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1

00:00:02,814 --> 00:00:22,514


・~

2
00:00:44,856 --> 00:00:47,292
(鳥飼)おい 弥之助。
ここだ ここだ。

3
00:00:47,292 --> 00:00:49,761
(弥之助)旦那。
ああ これは これは。

4
00:00:49,761 --> 00:00:52,297
神谷様も ご一緒で?
(玄次郎)うん。

5
00:00:52,297 --> 00:00:56,167
女の腕枕で うとうとしてたら
こいつに たたき起こされた。

6
00:00:56,167 --> 00:01:01,973
朝っぱらから えらい災難だぜ。
神谷 恩に着る。

7
00:01:01,973 --> 00:01:04,876
このお返しは いつか必ず。
とか なんとか言って・

8
00:01:04,876 --> 00:01:11,049
一度も おごられたためしがねえ。
まあ いい。 テキは どこだ?

9
00:01:11,049 --> 00:01:14,649
外手町か?
へい。 そこの裏手でさ。

10
00:01:16,721 --> 00:01:22,493
<北町奉行所 定町回り同心
神谷玄次郎は・

11
00:01:22,493 --> 00:01:28,833
同僚 鳥飼道之丞の捕物に
時々 つきあう。・
12
00:01:28,833 --> 00:01:33,404
互いの回り筋 縄張りが
本所と深川で・

13
00:01:33,404 --> 00:01:37,375
隣り合っている縁で
手ごわい相手の時には・

14
00:01:37,375 --> 00:01:43,375
玄次郎が 必ず 助っ人に
駆り出されるのである>

15
00:01:54,058 --> 00:01:58,062
(菅生)何だ? 貴様ら。
朝っぱらから 何の用だ?

16
00:01:58,062 --> 00:02:02,133
菅生半蔵だな?
ああ それが どうした?

17
00:02:02,133 --> 00:02:06,037
御用の筋だ。 そこの番屋まで
面 貸してもらおうか。

18
00:02:06,037 --> 00:02:09,674
俺の面が 何の御用に立つんだ?

19
00:02:09,674 --> 00:02:12,276
そいつは 手前の胸に聞いてみろ!

20
00:02:12,276 --> 00:02:15,646
ふん あの博打か?

21
00:02:15,646 --> 00:02:18,916
たかが5~6文の
しょんべん博打だってえのに。

22
00:02:18,916 --> 00:02:21,819
町方は よっぽど暇とみえるな。

23
00:02:21,819 --> 00:02:27,425
危ない。
右にいては危ないぞ 鳥飼。

24
00:02:27,425 --> 00:02:29,360
分かったよ。

25
00:02:29,360 --> 00:02:31,660
左に寄れ。

26
00:02:34,232 --> 00:02:36,332
(弥之助)旦那!

27
00:02:38,436 --> 00:02:40,438
鳥飼!
神谷 頼む!

28
00:02:40,438 --> 00:02:52,483
・~

29
00:02:52,483 --> 00:02:54,952
よせ。 逃げられる訳はないんだ。
30
00:02:54,952 --> 00:03:06,197
・~

31
00:03:06,197 --> 00:03:08,699
くそ~!

32
00:03:08,699 --> 00:03:13,699
・~

33
00:03:17,008 --> 00:03:19,977
八幡町の菊屋という
ろうそく屋 知ってるな?

34
00:03:19,977 --> 00:03:23,314
その店先で暴れて
金せびった覚えがあるだろう?

35
00:03:23,314 --> 00:03:26,150
それが どうした?
どうしただと?
36
00:03:26,150 --> 00:03:30,421
浪人が 刀 振り回して
商家に金せびる。

37
00:03:30,421 --> 00:03:33,224
それが ゆすりにならねえとでも
言いてえか?

38
00:03:33,224 --> 00:03:36,928
菊屋は俺の身内だ。
えっ 身内?

39
00:03:36,928 --> 00:03:40,465
野郎! この期に及んで
見え透いた嘘つきやがって。

40
00:03:40,465 --> 00:03:43,265
嘘ではない!

41
00:03:45,303 --> 00:03:50,141
菊屋の女房は俺の妹だ。
えっ?

42
00:03:50,141 --> 00:03:59,717
・~

43
00:03:59,717 --> 00:04:04,555
菅生さん 菊屋の娘の事だがな。

44
00:04:04,555 --> 00:04:08,226
お八重?
姪っ子に何かあったか?

