現代日本語書き言葉均衡コーパス」と BCC コーパスからそれらと共起しやすい上位 161 位の前項動
詞を調査した。その結果を以下の表 2~5 にまとめる2。
表 2「〜てくる」に前接する動詞上位 161 語
先行動詞 頻度 先行動詞 頻度 先行動詞 頻度
出る 17155 言う 1283 違う 779

なる 9973 変わる 1277 飛ぶ 738


やる 7436 続ける 1261 落ちる 672
帰る 4744 近づく 1243 上がる 647
入る 4050 つく 1218 集まる 600
戻る 3695 増える 1093 送る 555
持つ 3214 かかる 1083 浮かぶ 536
行く 2595 返る 1079 降りる 536
見える 1949 伝わる 1070 飛び込む 535
聞こえる 1823 分かる 1054 現れる 534

買う 1673 連れる 952 運ぶ 533


見る 1600 生きる 801 聞く 530
生まれる 1338 かける 790 迫る 505
(本稿では動詞の具体例を検討するため、動詞「する」と「~ていく」
「~てくる」の可能、受動、使役など
形式を除いた。以下同。

表 3「〜ていく」に前接する動詞上位 161 語
先行動詞 頻度 先行動詞 頻度 先行動詞 頻度
持つ 3578 つく 696 推進 431

なる 3527 消える 695 死ぬ 423


出る 3224 図る 659 戻る 415
連れる 2628 変わる 653 落ちる 411
入る 1551 続ける 634 走る 409

2
表に書かれていない動詞は本稿の付録を参照。以下同。
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生きる 1321 帰る 617 流れる 400


進める 1303 増える 588 置く 379
やる 1226 飛ぶ 570 近づく 366
歩く 1208 去る 568 つける 347
考える 958 出かける 545 取り組む 346

見る 883 広がる 531 つながる 335


進む 828 変える 525 対応する 330
作る 768 行く 472 離れる 321

表 4“~起来”に前接する動詞上位 161 語
先行動詞 用例数 先行動詞 用例数 先行動詞 用例数
看 48704 加 4573 走 2309

结合 32066 叫 4175 飞 2305


站 22701 吃 4008 穿 2220
转 10824 团结 3965 动 2103
听 10076 哭 3591 藏 1979
爬 9236 组织 3505 学 1978
笑 9224 坐 3494 连接 1775
跳 8516 联合 3206 开展 1753
发展 7298 躲 2749 调动 1692
说 7136 做 2735 振作 1682
联系 5118 打 2666 抱 1527
行动 4954 成长 2421 捡 1521
建立 4801 回想 2391 概括 1493

表 5“〜下去”に前接する動詞上位 161 語
先行動詞 用例数 先行動詞 用例数 先行動詞 用例数
走 8636 想 1250 写 817

说 6874 生存 1233 抓 783


活 6756 做 1233 延续 739
接 5067 吞 1193 压 734
坚持 4699 沉 1001 摔 706
继续 3970 干 985 待 675
看 2384 拖 955 呆 674
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吃 2267 听 950 睡 661


跳 2261 开展 910 传 633
发展 2229 讲 891 读 614
掉 2002 保持 874 维持 569
喝 1693 撑 863 谈 563
进行 1374 问 820 退 552

3.2 調査結果

3.2.1「〜てくる」と「〜ていく」の再分類

本研究では主に森田(2002)
、山本(2010)
、住田(2011)と劉(1998)の分類を土台にし、物理的な空間移
動、抽象的な空間移動、時間的な移動、主観的な移動と心理的な方向性という五つの意味用法に分けられる。
その中に、
物理的な空間移動を独立動作と様態・付帯状況を伴う移動に分け、
時間的な移動を始動アスペクト、
継続アスペクト、変化アスペクトと完了アスペクトの四種に分類され、住田(2011)が主張された「〜てくる」
の逆行態の用法を心理的な方向性に分類し直す。以下で示したように「〜てくる」と「〜ていく」の用法をさ
らに細かく分類し表 6 と表 7 にまとめる。
表 6「~てくる」の分類
意味用法 前項動詞との関係からの下位分類 前項動詞の特徴 頻度が高い前項動詞
の語例
Ⅰ物理的な空間移動 V-V 型:独立動作 範囲が広い 買う、行く、食べる
v-V 型: 空間移動を示す 様態・付帯状況を伴う移 歩く、走る、持つ、流
動 れる、漂う、転がる

V-v 型:空間移動の方向性を示す 移動動詞 登る、下りる、入る、


出る
Ⅱ抽象的な空間移動 V-v 型:抽象的な空間移動の方向 移動動詞 登る、上がる、入る、
出る

Ⅲ時間的な移動 V-v 型:始動アスペクト 状態変化動詞、 出る、生まれる、湧く、


移動動詞 起こる、生える
V-v 型:継続アスペクト 行為動詞、一部の状態を 続ける、頑張る、生き
表す動詞 る

V-v 型:漸次的な変化 状態動詞(形容詞) なる

V-v 型:完了アスペクト 移動動詞 出る、なる、変わる、


湧く

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Ⅳ主観的な移動 V-v 型: 認知的な用法 思考動詞、知覚動詞 思える、見える、聞こ


える、分かる

Ⅴ心理的な方向 V-v 型:心理的な影響を受ける 対象移動動詞 送る、投げる


(プラス、中立、マイナス)
非明示的移動動詞 言う、伝える、話しか
ける
行為動詞 仕掛ける、駆けつけ
(行為の方向づけ) る、引っ張る

表 7「〜ていく」の分類
意味用法 前項動詞との関係からの下位分類 前項動詞の特徴 頻度が高い前項動詞
の語例
Ⅰ物理的な空間移動 V-V 型:それぞれ独立で使われる 前接できる動詞の範囲 買う、食べる
が広い
v-V 型: 前項動詞を修飾する 様態・付帯状況を表す 持つ、連れる、歩く、
飛ぶ、流れる

V-v 型:空間移動の方向性を示す 移動動詞 落ちる、沈む


Ⅱ抽象的な空間移動 V-v 型:抽象的な空間移動の方向 移動動詞 去る、離れる、沈む

Ⅲ時間的な移動 V-v 型:消滅 瞬間動詞 消える、死ぬ

V-v 型:継続 行為動詞、一部の状態を なる、生きる、考える、


表す動詞 続ける、頑張る

V-v 型:漸次的な変化 状態動詞(形容詞) なる


Ⅴ主観的な移動 V-v 型 話者の知覚範囲から離 去る、離れる、薄れる、
れることを表す動詞 失う

3.2.2 “~起来” と“~下去”の再分類

“~起来” と“~下去”の意味用法も「〜てくる」と「〜ていく」の分類に従うとともに劉(2003)の分
類に基づき再分類し、表 8 と表 10 にまとめる。
表 8“~起来”の分類
意味用法 前項動詞との関係からの 前項動詞の 頻度が高い前項
下位分類 特徴 動詞の語例

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Ⅰ物理的かつ具体 水平面の移動 v-V 型 _ _



な空間移動
垂直面の移動 v-V 型:身体動作・様態を 方向性がない 坐、站、爬、跳
(同時的な移動) 表す移動 自動詞

v-V 型:対象の移動を表す 物の位置を変 抱、捡、拉、扶、


える他動詞 提、挂、捞
Ⅱ抽象的な空間移動 V-v 型:抽象的な空間移動 身体動作と物 站、捡、提
の方向 の位置を変え
る動詞
Ⅲ時間的な移動 V-v 型:動作の開始 継続性のある 笑、叫、哭、学、
動詞 开展
V-v 型:段階的な変化 一部の状態を 发展、成长、调动
表す動詞

V-v 型:完了アスペクト 結果を表す 团结、组织、联合、


躲、藏
Ⅳ主観的な移動 V-v 型:ある物事に対する 言語行為、知 看、听、说、吃、
評価 覚動詞 闻
V-v 型:将来に何かがおこ
るに対する推測
“~下去”の分類について劉(1998)で趨向義の比喩的な用法とされる“传令、发、吩咐”のような動詞を
社会関係の領域に入れたほうが妥当だと思われる。
高順全(2005)は“~下去”の主観性の用法について、“动词+下去”可以表示说话人对某一动作的评价,
比如说话人认为某一动作因为某一原因不能或者不应该继续的时候,会采用“动词+不+下去”的方式。
「動詞+
下去」は話者がある動作に対する自分の評価を表すことができる。たとえば、話者はある動作が何らかの原因
で続くべきではないと感じているならば、「動詞+不+下去」という形を使う。」(筆者訳)と指摘している。
BCC コーパスを検索した結果、 “動詞+不下去”を含む例文は 16366 件出た。“不下去”の前に用いられ
る動詞の頻度は上から順に以下の表 9 にまとめる。
表 9“動詞+不下去”の中の動詞の出現傾向
前項動詞 出現頻度 前項動詞 出現頻度
看 4387 吃 513
活 1462 混 431
说 1345 呆 430

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听 629 坚持 369
撑 618 写 347

検索された結果からみると、
“看(見る)
”、“听(聞く)
”、“说(話す)
”と“吃(食べる)
”などのような話
者の直接な感覚を表す知覚動詞と発話行為動詞は“~不下去”と共起しやすい。そして、それらの動詞を主観
的移動に分類されることにする。
表 10“~下去”の分類
意味用法 前項動詞との関係 前項動詞の特徴 頻度が高い前項動詞の語例

