You are on page 1of 48

第 1 部 社会保障を考える

第 5章 国際比較からみた日本社会の特徴
本章では、統計指標や意識調査結果等の国際比較を通じて、日本の社会、そして社会保
障の特徴についてみていくこととする*1。

(OECD では、社会政策の今日的な主要目標として、自立、公正、健康、社会的つながり
の 4 つを定めている)
OECD(経済協力開発機構)*2 では、先進諸国の社会政策の今日的な主要目標として、
自 立(self-sufficiency)、 公 正(equity)、 健 康(health)
、 社 会 的 つ な が り(social
cohesion)の 4 つを定めており、各国の社会政策の達成状況を、この 4 つに一般的な背
景(general context)
(1 人当たり GDP、従属人口比率、出生率等)を加えた 5 つのカテ
ゴリーの指標群で分析している。
ここでは、以下の方法で、この 5 つのカテゴリーの指標のうち代表的な指標群について


取り上げるとともに、日本の社会保障の給付と負担の現状についても国際比較し、これら
を通じて、日本社会の特徴・現状や社会保障の状況等について考察することとする。
5


国際比較からみた日本社会の特徴

* 1 本章では、国際比較の観点からの分析を主眼に置いており、日本の直面している社会変化や課題に関する詳細については、第 6 章第 1 節
をご参照いただきたい。
* 2 ヨーロッパ諸国を中心に日本、アメリカを含め 34 か国の先進国が加盟する国際機関。

平成 24 年版 厚生労働白書
87
1 参考
OECD の統計データ等に基づく国際比較について
(比較対象国)
・OECD に加盟する全 34 カ国のうち、地域性や福祉レジーム等を念頭に、以下の 13 カ国
を対象とした。
分類 対象国
アングロサクソン諸国 アメリカ、英国、オーストラリア、カナダ
北欧諸国 スウェーデン、デンマーク
大陸ヨーロッパ諸国 ドイツ、フランス、オランダ
南欧諸国 イタリア、ギリシャ
東アジア諸国 韓国、日本

(対象データ名(指標)及び概要(定義))
該当領域 データ名(指標) 概要(定義)
一般的な背景 1 人当たり GDP GDP(国内総生産)を総人口で除した値(購買力平価換算)
(General Context) 人口(年齢別)

年齢層別の人口(15歳未満、15歳以上65歳未満、65歳以上)

5
出生率(合計特殊出 出産可能年齢(15-49 歳)の女性について、各年齢(層)
生率) ごとの出生率を合計した値

婚姻率、離婚率 人口 1,000 人当たりの婚姻件数、離婚件数(非婚のカッ


プル、別居の既婚者は含まず)
国際比較からみた日本社会の特徴

自立 就業率 自営業または賃金労働者として就業している人口比率
(Self-sufficiency) 失業率 就労機会を求めているが、調査実施週に 1 時間以上働かな
かった人口比率
教育達成度(学歴別 学歴別(後期中等教育未満、後期中等教育以上、高等教
人口) 育)の生産年齢人口割合
教育達成度(PISA 結 PISA の読解力及び数学的リテラシーの平均得点(OECD
果) 平均が 500 点になるよう調整済)
※科学的リテラシーについてはグラフ化していない。
公正 相対的貧困率(所得 世帯所得が全世帯の中央値の半分未満である人の比率
(Equity) 再分配前・後)
ジニ係数(所得再分 人口と所得比率の積み上げからなる三角形全体に対する
配前・後) ローレンツ曲線と 45 度線の間の面積比率
男女間賃金格差 男性の平均賃金(中央値)に対する男女間平均賃金(中央
値)差の比率
失業給付水準 世帯主が失業時の純世帯所得を、世帯主が雇われていた際
の純世帯所得で除した値
公的社会支出 一般政府(中央政府、地方政府、社会保障機関)の管理下
で為される 1 つ以上の社会目標(低所得、老齢、失業、障
害等)を伴う現金給付、税の優遇措置、現物給付関連支出
私的社会支出 一般政府以外に管理されない社会支出
健康 寿命 特定年の年齢ごとの死亡率を前提とした 0 歳児の平均余命
(Health) 乳児死亡率 1 歳未満で死亡した子どもの人数(出生千人対)
肥満率 BMI25 以上
保健医療支出 公共部門・民間部門による保健医療分野の財・サービスの
最終消費額と基盤部分への投資額
社会的つながり 生活満足度 主観的福祉(全般的に自分の生活について満足している水
(Social Cohesion) 準(10 段階で 7 以上))
政治制度、公的機関 政府、議会、公務サービスを大いにあるいはある程度信頼
への信頼度 している人の比率
国政選挙の投票率 有権者のうち国政選挙に投票した人の比率
労働組合加入率 賃金労働者のうち労働組合に加入している人の比率
自殺率 人口 10 万人当たりの自殺者数

88 平成 24 年版 厚生労働白書
第 1 部 社会保障を考える

第1節 一般的な背景の国際比較

「一般的な背景」は、その国の経済発展や人口構成の状況を示すものである。日本は、
1 人当たりの GDP は先進諸国の平均水準である。また、少子高齢化の影響により、従属
人口比率は世界で最も低く、出生率も低くなっている。

1 1 人当たり GDP
(1 人当たり GDP は、2008 年以降は OECD 平均と同水準で推移し、現在 OECD 加盟国
中 18 位にとどまっており、経済成長の実現を通じた上昇が今後の課題である)
1 人当たり GDP(国内総生産)は、国民 1 人当たりの所得水準*3 を表しており、各国
国民の平均的な経済水準を示している。


1970 年から 2010 年までの期間で見ると、一貫してアメリカが最も高い。また、1970
年から 2010 年にかけての増加率が最も高いのは韓国であり、OECD 平均よりは依然と
5


して低いものの、2010 年には、1970 年当時の水準の約 48 倍となっている
日本は、OECD 平均に比して 1970 年代は低かったが、1980 年代から 2000 年代後半

国際比較からみた日本社会の特徴
まで OECD 平均より高い水準で推移し、2008 年以降はほぼ平均と同水準で推移し、
2011 年時点では $34,054 と、OECD 加盟国 34 か国中 18 位にとどまっている。若者・
女性・高齢者・障害者などの就業率の上昇、新市場・雇用の創出、生産性の向上等を通じ
た経済成長の実現を通じて、1 人当たり GDP の向上を図ることが引き続き重要な課題と
なっている。

図表 5-1-1 1 人当たり GDP(購買力平価)

(千 US$)
50

45

アメリカ
40
英国
オーストラリア
35
カナダ
スウェーデン
30
デンマーク
ドイツ
25
フランス
オランダ
20
イタリア
ギリシャ
15
韓国
日本
10 日本:約 $34,000(2010 年) OECD 平均

0
1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

* 3 国際比較するために購買力平価(それぞれの通貨の購買力(商品を購入する力)が等しくなるように計算した各国通貨の交換比率)を用
いて換算したものを利用している。

平成 24 年版 厚生労働白書
89
1 2 人口
(日本の 15 歳未満人口は 1950 年以降、減少傾向にある)
15 歳未満人口について、1950 年から 2010 年までの期間で見ると、一貫してアメリカ
が最も多く、デンマークが最も少ない。アメリカは、1950 年代から 1960 年代半ばまで
増加傾向、1960 年代半ば以降 1980 年代前半まで減少傾向にあり、1980 年代半ばから現
在まで再び増加傾向にある。
日本は、1950 年以降、ほぼ一貫して減少傾向にある。

図表 5-1-2 15 歳未満人口

(千万人)
7

5
アメリカ
英国

5 オーストラリア
カナダ
国際比較からみた日本社会の特徴

スウェーデン
4 デンマーク
日本:約 1.7 千万人(2010 年) ドイツ
フランス
3
オランダ
イタリア
ギリシャ
2
韓国
日本
1

0
1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

(日本の生産年齢人口は、少子化の進行により、1995 年を境に増加傾向から減少傾向に
転じている)
また、生産年齢人口(15 歳以上 65 歳未満)について、1950 年から 2010 年までの期
間で見ると、一貫してアメリカが最も多く、この間継続して増加している。また、デン
マークが最も少ない。
日本の生産年齢人口は、少子化の進行により、1995 年を境に増加傾向から減少傾向に
転じている。

90 平成 24 年版 厚生労働白書
第 1 部 社会保障を考える

図表 5-1-3 15 歳以上 65 歳未満人口

(千万人)
25

20 アメリカ
英国
オーストラリア
カナダ
15 スウェーデン
デンマーク
ドイツ
日本:約 8.1 千万人(2010 年) フランス
10 オランダ
イタリア
ギリシャ
韓国
5 日本


5


0
1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

国際比較からみた日本社会の特徴
資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

(日本の 65 歳以上人口は、高齢化の進行により、一貫して増加傾向にある)
65 歳以上人口について、1950 年から 2010 年までの期間で見ると、一貫してアメリカ
が最も多く(この間、継続して増加)
、デンマークが最も少ない。
日本の 65 歳以上人口は、高齢化の進行により、一貫して増加傾向にあり、韓国となら
んで高い増加率を示している。
図表 5-1-4 65 歳以上人口

(千万人)
4.0

3.5

アメリカ
3.0 英国
オーストラリア
カナダ
2.5
日本:約2.9千万人 スウェーデン
(2010年) デンマーク
2.0 ドイツ
フランス
オランダ
1.5
イタリア
ギリシャ
1.0 韓国
日本

0.5

0.0
1950 1955 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

平成 24 年版 厚生労働白書
91
1 (先進諸国の中で、日本の 15 歳未満人口の割合は最も低く、65 歳以上人口の割合は最も
高くなっている)
2009 年のデータを用いて、各国の年齢層別人口構成比を見ると、15 歳未満人口の割合
が最も高いのはアメリカで 20.2%、最も低いのは日本で 13.3% となっている。
15 歳以上 65 歳未満人口の割合が最も高いのは韓国で 72.6%、最も低いのは日本で
63.9% になっている。
65 歳以上人口の割合が最も高いのは日本で 22.7%、最も低いのは韓国で 10.7% となっ
ている。

図表 5-1-5 年齢層別人口構成比

15 歳未満 15 歳以上 65 歳未満 65 歳以上


(%)
100
13.0 15.8 13.3 13.9 15.2 10.7
17.9 16.1 20.5 16.7 20.2 18.8
22.7

80

5

60
66.9 66.5 67.6 69.5 65.7 64.9 67.2 72.6
国際比較からみた日本社会の特徴

65.4 65.8 66.8


63.9 65.9
40

20
20.2 17.7 19.1 16.6 16.6 18.2 18.3 17.7 16.8
13.3 13.5 14.0 14.3
0
日本

アメリカ

英国

オーストラリア

カナダ

スウェーデン

デンマーク

ドイツ

フランス

オランダ

イタリア

ギリシャ

韓国
資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

3 出生率(合計特殊出生率)
(日本の出生率は、1984 年を境に増加傾向から減少傾向に転じ、直近では、1.39 で横ば
いとなっている)
合計特殊出生率は、15~49 歳までの女性の年齢別出生率を合計したものであり、おお
むね、一人の女性が生涯に出産する子ども数の推計値を示している。
1980 年から 2007 年までの期間で見ると、最も増加率が高いのはデンマーク、最も減
少率が高いのは韓国である。
合計特殊出生率は、統計学上は、人口置換水準(長期的に人口が安定的に維持される合
計特殊出生率。先進諸国では約 2.1 程度とされる。
)であれば人口は横ばいを示し、これ
を上回れば自然増、下回れば自然減とされているが、今回比較した国で、2007 年現在、
合計特殊出生率が人口置換水準を上回っているのは、アメリカ(約 2.1)のみである。
日本の出生率は、1984 年を境に増加傾向から減少傾向に転じているが、2006 年以降
再び増加傾向を示し、その後横ばいで推移している。2007 年の日本の出生率は 1.34 であ

92 平成 24 年版 厚生労働白書
第 1 部 社会保障を考える

るが、2011 年に 1.39(概数値)となっている。

図表 5-1-6 合計特殊出生率

3.0

2.5
アメリカ
英国
オーストラリア
2.0 カナダ
スウェーデン
デンマーク
1.5 ドイツ
フランス
オランダ
イタリア
1.0
ギリシャ
日本:1.34(2007 年)