45
00:04:08,226 --> 00:04:11,762
消えた。
消えた?

46
00:04:11,762 --> 00:04:17,362
ああ。 3日前の夕方
誰かに さらわれたそうだ。

47
00:04:19,403 --> 00:04:23,708
その夜のうちから 奉行所は
菊屋の見張りを始めた。

48
00:04:23,708 --> 00:04:27,311
そこに あんたが現れて
店先で 段平 振り回して・

49
00:04:27,311 --> 00:04:29,347
金を せびったんだ。

50
00:04:29,347 --> 00:04:34,347
誰だって かどわかしの一味と
疑うのが当然だろう?

51
00:04:37,121 --> 00:04:40,992
(おさく)玄次郎様!
私だって すき好んで・

52
00:04:40,992 --> 00:04:43,694
なにも この家に
居ついている訳じゃないんですよ。
53
00:04:43,694 --> 00:04:51,068
亡くなったお父様が口癖のように
「おさくさん。 玄次郎を頼む。・

54
00:04:51,068 --> 00:04:53,871
あの子が
立派な一人前になるまで・

55
00:04:53,871 --> 00:04:56,841
この神谷の家を
見捨ててくれるな」。

56
00:04:56,841 --> 00:05:00,111
そう おっしゃったから
こうして 歯を食いしばって・

57
00:05:00,111 --> 00:05:03,014
お留守をお守りしているんじゃ
ないですか!

58
00:05:03,014 --> 00:05:08,586
玄次郎様! 私だってね
神田のせがれの家に帰ったら・

59
00:05:08,586 --> 00:05:11,355
桶家のご隠居として
安穏と暮らせるんですよ。

60
00:05:11,355 --> 00:05:17,695
でもね せがれや嫁に言うんです。
「玄次郎様が嫁をもらって・

61
00:05:17,695 --> 00:05:20,598
立派な跡継ぎが生まれるまでは・

62
00:05:20,598 --> 00:05:23,868
八丁堀のお屋敷を見捨てる訳には
いかないんだよ。・

63
00:05:23,868 --> 00:05:29,674
それが 人の誠というもの」。
聞いてんですか?
64
00:05:29,674 --> 00:05:31,709
イテテテッ。
聞いてんですか? 玄次郎様!

65
00:05:31,709 --> 00:05:36,347
はいはい ごはんです ごはんです。
ごはん! はいはい コチョ コチョ。

66
00:05:36,347 --> 00:05:40,047
アハハハハッ!
コチョ コチョ! はい 起きて 起きて!

67
00:05:45,590 --> 00:05:50,094
(金子)黙らっしゃい!
大体 貴公の勤めぶりは・

68
00:05:50,094 --> 00:05:53,097
はなはだ 気に入らん!
わしの目は節穴ではないぞ。

69
00:05:53,097 --> 00:05:55,233
いや それは…。

70
00:05:55,233 --> 00:05:59,103
役所への出欠 常ならず
町回りも怠りがちな事を・

71
00:05:59,103 --> 00:06:01,472
わしが知らぬとでも
思ってるのか!?

72
00:06:01,472 --> 00:06:05,409
どうして あの父親から
こんなせがれが生まれたものか。

73
00:06:05,409 --> 00:06:10,809
親父は非一点の打ちどころもない
立派な勤めじゃったぞ。

74
00:06:12,883 --> 00:06:16,120
神谷… 女と別れろ。
はあ?
75
00:06:16,120 --> 00:06:18,522
浅草の女と 手を切れ。

76
00:06:18,522 --> 00:06:22,126
手切れ金が要るなら
いつでも わしが用立てる。

77
00:06:22,126 --> 00:06:27,932
ご支配役。 浅草の女より うちの
ばあさんと別れたいのですが・

78
00:06:27,932 --> 00:06:32,232
手切れ金を
拝借できますか?
何じゃと!?