Ⅰ物理的か 垂直面の移動 v-V 型:身体動作・様態を 自動詞 走、跳、掉、摔、蹲、跑、


つ具体的 表す移動 沉
な空間移動
v-V 型:対象の移動を表す 他動詞 传递、带、拉、投

水平面の移動 v-V 型 前から後ろへの 退、撤


移動

Ⅱ抽象的な V-v 型:抽象的な空間移動の方向 身体動作と物の位 沉、压、滑、跌


空間移動 置を変える動詞

Ⅲ状態 V-v 型:分離を表す 動作行為動詞 减、砍、扯、劈

Ⅳ社会関係 V-v 型 命令か指示を表す 传令、发、吩咐、贯彻


動詞
Ⅴ時間的な V-v 型:変化の消滅 消失を表す動詞 退、减、消、撤
移動
V-v 型:継続 状態動詞と一部の 坚持、继续、走、说、活
行為動詞
V-v 型:漸次的な変化 継続性を持つ動詞 发展、跌、耗、错、堕落、
烂、沉沦、垮、塌
Ⅵ主観的な V-v 型:話者の見方と 言語行為、知覚動 看、活、说、听、吃
移動 未来への推測(高次的な認識) 詞

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第四章 「〜てくる」と“〜起来”の文法化プロセスに対する分析

4.1 物理的かつ空間的な移動-本動詞の用法

(9)この日は、朝起きた途端におなかがペコペコ。ホテルの近くにある「高芳」という鱒の寿司屋さんへ行
って、鱒の寿司を買ってくる。 (Yahoo!ブログ)
(10)すがすがしい朝ですね。とりあえず朝食食べてくる。 (Yahoo!ブログ)
(11)「それじゃ、夕食の買物に行ってくるわ。」衿子は買物籠を持って立上った。 『愛のごとく』
(12)伴随着那支令人激动得欢欣鼓舞,但又令人缠绵得恋恋不舍的动听曲调,被点名的学生从容地从座位上站
起来,缓慢地绕场一周,最后走到站在舞台右下角的校长面前,接受教育部颁发给他们的毕业证书,并和
校长合影留念。 《从普通女孩到银行家》
(13)姚明在与三位敌人的对抗中也吃尽苦头,2 米 23 的高大身躯 4 次訇然摔倒,将地板砸得 “咚咚”作响。但
每次这位阳光男孩总是很快就从地上爬起来,一张孩子气十足的脸上依然挂着灿烂的笑容,真是让对手拿他
一点辙都没有。 (新华社 2002 年)
(14)当萨马兰奇主席宣布北京获胜的那一刻,他一下子从座位上跳起来,走到前边向何振梁表示祝贺,并说:“这
是中华民族的光荣。”他说:“这时,我俩都激动地流下了眼泪。” (新华社 2001 年)
例(9)~(11)の「買ってくる」、「食べてくる」と「行ってくる」の「買う」、「食べる」と「行く」
はそれぞれ独立な動詞として「くる」と並立して使われる。例えば、例(9)の「買う」は「くる」の前に行
われる動作で、「くる」と合わせて「買ってそれからくる」という意味を表す。この場合、「くる」とその先
行動詞との結びつきは比較的に弱く、その間に「それから」のような表現を入れることができる。この場合で
は「来る」の元の意味が保たれている。一方、例(12)〜(14)の“〜起来”はいずれも「低いところから高
いところへの移動」を表すため、本動詞の役割を果たしている。しかし、下から上へという移動の方向を表す
“起”と話者への移動を表す“来”が組み合わせた “〜起来”には「〜てくる」のような二つの動作が継起
的に生起するという用法が見られない。

4.2 本動詞と補助動詞の中間的なタイプとしての「〜てくる」

(15)私は子どもたちが詩や作文を持ってくると、それはそれで大事にしながら、事実から目をそらさないよ
うに指導していく。 『先生!聴いて』
(16)後ろから、北たちの車が走ってくる。 『会いたくて』
(17)没有坐车,两人步行出省委大院,沿街走起来。 《官场》
(18)回到家垫上脚垫,我开始迫不及待地跑起来,令我十分失望的是,花样跑的脚步声音依旧,肯定晚上邻居
还要敲暖气管示愤。 《懒人瘦身法》

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例文(15)〜例(16)において付帯状況を表す「持ってくる」と移動様態を示す「走ってくる」の否定形は、
それぞれ、「持たないでくる」と「走らないでくる」となる。つまり、それらの否定形は「〜てくる」とでは
なく、前項動詞と関わりを持っている。言い換えれば、この場合では「〜てくる」の「話者に向かう」という
側面に注目されている。ドルヌ(1987)ではこの「〜てくる」が補助動詞とされている。しかし、例(15)の
対象物の「詩と作文」、例(16)の主語の車、どちらも実際に物理的な移動を行った。また、形態・統語的な
側面において、寺村(1984)が指摘しているように「くる」が主たる述語、「〜て」がそれを副詞的に限定・
修飾しているという、従—主の関係で結びついたものになっている。すなわち、先行動詞「持つ」と「走る」
が「くる」との関係が一層に緊密になり、それらの間に何も入れないので、「くる」の用言としての自立性を
やや失い、この場合の「〜てくる」が本動詞と補助動詞の意味特徴を兼ね備えるタイプだと言える。これに対
し、例(17)〜例(18)では水平方向への空間移動かつ主体移動の仕方を表す継続性のある「走」や「跑」は、
地面に接触して水平方向への移動を表す様態移動動詞である。“起来”がそれらの動詞と組み合わさった時、
本来の空間的な移動としての意味が希薄化し、「動作・変化」が時間軸上での進行方向の意味合い、所謂、時
間的移動の意味が強まっている。つまり、始動アスペクトとしての特徴がクローズアップされた。

4.3 補助動詞としての「〜てくる」と方向補語としての“〜起来”

4.3.1 具体的な空間移動

(19)鮎が、川の上流へだんだん登ってくる。 『旪の味、だしの味』
(20)教科書を手にした若者が続々と教室に入ってくる。 『南米日系人の光と影』
(21)看大夫卷好袖口,李四爷把那个小药箱提起来。 《四世同堂》
(22)平时是父亲做菜,但是家里来客人,母亲会亲自操刀,她把煮熟的猪肉捞起来,切得又薄又整齐,青蒜苗辣
椒加上泡姜泡萝卜。 (虹影博客)
例(19)と例(20)の「登る」と「入る」という移動動詞に「〜てくる」を付加することで、話者へ向かっ
て接近するという「方向性」を持つようになる。というわけで、「〜てくる」が「登る」と「入る」が指し示
す移動を方向づける役割を担うといえる。方向が焦点化されることに関しては、日野(2001)では動詞「くる」
「いく」などが補助動詞になるとき、元の動詞から方向的な意味だけを抽出する(=「空間的抽出化」)から、
「方向が焦点化」
という段階を経過し、
補助動詞の身分を手に入れ、
前項動詞との結びつきが一層緊密になり、
複合動詞のように使われる。例(21)〜(22)の“提(手に提げる)” と“捞(掬い上げる)”という動詞
に “起来”が後接すると、“药箱(薬箱)”、 “猪肉(豚肉)”に働きかけ、それらを低いところから高い
ところへと移動させることを表す。ここの“〜起来”の表す移動は主語の移動ではなく、対象の移動であるの
で、 動詞性が弱まり、文法化の度合いが高くなった。そこから、本動詞から方向補語への脱カテゴリー化が
遂げたと言える。刘坚(1995)ではこれについて次のように説明されている。

如果这个动词在句中经常充当次要动词,它的这种语法位置被固定下来后,其词义会慢慢变化、虚化,再发展下去,其语法

功能会发生变化,不再作为谓语的构成成分,而变成了谓语动词的修饰成分或者补充成分。(こうした動詞は文の中で常に非主

17
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要的な動詞として使われ、またこの文法的な位置が固定されれば、その語彙的な意味が漸次的に変化していき、漂白化してい

く。さらに変化すれば、文法的な働きかけが変わり、述語にならず、述語を修飾するもの、または述語の補充的な部分になる。)
3

刘坚(1995:161)

つまり、この場合では目的語の移動を示す“〜起来”の動詞性が弱まり、文法化の道を辿り始めたといえる。

4.3.2 抽象的な空間移動

(23)
ロケットはごう音を鳴りひびかせながらぐんぐんと上昇していきます。
速度がどんどん上がってきます。

『アインシュタインをこえて』

(24)残り 10m くらいに差し掛かり、さすがにへばってきた。スピードも落ちてくる。 『五体不満足』


(25)だが、この頃になると、川の流れが変わり、春先や梅雤の頃などに増水しても、蛭ケ小嶋が水に浸かる

ようなことはなくなった。それにつれて土地も乾き始め、蛭やなめくじの数も減ってきた。 『磯釣り』

(26)我们不妨拿西班牙影片《关于我母亲的一切》和张艺谋的《我的父亲母亲》做个比较,看看两个同样从痛

苦中站起来的“母亲”,就知道我们的电影离心灵还很远。 《中国当代电影史》

(27)我想把丢了多年的英语捡起来。 《作家文摘》
(28)他说,他很多年前就看江珊演的戏,她是个非常好的演员,基本素质好,可塑性强,如果她化上妆,把她

的气质提起来,她能演一个非常高贵的人。 (人民日报海外版 2001 年)