韓国
日本
0.5
5


国際比較からみた日本社会の特徴
0.0
1980 1983 1986 1989 1992 1995 1998 2001 2004 2007

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

4 婚姻率と離婚率
(日本の婚姻率は、全体的に減少傾向を示しており、2007 年には 1970 年の約 6 割となっ
ている)
人口 1000 人あたりの 1 年間の婚姻件数を婚姻率という。先進諸国における婚姻につい
ての推移を、1970 年から 2007 年までの期間で見ると、概ね減少傾向である。
多くの年においてアメリカが最も高く、スウェーデンが最も低いが、スウェーデンは
2001 年以降、増加傾向を示している
日本は、1980 年代後半から 1990 年代後半にかけて増加傾向も見られたが、全体的に
減少傾向を示しており、2007 年には 1970 年の約 6 割となっている。

平成 24 年版 厚生労働白書
93
1 図表 5-1-7 婚姻率

(婚姻件数 /1,000 人)
12

アメリカ
10 英国
オーストラリア
カナダ
8
スウェーデン
デンマーク
6 ドイツ
フランス
オランダ
4 イタリア
ギリシャ
日本:5.8(2006 年)
韓国
2 日本
OECD 平均

0

1970 1973 1976 1979 1982 1985 1988 1991 1994 1997 2000 2003 2006

5 資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。



国際比較からみた日本社会の特徴

(日本の離婚率は、2000 年代前半まで増加傾向にあったが、以降は減少傾向にある)
人口 1,000 人あたりの 1 年間の離婚件数を離婚率という。
先進諸国における、1977 年から 2007 年までの期間で見ると、アメリカが一貫して最
も高く、ほぼ全ての年においてイタリアが最も低い。ただし、1980 年代前半を境にアメ
リカは減少傾向、イタリアは増加傾向となっている。
日本は、2000 年代前半まで増加傾向にあったが、それ以降は減少傾向にある。

図表 5-1-8 離婚率

(離婚件数 /1,000 人)
6

アメリカ
5 英国
日本:約 2.04(2006 年) オーストラリア
カナダ
4 スウェーデン
デンマーク
ドイツ
3 フランス
オランダ
イタリア
2 ギリシャ
韓国
日本
1 OECD 平均

0
1977 1980 1983 1986 1989 1992 1995 1998 2001 2004 2007

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

94 平成 24 年版 厚生労働白書
第 1 部 社会保障を考える

コラム

ヨーロッパにおける事実婚の広がり
ヨーロッパ諸国では、婚姻率の低下と並行 諸国では平均して、全年齢の 8%、20~40
して、事実婚の増加が指摘されている。 歳の 15%がパートナーと同棲し、事実婚状
2002年のヨーロッパ社会調査(European 態にあると答えている。特に、北欧諸国では
Social Survey)における、回答者の自己申 比率が高くなっている。
告に基づいた調査結果によると、ヨーロッパ

事実婚と他の形態の婚姻関係の大きな広がり
成人の法律婚、事実婚、単身の比率、2002 年
全年齢 20~40 歳
法律婚 事実婚 単身 法律婚 事実婚 単身
オーストリア 50.7 9.4 40.0 44.0 15.3 40.8
ベルギー 52.4 7.4 40.2 42.1 13.6 44.4


チェコ 53.9 4.1 42.0 53.6 6.1 40.3

5
デンマーク 54.1 15.8 30.1 36.7 30.6 32.7


フィンランド 49.4 12.1 38.5 36.5 26.8 36.7
フランス 50.7 10.7 38.6 43.2 20.9 35.9

国際比較からみた日本社会の特徴
ドイツ 54.8 9.6 35.6 44.6 18.7 36.7
ギリシャ 61.2 1.2 37.7 54.9 2.6 42.5
ハンガリー 54.8 6.7 38.5 49.6 10.8 39.6
アイルランド 55.1 3.7 41.3 41.7 7.7 50.6
イタリア 59.0 2.8 38.2 43.7 3.6 52.7
ルクセンブルク 52.7 6.1 41.2 48.2 12.0 39.8
オランダ 56.4 9.2 34.3 53.7 19.5 26.8
ノルウェ- 50.9 18.1 31.1 32.1 34.8 33.2
ポーランド 56.6 1.7 41.8 57.7 2.9 39.4
ポルトガル 59.1 2.1 38.8 57.6 3.6 38.8
スペイン 56.0 2.1 41.9 51.3 3.2 45.5
スウェ-デン 45.5 19.8 34.7 28.0 35.4 36.6
スイス 51.7 9.9 38.5 48.9 14.7 36.4
英国 47.7 8.6 43.7 38.8 17.6 43.5
OECD20 か国 53.6 8.1 38.3 45.3 15.0 39.6

資料出所:H amplová, D. (2005),“Educational Homogamy in Marriage and Cohabitation in Selected


European Countries”, August 18-21 meeting on“Inequality and Mobility in Family, School, and
Work”of the International Sociological Association Research Committee 28 on Social
Stratification and Mobility, Los Angeles
StatLink:http://dx.doi.org/10.1787/436105386284
出所  :OECD 編著『図表でみる世界の社会問題 2 OECD 社会政策指標 貧困・不平等・社会的排除の国際比較』
(高木郁朗 監訳,麻生裕子 訳 明石書店,2008 年)

平成 24 年版 厚生労働白書
95
1 第2節 「自立」に関する指標の国際比較

(「自立」に関する指標は、経済や社会への参加の程度などを反映しており、日本は他の先
進諸国と比較して高水準で推移している)
「自立」は、経済や社会への参加の程度と、個々人がどの程度自分自身の日常生活から
便益を得ているかを反映している。就業率の高さ、失業率の低さ、就業前の学生の能力等
によって測定される。
日本は、男女計の就業率が OECD 平均よりも高く、失業率は 5.3% で、OECD 平均
(8.1%)を大きく下回っている。また、高校・大学進学率も高く、15 歳児の学力につい
ても、良好なパフォーマンスを示している。

1 就業率

5 (日本の男性の就業率は、1991 年以降、先進諸国中最も高い水準となっている)

就業率とは、15 歳以上の人口のうち、就業している者の割合をいう。15 歳以上 65 歳


未満の男性の就業率について、1980 年から 2010 年までの期間で見ると、1991 年以降、
国際比較からみた日本社会の特徴

日本が最も高い。多くの年において、フランス及びイタリアの就業率が低い*4。

図表 5-2-1 男性の就業率(15〜64 歳)

(%)
100

アメリカ
日本:約 88.5%(2010 年)
英国
オーストラリア
90
カナダ
スウェーデン
デンマーク
ドイツ
80
フランス
オランダ
イタリア
ギリシャ
70
韓国
日本
OECD 平均

60
1980 1983 1986 1989 1992 1995 1998 2001 2004 2007 2010

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

(日本の女性の就業率は、OECD 平均より高い就業率を示している)
15 歳以上 65 歳未満の女性の就業率について、1980 年から 2010 年までの期間で見る
と、多くの年においてスウェーデン及びデンマークの就業率が高く、イタリア及びギリ
シャの就業率が低くなっている。

* 4 グラフの数値は、OECD. Stat のデータに基づくものであり、総務省「労働力調査」においては、2010(平成 22)年の男性の就業率


(15~64 歳)は、80.0% となっている。

96 平成 24 年版 厚生労働白書
第 1 部 社会保障を考える

日本は、1980 年以降、OECD 平均から約 3~8 ポイントほど高い就業率を示している*5。

図表 5-2-2 15 歳以上人口の就業率(女性)

(%)
100
アメリカ
英国
90
オーストラリア
日本:約 66.4%(2010 年) カナダ
80
スウェーデン
デンマーク
70
ドイツ
フランス
60
オランダ
イタリア
50
ギリシャ
韓国
40
日本
OECD 平均
30


1980 1983 1986 1989 1992 1995 1998 2001 2004 2007 2010

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。 5


国際比較からみた日本社会の特徴
(日本は、男女の就業率の差が極めて大きくなっている)
2010 年のデータを用いて、男性と女性の就業率の関係を見ると、両指標の間に一定の
弱い相関関係が見られる(相関係数 0.58)。
男性の就業率が最も高いのは日本で約 89%、最も低いのはフランスで約 69% となって
いる一方で、女性の就業率が最も高いのはデンマークで約 72%、最も低いのはイタリア
で約 47% で、日本は約 66%となっている。
日本では、男女の就業率の差は約 22 ポイントと極めて大きくなっている*6。

図表 5-2-3 15 歳以上の就業率(男性×女性)

80

75 デンマーク
スウェーデン
70 カナダ オランダ 日本(2010 年)
オーストラリア
女性の就業率︵ ︶

アメリカ 男性 88.5%
65 英国 日本 女性 66.4%

60 フランス OECD 平均
韓国
55
%
50 ギリシャ

45 イタリア

40
60 65 70 75 80 85 90
男性の就業率 (%)

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

* 5 グラフの数値は、OECD. Stat のデータに基づくものであり、総務省「労働力調査」においては、2010(平成 22)年の女性の就業率


(15~64 歳)は、60.1% となっている。
* 6 グラフの数値は、OECD. Stat のデータに基づくものであり、総務省「労働力調査」においては、2010(平成 22)年の女性の就業率
(15~64 歳)は、60.1% となっている。

平成 24 年版 厚生労働白書
97
1 コラム

「M 字型」の女性労働力率(国際比較)
女性の労働力率の現状を年齢階級別に見る みは見られない。M 字カーブが見られるこ
と,日本や韓国では、30 歳代を底とした、 との背景には、依然として結婚、出産、子育
いわゆる M 字カーブを描いているが、米国、 てを期に就業を中断する女性が多いことが挙
ドイツ、スウェーデンでは、このようなくぼ げられている。

女性の年齢階級別労働力率(国際比較)

日本 ドイツ 韓国 スウェーデン 米国

100.0
89.9 89.7 88.7
87.8
90.0 86.5
82.4 83.9
80.1 80.7
80.0 76.4 83.6 79.7
77.2 77.2
76.2 74.8
70.0 77.1
75.9 74.4 75.2 75.7 67.7
70.0

69.7 69.1 71.0 72.6


67.5
68.5 68.2 67.6

5
67.0 66.6
60.0 65.0 63.8 58.6

58.6 59.3
56.5 48.7
50.0 53.7
50.6 45.8
40.2
国際比較からみた日本社会の特徴

40.0 43.9
38.1
30.0 29.4
29.2 23.4
20.0 15.0
13.3
13.2
10.0
8.1 8.4
2.5
0.0
15 ∼ 19歳 20 ∼ 24歳 25 ∼ 29歳 30 ∼ 34歳 35 ∼ 39歳 40 ∼ 44歳 45 ∼ 49歳 50 ∼ 54歳 55 ∼ 59歳 60 ∼ 64歳 65歳以上

資料:日本は、総務省統計局「労働力調査(基本集計)」 (2011 年)、その他の国は、ILO“LABORSTA”より作成。


(注) 1.労働力率は、15 歳以上人口に占める労働力人口(就業者+完全失業者)の割合。
2.米国の「15~19 歳」は、「16~19 歳」。
3.日本は 2011 年、韓国は 2007 年、その他の国は 2008 年の数値。
4.日本は、岩手県、宮城県及び福島県を除く全国の結果。

(出所)
平成 24 年版 男女共同参画白書

コラム

生活時間の国際比較
OECD 諸国において、フルタイム労働者 余暇と個人的ケアの合計時間が最も長く
が、一日のうちに、
「余暇」
(leisure)と「個 7
なっている国としては、ベルギー(15.7 時
人的ケア」(personal care)に費やしてい 8
間)、デンマーク(15.9 時間)などがある一
る時間について見てみると、OECD 平均で 方、日本は、余暇に費やす時間が 3.4 時間と
は、余暇に 4.3 時間を、個人的ケアに 10.5 OECD 諸国で最も短く、余暇と個人的ケア
時間を、両方の合計で 14.8 時間を費やして の合計時間も 14.0 時間で最短となっている。
いるとされている。