79
00:06:47,685 --> 00:06:53,257
母ちゃん 遊んで 遊んで。

80
00:06:53,257 --> 00:06:55,693
はい はい
ちょっと待ってね。
遊んで。

81
00:06:55,693 --> 00:06:59,993
おかみさん。
お見えですよ 神谷の旦那。

82
00:07:05,403 --> 00:07:08,105
いらっしゃい。
銀蔵さんが来てますよ。

83
00:07:08,105 --> 00:07:13,005
ああ 銀蔵が。 何だって?
さあ 何でしょう? どうぞ。

84
00:07:15,846 --> 00:07:21,686
・~

85
00:07:21,686 --> 00:07:24,055
お前さんは…。
えっ?
86
00:07:24,055 --> 00:07:27,358
すこぶるいい女だな。

87
00:07:27,358 --> 00:07:30,858
何言ってんですか? 今頃。

88
00:07:36,901 --> 00:07:38,836
お邪魔しておりやす。

89
00:07:38,836 --> 00:07:41,772
浮かねえ顔だな。

90
00:07:41,772 --> 00:07:49,347
へえ。 直吉の野郎が
消えちまったんで。
直吉?

91
00:07:49,347 --> 00:07:53,584
へえ。 八幡町の菊屋って
ろうそく家で・
92
00:07:53,584 --> 00:07:56,020
かどわかしが ありましてね。
その件で・

93
00:07:56,020 --> 00:07:58,456
近在の岡引に
呼び出しがありまして…。

94
00:07:58,456 --> 00:08:03,094
[ 回想 ]
こいつの仲間が逃げやがってな。
俺は抜けられねえから・

95
00:08:03,094 --> 00:08:05,996
菊屋の かどわかしは
お前が行ってくれ。

96
00:08:05,996 --> 00:08:09,867
えっ あっしが親分の代わりに?
不服か?

97
00:08:09,867 --> 00:08:13,637
とんでもねえ!
万事 任せておくんなせえ。

98
00:08:13,637 --> 00:08:19,243
それが 4日前の晩でした。
直吉は張り切って行ったんだな?

99
00:08:19,243 --> 00:08:23,781
へえ。 一人前扱いされたのが
よほど うれしかったようで。

100
00:08:23,781 --> 00:08:28,185
ところが おとついの晩から
ぷっつりと姿を消しちまった。

101
00:08:28,185 --> 00:08:31,689
すると 菊屋の娘と直吉・

102
00:08:31,689 --> 00:08:34,291
日を置かずして
2人が消えたのは・
103
00:08:34,291 --> 00:08:39,191
つながりが あるかもしれねえよ。
へい。

104
00:08:42,466 --> 00:08:47,071
おとといの浪人者は どうした?
放免だ。

105
00:08:47,071 --> 00:08:49,840
菊屋の身内だから
ゆすりには問えんし・

106
00:08:49,840 --> 00:08:54,211
かどわかしには
全く 関わりなさそうだ。

107
00:08:54,211 --> 00:08:57,748
かどわかされた娘は どうした?
戻ったか?

108
00:08:57,748 --> 00:09:01,318
ううん。 しっ!

109
00:09:01,318 --> 00:09:06,157
ほう… すると
貴公の斬られ損か。

110
00:09:06,157 --> 00:09:09,059
ほれ!
イテッ…。
ハハハッ。

111
00:09:09,059 --> 00:09:16,359
大きな声で言うな。 負傷した事は
上に知らせてない。
それは賢い。

112
00:09:20,504 --> 00:09:27,344
どうだ? 鳥飼。
菊屋の件 俺も手伝うか?

113
00:09:27,344 --> 00:09:30,014
こちらが背負い込んだ事件にも・

114
00:09:30,014 --> 00:09:33,918
少し関わりがありそうな
雲行きなのでな。

115
00:09:33,918 --> 00:09:40,090
おう 神谷。 やはり 持つべき者は
よき朋輩だな。

116
00:09:40,090 --> 00:09:44,895
ご同役
是非 ご加勢願いたい。
うん。

117
00:09:44,895 --> 00:09:57,575
・~

118
00:09:57,575 --> 00:10:03,948
直吉は 3日前の晩に消えたっきり
顔も見せやしません。
119
00:10:03,948 --> 00:10:07,518
なぜ消えたんだ?
それが…。

120
00:10:07,518 --> 00:10:14,758
・~

121
00:10:14,758 --> 00:10:17,528
ここから 菊屋の見張りを
任せたってえのに・

122
00:10:17,528 --> 00:10:20,764
勝手に ふけちまった。
旦那の前ですが・

123
00:10:20,764 --> 00:10:27,605
銀蔵親分も 随分と出来のいい
手下を回してくれたもんです。

124
00:10:27,605 --> 00:10:31,475
将棋か。
えっ?