抽象的な空間方向を示す「〜てくる」には例(23)の「上がってくる」のような上昇的な方向変化を表す
ものもあれば、例(24)と例(25)のスピードが「落ちてくる」と蛭やなめくじの数が「減ってきた」のよう
な下降的な方向変化を表すものもある。これに対し、例(26)の“站起来”は母が苦難にあっても、へこたれ
ずに元気に頑張っている姿を描くのに用いられる。例(27)の“捡起来”は長く使わないと忘れてしまう英語
を再度学ぶことによって、英語への感覚を取り戻し、レベルをあげることに使われる。また例(28)の“提起
来”は“江珊”という俳優はメイクをすることで気品を引き立てることができることを意味する。すなわち、
これらの場合に用いられる“〜起来”は抽象的な方向性を表し、しかも積極的な方向に向かうことしか示さな
い。これらの表現はいずれも、ポジティブな方向という抽象化された「高いところ」へ向かうことを、空間的
な「下から上へ」という具体的な方向性として捉え、「存在」の概念メタファーを介して拡張されたと思われ
る。趨向補語は抽象的な空間移動を判断する基準の一つとして、缪(2009:16)は“趋向补语所指向的名词性
成分的空间性越强,则表示的意义距离空间轴越近。”(趨向補語が指向する名詞性成分の空間性が強ければ強
いほど、その意味が空間軸に近い。)(筆者訳)と主張している。この基準に基づき、それぞれの例文にある
“母亲(母)”、“英语(英語)”と“积极性(積極性)”という名詞の空間性が弱いことは “〜起来”が抽
象的な空間移動の方向を指し示す証拠になると言えるのだろう。日野(2001)では抽象度の共時的証拠として
三つあげられる。それは加算性(数えることができる)、可視性(見ることができる)と触知性(触ることが

3
日本語訳は筆者による。
18
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できる)である。この三つの証拠を当てはめると、この場合の「〜てくる」と“〜起来”は空間移動という用
法の中で意味がもっとも漂白され、具体的なドメインから抽象的なドメインへと写像が行われると言える。

4.4 時間的な移動—アスペクトの標識化

4.4.1 始動相の標識化

(29)すなわち,あがりの状態を大別すると,「不安を感じる」,「恐怖心が出てきた」といった「こころ」
の反応である「感情」と,「ドキドキする,手のひらに汗が出てくる」といった「からだ」の反応である
「情動状態」に分けることができる。 『最新スポーツ心理学』
(30)限りないブルーの海を見ていると、幸福感がひたひたと湧いてくる。 『至福の時を求めて』
(31)窓ふきやお風呂そうじをしたりかるく走ったり、ストレッチしたり自転車にのったり、散歩したり。そ

うするとよどんでいたエネルギーがうごきはじめて、おもくるしさが、消えてくる。

『こころに水をやり育てるための 50 のレッスン』

(32)等牛群和文澜长枪短炮地快拍完了,巴老看着牛群突然笑起来,还“咯咯”地笑出了声!可能巴老想起哪

个相声段子了。 (作家文摘 1997 年)

(33)“大花鞋”凑近秀秀爹耳朵,不知嘀咕了句什么。秀秀爹一下子叫起来了。 《小站的黄昏》
(34)罗老师自己制的一把二胡,因搬家准备扔掉,她向罗老师要来,闵老帮她装好琴弦,于是,她便开始学
起来。 (作家文摘 1996 年)
例(29)〜(30)では、「汗」と「幸福感」が生じる場所は、それぞれ「手のひら」と「心」であり、
どちらも空間性が弱い。そのため、「〜てくる」の表す空間移動の実質的な意味が薄れ、「状態変化のス
タート」へと写像され、時間の始まりを強調し、さらに例(31)のように「重苦しさ」の消滅現象が出現
することを示すことができる。この場合、「〜てくる」の先行動詞には「出る」、「湧く」などのような
意図でコントロールできない意味をもつ自動詞が多い。そして、「汗」や人間の感情「重苦しさ」のよう
な非情物が主語としてよく用いられるのも特徴的である。これらの表現は統語上、「始動相」に変わった
と考えられる。その一方で「〜てくる」 に前接できる“出现(出る)”と“消失(消える)”という動詞
が“~起来”と相性が悪いのは、それらの動詞には時間の幅が含まれないからである。“~起来”の始動
用法について、朱继征(2004)は動作の展開過程の一局面(中略)に焦点を当てることによってその開始
を表すと言っている。言い換えれば、「〜てくる」は動きの開始時点に重きを置いているのと異なり、“~
起来”は動きがスタートした後もしばらく続くことにフォーカスされるから、“~起来”の前に置く動詞
が継続性を有するものでなければならない。それに、“~起来”は「〜てくる」と異なり、自動詞とだけ
ではなく、他動詞ともよく共起できる。それらの動詞は主体の動き、生理、人間の心の動きを表す点で共
通している。具体的に言えば、“〜起来”には「〜てくる」と同じように非意図的な事態(例(32)と(33)
の“笑起来”と“叫起来”)に使われるものもあれば、例(34)の“学起来”のような動作主の意志的な
行為に用いられるものもある。さらに、例(32)と(33)の“突然(突然)”“一下子 (いきなり) ”など
のような事前に予想されたものに反する意外性を含む副詞が“〜起来”構文に入ると、“笑起来”や“叫
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起来”などとの相乗効果によってそれらの行為が主語の意図と関わらずスタートすることを強調する傾向
になると考えられる。劉月華(1998)では“~起来”のもつ状態の意味は新しい状態に入ることであると
指摘されている。この意味において、“起来”は始動相と見なすべきであろう。このように静的な状態か
ら動的な状態への変化という点では“站起来”と“坐起来”のような体の動作に類似性があるので、メタ
ファーによって拡張された意味だと思われる。

4.4.2 継続相の標識化―「〜てくる」だけの用法

(35)考えてみると性格なのかもしれないが、ぼくは今日までいつも前向きに挑戦し続けて生きてきたような

気がする。 『宝塚,わがタカラヅカ』

(36)心底からの笑顔に出会いたいと願って、介護をつづけてきたが、逆に若林さんたちが、お年寄りたちに

笑わせられている。 『介護の現場で何が起きているのか』

(37)SMAP は、デビューは光ゲンジに比べるとかなり地味なものだったけど、バラエティーに挑戦したり、地

道な活動を積み重ねつつ頑張ってきたから。 (Yahoo!知恵袋)

例(35)〜例(37)の「生きる」、「続ける」と「頑張る」はいずれも漸次的な変化を表さない継続性の
ある動詞であり、それらの後に「てくる」がつく場合は、過去のある時点から今まで動作・行為の均質的な継
続を表す。この点において空間移動を表す「〜てくる」がメタファーによって、時間軸に投射されて意味拡張
されたと考えられる。時間というものには「単方向性」4があると言われるため、「生きる」に「〜てくる」
をつければ、「過去から現在まで」という方向性が加えられる。この場合、「〜てくる」の意味が次第に抽象
化され、標識の機能も拡大されるから、機能語の性格が一段と明らかになり、「補助動詞」という範疇から逸
脱しアスペクトの標識へと移行している。それに、人の内面的な側面や生活に関することを表す動詞がよく先
行動詞として用いられる。

4.4.3 変化相の標識化

(38)食欲が落ちてきたり、吐くようになると身体も心も辛くなってくると思いますので、支えとなってあげ
て下さい。 (Yahoo!知恵袋)
(39)読んでいても、華やかで高揚した気分が味わえて、うっとりとうれしくなってくる。
『赤毛のアンの翻訳レッスン』
(40)今天的新疆充满了活力,到处都是青春的影子,国家对我们国土的安全保障,让民族企业的市场繁荣发展
起来。 (人民日报 2014 年)
(40’)*今天的新疆充满了活力,到处都是青春的影子,国家对我们国土的安全保障,让民族企业的市场衰败
起来。

4
時間は過去から未来への一方向にしか流れないものである。
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(41)财政资金投资中小企业,目的不是为了赚钱,而是要让中小企业更好地创新、更快地成长起来。
(人民日报 2015 年)
(41’)*财政资金投资中小企业,目的不是为了赚钱,而是要让中小企业更好地创新、更快地衰退起来。
(42)应用型科研机构转制以后,要建立现代企业制度,建立与市场经济相适应的新的运行机制,实行竞争上岗,
采取有利于激励创新、有利于加快科研成果转化的内部分配方式,把广大科研人员创新创业的积极性充分调
动起来。 (人民日报 2000 年)
(43)中国农业大学草业、养殖方向农业推广硕士招生贵阳富源彩色印铁制罐有限公司清算公告想胖颗粒 30 天
让你胖起来。 (贵州日报 2005 年)

例(38)と例(39)から分かるように、「〜てくる」が漸次的な変化を表す場合、積極的な方向にも消極的
な方向にも用いられうる。一方、“〜起来”が時間を表す場合、例(40)と(41)で示した通り、時間の流れに伴
う「小から大へ」、「弱いから強いへ」という変化の趨向や、例(42)の“调动起来”のような人々の創業への
熱意と意欲を掻き立てるという積極的な方向に変化する場合にしか用いられない。よって、
(40’)と(41’)
で示すように消極的な方向には用いられにくいと思われる。それは低いところに位置するのは普通な状態だと
いう中国人の思想があるからであろう。さらに(43)で示すようにたとえそもそもマイナス的な意味を持つ形
容詞“胖(太っている)”でもこの意味の“〜起来”と共起すると、望ましい方向への状態変化を表すように
なる。先行動詞に継続性が求められる点では「〜てくる」と「〜起来」が共通している。

4.4.4 完了相の標識化

(44)国际社会各成员应当紧密团结起来,携手构建合作共赢新伙伴,同心打造人类命运共同体,让持久和平、共

同繁荣的光芒照亮人间。 (人民日报 2015 年)

(45)豆瓣就是借助文化生活的各个元素,把人们组织起来的社区。 《创业者对话创业者》
(46)据说有个圣人,被某国人请求为王,他逃到一个山洞里躲起来。 《中国哲学简史》
(47)冬には水面すれすれにかじかんで濃い緑から紫色のいまにも凍えそうな葉が、早春になると、若々しい緑
の色に変わってくる。 『定年後・八ヶ岳いなか暮らし』
(48)中国でイスラムの旋律を聞くと、やはりシルクロードなのだという実感が湧いてくる。 『冒険女王』