7 余暇(leisure)は、スポーツ活動、イベントへの参加、友人への訪問や友人との娯楽、自宅でのテレビの視聴・ラジオの聴取
やその他の余暇活動を示す。
8 個人的ケア(personal care)は、睡眠、飲食、個人的な家事や受療、個人的ケアのための旅行を示す。

98 平成 24 年版 厚生労働白書
第 1 部 社会保障を考える

余暇と個人的ケアに費やす時間
(1 日当たりの時間・フルタイム労働)

個人的ケア 余暇

16
14
12
10
8
6
4
2
0
日本
ポーランド
エストニア
カナダ
ポルトガル
アメリカ
オーストラリア
オーストリア
スロベニア

韓国
英国
イタリア
フィンランド
スペイン
スウェーデン
ドイツ
フランス
ノルウェー
ベルギー
デンマーク
OECD


資料:OECD“How’
s Life? : Measuring Well-being”
(OECD Publishing, 2011)


国際比較からみた日本社会の特徴
2 失業率
(日本の男性失業率はOECD平均に比しておおむね3ポイント程度低い水準で推移している)
労働力人口に対する失業者数の割合を失業率という。男性の失業率について、1980 年か
ら 2010 年までの期間で見ると、多くの国において上昇と下降の変動が繰り返されている。
日本は、OECD 平均に比しておおむね 3 ポイント程度低い水準で推移している。

図表 5-2-4 15 歳以上人口の失業率(男性)

(%)
15
アメリカ
英国
日本:5.4%(2010 年)
オーストラリア
カナダ
10 スウェーデン
デンマーク
ドイツ
フランス
オランダ
5 イタリア
ギリシャ
韓国
日本
OECD 平均
0
1980 1983 1986 1989 1992 1995 1998 2001 2004 2007 2010

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

平成 24 年版 厚生労働白書
99
1 (日本の女性失業率も、OECD 平均よりも低い水準で推移している)
女性の失業率について、1980 年から 2010 年までの推移を見ると、1997 年まではイタ
リアが最も高く、それ以降はギリシャが最も高い。
日本及び韓国の失業率が、多くの年において低い水準を示している*9。

図表 5-2-5 15 歳以上人口の失業率(女性)

(%)
20

アメリカ
英国
15
オーストラリア
カナダ
スウェーデン
デンマーク

ドイツ
10
フランス
5 オランダ

イタリア
ギリシャ
国際比較からみた日本社会の特徴

韓国
5
日本
OECD 平均

0
1980 1983 1986 1989 1992 1995 1998 2001 2004 2007 2010

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

(男性と女性の失業率の間には正の相関関係が見られ、日本は、両指標とも OECD 平均よ


りも約 3 ポイント低い)
2010 年のデータを用いて、男性と女性の失業率を見ると、両指標の間に一定の関係性
が見られる。(相関係数 0.75)
男性の失業率が最も高いのはアメリカで約 11%、女性の失業率が最も高いのはギリシャ
で約 16% となっている。また、両指標とも最も低い値を示しているのは韓国であり、失
業率は男女ともに約 3~4% となっている。
日本は、両指標とも OECD 加盟国平均よりも約 3 ポイント低い*10。

* 9 グラフの数値は、OECD Statistics のデータに基づくものであり、総務省「労働力調査」においては、2010(平成 22)年の女性の 15


歳以上の失業率は、4.6% となっている。
* 10 同上

100 平成 24 年版 厚生労働白書
第 1 部 社会保障を考える

図表 5-2-6 15 歳以上の失業率(男性×女性)

18

16 ギリシャ

14

12
女性の失業率︵

10 イタリア フランス
スウェーデン アメリカ
8 OECD 平均
カナダ
ドイツ 英国
%

6 デンマーク
オーストラリア
オランダ 日本
4
韓国
日本
2 男性:5.4%(2010 年)
女性:4.5%(2010 年)
0
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18


男性の失業率(%)

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。 5


国際比較からみた日本社会の特徴
コラム

若者の失業率の国際比較
OECD 加盟国における、1985 年以降の 2010 年には 16.7%となっている。日本に
15 歳から 24 歳までの若者の雇用失業動向に おいても、1990 年当時は 5%弱であったが、
ついて見てみると、OECD 平均の就業率は、 そ の 後 の 経 済 低 迷 期 に 上 昇 傾 向 と な り、
過去 25 年間を通じて 40%台で推移してお 2010 年 に は 9.4% ま で 上 昇 し て い る が、
り、日本も 40%から 45%の間を変動してい OECD 平均を大きく下回っている。
る。なお、若者の就業率が他の世代より低い また、成人失業率に対する若年失業率の割
のは、就学率が高いことが背景にあると考え 合は、OECD 平均では、1990 年以降上昇傾
られる。また、人口に対する失業者の割合 向にあり、2009 年には約 3 倍近くなってい
は、OECD 平均では、2009 年には約 8%で るが、日本では、1991 年の約 2.8 倍をピー
あり、日本では、約 4%となっている。 クに低下傾向にあり、2009 年には約 1.9 倍
若年失業率(若年労働力人口に対する失業 と OECD 平均を大きく下回っている。
者の割合)は、OECD 平均では、1990 年に
は 13%程度であったが、近年急速に上昇し、

平成 24 年版 厚生労働白書
101
1 若年労働市場指標 a(1985-2009 年)

日本 アメリカ OECD EU-19

(%) A. 就業率 b (%) B. 人口に対する失業者の割合 c


65 14

60 12

55 10

50 8

45 6

40 4

35 2

30 0

1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

5 C. 失業率 d D. 成人失業率に対する若年失業率の割合 e
(%) (%)

25 3.5

3.3
国際比較からみた日本社会の特徴

20 3.1

2.9

15 2.7

2.5

10 2.3

2.1

5 1.9

1.7

0
1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009 1985 1987 1989 1991 1993 1995 1997 1999 2001 2003 2005 2007 2009

a) 若者の年齢は、アイスランド、スペイン、スウェーデン、英国、アメリカでは 16-24 歳、その他すべての諸国で


は 15-24 歳。
b) 一定年齢層人口のうち就業者の割合。
c) 一定年齢層人口のうち失業者の割合。
d) 一定年齢層の労働力人口のうち失業者の割合。
e) 若者(15/16-24 歳)の失業率 / 成人(25-54 歳)の失業率。
出所:各国の労働力調査。

(出所)
OECD 編著『世界の若者と雇用――学校から職業への移行を支援する〈OECD 若年者雇用レビュー:統合報告書〉』(濱口桂
一郎 監訳,中島ゆり 訳 明石書店,2011 年)

3 学歴別人口
(日本では、大多数の人々が高校以上の教育を受けており、高卒、大卒レベルの割合は、
先進諸国と比べても高水準で推移している)
学校教育は、主に人の年齢に応じ初等教育、中等教育、高等教育の 3 段階に分けるとさ
れており、さらに、中等教育は、義務教育として行われる前期中等教育と、高度な普通・
専門教育が行われる後期中等教育に分類される。日本では、中学校の段階が前期中等教
育、高等学校等の段階が後期中等教育、大学・短大等が高等教育に相当する。

102 平成 24 年版 厚生労働白書
第 1 部 社会保障を考える

2009 年のデータ*11 を用いて、各国における 25~64 歳の学歴別人口構成比を見ると、


最終学歴が後期中等教育未満(日本における中学卒業程度)の割合が最も高いのはイタリ
アで 45.7% となっており、日本は最も低く 9.2% となっており、大多数の人々が高校等に
進学していることが分かる。
また、最終学歴が後期中等教育以上(日本における高校卒業等に相当)の割合が最も高
いのはドイツで 59.1% であり、日本も 46.9%となっている。最も低いのはオーストラリ
アで 34.1% となっている。
また、最終学歴が高等教育(日本における短大・大卒等に相当)の割合が最も高いのは
カナダで 49.5% であり、日本も 44.0%と比較的高い水準となっている。最も低いのはイ
タリアで 14.5% となっている。

図表 5-2-7 学歴別人口構成比(25〜64 歳)


後期中等教育未満 後期中等教育以上 高等教育
(%)
100
14.5 5


90 23.5
30.0 26.4 28.9
33.0 34.3 32.8
80 44.0 41.2 36.9 36.9 38.8
49.5
70

国際比較からみた日本社会の特徴
39.8
60 37.7
50 44.1 41.1
36.8 34.1 42.0 59.1 40.6
40 52.7 41.2
46.9 47.4
30 38.1
20 45.7
38.8
26.7 26.3 29.0 30.0 26.6
10 23.7 20.1
9.2 11.4 12.4 14.2 14.5
0
日本

OECD平均

アメリカ

英国

オーストラリア

カナダ

スウェーデン

デンマーク

ドイツ

フランス

オランダ

イタリア

ギリシャ

韓国

資料:(日本)総務省「国勢調査」
(諸外国) OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

4 教育到達度(PISA 結果)
(日本の子どもの読解力及び数学的リテラシーは、いずれも OECD 平均より高い水準で推
移している)
経済協力開発機構(OECD)では、義務教育修了段階の 15 歳児(日本では高校 1 年生
に相当)が持っている知識や技能を実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用で
きるかを評価するため、「OECD 生徒の学習到達度調査(PISA)」を実施している。
*12

2009 年のデータを用いて、読解力の平均得点と数学的リテラシーの平均得点の関係性
を見ると、両指標の間に一定の関係性が見られる(相関係数 0.91)。
日本は、OECD 平均よりも高くなっている。なお、両指標とも、最も高いのは韓国で
あり、最も低いのはギリシャである。
* 11 日本については 2010(平成 22)年に実施された国勢調査のデータを利用した。
* 12 PISA 調査で測っているのは、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーである。読解力、数学的リテラシーについては、本白書で
国際比較したとおりであるが、科学的リテラシーについては、2009 年調査結果では 539 点となっている。

平成 24 年版 厚生労働白書
103
1 図表 5-2-8

550
PISA 結果(読解力平均点×数学的リテラシー平均得点)

日本:読解力 520、 韓国
540    数学的リテラシー 529

530
オランダ カナダ
日本
数学的リテラシー平均得点

520
OECD 平均:読解力 493、
ドイツ オーストラリア
数学的リテラシー 496
510
デンマーク
500 フランス
OECD 平均
スウェーデン
490 英国 アメリカ

480 イタリア

470
ギリシャ
460
470 480 490 500 510 520 530 540 550

読解力平均得点

5

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。


国際比較からみた日本社会の特徴

第3節 「公正」に関する指標の国際比較
(公正に関する指標は、所得の分配と機会の平等及び個人の社会的自立の程度を反映して
おり、日本は全般的に低いパフォーマンスを示している)
「公正」
(Equity)は、所得の分配と機会の平等及び個人の社会的自立の程度を反映して
おり、所得の不平等、相対的貧困率、男女間賃金格差等によって測定される。
日本では、相対的貧困率が高く、増加傾向であり、ジニ係数も OECD 平均よりも高く、
就業率の男女差が大きく*13、長期失業者の比率が OECD 平均よりも高く、男女間賃金格
差が大きい等、全般的に、低いパフォーマンスを示している。

1 相対的貧困率
(日本の相対的貧困率は、再分配前後ともに、2000 年代中頃から OECD 平均を上回って
いる)
相対的貧困率は国民を所得順に並べて、真ん中の順位(中位数)の人の半分以下しか所
得がない人の比率を意味するものである。
所得再分配前の相対的貧困率について、1990 年代中頃以降の大まかな推移を見ると、
2000 年代中頃まではアメリカが最も高く、それ以降はイタリアが最も高い。
日本は、一貫して上昇傾向を示し、2000 年代中頃から OECD 平均を上回っている。

* 13 2010 年のデータによると、スウェーデンの就業率の男女差は約 6 ポイントである一方、日本は約 22 ポイントとなっている。詳細は、


本章第 2 節参照。

104 平成 24 年版 厚生労働白書
第 1 部 社会保障を考える

図表 5-3-1 相対的貧困率(所得再分配前)

(%)
40

35
アメリカ
30 英国
オーストラリア
カナダ
25
スウェーデン
デンマーク
20 ドイツ
フランス
15 オランダ
日本:28.658 イタリア
ギリシャ
10 韓国
日本
5 OECD 平均


