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2022年5月13日 和歌山社会福祉専門学校

認知症の理解
・脳のしくみ(第1章第3節)
・認知症の人の心理(第1章第4節)
第1章第3節 脳のしくみ

1.脳の構造・機能
2.認知症の病理
3.アルツハイマー型認知症の進行は発達を逆行
4.脳の構造と症状との関係
5.意識障害でないことの理解
6.うつとアパシーの理解
7.老化と認知症の関係

2
1.脳の構造・機能(P14-16)

・大脳は左右の半球からなり、左脳は言語中枢があり理知的に考えることが得意で、右
脳は非言語的な感性を大切にする脳と言われている
・大脳は、前から前頭葉・側頭葉・頭頂葉・後頭葉に分けられる
・前頭葉の前頭前野は「人間らしさ」や理性と密接に関係している。前頭葉の後方半分
は運動野で、ここが壊れると半身の運動麻痺が生じる。左の前頭葉には運動性言語中
枢であるブローカ野があり、発語(しゃべる機能)に関係している
・側頭葉には聴覚野があり、ヒトの声の意味理解は感覚性言語野(ウェルニッケ野)が
ある左側頭葉が担当している。側頭葉には過去の体験(エピソード記憶)や意味記憶
が蓄えられ、たくさんの経験や学習が知識として詰まっている

【脳のしくみ(第1章第3節)】 3
1.脳の構造・機能(P14-16)

・頭頂葉の前方には感覚野があり、反対側半身の感覚情報が集まり分析される。視覚
情報は後頭葉から頭頂葉に送られると、見たものが三次元空間のなかのどの位置にある
のかや、どの方向に動いているのかが分析される
・後頭葉には視覚情報が届く視覚野があり、見たものの形や色や動きが分析され、ほか
の部位に送られる
・大脳皮質は大きく一時領野と連合野に分けられる。一時領野は、脳以外からの情報
が脳に最初に入る部位である感覚野、聴覚野、視覚野などと、脳以外の部位に運動命
令を出力する前頭葉運動野がある。一方、連合野は一時領野の周辺の領域で、高次
脳機能を分担する。頭頂葉を例にとって説明すると、一時領野である感覚野に集まった
情報を頭頂連合野が分析する。

【脳のしくみ(第1章第3節)】 4
2.認知症の病理(P17-18)

・アルツハイマー型認知症の脳を顕微鏡で調べると、老人班と神経原繊維変化という2つ
の病理変化がみられる
・アルツハイマー型認知症では、発症の約25年ほど前から大脳皮質のごく一部にβたんぱ
くが沈着しはじめ徐々に範囲を広げていくが、はじめの20年くらいは認知機能に余力があ
るため無症状である。10年以上経過すると次はタウたんぱくの異常蓄積も始まり、20年
くらいで物忘れが目立つようになってMCIとなり、さらに5年ほど経過するといよいよ生活管
理に破綻が生じてアルツハイマー型認知症を発症する
・アルツハイマー型認知症の末期では身体の運動機能や嚥下機能も損なわれ、個人差
が大きいもののおおむね10年~15年の経過で燃え尽きるように死亡する
・アルツハイマー病、レビー小体病、前頭側頭用変性症など長い年月をかけて脳病変が
進展し、症状がゆっくり進行する疾患を神経変性疾患という
【脳のしくみ(第1章第3節)】 5
3.アルツハイマー型認知症の進行は発達を逆行(P18-20)

・アルツハイマー型認知症の進行では、高次脳機能を分担する連合野に病変がたくさん
できてダメージが強く、その一方で見る・聞く・動くといった生活に必須な活動に関する一
次領野の病変は比較的軽く、末期に近づくまで機能が保たれる傾向があり、人間の発
達過程を逆行する。それはFAST(テキストP20、表1‐6)にも示されている
(高次脳機能とは、人間の脳の「記憶」・「思考」・「判断」をする高度な機能のこと)

【脳のしくみ(第1章第3節)】 6
4.脳の構造と症状との関係(P20-21)

・前頭葉の萎縮が強い行動障害型前頭側頭用変性型認知症では、行動の抑制が効
かず理性的な行動がとれない(脱抑制)、他人の気持ちに共感できない、社会のルー
ルを守れないなどの社会脳機能の障害があらわれる
・側頭葉萎縮が強い意味性認知症では、聞いた言葉の意味が分からない、顔を見ても
誰だか分からない(相貌失認)といった症状があらわれる
・アルツハイマー型認知症は頭頂連合野の機能低下が早期から見られ、視点取得困難
(他者の視点でものを見られない)やし視空間認知障害があらわれる。また側頭連合
野や前頭連合野の機能低下も伴い、海馬領域の領域の病変により新しいエピソードを
記憶できないという症状もあらわれる

【脳のしくみ(第1章第3節)】 7
4.脳の構造と症状との関係(P20-21)

・レビー小体型認知症は、後頭葉の機能低下がほかの部位よりも強く、幻視など視覚に
関する症状があらわれる。ほかに大脳基底核や脳幹部の障害から症状(覚醒レベル)
の変動やパーキンソニズムがあらわれ、また中枢および末梢の自律神経の障害からは便
秘や起立性低血圧といった認知機能障害以外の症状も引き起こす
・血管性認知症は、血管障害が生じた場所に応じて症状が異なる。大脳皮質の障害
部位に応じた遂行機能障害、失行、失認、失語などのさまざまな高次脳機能障害や前
頭葉白質の虚血によるアパシー(意欲・自発性のない状態)やうつ、大脳基底核の病
変によるパーキンソニズム、両側大脳白質病変により構音障害・嚥下障害など、多様な
症状があらわれる