例(44)〜(46)では“团结(団結する)
”“组织(結成する)
”と“躲(隠れる)
”は他動詞である上に動作
主の意志のある行為を表すが、
“~起来”と組み合わせると動作の完了か目的の達成を示すようになることが
観察できる。この“~起来”に当たる日本語は「〜た」
、「〜ている」などである。この場合の“~起来”は事
態の結果を表し、抽象的な空間移動の用法からメトニミー(過程—結果)に基づき拡張されたと考えられる。
しかし、この場合の「〜てくる」は“~起来”と異なり、出来事の結果だけではなく、その結果が生じる過程
も示し、原因と結果の間に前後関係があり、継起的な空間移動と類似性があるので、メタファーを通して意味
拡張されたものだと思われる。継起的な空間移動からメタファーを通して意味拡張されたものである。
例えば、

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例(47)〜(48)の「葉が緑の色に変わる」
、「実感が湧く」が示した通り、
「〜てくる」の前に来る動詞は自
動詞であり、非意図的な事態を指している。

4.5 主観的な移動を表わす

(49)一つの小さな夢を諦めずに達成すれば、次の小さな目標が見えてくる。 (Yahoo!ブログ)
(50)桜の中でもとりわけ、紅の濃い紅山桜を見ていると、熱血が流れでたというこの伝説がなまなましく、
身近なものに思えてくる。 『紅山桜』
(51)目標を意識し、計画を立てることで時間が貴重なものだとわかってくる。
『がんばる力とたしかな学力』

(52)水場は古代の人達にとっては現代のスーパーマーケットのような働きをしていたとガイドが説明して
いたが、全くそのとおりであったのだと思われる。そんな目で見てみるとこの単調な岩場が生きた教
材に思えてくる。 『オーストラリア癒しの大陸をゆく』

(53)学业优异的莲达并不属于特别漂亮的那一类女孩,她皮肤微黑、身材苗条,看起来非常健康。
《李小龙的功夫人生》
(54)石宗源说,欠发达、欠开发是贵州省的基本省情和经济社会发展最显著特征。综合看起来,今后 5 年是贵
州省重要的战略机遇期,抓住了会成为黄金发展期。 (贵州日报 2007 年)
(55)很多人在成为 MBA 成员之前根本不知道什么是 MBA。一些人加入的原因仅仅是由于 MBA 听起来象是能有个
光明的前途。 (MBA 宝典)

例(49)の「電車のライトが見えてきた」のような例において、「電車のライトが見える」というのは話し
手が感じたもの、つまりある感覚であるので、その「〜てきた」を認知領域への移動という用法に入れるべき
だと山本(2000)で指摘されている。この場合の「〜てくる」が示すのは自分が行きたいところへ行ければ行
くほど、自分に対する理解が深まり、意識しないうちに目標を見つけたという意味であり、一種の認知的な用
法である。山本(2000)は、人間の思考活動や視覚・聴覚などの意味を持つ動詞に用いられたこの種の「〜て
くる」はメタファーによる派生用法であり、移動の到着点を認知領域とすると言っている。話し手が自分の目
標が見える過程を自らの知覚内への動きとして描き、
つまり、
ますます明瞭に知覚した過程として捉えるから、
「〜てくる」は「体から心へ」という関係において、比較的具体的な概念が比較的抽象的な概念にマッピング
されたと言える。また例(50)の「思えてくる」の「〜てくる」は、紅山桜が話者の心にあたかも熱血が流れ
出たという場面に身を置くような感じを思い起こさせるというような主観世界における移動を表し、例(51)
の「わかる」の後に「〜てくる」がつくことで「今まで時間がそんなに大切だと思わない」状態から「そう思
うようになってきた」という話者が時間に対する認識の変化を示す。さらに例(52)の「思えてくる」は話し手
の心では「岩場」そのものを「生きた教材」と捉え、客観的な存在ではなく、自己の目に映った映像のような
主観的なものに見なしている。この用法の「〜てくる」は物理的な移動からメタファーによって転用されたと
思われる。
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知覚動詞の「見える、聞こえる、わかる、思える」は「〜てくる」と結びつくことができるが、それらを中
国語に訳せば、“看得出、听得出、知道、认为”になる。これらの中国語の表現には時の流れに伴う変化が含
意されず、動作の結果を表す働きをするので、動作がスタートしてからしばらく継続することを強調する“~
起来”と相容れない。例(53)の場合、“看起来”という表現は、話者がその場で“看(見る)”による直接
的な知覚感覚「ちょっと黒い肌色でスタイルが良い女性」に基づき、「その女性が元気で健康である」という
自分の評価、主観的な態度を表し、十分な臨場感が醸し出されるが、文脈への依存度が高い。つまり、言語主
体(話し手)が事態に関与する場合、話し手の評価が知覚される対象の中に含まれる。さらに、例(54)と例
(55)の“看起来”と“听起来”が表すのは話者が“贵州欠发达(貴州の経済が遅れている)”と“MBA取得
(経営学修士号の取得)”という事態に対する直接的な感覚ではなく、ある現象に基づいた推測である。つま
り、例(54)と例(55)が示すのは話者がそれらの現象に対する理解は表面的にとどまらず、本質まで掘り下
げ、筋道を立てて深く考えることで「今後5年は貴州の経済の発展にとって大切な時期」と「MBAが将来に役に
立つ」との見通しを立てることである。そこに話者の推測が関係してくることが分かる。この“〜起来”に反
映された話者の推測は、必ずしもその場での直接的な感覚によるとは限らず、以前の主観的な経験によっても
可能であろう。この推測という意味が次第に“〜起来”に取り込まれることから、“〜起来”は話者が物事の
性質と結果に対する判断を導き出すという文と文を連接する話題マーカーになると思われる。

評価と推測という二つの意味の文法化レベルについて、劉楚群(2009:71)では「从语法化角度分析,评价
义比推测义在语义虚实程度处于不同的层级,推测义比评价语义更虚。(文法化の角度からみれば、語義の文法
化の度合いにおいて、推測義は評価義より高いレベルにある)」
(筆者訳)と説明している。また、Diehl(1975)
によれば、評価も推測も文法化の度合いが最も高い「ロジック空間」に属する。評価の用法はある前提を示し、
推測的な用法は前提から結論までの推論の過程を意味する。言い換えれば、現実的な世界に基づいた評価的な
用法と、心的世界に基づいた推論的な用法は部分と全体の関係であり、つまり、メトニミーによって関係づけ
られている。よって、“〜起来”の推測的な用法は評価的な用法からメトニミーを通じて拡張したものである
と考えられる。要するに、「見える」、「聞こえる」は、いずれも「〜てくる」と結びつくとあくまで物事に
対する身体感覚によって生じた心的な感じを表す。したがって、ここの「〜てくる」が推測的な用法の“〜起
来”と比べれば、動詞性はやや強い。つまり、“〜起来”のほうはより主観的だと言えよう。

4.6 心理的な方向性を表わすー「〜てくる」だけの用法

(56)このとき階段のところで人影が見えた。手榴弾を投げてくる。 『テロリストハンター』
(57)親元を離れて寄宿舎へ入っている小津のために、母のあさゑが気配りをし、入用と思われる品を送って
くることもあった。 『若き日の小津安二郎』
(58)「新聞記者の力を借りて攻撃をする気だな。春日・佐々木の怨念の抗争をまた仕掛けてきたな」と塚本
氏はカチンときた。 『永田町の暗闘』
(59)私が市の職員だった時代、議員がバッジの威力を過信して、職員に無理を押し付けてくることが多々あ
りました。 『真実の報酬』
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(60)朴鉄鎮が嬉しい便りを伝えてきた。 『北朝鮮の最高機密』
(61)子供の具合を確認するために電話してきたわけだ。 『密使』
張麟声(2013)では、「送ってくる」の場合は、「送った」のは人であり、「きた」のは物品であるとし、
つまり、この場合の「〜てくる」が表すのは対象物の移動である。この用法について菅谷(2002)は、「対象
物の移動」は他者が話者(および話者が視点をおく人物)に対する働きかけを示し、話者の態度がかかわって
いると指摘している。発話者は言語化されず、発話者の視点から見たままの事態が表現されている。そこで、
例(56)と例(57)の「〜てくる」は、それぞれ、「手榴弾」と「入用と思われる品」という対象だけが話者
の領域に向かって接近し、話し手がそれを迎え入れる立場を示す点で心理的な方向性と認めてよいのだろう。
その心理的な方向性はマイナス、中立とプラスの三種類に分けられる。古賀(2008)は「〜てくる」を使った
逆行構文の事象は、典型的に話者が予期していなかったものであるため、話者はその事象によって悪い影響を
被ることが多いと主張している。例文(58)と例文(59)では動作主体は話者以外の人で、「〜てくる」の前
の動詞が一方向への動作を表し、しかも、その動作が話者まで及ぶ。「〜てくる」を用いると、主語と話し手
は「敵対関係」になり、つまり、主語の行為は、話し手にとって脅威となる敵対的行為であることから、話し
手に不都合をもたらすと認識されやすくなる。これに対し、例(60)には相手の「朴鉄鎮」の「嬉しい便り」
から話者が肯定的な影響を受け、つまり、この文脈に話者の受益感が読み取れる。また例(61)では電話をか
けるという行為が話し手にとって侵害行為にも有利な行為にもならず、利害の点で中立だと言える。そして例
(58)と(59)に含まれる被害の意味は、「~てくる」に刻み込まれる語彙の意味とは言えない。それは特定
の文脈において推測により生じる語用論的な意味であろう。ここでは「〜てくる」の使用により、行為者の意
図的な動作が話者の心理に与えた影響を顕在化させため、主体化のプロセスが見られる。また、多くの場面で
繰り返して使われることによって固定され、話者との関係を表す「関係マーカー」へと変化するプロセスには
「語用論的強化」がみられる。その意味が単に漂白化されなくなったわけではなく、新しい領域における新し
い意味が獲得しているのである。この「〜てくる」は実質的な意味がほぼ消失し、文法化の度合いが最も高く
なっている。一方、“~起来”にはこのような使い方は見られない。