5
0


1995 前後 2000 前後 2005 前後 直近

国際比較からみた日本社会の特徴
資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

一方、税や社会保障による所得再分配後の相対的貧困率について、1990 年代中頃以降
の大まかな推移を見ると、一貫してアメリカが最も高く、デンマークが最も低い。
日本は、継続的にアメリカに次いで高い値を示している。

図表 5-3-2 相対的貧困率(所得再分配後)

(%)
12

10 アメリカ
英国
日本:15.701 オーストラリア
8 カナダ
スウェーデン
デンマーク
ドイツ
6
フランス
オランダ
イタリア
4 ギリシャ
韓国
日本
2 OECD 平均

0
1995 前後 2000 前後 2005 前後 直近

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

平成 24 年版 厚生労働白書
105
1 コラム

社会保障の規模と相対的貧困率
OECD データによると、社会保障の規模 日本は、公的社会支出の規模は、OECD
を示す公的社会支出と相対的貧困率には一定 平均を若干下回る程度であるものの、相対的
の相関関係があることがわかる。 貧困率は OECD 平均を大きく上回っている。

GDP 比公的社会支出と相対的貧困率
(%)
25

20
相対的貧困率(late-2000s)

日本
15
OECD 平均

10

5

5
国際比較からみた日本社会の特徴

0
0 5 10 15 20 25 30(%)
GDP 比公的社会支出(2007)

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成

2 ジニ係数
(ジニ係数は、社会における所得分配の不平等さを表す指標であり、日本では、再分配前
後共に、OECD 平均を上回っている)
ジニ係数は、社会における所得分配の不平等さを表す指標である。係数の範囲は 0 から
1 で、係数の値が 0 に近いほど格差が少ない状態で、1 に近いほど格差が大きい状態であ
ることを意味する*14。
主に 2008 年のデータを用いて、ジニ係数について、所得再分配前の値と所得再分配後
の値の関係性を見ると、両指標の間に弱い関係性が見られる(相関係数 0.36)
)。
所得再分配前に最も高い値を示しているのはイタリアで約 0.53、所得再分配後に最も
高い値を示しているのはアメリカで約 0.38 となっている。また、所得再分配前に最も低
い値を示しているのは韓国で約 0.34、所得再分配後に最も低い値を示しているのはデン
マークで約 0.25 となっている。
日本は、所得再分配前においても所得再分配後においても OECD 平均とほぼ同水準の
(いずれもやや高い)値を示している。

* 14 詳細は、第 3 章第 1 節コラム(P.31)参照。

106 平成 24 年版 厚生労働白書
第 1 部 社会保障を考える

図表 5-3-3 ジニ係数(所得再分配前×所得再分配後)

0.40

アメリカ

日本:再分配前 0.462
0.35    再分配後 0.329
英国
イタリア
オーストラリア
韓国 カナダ
所得再分配後

日本

ギリシャ OECD 平均
0.30
オランダ ドイツ
フランス

スウェーデン
0.25 デンマーク


0.20 5


0.30 0.35 0.40 0.45 0.50 0.55 0.60
所得再分配前

国際比較からみた日本社会の特徴
資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

コラム

子どもの貧困の国際比較
OECD で は、2000 年 代 半 ば ま で の 的貧困率が加盟国中最も高くなっている。
OECD 加盟国の相対的貧困率を公表してお このように、ひとり親家庭等大人 1 人で子
り、これによると、相対的貧困率の小さい順 どもを養育している家庭において、特に、経
に並べた場合、日本は、OECD 加盟国 30 か 済的に困窮しているという実態がうかがえる
国中 27 位となっている。 ことから、ひとり親家庭の経済的な自立を可
特に子どもがいる現役世帯のうち大人が 1 能とする就業支援策などの充実・強化や、経
人いる世帯(いわゆるひとり親家庭)の相対 済的支援の拡充が課題となっている。

平成 24 年版 厚生労働白書
107
1 相対的貧困率の国際比較(2000 年代半ば)
子どもがいる現役世帯
相対的貧困率 子どもの貧困率 (世帯主が 18 歳以上 65 歳未満の世帯)の貧困率
合計 大人が一人 大人が二人以上
割合 順位 割合 順位 割合 順位 割合 順位 割合 順位
オーストラリア 12.4 20 11.8 16 10.1 16 38.3 19 6.5 12
オーストリア 6.6 4 6.2 5 5.5 5 21.2 8 4.5 5
ベルギー 8.8 15 10.0 10 9.0 12 25.1 10 7.3 14
カナダ 12.0 19 15.1 21 12.6 21 44.7 27 9.3 18
チェコ 5.8 3 10.3 13 7.7 9 32.0 15 5.5 7
デンマーク 5.3 1 2.7 1 2.2 1 6.8 1 2.0 1
フィンランド 7.3 9 4.2 3 3.8 4 13.7 4 2.7 3
フランス 7.1 6 7.6 6 6.9 7 19.3 7 5.8 8
ドイツ 11.0 17 16.3 23 13.2 22 41.5 25 8.6 16
ギリシャ 12.6 21 13.2 18 12.1 18 26.5 13 11.7 23
ハンガリー 7.1 6 8.7 8 7.7 9 25.2 11 6.8 13

アイスランド 7.1 6 8.3 7 7.3 8 17.9 5 6.2 10

5 アイルランド 14.8 26 16.3 23 13.9 23 47.0 28 10.1 21


イタリア 11.4 18 15.5 22 14.3 25 25.6 12 14.0 27


日本(平成 16 年) 14.9 27 13.7 19 12.5 19 58.7 30 10.5 22
国際比較からみた日本社会の特徴

韓国 14.6 24 10.2 12 9.2 13 26.7 14 8.1 15


ルクセンブルク 8.1 11 12.4 17 11.0 17 41.2 24 9.7 20
メキシコ 18.4 30 22.2 29 19.5 29 32.6 16 18.7 29
オランダ 7.7 10 11.5 15 9.3 14 39.0 20 6.3 11
ニュージーランド 10.8 16 15.0 20 12.5 19 39.1 21 9.4 19
ノルウェー 6.8 5 4.6 4 3.7 3 13.3 3 2.1 2
ポーランド 14.6 24 21.5 28 19.2 28 43.5 26 18.4 28
ポルトガル 12.9 22 16.6 25 14.0 24 33.4 17 13.3 24
スロヴァキア 8.1 11 10.9 14 10.0 15 33.5 18 9.2 17
スペイン 14.1 23 17.3 26 14.7 26 40.5 23 13.9 26
スウェーデン 5.3 1 4.0 2 3.6 2 7.9 2 2.8 4
スイス 8.7 14 9.4 9 5.8 6 18.5 6 4.9 6
トルコ 17.5 29 24.6 30 20.3 30 39.4 22 20.0 30
英国 8.3 13 10.1 11 8.9 11 23.7 9 6.1 9
アメリカ 17.1 28 20.6 27 17.6 27 47.5 29 13.6 25
OECD 平均 10.6 12.4 10.6 30.8 5.4

資料:OECD“Growing Unequal?”等

(出所)
平成 24 年版 子ども・若者白書

108 平成 24 年版 厚生労働白書
第 1 部 社会保障を考える

《国民意識調査結果》②
(※厚生労働省委託調査。平成 24 年 2 月実施。調査の概要については、第 3 章末参照)

所得格差に関する意識について(国際比較)
今回の調査では、日本社会における所得格差に関する意識について調べるため、「自国の所
得の格差が大きすぎる」という見解に対する認識について質問した。
その結果、「自国の所得の格差が大きすぎる」という見解に対して「そう思う」、「どちらと
いえば、そう思う」と回答した人は全体の 71.5%にのぼったが、他の先進諸国の結果と比べ
るとその割合は低くなっている。

「自国の所得は格差が大きすぎる」

そう思う どちらかといえば、そう思う
どちらともいえない どちらかといえば、そうは思わない
そうは思わない わからない

0 20 40 60 80 (%)
100


1.2
5
ドイツ(東) 68.0 27.6 0.5
2.8


フランス 68.9 22.1 2.3
5.9 0.8

国際比較からみた日本社会の特徴
韓国 46.5 43.7 2.5
6.3 1.0

ドイツ(西) 45.1 41.7 7.6 4.9 0.8

英国 29.3 47.9 14.9 6.5 1.4

オーストラリア 28.8 45.2 15.7 9.1 1.2

スウェーデン 32.2 40.9 17.2 7.5 2.3

日本 31.2 40.3 17.1 6.1 4.0 1.3

アメリカ 29.4 37.1 17.0 12.8 3.7

デンマーク 28.1 34.3 15.1 14.2 8.3

資料:厚生労働省政策統括官付政策評価官室委託「社会保障に関する国民意識調査」
(2011 年度)

また、上記データをジニ係数の大きさを踏まえて整列して比較したところ、国民の所得格差
に関する現状認識と実際の所得格差の度合いの間に相関関係はみられず、所得格差の認識の前
提となる平等に関する意識が国によって異なることが考えられる。

平成 24 年版 厚生労働白書
109
1 自国の所得格差認識(再分配後所得のジニ係数との関係)

「自国の所得は格差が大きすぎる」

そう思う どちらかといえば、そう思う
どちらともいえない どちらかといえば、そうは思わない
そうは思わない わからない

0 20 40 60 80 100(%)
ジニ係数の最も低い国 0.240
デンマーク(0.248) 28.1 34.3 15.1 14.2 8.3

2.3
スウェーデン(0.259) 32.2 40.9 17.2 7.5

2.3
フランス(0.293) 68.9 22.1 5.9 0.8
ドイツ(西)(0.295) 45.1 41.7 7.6 4.9 0.8
ドイツ(東)(0.295) 68.0 27.6 0.5

1.2 2.8

5
2.5
韓国(0.315) 46.5 43.7 6.3 1.0

スペイン(0.317) 32.1 59.1 4.8 3.8 0.2


日本(0.329) 31.2 40.3 17.1 6.1 1.3
4.0
国際比較からみた日本社会の特徴

オーストラリア(0.336) 28.8 45.2 15.7 9.1 1.2

英国(0.345) 29.3 47.9 14.9 6.5 1.4

アメリカ(0.378) 29.4 37.1 17.0 12.8


3.7
0.380
ジニ係数の最も高い国

資料:厚生労働省政策統括官付政策評価官室委託「社会保障に関する国民意識調査」
(2011 年度)

110 平成 24 年版 厚生労働白書
第 1 部 社会保障を考える

《国民意識調査結果》③
(※厚生労働省委託調査。平成 24 年 2 月実施。調査の概要については、第 3 章末参照)

政府の格差是正への責任に関する意識について(国際比較)
今回の調査では、所得格差是正に対する政府の責任に関する意識について調べるため、「所
得の格差を縮めるのは、政府の責任である」という見解に対する認識について質問した。その
結果、「所得の格差を縮めるのは、政府の責任である」という見解に対して「そう思う」、「ど
ちらといえば、そう思う」と回答した人は全体の 52.1%であり、他の先進諸国の結果と比べ
るとその割合は低くなっている。
また、「どちらともいえない」との回答が 28.9%となっており、先進諸国の中で最も多く
なっている。

「所得の格差を縮めるのは、政府の責任である」

そう思う どちらかといえば、そう思う
どちらともいえない どちらかといえば、そうは思わない


そうは思わない わからない

0 20 40 60 80 100(%)
5


ドイツ(東) 41.4 37.4 9.8 8.6 2.8

国際比較からみた日本社会の特徴
フランス 50.6 26.6 12.9 7.4 2.5

韓国 28.6 46.5 14.8 8.1 1.9

英国
18.2 42.4 21.2 14.2 4.1

ドイツ(西) 22.4 36.9 16.2 17.8 6.7

スウェーデン 21.0 37.0 23.6 12.4 6.0

デンマーク 24.5 29.3 13.9 16.1 16.2

日本 21.6 30.5 28.9 10.2 7.5 1.2

オーストラリア 18.5 32.8 18.2 22.2 8.4

アメリカ 7.9 24.7 16.1 31.4 19.8

資料:厚生労働省政策統括官付政策評価官室委託「社会保障に関する国民意識調査」
(2011 年度)