【脳のしくみ(第1章第3節)】 8
5.意識障害でないことの理解(P21-22)

・認知症では基本的に覚醒レベルが保たれているが、レビー小体型認知症では意識を
保つ系統ダメージが及ぶために覚醒レベルが変動し、覚醒レベルが低下したときに認知
機能の悪化や幻視、せん妄などがあらわれる。また、血管性認知症ではとくに夜間に覚
醒レベルが低下し、夜間せん妄を伴いやすい傾向がある
・本来、せん妄は認知症と鑑別(テキストP22、表1‐7)されるべきものであるが、レビー
小体型認知症や血管性認知症では、せん妄を合併した状態がしばしばあらわれる

【脳のしくみ(第1章第3節)】 9
6.うつとアパシーの理解(P23)

・うつとは、気分が落ち込み自分は生きている価値がいないといった悲哀を感じている状
態であり、軽度の認知症様の症状ととなると偽性認知症言われる
・アパシーは自発性が低下・欠如した状態である。アパシーはやる気のなさの自覚に乏し
く、平然としていて無感情、そして悲哀的でないとこが特徴と言える。アパシーは血管性
認知症に多く出現する傾向があり、またどの型の認知症でも重度になるとアパシーが出現
する

【脳のしくみ(第1章第3節)】 10
7.老化と認知症の関係(P24‐25)

・知能は、瞬時の判断力などの流動性知能と、経験を集積した知識である結晶性知能
に分けられる。結晶性知能は高齢になるまで高まり続けるが、流動性知能は30歳台を
ピークに加齢に伴い徐々に低下していく。認知症になると流動性知能や結晶性知能が
同年代の人たちに比べていちじるしく低下する

【脳のしくみ(第1章第3節)】 11
第1章第4節 認知症の人の心理

1.不安・喪失感
2.不安・うつと病識低下
3.不安・うつの病態
4.認知症の人のこころの理解

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1.不安・喪失感(P27‐29)

・不安はBPSD(認知症の行動・心理症状)の1つであるが、同時に多くのBPSDに共
通する背景要因でもある
・アルツハイマー型認知症では、軽度のステージでも、記憶がつながらないことから見当識
があやふやになり、適切な状況判断ができなくなり、場の空気を読むような高度の認知機
能も低下する。記憶がつながらないだけでも「自分が壊れていく」という不安の要因となる
が、生活で失敗が増えると引っ込み思案になり、趣味活動をなどをやめ、友人との外出
頻度も減り、さらに家族からは失敗をとがめられ、役割をうばわれることが多くなる。このよ
うなさまざまな要因が重なって、不安・喪失感が募っていく
・このような不安定な自己(不安や喪失感がいっぱいの状態)になると、自信は喪失し、
自分がしまい忘れて見つからないものを誰かに盗られたと他者に責任転嫁して自己防衛
するような心理的反応(防衛機制)が出てくる。アルツハイマー型認知症では、一見ニ
コニコと取り繕うので不安がないように見えても、漠然とした不安感が隠れている

【認知症の人の心理(第1章第4節)】 13
2.不安・うつと病識低下(P29)

・失敗体験の蓄積が不安やうつをもたらすが、アルツハイマー型認知症の人は進行ととも
に自分の失敗体験も忘れるようになり、病識が低下(認知機能低下の自覚が乏しくな
る)し、他人の前では明るく振る舞い不安を見せないようになる。しかし、程度の差はあっ
ても不安・喪失感は認知症の人の行動の背景にずっとつきまとうものである
・レビー小体型認知症や血管性認知症では、初期からうつ的なことが多く、病識は比較
的保たれ(時には過剰で)、不安も強い傾向がある。これがレビー小体型認知症にお
いては幻視に起因する妄想や嫉妬妄想の背景要因となる。血管性認知症においても
被害的な妄想の背景要因となる

【認知症の人の心理(第1章第4節)】 14
3.不安・うつの病態(P29)

・アルツハイマー型認知症の不安やうつは、脳病変の影響だけでなく、失敗体験から二次
的にもたらされる部分もある(血管性認知症やレビー小体型認知症においても尿病変
が不安やうつと密接に関連している) 。認知症の人の不安やうつをかかわり方による二
次的な反応(従来の周辺症状の考え方)として捉えるだけでなく、脳病変の影響が大
きいという理解が必要である

【認知症の人の心理(第1章第4節)】 15
4.認知症の人のこころの理解(P30)

・認知症の人へのケアでは、本人の抱える不安・喪失感を理解したうえで、本人の考えや
気持ちを尊重して行う必要がある。認知症の人へのケアの理念であるパーソン・センター
ド・ケアでは、相手のその人らしさ(パーソンフッド)を大切にすることが基本とされている
・この時必須となるのが、積極的に第三者の視点に立って、その人の状況・思考・行動を
推測する視点取得である

【認知症の人の心理(第1章第4節)】 16

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