4.7 まとめ

本章の考察により、「〜てくる」と“〜起来”の文法化経路を以下のようにまとめられる。
まず、日本語の「〜てくる」は、継起的な移動>同時的な移動(水平方向)>具体的な空間移動の方向性>
抽象的な空間移動>動作の開始>動作の継続>段階的な変化>動作の完了>認知の変化>心理的な方向性と
いう経路を辿って文法化した。
それから、中国語の“〜起来”は、同時的な移動(垂直方向)>対象の移動>抽象的な空間移動>動作の開
始>段階的な変化(積極的な方向)>動作の完了>評価の意味>心的推論という経路を辿って文法化した。
各類の「〜てくる」と“〜起来”の表す意味を以下の表 11 にまとめられる5。

5
「+」は「その用法あり」、「-」はその用法なしを表す。以下同。
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表 11「〜てくる」と“〜起来”の文法化のまとめ
日本語の「てくる」 中国語の“起来”
文法化の手段 文法化の手段
分類 用法
メタフ メトニ 語用論 メタフ メトニ 語用論の
ァー ミー の強化 ァー ミー 強化
Ⅰ語 継起的な移動 - - - - - -
彙レ 空間移動 同時的な 水平方向 + - - - - -
ベル 移動 垂直方向 + - - - - -
のも 具体的な空間移動 + - - + - -
の 抽象的な空間移動 + - - + - -
時間的な 動作の開始 + - - + - -
移動 動作の継続 + - - - - -
段階的な変化 + - - + - -
動作の完了 + - - - + -
主観的な 認知の変化 + - - - - -
移動 評価の意味 - - - + - -

心的推測 - - - - + -
心理的な 話者との関係を示す - - + - - -
方向性
Ⅱ統 移動動詞 + +
語及 本動詞と補助動詞の中間的なタイプ + -
び形 方向補語 - +
態レ 補助動詞 + -
ベル 始動相の標識 + +
のも 継続相の標識 + -
の 変化相の標識 + +

完了相の標識 + +

話題を表す標識 - +
関係を表す標識 + -

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第五章 「〜ていく」と“〜下去”の文法化プロセスに対する分析

5.1 物理的かつ空間的な移動ー本動詞の用法

(62)今度、実家に行くときに、殺虫剤買って行かなきゃ。 (Yahoo!ブログ)

(63)土佐市「宇佐」の地場産品や美味しい食べ物など、さまざまなお店がスケールアップして登場するほ
か、会場には船が着き、釣りたての新鮮な魚も販売されます。地場産品をお土産に買って帰るもよし、
その場で食べていくのもよし、ぜひ一度足を運んでみてください。 (土佐広報)

(64)我经常是写完了东西撂了笔就从六楼跑下去,跑到对面财经大学的操场上去转弯。 (鲁豫有约:沉浮)
(65)他双手掩着脸,从山坡路上踉跄地走下去。 (当代世界文学名著鉴赏词典)
例(62)の「買っていく」は「殺虫剤を買ってそれから実家に行く」のように「買う」と「いく」の間に「そ
れから」を入れても意味はほとんど変わらない。同じ説明は例(63)の「食べていく」にも適用する。つまり、
動詞と「~ていく」との結びつきは緊密と言い難い。この場合の「〜ていく」は本動詞扱いである。一方、例
(64)と例(65)の“从六楼(六階から)
”と“从山坡路上(山坂から)
”という移動の開始場所が明示されたか
ら、
“跑下去”と“拉下去”は空間的に高いところから低いところへの移動を表す。ただし、場所を表す名詞
の前に介詞が必要となる。また、前項動詞の示す動作と“〜下去”との間に継起的に起こるわけではなく、同
時に行われる。

5.2 本動詞と補助動詞の中間的なタイプ(「~ていく」しか持たない用法)

(66)歩いていくと三時間もかかってしまうので、家を出て下宿生活をおくりますが、性格はあいかわらず、
人づきあいが悪く、クラスメートヘの警戒心がとても強く、友だちはひとりもできませんでした。
『ひとりっ子の上手な育て方』
(67)朝、早起きするには、具体的にする仕事なり、何かを用意してかかるとよい。たとえば、犬を散歩に連
れていくとか、庭の草花の手入れをする、ラジオ体操をする、というように、具体的な行動に結びつくプ
ランがあると早起きができる。 『心の危機管理術』

例(66)と(67)では移動の仕方を表す「歩く」と付帯状況を表す「連れる」の後につく「〜ていく」が話
し手から遠ざかって移動することを指し示す。この場合の「〜ていく」は 4.2 節に述べた「〜てくる」と同様
に、本動詞の意味が弱まり、本動詞と補助動詞の中間的なタイプになった。

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5.3 補助動詞としての「〜ていく」と方向補語としての“〜下去”

5.3.1 具体的かつ空間的な方向性

(68)北の海岸を目指して、岩山を登っていくと、切り立った岩の間から北側の海が見える。
『交錯する文明』
(69)火事は家の裏側を焼いただけでおさまったようだ。いまもなお、消防馬車が次々と、家の裏手にある厩
舎へ入っていく。 『運命の園に囚われて』
(70)自分と同じほどの背丈の彼女が去っていく姿を恨めしげにちょっと見送ってから、唯野は研究室のドア
をあけた。 『文学部唯野教授』
(71)爷爷蹲下去,握着方七的手,说:“兄弟,我背你去找张辛一,张先生,他能治红伤。” 《红高粱》
(72)下雨天里我就很担心那两条船会积满水沉下去,这是我在脚盆里玩纸船的经验。 (贵州日报 2005 年)
(73)“怎么办呢?退下去,还是前进呢?”对敌人怀着满腔愤怒火焰的捷恩,这时断然决定:挺身前进!
(人民日报 1974 年)
(74)帕特利克也直接向待在军事卫星上的爱莎莉亚呼叫道:“爱莎莉亚,把部队撤下去!‘创世纪’到最终阶
段了!” 《高达 SEED
A》
例(68)〜(70)の「登る」、「入る」と「去る」という移動動詞が「〜ていく」と結びつくと、それぞれ
「下から上へ」、「外から内へ」と「近いところから遠いところへ」というような遠ざかっていく方向への移
動を示す。それに対し、“〜下去”が動詞と組み合わせるときに二つの方向への移動を表す。一つは例(71)
〜(72)の“蹲下去”と“沉下去”のような、人や事物が話し手の立脚点から離れて下方向という垂直の方向
に向かっての移動であり、もう一つは例(73)〜(74)の“退下去”と“撤下去”のような、前線から銃後へ
という水平方向の移動である。韓(2004)では“〜下去”の通時的な意味変化を考察した結果、水平方向の移
動は垂直方向の移動より遅れることである。よって、“〜下去”の垂直方向の移動という用法は、メトニミー
を介して、水平方向の移動へと拡張したと考えられる。この場合は、“〜下去”も「〜ていく」も前の動詞と
の結びつきはそれらの物理的な空間移動の移動表現より緊密的であると考えられる。この場合の「〜ていく」
と“〜下去”が空間移動の方向性を表すから、もはや本動詞のカテゴリーへの帰属度が薄れ、補助動詞と方向
補語の範疇へと移行していると言える。

5.3.2 対象の移動を表す“~下去”

(75)*私はボールを太郎のほうへ投げていった。 (作例)
(76)抗洪的人群把一二百公斤重的沙袋投下去,沙袋连跟头也来不及翻就被卷走了。 (报刊精选 1994 年)
(77)我有好多话要和爸爸说,可是他们只给我 4 分钟。我还来不及说一个阿姨就把我拉到楼下去。我跑上来,

她又把我拉下去,我又跑上来。 (贵州日报 2005 年)

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例(76)の“投(投げる)
”に後接する“~下去”は対象である“沙袋(土嚢)
”が下への移動を指している。
この場合の“~下去”は主語の移動を表さず、対象の移動を表すから、方向補語の性格を帯び、機能語的な役
割を果たしている。また、その前の動詞と繋がりがさらに強まることは、方向補語というカテゴリーが次第に
形成されていくことを裏付けている。しかし、対象移動を表す“~下去”に対応する「~ていく」がない。杉
村博文(1992)によれば中国語の趨向補語は動作主より受け手(対象)の移動を重視する傾向があるのに対し
て、大江(1975:227)は日本人は「ものごとを外から客観的にというより内から主観的に受け止め、経験す
る」という思考上、行動上の傾向を強く有するとしている。対象移動に「〜ていく」が使えないのは、例(75)
で示すように「ボール」が話者の領域に反する方向へ向かって移動し、それに、話者が客観的にその事態を把
握するのであれば、自分の視点でその「ボール」の移動を捉えられないからだと考えられる。