平成 24 年版 厚生労働白書
111
1 《国民意識調査結果》④
(※厚生労働省委託調査。平成 24 年 2 月実施。調査の概要については、第 3 章末参照)

政府による貧困層への援助に関する意識について(国際比較)
今回の調査では、政府による貧困層への援助に対する意識について調べるために、「政府は、
貧しい人たちに対する援助を減らすべきだ」という見解に対する認識について質問した。
その結果、「政府は、貧しい人たちに対する援助を減らすべきだ」との見解に対し「そう思
う」、「どちらかといえば、そう思う」と肯定的な意見は、17.0%となっており、フランス・
アメリカ・英国に次ぐ水準となっている。
一方で、「そう思わない」、「どちらかといえば、そう思わない」と貧困層への援助削減に否
定な意見は 4 割強にとどまり、先進諸国の中で最も低い水準となっている。
また、「わからない」との回答が 38.9%となっており、先進諸国の中で最も高い水準となっ
ている。

「政府は、貧しい人たちに対する援助を減らすべきだ」

そう思う どちらかといえば、そう思う

5 どちらともいえない どちらかといえば、そうは思わない

そうは思わない わからない

0 20 40 60 80 100
(%)
国際比較からみた日本社会の特徴

フランス 21.7 13.2 20.7 22.0 22.5

アメリカ 3.9 14.1 16.7 50.8 14.6

2.8
英国 14.6 27.6 40.8 14.2

日本 5.6 11.4 38.9 20.5 22.0 1.6

4.2
スウェーデン 5.8 19.6 39.7 30.7

2.7
韓国 7.2 11.5 35.9 42.7

1.7
オーストラリア 8.1 19.0 50.7 20.5

2.9
デンマーク 5.8 13.5 24.6 53.2

2.6
ドイツ(西) 5.1 16.6 50.1 25.6

1.4
ドイツ(東) 6.1 18.1 43.5 30.8

資料:厚生労働省政策統括官付政策評価官室委託「社会保障に関する国民意識調査」
(2011 年度)

112 平成 24 年版 厚生労働白書
第 1 部 社会保障を考える

3 男女間賃金格差
(フルタイム労働者の男女間賃金格差は、欧米諸国より高い水準となっている)
男女間の賃金格差は、男女間のフルタイム労働者の賃金の中央値の格差を、男性の賃金
水準で割った値で示される。
主に 2003 年のデータを用いて、男女間賃金格差*15 を見ると、データが得られた調査
対象国の中で最も高いのは韓国で 39.8 となっており、最も低いのはギリシャで 11.5 と
なっている。
日本は 32.0 で、韓国に次いで高い水準となっている。

図表 5-3-4 男女間賃金格差(フルタイム労働者)

45
39.8
40


35 32.0

5
30
24.1


25 21.6 22.6
20.0
20 OECD 平均
14.4 14.9 14.3 18.3

国際比較からみた日本社会の特徴
15
11.7 11.5
10
5
0
日本

アメリカ

英国

オーストラリア

カナダ

スウェーデン

デンマーク

ドイツ

フランス

ギリシャ

韓国

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

4 失業給付水準
(日本の失業給付の水準は、OECD 平均よりも約 15 ポイント高いが、他の社会扶助給付
を加えた場合は OECD 平均とほぼ同程度である)
失業給付の純代替率とは、世帯主が雇われていた際の純世帯所得に対する世帯主が失業
しているときの純世帯所得の割合を示したものである。
2004 年のデータを用いて、失業期間 60 カ月の純代替率について、失業給付のみの場
合と他の社会扶助給付を加えた場合の数値についてみると、両指標とも最も高い値を示し
ているのはデンマーク、最も低い値を示しているのはイタリアである。
日本は、失業給付のみの場合は OECD 加盟国平均よりも約 15 ポイント高く、他の社会
扶助給付を加えた場合は OECD 加盟国平均とほぼ同程度である。
なお、両指標の間に一定の関係性が見られる(相関係数 0.75)

* 15 今回紹介した男女間賃金格差については、フルタイム賃金を測定する方法に違いが見られること、フルタイム労働者による労働時間数の
違いについて考慮していないことに留意が必要である。

平成 24 年版 厚生労働白書
113
1 図表 5-3-5 失業期間 60 カ月の純代替率(失業給付のみ×他の社会扶助あり)

90

80 デンマーク

失業給付+その他社会扶助給付︵
スウェーデン オランダ ドイツ
70

フランス 英国
60
OECD 平均 日本
50 カナダ
オーストラリア 日本:57.056
韓国
40

30 アメリカ
ギリシャ
% 20

10
イタリア
0
0 10 20 30 40 50 60 70 80
失業給付のみ(期限付きの給付のみ)(%)

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。


《国民意識調査結果》⑤
5

(※厚生労働省委託調査。平成 24 年 2 月実施。調査の概要については、第 3 章末参照)

政府による失業者の生活保障に関する意識について(国際比較)
国際比較からみた日本社会の特徴

今回の調査では、政府による失業者への生活保障に関する意識について調べるために、「政
府は、失業者がそれなりの生活水準を維持できるようにすべきだ」という見解に対する認識に
ついて質問した。
その結果、「政府は、失業者がそれなりの生活水準を維持できるようにすべきだ」との見解
に対し「そう思う」、「どちらかといえば、そう思う」と肯定的な意見は、56.2%となってお
り、アメリカと英国を若干上回るものの、先進諸国の中では比較的低い水準となっている。

「政府は、失業者がそれなりの生活水準を維持できるようにすべきだ」
そう思う どちらかといえば、そう思う
どちらともいえない どちらかといえば、そうは思わない
そうは思わない わからない

0 20 40 60 80 100
(%)

デンマーク 54.0 30.3 8.2 4.7 2.7

韓国 34.8 46.2 12.4 5.1 1.5

スウェーデン 28.2 49.6 17.2 3.7 1.3

ドイツ(東) 24.6 43.2 17.4 13.4 1.4

フランス 34.3 28.1 25.8 9.6 2.3

ドイツ(西) 16.4 43.4 20.6 16.0 3.6

日本 19.8 36.4 27.6 9.2 6.1 0.9

英国 11.1 41.9 26.9 15.6 4.4

オーストラリア 10.3 42.0 23.3 20.5 3.8

アメリカ 9.7 38.9 18.3 23.4 9.7

資料:厚生労働省政策統括官付政策評価官室委託「社会保障に関する国民意識調査」
(2011 年度)

114 平成 24 年版 厚生労働白書
第 1 部 社会保障を考える

第4節 「健康」に関する指標の国際比較

(健康に関する指標は、病気とその治療だけでなく、死亡率や罹患率などに影響を与える
他の社会的要素も反映しており、日本は良好なパフォーマンスを示している)
「健康」
(Health)は、病気とその治療だけでなく、死亡率や罹患率などに影響を与える他
の社会的要素も反映しており、寿命、乳児死亡率、保健医療支出などによって測定される。
日本では、寿命は 83.0 歳と先進諸国で最も長く、最近の世代の寿命の伸びも堅調であ
る。また、保健医療支出は、公的支出ではほぼ OECD 平均となっているが、民間支出と
の合計では平均より低く、アメリカの半分強でありながら、高い水準のアウトカムを示し
ている。また、肥満率等の指標も相対的に良好である。

1 寿命


(日本の寿命は、70 年代後半から、先進諸国の中で最も高い水準を示している)
5


寿命とは、特定年の年齢ごとの死亡率を前提とした 0 歳児の平均余命を示したものであ
る。先進諸国における 1960 年から 2010 年までの期間で見ると、全体的に伸長傾向が見

国際比較からみた日本社会の特徴
られ、特に韓国の上昇率が高い。日本は、1970 年代後半から、一貫して OECD 諸国の
中では最も長寿な国となっている。

図表 5-4-1 寿命

(歳)
85

80
アメリカ
英国
75 オーストラリア
カナダ
日本:83.0(2009 年)
スウェーデン
70 デンマーク
ドイツ
フランス
65
オランダ
イタリア
ギリシャ
60
韓国
日本
55

50
1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

2009 年のデータを用いて、男性の寿命と女性の寿命の関係性を見てみると、両指標の
間に一定の相関関係が見られる(相関係数 0.69)。
男女ともに最も寿命が長い日本、最も短いのはアメリカである。

平成 24 年版 厚生労働白書
115
1 図表 5-4-2 寿命(男性×女性)

87

日本
86
日本:男性 79.6/ 女性 86.4(2009 年)
女性の寿命︵年︶ 85

フランス
84 オーストラリア
韓国
スウェーデン
83 ドイツ
オランダ
ギリシャ 英国
82

81 デンマーク
アメリカ

80
75 76 77 78 79 80
男性の寿命(年)

5
資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

国際比較からみた日本社会の特徴

2 乳児死亡率
(日本の乳児死亡率は、先進諸国では最も低い水準となっている。)
乳児死亡率は、出生 1000 人当たりの、1 歳未満で死亡した子どもの人数である。乳児
死亡率について、1960 年から 2010 年までの期間で見ると、全体的に減少傾向が見られ、
1990 年代前半以降はいずれの国においても 1 桁台に抑えられている。
日本は、1976 年以降 1 桁台で推移しており、その後も低下傾向にあり、先進諸国では
最も低い水準となっている。

図表 5-4-3 乳児死亡率

(件 /1000 人)
50

40 アメリカ
英国
オーストラリア
カナダ
30 スウェーデン
デンマーク
ドイツ
フランス
20 オランダ
イタリア
ギリシャ
韓国
日本 2.4(2009 年)
10 日本

0
1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010(年)

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

116 平成 24 年版 厚生労働白書
第 1 部 社会保障を考える

3 肥満率
(日本の肥満率は、先進諸国中では男女ともに最も低い水準となっている)
肥満の度合いは体重と身長の関係から算出される BMI(Body Mass Index)という指
標で示される。
*16

2007~2009 年のデータを用いて、男性の肥満率と女性の肥満率の関係性を見ると、
データが得られた調査対象国の中で、日本は男女ともに肥満率が最も低い。
なお、男性の肥満率が最も高い値を示しているのはアメリカで約 72%、女性の肥満率
が最も高い値を示しているのはオーストラリアで約 68% となっている。

図表 5-4-4 肥満率(男性×女性)

80

70


オーストラリア
アメリカ
60
英国 5


女性の肥満率︵

50 カナダ

国際比較からみた日本社会の特徴
40
日本男性 30.5 女性 20.8(2009 年)
% 30

韓国

20 日本

10

0
0 10 20 30 40 50 60 70 80
男性の肥満率(%)

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

コラム

喫煙率の国際比較
OECD の国際比較によると、日本の喫煙 年)であり、OECD 平均の 16.8% を下回っ
率(習慣的に喫煙をしている人の割合)は ている。OECD 諸国で女性喫煙率が日本よ
19.5%(2010 年)で、OECD 平均の 21.1% りも低いのは、韓国 5.2%、メキシコ 6.5%
よりも低くなっている。 である。
男女別の喫煙率を見ると、日本の男性喫煙 たばこは、がんや循環器病など多くの疾患
率は 32.2%(2010 年)であり、OECD 平 の危険因子であるだけでなく、他人のたばこ
均の 25.9%よりも高くなっている。OECD の煙を吸入することによる「受動喫煙」に
諸国で、男性喫煙率が日本よりも高いのは、 よって、周囲の人々にも健康への悪影響が生
韓 国 40.8%、 ト ル コ 39.0%、 ギ リ シ ャ じることが指摘されており、今後も、たばこ
38.0%、エストニア 36.8%、チリ 33.0% と の健康への悪影響から健康を守る対策を積極
なっている。 的に進めていくことが重要である。
一方、日本の女性喫煙率は 8.4%(2010

* 16 国際的には BMI30 以上の状態を肥満(obesity)とすることが多いが、ここでは、日本肥満学会が定めた肥満の判定基準である BMI25


(国際的には過体重(overweight)という区分になる。)以上の者の割合を肥満率として比較している。

平成 24 年版 厚生労働白書
117
5
国際比較からみた日本社会の特徴 章 第

118
1

移している)

30

0
5
10
15
20
25
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45

ア ェ
メ 韓国 オ イスーデ
キ ー ラ ン

平成 24 年版 厚生労働白書
ス ン
コ ト ド
ポ 日
ル 本 ラ

準で推移している。
ト ア リア
ガ メ

4 保健医療支出

ることを示している。
ス トル ル ニ ノ カ カ
ロ コ ュ ル ナ
イ バキ ー ウ ダ
ス ア ジ ェ
ラ ー ー
ア エ ル デンラン
オ メ ル ク マ ド
リ セ ー
ー カ カ ン ク
ス ナ ブ
ア トラ ダ
イ メ ルク

ス スラリア シ
ウ ン ス 英コ
ェ ド ロ 国
ス ーデ ベ
フ ロベ ン フ オラニア
ル ィ ニ ィ ン
ク ン ア
セ ラ ン ダ

と基盤部分への投資額を示している。
O ン ン ラ
ニ E ブ ド ン
ュ C ル ス ド
ー D ク ベ イ
ジ 平 ル
イ ギス
ー 均 ス
ラ O ラ ー
イ ンド EC エ
タ D ル
リ 平
ド ア ド 均

ス ツ フ イツ
ベ イ ス ラ
ポ ルギス ロ ン
ー ポ バ ス
ー オ ルトキア
エ ラン
喫煙率(女性)
喫煙率(男性)

ス ド ー ガ
ト ス ル

オ ニ
イ リア
ノ ラン ア タ
オ ルウ ダ リ
ー ポ チェア
ス ェー
ト ア ーラ コ
リ イ ン
デ チ ア ル ド

ン ェ
マ コ ス ン
フ ーク ハ ペイド
ラ ン ン
ン ガ
ス リ

ス 英国
ペ 日
ハ イ 本
ン ン エ チ
ガ ス リ


ー ギ ニア
チ リ
ア ギ リ シ
イ リ ト ャ
ル シ

出所 : OECD Health Data 2012 に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室作成。


ラ ャ ル
ン コ
ド 韓

1980 年以降、アメリカが最も高く、韓国が最も低くなっており、日本は相対的に低水
的に増加傾向にある。これは、経済成長率の伸びよりも保健医療支出の伸びが上回ってい
保健医療支出は、公共部門と民間部門による保健医療分野の財・サービスの最終消費額
(日本の公共と民間を合わせた保健医療支出の対 GDP 比は、先進諸国の中でも低水準で推

保健医療支出(対 GDP 比)について、1960 年から 2010 年までの推移を見ると、全体


第 1 部 社会保障を考える

図表 5-4-5 保健医療支出(対 GDP 比)

(%)
20

18

16 アメリカ
英国
14 オーストラリア
カナダ
12 スウェーデン
デンマーク
10 ドイツ
フランス
8 オランダ
イタリア
6 ギリシャ
韓国
4 日本
日本 8.5(2008 年)


2


0
1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010(年)

国際比較からみた日本社会の特徴
資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

主に 2009 年のデータを用いて、保健医療支出と寿命の関係を見てみると、日本は、保
健医療支出は下から 2 番目だが、寿命は最も長く、アメリカは、保健医療支出は最も高い
が寿命は最も短くなっている。

図表 5-4-6 保健医療支出(対 GDP 比)×寿命

84

83 日本

82
イタリア
オーストラリア
スウェーデン
寿命︵年︶

81 カナダ フランス
英国 オランダ
韓国
80 ギリシャ ドイツ

79 デンマーク

アメリカ
78

77
0 5 10 15 20(%)
保健医療支出(対 GDP 比)

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

平成 24 年版 厚生労働白書
119
1 第5節 「社会的つながり」に関する指標の国際比較
(「社会的つながり」に関する指標は、国民の社会参加の程度や、日常生活から得る満足度
等を反映しており、日本は多くの課題を抱えているといえる)
「社会的つながり」(Social Cohesion)は、国民の社会参加の程度や、日常生活から得
る満足度等を反映しており、投票や社会活動への参加状況、意識調査の結果などにより測
定される。
日本は、犯罪率が低く、治安面での問題が少ない反面、生活や社会への満足度が低い、
投票率が低い、公的機関等への信頼度が低い、自殺率が極めて高いなど、多くの課題を抱
えているといえる。

1 生活満足度

(日本では、他の先進諸国と比較して、男女ともに低い生活満足度となっている)

5 生活満足度は、「自分の生活について満足している水準」を 10 段階で示した場合に、7

以上を回答した者の比率を表している。
*17

1999~2004 年の集計データを用いて、男性の生活満足度と女性の生活満足度の関係
国際比較からみた日本社会の特徴

性をみると、両指標の間に強い相関がみられる(相関係数 0.98)。
日本は、男性も女性も韓国に次いで低い値を示している。なお、オランダ、デンマー
ク、スウェーデンといった国で、両指標とも高い水準を示している。

図表 5-5-1 生活満足度(男性×女性)

100
オランダ
90
カナダ デンマーク
80
スウェーデン
ドイツ アメリカ
女性の生活満足度︵ ︶

70 日本 男性 49.79
英国
女性 53.05 フランス イタリア
60 ギリシャ
日本
50
韓国
40
%
30

20

10

0
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100
男性の生活満足度(%)

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

* 17 今回の調査のように、主観的な生活満足度を段階方式で質問して測定する場合には、国民性や文化的要素が影響することが指摘されてお
り、この点にも留意する必要がある。

120 平成 24 年版 厚生労働白書
第 1 部 社会保障を考える

コラム

生活満足度のばらつきについて
OECD 諸国の生活満足度調査は、調査対 上位 10%と低い満足度を回答した下位 10%
象者に生活満足度を 1 から 10 までの 10 段 の生活満足度の差を見てみると、OECD 平
階のうち、どれに該当するかを質問するもの 均 4.6 に対して、日本は平均を下回る 4.0 と
であり、本文では、その回答の平均値の国際 なっており、生活満足度のばらつきは諸外国
比較を紹介した。 と比べると比較的小さくなっていることがわ
ここでは、各国における生活満足度のばら かる。
つきを調べるために、高い満足度を回答した

生活満足度のばらつき
上位 10%と下位 10%の生活満足度(10 段階評価)の差
7


5

4
5


3

国際比較からみた日本社会の特徴
2

0
ス ア
ロ ル

ー ラ ツ
ク ラ ド
ン ド
フ ルク


イ ェー 国
ド ン


ン 本

ウ D

ス コ
ン ア

ス ンド

ロ ン

ア コ

チ カ
カ コ

ア 韓国

ー ラ カ
ア トラ ド
ル ア

オ メキ ド
ス コ


ス 国
ル ド


ブ チリ
イ ギー

ニ フィ ド ア

ギ リー

イ ャ

ロ ル


ベ ンダ


ル C
イ タリ
ス ラエ

ュ ン イ
ル ジー ン
セ ン


ウ 英
ン デ


デ 日


エ トル
ハ ニ



南 チェ


オ ポー リ
ス ン
イ リ


ー シ


イ 中
ポ ラン


ス トガ



ノ OE






出所:OECD“How’
s Life? : Measuring Well-being”
(OECD Publishing, 2011)に基づき、厚生労働省政策統括
官付政策評価官室作成。

2 政治制度、公的機関への信頼度
(日本では、政治制度・公的機関への信頼度が OECD 平均よりも低くなっている)
政治制度・公的機関への信頼度とは、OECD が委託して実施した調査において、議会、
政府、公務サービスについて、「大いに信頼している」あるいは「ある程度信頼している」
と回答した人の比率である。
1999~2004 年の集計データを用いて、議会、政府、公務サービスへの信頼度を見る
と、議会への信頼度が最も高いのはオランダ、政府への信頼度が最も高いのはスウェーデ
ン、公務サービスへの信頼度が最も高いのは韓国である。
日本は、いずれの指標も OECD 平均より低い。

平成 24 年版 厚生労働白書
121
1 図表 5-5-2 政治制度等への信頼度

議会 政府 公務サービス
(%)
70

60

50 OECD 平均
43.6
40 38.7
32.0 36.8
30 27.8
21.7
20

10

0
日本

アメリカ

英国

カナダ

デンマーク

ドイツ

フランス

オランダ

イタリア

ギリシャ

韓国
スウェーデン
オーストラリア

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

5

3 国政選挙の投票率
国際比較からみた日本社会の特徴

(日本の国政選挙の投票率は、カナダ、アメリカに次いで低い)
投票率とは、有権者のうち国政選挙に投票した人の比率であり、国民の政治参加への積
極度を示す指標である。
2002~2006 年のデータを用いて、国政選挙の投票率を見ると、データが得られた調
査対象国の中で最も高いのは韓国で 87.3%、最も低いのはカナダとアメリカで 55.3% と
なっている。
日本は、カナダ、アメリカに次いで低く 62.2% となっている。

図表 5-5-3 国政選挙投票率

(%)
100
87.3
90
79.1 77.1 81.4 76.5
80
71.7 71.1
70
62.2
60 55.3 55.3
50
40
30
20
10
0
デンマーク

ドイツ

フランス

オランダ

韓国
日本

アメリカ

カナダ

スウェーデン
オーストラリア

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

122 平成 24 年版 厚生労働白書
第 1 部 社会保障を考える

4 労働組合加入率
(日本の労働組合加入率は、OECD 平均とほぼ同水準となっており、長期低下傾向にある)
労働組合加入率とは、賃金労働者のうち労働組合に加入している人の比率である。
労働組合加入率について、1960 年から 2010 年までの期間で見ると、ほぼ全ての年に
おいてスウェーデンの値が最も高く、デンマークも高い値を示している。
日本は、OECD 平均とほぼ同じ水準となっており、長期低下傾向にある。

図表 5-5-4 組合加入率

(%)
90

80
アメリカ


70 英国
オーストラリア
60 カナダ
5


スウェーデン
デンマーク
50

国際比較からみた日本社会の特徴
ドイツ
日本 18.40(2010 年) フランス
40 オランダ
イタリア
30 ギリシャ
韓国
20 日本
OECD 平均

10

0
1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010(年)

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

5 自殺率
(日本の自殺率は、男女ともに高い水準となっている)
自殺率とは、人口 10 万人当たりの自殺者数である。
主に 2006 年のデータを用いて、男性の自殺率と女性の自殺率の関係性を見ると、両指
標の間には強い相関がみられる(相関係数 0.95)。男女ともに最も高いのは韓国、次いで
日本であり、最も低いのはギリシャとなっている。

平成 24 年版 厚生労働白書
123
1 図表 5-5-5 自殺率(男性×女性)

14
韓国
日本男性 28.1(2010 年)
12   女性 10.4(2010 年)
女性の自殺率︵人/

日本
10

8
スウェーデン フランス

6 デンマーク
10
万人︶

オランダ カナダ OECD 平均


4 ドイツ アメリカ
オーストラリア
英国

2 イタリア

ギリシャ
0

0 5 10 15 20 25 30 35
男性の自殺率(人 /10 万人)

5 資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。



国際比較からみた日本社会の特徴

《国民意識調査結果》⑥
(※厚生労働省委託調査。平成 24 年 2 月実施。調査の概要については、第 3 章末参照)

社会集団間の対立関係に関する意識について(国際比較)
今回の調査では、社会集団間の対立関係に関する意識について調べるために、「貧しい人」
と「豊かな人」、「経営者」と「労働者」、「社会的地位の高い人」と「社会的地位の低い人」と
いった、異なる社会集団間の対立関係に関する現状認識について質問した。
その結果、「貧しい人」と「豊かな人」について、「とても強く対立している」、「ある程度強
く対立している」と回答した人は 33.7%であり、「経営者」と「労働者」については 42.7%、
「社会的地位の高い人」と「社会的地位の低い人」は 39.6%であり、いずれも、他の先進諸国
と比べると比較的低い水準となっている。
貧しい人と豊かな人
とても強く対立している ある程度強く対立している あまり強く対立していない
まったく対立していない わからない

0 20 40 60 80 100(%)