5.3.3 抽象的な空間移動

(78)松本清張の主人公たちは自己の運命と闘いながら、併しいずれも絶望と破滅の淵へ沈んで行くのだ。
『武蔵丸』
(79)貨幣が多く供給されすぎて、貨幣価値が下がり、物価が上がっていく。 (Yahoo!ブログ)
(80)我本人一贯反对用行政手段调控价格。当动用行政手段调控价格时,我们同样看到有人受益,有人受损。强行
把价格压下去,消费者受益,企业受损。 (微博)
(81)依我看,务实的精神不仅没有过时还要大力提倡,一旦离开务实精神是不可能成功做好事情的。作为身负重
任的大学生们,要走的路还很长,更需要这种精神,真正地“沉下去”学习并充实自己。
(人民日报海外版 2004 年)
例(78)と(79)の「沈んでいく」と「上がっていく」はそれぞれ暗い気持ちに落ち込むことと物価が上昇
することを表す。主語が具体性の薄い「気持ち」と「物価」であるため、この場合の「~ていく」は具体的な
方向性からメタファーを通して抽象的な方向性を指すようになると思われる。また、例(80)の“把价格压下
去”の“压下去”はそもそも空間的に上から何かに重みを加えることで対象物を下へと沈ませることを意味す
るが、“价格(物価)”という抽象的なものが対象物にきたから、抽象的な方向性を指すようになる。同じこ
とは例(81)でも観察される。つまり、ここの中国語の“〜下去”も「〜ていく」のように具体的な方向性か
らメタファーを通して拡張されたと思われる。

5.3.4 離脱の状態を表す場合(“〜下去”しか持たない用法)

(82)每到下雨时,大家都说该把那树枝砍下去,却一直没人动手去做。类似的事在这家里还有好几件。
《风中之路》
(83)洛阳城墙筑好之后,渐渐长满了常春藤。有一些好事的家伙派人把藤子从墙上扯下去,墙上就剩下了细小的
藤蔓,好像四脚蛇断掉的尾巴。 《红拂夜奔》
例(82)と(83)の“砍下去(切り落とす)
”と“扯下去(引き千切る)
”はそれぞれ、“树枝(えだ)”が木か
ら切り離された、壁にある“蔓(つる)”が剥がされたという対象物の結果を指している。この場合、“~下

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去”の前接動詞は通常、ある結果をもたらす動作を表し、“~下去”の使用により、対象物が話者に離れる方
向へ向かって移動するという結果も表されるようになった。よって、この場合、空間的な移動を表す“~下去”
はメトニミーを通じて結果の意味に拡張されたと思われる。「〜ていく」にはこのような用法がない。

5.3.5 社会階層の関係を表す場合(“〜下去”しか持たない用法)

(84)太后高兴地说:“杭州龙井的茶叶,真是灵丹妙药。”乾隆皇帝立即传令下去,将杭州龙井狮峰山下胡公庙
前那十八棵茶树封为御茶,每年采摘新茶,专门进贡太后。 (网络语料)
(85)希望环保局对这些文件进行修改后发下去,以便于同志们回去以后组织实施。 (报刊精选 1994 年)
(86)由于武警及警察数量严重不足,魏邦华只好吩咐下去:雇佣年满 18 岁的人站岗,每人每小时十元。
《中国的主人》
例(84)〜(86)の“传令下去(指示を出す)
”、“发下去(配布する)
”と“吩咐下去(指図する)
”はいず
れも組織か部門において上(位・層)から下(位・層)への移動、つまり、この場合の“〜下去”はメタファ
ーを通して垂直方向の空間移動の意味から社会関係における上から下への移動の意味になったと考えられる。
しかし、
「〜ていく」にはこれと似たような使い方が見られない。

5.4 時間的な移動ーアスペクトの標識化

5.4.1 消滅を表す

(87)巨人の顔のように白く丸い光が、
地平線の彼方から現れ、
また地平線の彼方へと消えていくのを、
確かに、
この目でもって目撃した。 『尐年宮殿』
(88)猿は次々と感染し死んでいくが、解剖は尐し遅れがちになっていた。 『遠き落日』
(89) 妹妹给黎江倒来一杯水,他涨红的脸色渐渐退下去。 《轮椅上的梦》
(90) 让父亲一说,叶美兰的怒火消下去不少,她发一会呆,提出另一个问题说:“那叶陶怎么办?我们要不要
告诉他?” 《杜拉拉升职记》
例(87)の「消えていく」は、光が次第に知覚されなくなる過程を表していると同様に、例(89)の“退下去”
は顔色がだんだん薄くなり、目立たなくなる過程を示す。例(90)では“消下去”が怒りを消させるプロセスに
使われる。例(88)において、「死ぬ」は瞬間動詞であるため、一人の行為には「~ていく」が用いられないが、
「次々」などのような複数であることを表すものがあれば、「死ぬ」という事態が何回も繰り返して行う意味
となるため、「~ていく」の使用ができるようになる。この場合において、前項動詞の時間的な側面が「~て
いく」、“~下去”によって補足され、空間的意味から時間的な意味への移行が生じたのである。また、「消
滅」と「離脱」という結果の間に何らかの関連性があり、離脱は消滅の過程の一部であると言えよう。そして、
この場合は、もともと「離脱」に焦点が当たっていたが、メトニミーによって焦点シフトが生じ、「消滅」過
程の全体が前景化され、意味変化が起こるのである。

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5.4.2 動作の継続を表す

(91)5 年生にとって「獅子舞」は誇りであり、自分たちが先輩から引き継いだものを守り、後輩に伝えてい
くことにも誇りを感じています。 『たかおか 市民と市政』
(92)現代社会が男性中心であり、女性が働いて収入を得ることが、どれほどきびしいことか女性にとって閉
された社会ともいってよいなかで、お母さんがひとりで頑張っていくには、なまやさしい覚悟では挫折
してしまうなど、生きた教育ができます。 『ひとりっ子の上手な育て方』
(93)
集団のなかに放り出す幼稚園に入って、
何年が集団生活を経験した子どもたちにみられる心身の特徴は、
大きくなって、一般社会のなかで生き抜いていくのにはなくてはならないものばかりです。また、ひと
りっ子に欠けがちな特性が多いともいえるのではないでしょうか。 『ひとりっ子の上手な育て方』
(94)36 岁,对于一个舞蹈演员来说,可是个不小的年龄了!“还准备跳几年?”我试探着问。“只要观众喜欢,
我会一直跳下去。”说话间,迪丽娜尔的母亲乌丽娅提走了进来。 (人民日报 2003 年)
(95)谈起《挑山女人》,华雯说:“与其说我们的戏感动了观众,不如说观众反应震撼了我们。我们明白了什
么叫艺术要从生活中提炼,明白了老百姓当中才真正隐藏着艺术生命力。这条路我们要一直走下去!
(人民日报 2013 年)
(96)既要抓好当前的学习,更要抓好今后的长远培训,有计划、有步骤地组织全军干部学习现代科技知识,形
成制度,形成风气,长期抓下去。 (人民日报 1993 年)
(97)这样,一个母细胞就分成了两个一样的子细胞。一个变成了两个,两个又变成了四个。分裂过程不断继续
下去,细胞数目就不断增多,植物也随着不断长大。 《中国儿童百科全书》
(98)也许在熊媛媛的眼里,一个志愿者的工作,就是把一件平凡的事认认真真的做好,并且一直坚持下去。
(贵州日报 2005 年)
(99)苦一点,严一点我不怕,只要能学到真功夫我就能忍下去。 (报刊精选 1994 年)
例(91)~(99)から分かるように、「〜ていく」、“〜下去”はともに物理的な移動という空間的なドメ
インから時間的ドメインへとメタファー的な写像が行われている。
これには三つの継続がある。
まずは例
(91)
と例(97)で示す現時点から未来への継続である。次は“~下去”にしかないが、例(94)〜例(96)の“跳
下去”、“走下去”、“抓下去”のように、空間的に上から下への移動と同時に時間的にも継続する意味を含
める継続である。ただし、“一直(ずっと)”と“长期(長い間)”などのような、<事態存続の時間量>を
表す時間関係の副詞が前に置かれると、現在から未来へと直線に伸び続けるという時間的な意味が顕在化され
る。この場合、“〜下去”に前接する動詞の範囲が広いことが調査結果から分かる。最後は例(92)~(93)
の「頑張っていく」と「生き抜いて行く」と例(98)~(99)の“坚持下去(頑張ってつづける)”、“忍下
去(我慢しつづける)”のような、ある状態を長く続けるために相当な苦労や覚悟が必要であるというニュア
ンスを含みながら動作や状態が継続する意味を表す継続である。この段階をもってアスペクトの標識というカ
テゴリーが成り立つと考えられる。

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5.4.3 漸次的な変化

(100)おとなだけにかこまれて育つひとりっ子は、接する情報が多く、自然に知識が豊かになり、ことばの
発達も早く、知能が高くなっていく傾向があります。 『ひとりっ子の上手な育て方』
(101)物の価値が下がって、経済はどんどん悪くなっていく。 『一冊の本』
(102)出版物错别字多,社会上繁体字滥,全社会必须重视规范用字不能再错下去了! (人民日报 1993 年)
(103)对于已经输不起的四川冠城队来说,是上演一场绝地反击,还是继续沉沦下去;是生存还是死亡?已站在了
命运的十字路口。 (新华社 2004 年)
(104)还有一些人,迅速堕落下去,把整个民族甚至整个人类的利益当作自己生长的养料,取消了道德约束,
贪婪地攫取地位和私利。 《公开的情书》
漸次的な変化を表す「〜ていく」には、例(100)の「高くなっていく」のような、知能が前より上の段階
に進むという上昇的な変化を表すものもあれば、例(101)のような経済の状態が悪化して活力を失うという
下降的な変化を示すものもある。この点は漸次的な変化を表す“~下去”と大いに異なっている。この場合、
“~下去”は例文(102)〜(104)の“错(間違っている)”、
“沉沦(落ちぶれる)”と“堕落(だらく)”
のような消極的なニュアンスがある動詞につき、また、時間副詞の“再(再び)
”、“继续(続ける)
”や頻度副
詞の“迅速(すぐに)
”と共起し、消極的な方向に向かって進むことを表す。“~下去”が示す事態が悪い方
向に進むという意味は、メタファーを介して拡張されたと思われる。また、類推のメカニズムからの影響を受
け、この“~下去”と結びつくことができるのは“错(間違っている)”のような状態動詞まで拡大されてい
る。