韓国 35.1 52.4 11.6 0.9

ドイツ(東) 17.5 53.2 27.0 2.4

アメリカ 14.9 44.2 36.7 4.1

ドイツ(西) 9.9 45.9 40.1 4.1

フランス 9.3 34.6 50.6 5.5

英国 7.0 34.1 52.2 6.7

スウェーデン 6.3 29.2 60.8 3.7

日本 6.9 26.8 50.3 9.6

オーストラリア 4.7 22.1 60.7 12.5

デンマーク 1.9 11.9 64.5 21.7

資料:厚生労働省政策統括官付政策評価官室委託「社会保障に関する国民意識調査」
(2011 年度)

124 平成 24 年版 厚生労働白書
第 1 部 社会保障を考える

経営者と労働者
とても強く対立している ある程度強く対立している あまり強く対立していない
まったく対立していない わからない

0 20 40 60 80 100(%)

韓国 41.6 50.8 7.1 0.6

フランス 23.4 52.9 22.9 0.8

ドイツ(東) 9.9 47.0 40.0 3.1

アメリカ 10.7 44.0 42.2 3.1

ドイツ(西) 7.1 40.1 47.8 5.0

日本 6.7 36.0 48.0 4.8 4.5

英国 5.3 36.7 53.7 4.4

オーストラリア 5.6 35.4 53.6 5.4

スウェーデン 3.6 23.3 68.4 4.7


デンマーク 1.2 10.5 71.1 17.2

資料:厚生労働省政策統括官付政策評価官室委託「社会保障に関する国民意識調査」
(2011 年度)
5


社会的地位の高い人と低い人

国際比較からみた日本社会の特徴
とても強く対立している ある程度強く対立している あまり強く対立していない
まったく対立していない わからない

0 20 40 60 80 100(%)

韓国 48.6 36.1 11.8 3.5

フランス 34.8 37.7 22.9 4.6

アメリカ 29.1 42.2 24.7 4.0

ドイツ(東) 20.5 50.2 26.1 3.1

ドイツ(西) 14.2 47.5 34.7 3.7

スウェーデン 18.2 43.5 36.1 2.2

英国 12.6 45.0 37.6 4.9

オーストラリア 14.5 33.6 42.7 9.1

日本 8.5 31.1 45.9 8.5 5.9

デンマーク 7.1 23.5 54.7 14.7

資料:厚生労働省政策統括官付政策評価官室委託「社会保障に関する国民意識調査」
(2011 年度)

平成 24 年版 厚生労働白書
125
1 第6節 社会保障の給付と負担に関する指標の国際比較

1 社会保障の規模
(日本の公的社会支出の対 GDP 比は増加傾向にあるが、一貫して OECD 平均より低い)
OECD によると、「社会支出」とは、老齢、障害、業務災害・疾病等、遺族、保健、家
族、積極的労働市場政策、失業、住宅、生活保護その他の社会政策分野のために行われ
る、現金給付、税の優遇措置、現物給付関連支出のことをいう。
また、社会支出は、一般政府(中央政府、地方政府、社会保障機関)の管理下で行われ
る「公的社会支出」と、一般政府以外に管理されない「私的社会支出」に分けられる。
公的社会支出(対 GDP 比)について、1980 年から 2007 年までの期間で見ると、ス
ウェーデンとフランスが一貫して高い値を示している。韓国は、一貫して最も低い値を示

している。

5 日本の公的社会支出の対 GDP 比は、増加傾向にあるものの、一貫して OECD 平均よ


りも低い。
国際比較からみた日本社会の特徴

図表 5-6-1 公的社会支出(対 GDP 比)

(%)
35

30
アメリカ
英国
25 オーストラリア
カナダ
スウェーデン
20 デンマーク
ドイツ
フランス
15 オランダ
日本 18.70(2007 年) イタリア
ギリシャ
10 韓国
日本
OECD 平均
5

0
1980 1985 1990 1995 2000 2005 2006 2007(年)

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

(日本の私的社会支出の対 GDP 比は、3%程度で推移している)


私的社会支出(対 GDP 比)について、1980 年から 2007 年までの期間で見ると、アメ
リカが一貫して最も高い値を示しており、オランダと英国も一貫して高い。
日本の私的民間支出の対 GDP 比は、2000 年以降、3% 程度で推移している。

126 平成 24 年版 厚生労働白書
第 1 部 社会保障を考える

図表 5-6-2 私的社会支出(対 GDP 比)

(%)
12

10 アメリカ
英国
オーストラリア
8 カナダ
スウェーデン
デンマーク
ドイツ
6
フランス
オランダ
日本 3.7(2006 年) イタリア
4 ギリシャ
韓国
日本
2 OECD 平均


0 5


1980 1985 1990 1995 2000 2005 2006 2007(年)

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

国際比較からみた日本社会の特徴
(日本の社会支出は、公的、私的ともに、先進諸国中では中規模となっている)
また、2007 年のデータを用いて、公的社会支出(対 GDP 比)と私的社会支出(対
GDP 比)の規模を見ると、日本は、両指標とも中規模となっている。
なお、両者の間に一定の関係性は見られないが、自由主義レジーム*18 の特徴を有する
国では、民間社会支出が比較的高い水準となっている。

図表 5-6-3 公的社会支出×私的社会支出(対 GDP 比)

12

アメリカ
10
民間社会支出︵対GDP比︶

オランダ
6 英国
カナダ

4 オーストラリア 日本 スウェーデン
ドイツ
韓国 フランス
2 イタリア デンマーク
ギリシャ

0
0 5 10 15 20 25 30(%)
公的社会支出(対 GDP 比)

資料:OECD. Stat に基づき、厚生労働省政策統括官付政策評価官室から三菱総合研究所に委託して作成。

* 18 自由主義レジームを含む「福祉レジーム」については、第 4 章参照。

平成 24 年版 厚生労働白書
127
1 2 社会保障の給付規模
(給付の規模を部門別に比較すると、年金は米英を上回り、医療は米英や欧州諸国を下回
る規模となっている)
以下では、OECD の基準における公的社会支出及び私的社会支出のうち義務的なもの
(管理が非政府機関で、法的奨励もしくは強制をともなう支出。例:厚生年金基金等)の
合計額の規模について、国際比較を行う。
社会保障給付の規模について国際比較をしてみると、2007 年の日本の高齢化率(65 歳
以上人口が全人口に占める割合)が 21.5%と高い水準となっているが、社会保障給付の
対 GDP 比を見ると日本は 19.3%となっており、高齢化率が日本より 5.5%低い英国
(21.32%)を下回る水準となっている。欧州主要諸国は、日本より高齢化率は低いが、
社会保障給付の国民経済に対する規模は日本の水準を上回っている。

図表 5-6-4 社会保障の給付規模の国際比較(2007)

5

(%)
35
国際比較からみた日本社会の特徴

30 フランス
スウェーデン
社会支出の対GDP比

ドイツ
25
高齢化率 21.5%
社会支出の対 GDP 比 19.26%
英国
20
日本

アメリカ
15

10
10 15 20 25(%)
高齢化率

また、社会保障給付について部門別に比較すると、日本は、年金については、アメリ
カ、英国を上回るが、他の欧州諸国をやや下回る規模となっている一方で、医療について
は、アメリカ、英国や欧州諸国を下回り、その他の給付(介護を含む。
)を見ると、アメ
リカを上回るが、ヨーロッパ諸国をかなり下回る規模で推移している。

128 平成 24 年版 厚生労働白書
第 1 部 社会保障を考える

図表 5-6-5 社会保障給付の部門別の国際的な比較(対 GDP 比)

(%)
45

40 福祉その他《うち介護》
医療
35 年金
27.70 28.75
30
26.24
25 8.32
21.32 7.7 11.87 《0.08》
19.26
20 《0.00》 《2.25》
3.4 16.50 7.77
《1.25》 2.43 《0.54》 7.49
15 7.85
6.30 《0.01》
6.58
10 7.38 6.84
12.94
5 9.55 10.70 9.25
6.69 6.71
0
日本 アメリカ 英国 ドイツ スウェーデン フランス
(高齢化率(2007 年))《21.5%》 《12.6%》 《16.0%》 《20.2%》 《17.4%》 《16.6%》


資料:OECD:“Social Expenditure Database”等に基づき、厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室にて算出し

5
たもの。
(注) 1. いずれも 2007 年。


2. OECD 社会支出基準に基づく社会支出データを用いているため、社会保障給付費よりも広い範囲の費用(公的住
宅費用、施設整備費 等)も計上されている。
3. 高齢化率は OECD:“OECD in figures 2009”

国際比較からみた日本社会の特徴
(保育、家族手当などの家族関係社会支出の対 GDP 比は低く、フランスやスウェーデンな
どに比べて 3 分の 1 程度の規模にとどまっている)
日本は、欧州諸国に比べて現金給付、現物給付を通じて家族政策全体の財政的な規模が
小さいことが指摘されており、家族関係社会支出の対 GDP 比をみると、フランスやス
ウェーデンなどの欧州諸国と比べて 3 分の 1 程度となっている。

図表 5-6-6 各国の家族関係社会支出の対 GDP 比の比較(2007 年)

(%) 3.27
3.35
(1,048 億
3.5 (458 億
4,450 万クローネ)
現物 その他の現物給付(Other Benefits in kind) 9,110 万ポンド)
3.00 0.13
給付 保育・就学前教育(Day-care/Home-help) 0.17
(567 億 8,270 万ユーロ)
3.0
その他の現金給付(Other Cash Benefit)
現金 0.45
出産・育児休業給付(Maternity and Parental Leave) 0.95
給付
2.5 家族手当(Family Allowance)
1.73
1.88
2.0 (457 億 270 万ユーロ) 1.21
「平成 24 年度児童手当」
を加味した場合 1.45 0.35
1.5 (244 億 6,610 万ユーロ)
0.07
0.12
0.39
1.04 0.30
0.79 0.07 0.67
1.0 0.03 0.63
0.26 0.36
(4 兆 628 億円)
0.33
0.65
0.03 (909 億 1,820 万ドル)
0.13 0.08
0.33 0.24 0.18
0.5 1.03
0.13 0.80 0.76 0.75
0.55 0.31 0.44
0.30
0.0 0.10
日本 アメリカ イタリア ドイツ フランス 英国 スウェーデン
出生率
1.39 1.93 1.40 1.39 2.01 2.00 1.98
(2010)

(注)「平成 24 年度児童手当を加味した場合」は、家族手当額について、児童手当(2007 年度、9,846 億円)を平成 24 年


度予算における「児童手当制度給付費総額」 (2 兆 2,857 億円)に単純に置き換えて試算したもの
資料:OECD: Social Expenditure Database(Version: November 2008)2010.11.9 取得データ 等

平成 24 年版 厚生労働白書
129
1 (日本は、高齢化率は大きく増加しているものの、社会支出の規模の拡大は、欧米諸国よ
り低く推移している)
また、一般的に高齢化の進行は、社会保障給付の増加要因であり、日本もその例外では
ないが、高齢化率と社会保障の給付規模を国際比較すると、日本は 1980 年から 2005 年
までの 25 年間で高齢化率は 10 ポイント程度上昇しているが、社会支出の対国民所得比の
上昇幅は、約 13 ポイント程度であり、その水準もスウェーデン、フランスなどに比べて
低く推移している。一方で、英国、アメリカ、ドイツなどは、高齢化率はさほど上昇して
いないものの、社会支出の対国民所得比は 5~10 ポイント程度上昇している。

図表 5-6-7 高齢化率と社会保障の給付規模の国際比較

○日本は 1980 年から 2005 年までの 25 年間で高齢化率は 10 ポイント以上上昇しているが、社会支出の国民


所得比の増加は約 13 ポイント程度であり、その水準もスウェーデン ・ フランスなどに比べて低い。
○英国やアメリカ、ドイツなどは、高齢化率はさほど大きく変わらないものの、その社会支出の国民所得比は 5
~10 ポイント程度上昇している。

5
(%)
50

1990
スウェーデン
国際比較からみた日本社会の特徴

45
2005
社会支出︵社会保障給付費︶の対国民所得比

2005
2000
40 1980
フランス 2000
2000 2005
35 1990
ドイツ
1980
1980 改革未実施
30
2005
1990 2005
2000 改革実施
25
アメリカ 英国 2015 2025
1990 2006 2011 (見通し) (見通し)
2005 1980 2000 (予算ベース) (見通し)
20
2000
1990 日本
15 1980
1990
1980
10
8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30(%)
高齢化率