5.5 主観的な移動

(105)「老後は悠々自適」などというイメージが、私自身の老後計画からだんだん消え去っていくのを感じ
る。 『私の老い構え』
(106)みんなから気に入られていて、至れり尽くせりの扱いを受けているのだが、それでも最近はその仕事
から心が離れていくのを意識しているらしい。 『失われし書庫』
(107)僕は直子の送ってきた七枚の便箋を手にしたまま、とりとめのない想いに身を委ねていた。その最则の
何行かを読んだだけで僕のまわりの現実の世界がすうっとその色を失っていくように感じられた。
『ノルウェイの森』
(108)在一次选题会上,社长对我们杂志非常自以为是地提出了很多不切实际的批评和改革办法,把大家的努
力贬得很低。整个选题会的气氛很压抑,大家都很委屈和气愤,但没人提出反驳。我实在看不下去了,大
声说:“别逗了,你什么都不懂,你做过调查吗?你实际操作过吗?别凭空指手画脚!” (网络语料)
(109)因为在这样的竞争下,低水平、低效益、不合理重复的企业是活不下去的,资金会流向高水平、高效益
的生产上去的,会迫使企业上档次,上水平。 (人民日报 1994 年)
例(105)~(106)で示すように、移動主体の「老後は悠々自適」などのイメージは、話し手の視点から離反
することには話者がそれに対する関心がだんだん薄れていくことが読み取れる。現実世界が客観的な存在であ
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るので、当然「色」が変わるわけではないが、例(107)の「現実の世界がすうっとその色を失っていく」が
示すのは話者の目に見える世界の姿である。いずれの表現も話者が心理的に何かが自分から遠ざかっていくこ
とを感じる際に用いられ、ある現象が見える状態から見えない状態へと変わることに類似性がある。つまり、
「〜ていく」の消滅の意味がメタファーによって主観的な表現に拡張された。一方、例(108)の“〜不下去”
は「〜ていく」と同じく話者の「現実から遊離している批判に皆黙って反駁しない」ということに対する耐え
きれない考えが前景化され、すなわち主体化的な意味が顕在されると考えられる。さらに例(109)では「活
不下去(生きていけない)
」が表すのは「推測」という高次的な認識である。このことから何かを判断する必
要がある文脈の中で、“〜不下去”には今にも起こそうとする未来に対する推測が読み込まれるということが
分かる。つまり、語用論的な強化によって更に抽象的な意味に文法化されたと考えられる。この点において、
「〜ていく」より文法化が進んでいると考えられる。Dahl(1985:11)ではその文法化の過程について、「あ
る範疇が用いられたとき、もしある条件がたまたま何度もそなわったとすると、その条件が範疇の意味の中心
的な部分として理解されて、条件と範疇がより強く結びつくことがある」と説明されている。

5.6 まとめ

本章の考察により、「〜ていく」と“〜下去”の文法化経路を以下のようにまとめられる。
まず、日本語の「〜ていく」は継起的な移動>同時的な移動>具体的な空間移動の方向性>抽象的な空間移
動>消滅を表す>動作の継続>漸次的な変化>話者の見方というルートを辿って文法化した。
それから、中国語の“〜下去”は同時的な移動(垂直方向)>同時的な移動(平行方向)>対象の移動>抽
象的な空間移動>離脱の状態>社会階層の間の関係>消滅を表す>動作の継続>漸次的な変化>話者の見方
>未来への推測というルートを辿って文法化した。
本章の分析により、各類の「〜ていく」と“〜下去”の表す意味を以下の表 12 にまとめられる。

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表 12「〜ていく」と“〜下去”の文法化のまとめ
日本語の「ていく」 中国語の“下去”
文法化の手段 文法化の手段
分類 用法
メタフ メトニ 語用論 メタフ メトニ 語用論の
ァー ミー の強化 ァー ミー 強化
Ⅰ語 継起的な移動 - - - - - -
彙レ 空間移動 同時的な 水平方向 + - - - - -
ベル 移動 垂直方向 + - - - + -
のも 具体的な空間移動 + - - + - -
の 対象の移動 - - - + - -

抽象的な空間移動 + - - + - -

状態 結果の意味(脱離を表す) - - - - + -

社会関係 社会階層間の関係を示す - - - + - -
時間的な 動作の消滅 + - - - + -
移動 動作の継続 + - - + - -
段階的な変化 + - - + - -
主観的な 話者の見方 + - - + - -
移動 未来への推測 - - - - - +

Ⅱ統 移動動詞 + +
語及 本動詞と補助動詞の中間的なタイプ + -
び形
方向補語 - +
態レ
補助動詞 + -
ベル
継続相の標識 + +
のも
変化相の標識 + +

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第六章 終わりに

本稿では日本語の「〜てくる」、「〜ていく」と中国語の“~起来”、“~下去”の文法化経路を対象に、
認知意味論に基づいて対照分析した。その結果を次の表 13 にまとめられる。
表 13 「〜てくる」、「〜ていく」と“~起来”、“~下去”における文法化の対照
分類 用法 日本語の「てくる」 中国語の“起来” 日本語の「ていく」 中国語の“下去”

文法化の手段 文法化の手段 文法化の手段 文法化の手段

メタ メト 語用 メタ メト 語用 メタ メト 語用 メタ メト 語用

ファ ニミ 論の ファ ニミ 論の ファ ニミ 論の ファ ニミ 論の

ー ー 強化 ー ー 強化 ー ー 強化 ー ー 強化

Ⅰ語 継起的な移動 - - - - - - - - - - - -

彙レ 空間移動 同時的な 水平方向 + - - - - - + - - - - -

ベル 移動 垂直方向 + - - - - - + - - - + -

のも 具体的な空間移動 + - - + - - + - - + - -

の 抽象的な空間移動 + - - + - - + - - + - -

対象の移動 + - - + - - - - - + - -

状態 結果の意味(脱離を表す) - - - - - - - - - - + -

社会関係 社会階層間の関係を示す - - - - - - - - - + - -

時間的な移動 動作の開始 + - - + - - - - - - - -

動作の持続 + - - - - - + - - + - -

段階的な変化 + - - + - - + - - + - -

動作の完了 + - - - + - - - - - - -

動作の消滅 - - - - - - + - - - + -

主観的な移動 認知の変化 + - - - - - - - - - - -

話者の見方 - - - - - - + - - + - -

評価の意味 - - - + - - - - - - - -

未来への推量 - - - - + - - - - - - +

心理的な方向性 話者との関係性 - - + - - - - -

Ⅱ統 移動動詞 + + + +

語及 本動詞と補助動詞の中間的なタイプ + - + -

び形 趨向補語 - + - +

態レ 補助動詞 + - + -
ベル 始動相の標識 + + - -
のも 継続相の標識 + - + +
の 変化相の標識 + + + +

完了相の標識 + + - -

話題を表す標識 - + - -

関係を表す標識 + - - -

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以上の表と本稿の分析から以下の結果が得られた。
まず、語彙的な面では、ほぼ「具体的な空間移動」>「空間的な方向」>「時間的な方向」>「主観的な方
向」の順に従って文法化が進んでいる点において、日中両言語は非常に似っている。つまり、文法化ルートに
おいて、日本語の「〜てくる」と「〜ていく」も中国語の“〜起来”と“〜下去”も元の本動詞の意味が次第
に抽象化し、希薄していくという意味変化の傾向がみられる。
それから、機能の面から見れば、移動の様態と付与状況を表す日本語の「〜てくる」と「〜ていく」は物理
かつ空間的な移動を表すものの、用言としての自立性を失い、より中間的な性質を持つ一方、中国語の“〜起
来”と“〜下去”はその中間的なタイプを持たないが、動作主の移動を表すのではなく、対象の移動を示せば、
方向補語とみなされる。また、日本語の「〜てくる」、「〜ていく」と中国語の“〜起来”、“〜下去”はア
スペクトの標識化という点で共通している。さらに文法化の最後の段階には「〜てくる」と“〜起来”はそれ
ぞれ、関係マーカーと話題マーカーになった。「〜ていく」は関係マーカーへと発達できないが、主観性の萌
芽が見られる。それに対し、
“〜下去”には話者の直感から推測的な意味への移行に伴い、主体化が顕在され、
「〜ていく」より文法化の度合いがかなり進んでいると言える。
最後に、文法化の動機づけの観点から言えば、両言語の文法化は語用論の強化と密接に関わっていると言え
る。総じて言えば、両言語は意味が漂白化されると同時に文法機能が新たに獲得されることと考えられる。
本稿ではコーパスから現代語の例文を抽出し、共時的に日本語の「〜てくる」、「〜ていく」と中国語の“~
起来”、“~下去”という移動表現の通時的な文法化ルートを考察したが、古典語には触れていない。それぞ
れの文法化プロセスを一層明らかにするために、通時的な考察も必要であると思う。これを今後の研究課題と
したい。

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例文出典

『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(BCCWJ)(2009)国立国語研究所
北京大学漢語語言学研究中心の「CCL コーパス検索系統(ネット版)」
北京语言大学现代漢語語料庫の BCC(ネット版)
http://www.shimada-law.com/manager/debt_collection

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[12]フランス・ドルヌ.行ってきますー日仏対照研究の一様相[J].『日本語学』6,No.10,(1987):40-48
[13]张麟声.「クル・イク」フォームに見る日本語の性格ー中国語と比較して[J].『知と情意の言語学』.
東京:明治書院.1992:157-181
[14]张麟声.再び「V 来,V 去」と「V てくる,V ていく」について[J].日中言語研究と日本語教育 6,2013:25
—36
[15]菅谷奈津恵.日本語学習者によるイク・クル、テイク・テクルの習得研究: プロトタイプ理論の観点か
ら[J]. 言語文化と日本語教育 23,2002:66-79
[16]刘坚 曹广顺 吴福祥.论诱发汉语词汇语法化的若干因素[J].中国语文,1995(03):161-169.
[17]韩蓉. “下来”“下去”语法化过程考察[D].北京语言大学,2004.
[18]高顺全.复合趋向补语引申用法的语义解释[J].汉语学习,2005(01):56-61.
[19]缪韵笛. 现代汉语“V 上去”与“V 起来”的对比研究[D].上海师范大学,2009.
[20]刘楚群.“看起来”与“看上去”、“看来”差异浅析——兼论趋向短语的语法化[J].江西师范大学学报
(哲学社会科学版),2009,42(04):69-73.

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付録

付録1:日本語の「〜てくる」と共起しやすい先行動詞

前項動詞 出現頻度 前項動詞 出現頻度 前項動詞 出現頻度


流れる 498 歩く 494 降る 492
訪ねる 459 回る 458 出す 447
慣れる 405 述べる 405 込み上げる 403
生じる 402 湧く 391 襲う 381
走る 380 なくなる 358 寄る 356
進める 348 飛び出す 333 思える 320
求める 314 もらう 309 とる 301
減る 298 乗る 296 高まる 292
考える 288 登場する 287 浮かび上がる 284
響く 284 関わる 283 話しかける 281
できる 268 蘇る 267 書く 261
生える 259 起こる 253 進む 252
果たす 247 起きる 240 追う 239
発展する 235 借りる 233 押し寄せる 231
育つ 231 伸びる 228 向かう 228
作る 225 増す 223 頑張る 217
変化する 214 追いかける 210 つける 207
下りる 205 侵入する 205 取り組む 204
実施する 194 電話する 194 受ける 190
引っ越す 189 異なる 188 増加する 186
渡る 183 下がる 179 通る 175
立つ 172 広がる 167 漂う 167
呼ぶ 165 落ち着く 165 近寄る 165
入り込む 163 入れる 163 思う 161
支える 161 乗り込む 159 帯びる 159
置く 157 拾う 154 続く 154
重ねる 154 楽しむ 152 溢れる 151
駆けつける 151 図る 149 巡る 148
努める 147 絡む 144 過ごす 142
登る 137 食べる 136 伝える 134
流れ込む 131 繰り返す 130 移る 129
上る 128 決まる 128 使う 127

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吹く 127 歩む 123 仕掛ける 122
打つ 122 攻める 122 暮らす 122
働く 120 低下する 118 襲いかかる 115
要求する 111 集める 111 学ぶ 110
飽きる 110 出かける 109 守る 108
関係する 108 尋ねる 107 浮上する 106
突っ込む 106 展開する 105 始める 104
寄せる 102 推進する 102 駆け寄る 102
感じる 101 引っ張る 100

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付録 2:日本語の「〜ていく」と共起しやすい先行動詞

前項動詞 出現頻度 前項動詞 出現頻度 前項動詞 出現頻度


上がる 318 変化する 315 成長する 298
検討する 298 頑張る 282 展開する 278
向かう 277 逃げる 277 登る 273
過ぎる 271 発展する 267 高める 263
拡大する 260 つれる 257 降りる 256
移る 240 増やす 238 入れる 235
育てる 228 通り過ぎる 226 守る 224
広げる 223 減る 216 残す 215
飛び出す 207 維持する 203 上げる 195
降る 195 出す 190 伝える 189
増す 185 決める 184 実現する 182
解決する 182 続く 181 下りる 180
送る 180 上る 178 着る 174
引っ張る 173 付き合う 171 伸びる 168
かける 165 深める 164 重ねる 163
とる 160 沈む 160 辿る 159
実施する 151 遠ざかる 151 努める 150
抜ける 150 紹介する 149 運ぶ 149
育つ 148 作り上げる 147 書く 142
動く 141 駆ける 141 使う 139
言う 138 調べる 137 高まる 137
訪ねる 134 求める 132 対処する 131
乗る 130 活かす 130 果たす 129
開く 128 下がる 125 支える 123
読む 123 通る 122 確保する 121
築つく 121 買う 121 活用する 120
食べる 119 構築する 118 努力する 113
暮らす 113 薄れる 112 学ぶ 111
強化する 110 移動する 110 説明する 110
引き上げる 109 支援する 109 なくなる 108
形成する 108 改善する 107 生活する 106
講じる 105 関わる 105 伸ばす 103
引く 103 付く 102 失う 102
追う 102 渡る 100 つなげる 98
提供する 97 加える 96 減らす 96
強める 95 移行する 95 増加する 92
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聞く 92 飛び込む 92 崩れる 91
寄る 90 導く 90 消す 87
とぶ 86 覚える 86 継続する 84
のぼる 83 確立する 83 進行する 83
合わせる 82 積み重ねる 82

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付録 3:中国語の「〜起来」と共起しやすい先行動詞

前項動詞 出現頻度 前項動詞 出現頻度 前項動詞 出現頻度

活跃 1422 喝 1407 对立 1396

归纳 1377 唱 1348 立 1340


读 1315 记 1261 亮 1226
算 1217 收藏 1208 燃烧 1202
搞 1195 跑 1188 关 1164
动员 1134 颤抖 1116 拉 1098
忙 1086 干 1082 吵 1079
烧 1008 兴奋 993 站立 915
提 885 利用 860 积累 858
玩 831 喊 797 扶 783
收集 766 隐藏 758 使用 757
惊叫 747 办 737 存 722
挂 714 发动 711 绑 710
微笑 709 投 706 围 696
凝聚 679 开 661 闻 647
操作 608 痛哭 605 组合 596
扎 594 沸腾 588 欢呼 559
讲 540 壮大 535 树立 529
活 521 肿 509 害怕 508
等同 500 嚷 489 飘 488
聊 482 培养 477 写 477
归结 469 摸 460 锁 458
联结 456 撑 452 膨胀 447
睡 434 闹 434 聚集 426
咳嗽 425 集合 414 吼 409
重视 394 接 393 保存 388
执行 386 拼 385 保护 384
刷 380 攀谈 379 吹 376
警觉 375 骂 367 管 363

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疼 358 流行 356 装 354


浮 353 模糊 353 戴 353
振奋 346 裱 346 埋 343
翘 339 旋转 336 总结 336
摇晃 334 捞 334 实施 334
骚动 332 准备 327 带动 324
转发 316 蹦 315 念 314
关注 311 冷笑 308 搭 306
完善 304 哭泣 304 拍 299
聚 297 封闭 297 问 296
跳动 293 整合 291 留 291
丰富 291 拣 288

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付録 4:中国語の“〜下去”と共起しやすい先行動詞

前項動詞 出現頻度 前項動詞 出現頻度 前項動詞 出現頻度


蹲 550 滑 530 等 530
住 504 存在 504 玩 493
跌 489 生活 485 追问 463
爱 456 搞 455 办 432
跑 427 滚 425 咬 410
演 400 追 394 混 373
陷 370 耗 356 推 346
唱 345 拖延 333 冲 296
倒 290 支持 243 传递 235
带 232 笑 225 念 223
灌 221 斗 214 闹 213
纠缠 210 望 209 拍 201
拉 196 踩 195 传承 194

忍 190 开 189 错 185


种 182 贯彻 176 堕落 175
战斗 174 传令 174 支撑 171
砍 170 吻 168 扎 168
忍受 168 栽 168 练 166
熬 165 爬 162 钻 159
砸 156 讨论 155 落实 154

挖 152 查 151 发 151


吩咐 151 刺 148 流传 140
垂 134 转 134 踢 133
相处 133 找 133 扯 131
翻 127 装 126 押 123
插 122 服 122 过 118
追究 117 僵持 113 追查 113
忍耐 111 镇压 110 吵 108
敲 108 消 104 等待 103

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烂 103 沉沦 102 发扬 101


学 101 争论 100 埋 97
隐瞒 96 执行 95 减 95
劈 95 聊 94 坏 94
画 94 平息 93 投 93
拿 93 踹 91 垮 89
凹陷 88 争 87 经营 87
塌 86 骂 85 飞 84
哭 83 挤 83 撤 80
赶 78 延伸 78 扑 78
坠 77 溜 76 守 75
叫 74 骗 73

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謝辞

本稿の作成にあたり、まず、終始熱心で貴重なご指導をくださった指導教官の劉琛琛先生に心より厚く感
謝の気持ちを申し上げます。先生のご指導がなければ、拙論を完成するわけがありません。
論文作成中において、日本語学部の王忻先生、孫立春先生、彭佳先生、郭玉英先生にはご指導とご助言を頂
き、心より厚く感謝申しあげます。
また、日本語の「〜てくる」
、「〜ていく」と中国語の“~起来”
、“~下去”の分類について、数多くのご助
言を頂いた日本の熊本大学の児玉望先生に心より厚く感謝いたします。そして、いつも励ましてくれた親友と
同級生の方々にも心より感謝します。
最後にずっと私を支えてくれた家族に厚く感謝の意を申しあげたいと思います。

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PUBLICATIONS

序 题目 期刊名 署名 发表

号 时间

1 火野苇平与聊斋志异 青年文学家 独立 2018-02

2 关于中日味觉形容词“苦”和「苦い」 日语教育与日本学研究 1/2 2018-05


的语义扩展

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