資料:実績は OECD:“Social Expenditure Database 2008”等、見通しは厚生労働省:“社会保障の給付と負担の見通し


(平成 18 年 5 月)”に基づき、厚生労働省政策統括官付社会保障担当参事官室で算出したもの。
実績は OECD 社会支出基準に基づく社会支出データを用いているため、社会保障給付費よりも広い範囲の費用(公的
住宅費用、施設整備費等)も計上されている。
高 齢 化 率 は ・ 日 本: 国 勢 調 査( 総 務 省 統 計 局 )
/ 諸 外 国(U.N.World Population Prospects(OECD Health
Data))

130 平成 24 年版 厚生労働白書
第 1 部 社会保障を考える

3 社会保障の負担規模
(日本の国民負担率の水準は、先進諸国の中では低い水準にある)
国民所得に対して税負担と社会保障負担の占める割合を国民負担率という。OECD 主
要国では、高齢化等に伴い、国民負担率は概ね増加傾向にある。
日本の社会保障の負担規模を国民負担率*19 によって諸外国と比較すると、給付と同様、
アメリカを上回るものの、国際的に比較すると、OECD 加盟国 32 か国中 27 位と低い水
準にあると言える。

図表 5-6-8 国民負担率(対国民所得比)の国際比較(主要先進国)

[国民負担率=租税負担率+社会保障負担率] [潜在的な国民負担率=国民負担率+財政赤字対国民所得比]

社会保障負担率 租税負担率 財政赤字対国民所得比


(%)
80


潜在的な国民負担率
(括弧内は対 GDP 比) (44.2) (44.1)

5
70
国民負担率(括弧内は 62.5
(39.8) 60.1


対国内総生産(GDP)比)
60
(36.1) 53.2 12.4
(29.1)
50 45.8

国際比較からみた日本社会の特徴
25.2
39.9
(24.3) 22.9
40 10.8
30.3 (45.0)
17.1 (42.8) (51.7) 63.9
30
8.7 70.3 50.2
(47.3) 57.2
20 (37.3)
(34.0) 35.0 60.0 34.9
51.2 30.3
10 22.7 21.6 42.5

0
-11.4 -10.2 -1.3
-12.2 -14.2 -4.1
-10

-20
日本 アメリカ 英国 ドイツ フランス スウェーデン
(2012 年度) (2009 年) (2009 年) (2009 年) (2009 年) (2009 年)

(注) 1. 日本は 2012 年度(平成 24 年度)見通し。諸外国は 2009 年実績。


2. 財政赤字の国民所得比は、日本及びアメリカについては一般政府から社会保障基金を除いたベース、その他の国は
一般政府ベースである。
【諸外国出所】 “National Accounts”
(OECD)、“Revenue Statistics”
(OECD)等

平成 24 年版 厚生労働白書
131
1 図表 5-6-9

(%)
国民負担率(対国民所得比)の国際比較(OECD 加盟 32 か国)

90
(37.9)

80 79.2

(49.2)
社会保障負担率
69.5
70 (33.9)(43.7)
2.7 64.7 (44.1)
(45.5)
(40.0)
25.2 (44.5)
63.2 62.5 62.3 62.0 (44.2)
(43.2)
61.9 租税負担率
5.8 60.1 59.2(42.0)
(39.0)
60 56.2 (37.6)
(39.8)
(34.8)
12.4 54.6 53.7 (34.2)
53.2 51.9 (33.1)
20.3 50.8 (29.4)
(32.5) (36.1)
50 23.0 20.3 23.1 17.8 13.2 48.3 (32.4)
(32.3)
(32.3)(31.8)
25.2 1.9 46.1 46.1 45.8 44.1 44.0 43.9 (29.1)
(27.1)
43.2 (27.7)
20.4 41.0 38.4
21.7 22.9 18.6 (29.8)
(26.8)
23.0 9.3 11.3 10.8 6.6 38.3
40
0.0 35.7 35.4(24.3)
18.1 17.1 15.4
66.7
18.0 30.3(18.8)
30 58.8 16.2 8.6 8.1 27.1
54.1
50.2 8.7 2.8 (16.2)
20.6
42.9 41.4 43.0 46.4
20 39.3 41.7 38.8 36.8 37.3 38.4 2.1
34.9 34.2 31.9 34.8 35.0
30.3 28.9 32.2 27.8
26.0 26.9 27.1 27.4
23.0 22.0 21.6 24.3
10 18.5

0

7 ル (0 )

11 ラ ( 年)

12 ウェ 0 )
13 オラ ( 年)

17 16 5 チ ( 年)


18 ーラ ( 年)

0 )
フ ラ (0 )

21 0 英 0 )

22 ペイ 09 )

24 3 カ ( 年)


29 ス( 年)

30 国( 年)

32 1チ 0 )

( 年)


ア ラ (0 )

26 ロ ン 09 )

27 ア( 年)
ス ク( 年

5 イ ド( 年

ェ ア 9年

8 ン ー( 年

( 年


ス ー( 年

ュ ル コ( 年

ト ア( 年
10 フ ア 9 年

ル ル( 9 年

2 ド( 年
ス 国 9年

ギ ン( 年

( 年
メ リ 9年


14 ア 9 年

19 ス ド 9 年

25 ポー ダ 9 年

オ ヴ ド( 年
5
イ ー 09

4 ン 09

6 デ 09

9
ノ ン 09

ー 9
ス ン 09

ツ 9
ー リ 09

ニ ポ ェ 09

ジ ガ 09

ン 09

2 シャ 9

ス キ 09

08

イ 09

韓 09

米 08

シ 09
09
9
0

0
0

ニ 0

0
3 ン グ(

ー (

ス (


ベ (

ス ラ (


ル ド
ベ ン

ン ス


28 本
ロ ダ

イ ン
ウ リ

9 リ



ィ ン

イ エ


デ ル

ハ ギ


ス タ



オ ガ



ア マ

ー ァ
ー ト
2 ブ

3

1




国際比較からみた日本社会の特徴

(注) 1. O
 ECD 加盟国 34 カ国中 32 カ国の実績値。残る 2 カ国(トルコ、エストニア)については、計数が足りず、国民
負担率が算出不能であるため掲載していない。
2. 括弧内の数字は、対国内総生産比の国民負担率。
出所:日本:内閣府「国民経済計算」等、諸外国:National Accounts 2011(OECD)Revenue Statistics(OECD)

(OECD 主要国では、国民負担率が高齢化などに伴いおおむね上昇する中、日本は税収の
落ち込み等で低下傾向にある)
社会保障支出は、OECD 主要国でも、高齢化の進展により増加しており、日本もその
規模は増加している。一方で、国民負担率の水準は、主要国ではおおむね上昇している
が、日本においてはむしろ低下している。
その背景としては、社会保障支出が国の財政の大きな部分を占め、年々増加する一方
で、税収が 2008 年度以降の景気悪化に伴い、減少傾向にあることなどが指摘されている。

* 19 国民負担率については、税や社会保険料を財源としている社会保障やその他の公的分野が国民経済に占める規模を示す指標の一つとして
位置付けられるが、将来世代の負担となる財政赤字が考慮されていないこと、社会保障とそれ以外の分野が占める割合は国によって異な
ること等に留意する必要がある。

132 平成 24 年版 厚生労働白書
第 1 部 社会保障を考える

図表 5-6-10 OECD 諸国における社会保障支出と国民負担率の関係(2009 年)

社会保障支出は、主要国でも、高齢化の進展により増加しており、特に高齢化が進んでいる日本では、増加が
顕著。一方で、国民負担率の水準は、主要国では概ね上昇しているが、日本においてはむしろ低下している。

■過去 20 年の各国の社会保障支出と国民負担率の増減
(単位:%)
35.0
フランス
(2009)
30.0
政府の社会保障支出︵対GDP比︶増

G7 平均 ドイツ
英国 (2009) (2009) (1991)
日本 (2009)
25.0
(2009)
(1991)
(1991) (1991)
20.0

社会保障増、負担減
15.0
社会保障増、負担増


(1991)

5
10.0
25.0 30.0 35.0 40.0 45.0 50.0


国民負担率(対 GDP 比)増

国際比較からみた日本社会の特徴
出所:社会保障支出:IMF「Government Finance Statistics Yearbook 2002」、OECD「Economic Outlook 76」、同
「Stat Extracts」、「National Accounts 2011 vol. Ⅱ」
国民負担率:OECD「 National Accounts 2011 vol Ⅱ」、同「Revenue Statistics」、内閣府「国民経済計算」等
(注) 1.数値は一般政府(中央政府、地方政府、社会保障基金を合わせたもの)ベースの 1991 年及び 2009 年の実績。
2.G7 平均は日本以外の国の平均であり、カナダは 2009 年の実績値が入手できないため除いている。
資料:財務省

第7節 国際比較からみた日本社会の姿
これまで、「一般的な背景」、「自立」、
「公正」、
「健康状態」、
「社会的つながり」、
「社会
保障の給付と負担」の領域について、それぞれに関する指標を国際比較することを通じ
て、日本の社会の特徴を見てきたが、本節で改めて振り返ってみる。

(経済水準の高さ、就業率の高さ、教育水準の高さ、長寿社会を実現した質の高い保健医
療システムなどが、日本社会の長所として挙げられる)
日本社会の長所としては、1 人当たりの GDP は、OECD の平均程度となっているもの
の、就業率や教育水準は比較的高水準となっており、国民の経済的な自立度が比較的高い
ことが挙げられる。
また、健康面で見ると、男性喫煙率の高さなどの課題はあるものの、全体的には、国際
比較でも特筆に値する高い平均寿命と低い乳児死亡率を達成しながら、保健医療支出は相
対的に低く推移するなど、保健医療システムは良好なパフォーマンスを示していると言え
る。特に、医療システムについては、国際的にも高く評価されており、今後も大切にして
いかなければならない長所であるといえる*20。
* 20 (注)例えば、WHO 発表の「World Health Report 2000」によると、「健康の到達度」、「健康の公平性」、「医療受診の公平性」、「人
権の尊重と配慮」、「医療費負担の公平性」の 5 つの基準から判断して、日本は加盟国 191 か国の中で第 1 位と評価されている。また、
2011 年 9 月に、英医学誌「ランセット」は、日本の「国民皆保険制度」達成から 50 年を記念する日本特集号において、低水準の医療
費で世界一の長寿を達成した日本の医療制度を高く評価した。また、2010 年に「ニューズウィーク」は、寿命が最も長い点を踏まえ、
日本を健康分野で最も優れた国とした。

平成 24 年版 厚生労働白書
133
1 (所得格差、男女間格差、社会的つながり、社会保障の安定財源確保等の問題に取り組む
ことが今後の日本社会の課題である)
一方で、短所としては、相対的貧困率やジニ係数が OECD 平均よりも高い水準となっ
ているなど所得格差が顕在化していること、また、就業率の男女差や男女間賃金格差が大
きい点などがある。
また、日本では、犯罪率はきわめて低い反面、生活満足度が低い、自殺率が極めて高
い、政治制度への信頼度や公的機関への信頼度が、議会・政府・公務サービスのいずれに
おいても OECD の平均を下回るなど、社会的な信頼感やつながりに関わる点に問題が見
える。
所得格差が大きく、リスクに遭遇した場合のセーフティネットも相対的に小さく、その
うえ、さまざまなかたちで、社会的な包摂機能も弱いため、生活についての満足度が相対
的に低い国である側面も否定できない。
また、日本は、世界最速の人口構造の高齢化による社会保障関係費の大幅な自然増な

ど、財政的な課題にも直面していることも喫緊の課題であるといえる。

5 以上のように、国際比較の観点からは、経済的水準の高さや健康面といった長所を維持

しながらも、所得格差や男女間の格差の是正、社会的つながりの再生と社会的包摂の実
現、社会保障の安定財源確保といった問題に取り組むことが、今後の日本社会の課題とし
国際比較からみた日本社会の特徴

て浮かび上がってくるといえよう。

134 平成 24 年版 厚生労働白書

You might also like