125
00:10:31,475 --> 00:10:35,846
見張りをしながら
将棋が指せるのか?

126
00:10:35,846 --> 00:10:38,816
菊屋へ行く。 案内しな。

127
00:10:38,816 --> 00:10:44,154
(弥之助)ごめんよ。
いらっしゃいませ。

128
00:10:44,154 --> 00:10:47,424
菊屋さん。
(作太郎)親分。

129
00:10:47,424 --> 00:10:49,760
(より江)見つかりましたか?
いや そうじゃない。

130
00:10:49,760 --> 00:10:55,566
いけねえな おかみさん
少しは寝ておかねえと。

131
00:10:55,566 --> 00:11:01,238
菊屋さん こちらは神谷様だ。
鳥飼の旦那と ご一緒に・

132
00:11:01,238 --> 00:11:03,807
お八重坊を
捜して下さる事になった。

133
00:11:03,807 --> 00:11:05,809
菊屋にございます。

134
00:11:05,809 --> 00:11:09,609
よろしくお願い申し上げます。

135
00:11:21,225 --> 00:11:25,763
(お杉)私が いけなかったんです。
「人さらいが多いから・
136
00:11:25,763 --> 00:11:30,267
気を付けろ」って 弥之助親分にも
言われたばかりなのに…。

137
00:11:30,267 --> 00:11:33,170
[ 回想 ]
(猿回し)さてさてさて
お立ち会いのうちに。・

138
00:11:33,170 --> 00:11:36,807
今から お猿さんの芸が
始まりますよ。・

139
00:11:36,807 --> 00:11:41,445
なんと はい
逆立ちでございま~す。

140
00:11:41,445 --> 00:11:44,715
(お杉)お八重ちゃんを回向院に
遊びに連れてって・

141
00:11:44,715 --> 00:11:47,451
そこで 猿回しを
見ていたもんだから・

142
00:11:47,451 --> 00:11:50,054
それが いけなかったんです。・

143
00:11:50,054 --> 00:11:53,154
ほんのちょっと目を離した
その隙に…。

144
00:11:59,396 --> 00:12:06,036
お八重ちゃん? お八重ちゃん!?
お八重ちゃん お八重ちゃん!

145
00:12:06,036 --> 00:12:08,973
(おはる)あっ お杉ちゃん。
(お杉)お八重ちゃんが いないの。

146
00:12:08,973 --> 00:12:14,878
(お八重)離して! 嫌だ!
離して! 嫌だ!
147
00:12:14,878 --> 00:12:17,247
お杉ちゃん…。

148
00:12:17,247 --> 00:12:21,118
おはるちゃん 人さらいだ。
人さらいや!

149
00:12:21,118 --> 00:12:25,422
すると お前さん お八重を
さらった男を見たんだな?

150
00:12:25,422 --> 00:12:29,593
見ました。 後ろ姿だけですけど
小柄な男でした。

151
00:12:29,593 --> 00:12:34,898
小柄か。 男のなりは?
ただの着流しです。

152
00:12:34,898 --> 00:12:38,168
柄は?
棒縞でした。

153
00:12:38,168 --> 00:12:41,268
棒縞…。

154
00:12:44,475 --> 00:12:48,345
年格好は?
(お杉)多分 若い人だと思います。

155
00:12:48,345 --> 00:12:53,283
なぜだ? なぜ そう思ったんだ?

156
00:12:53,283 --> 00:12:57,054
お八重は… お八重は大柄で・

157
00:12:57,054 --> 00:13:00,257
いつも 2つくらい
上に見られる子なんです。

158
00:13:00,257 --> 00:13:04,128
力のある若い人でないと とても
あの子を担いで走れません。

159
00:13:04,128 --> 00:13:07,698
年寄りには
とても無理でございます。

160
00:13:07,698 --> 00:13:14,405
どうだ? 近頃 何か 人に
恨まれるような事は なかったか?

161
00:13:14,405 --> 00:13:18,075
いいえ。 私で もう3代・

162
00:13:18,075 --> 00:13:21,578
何事もなく この土地で
商いをさせて頂いております。

163
00:13:21,578 --> 00:13:26,417
そんな 人様の恨みを買うなんて
とんでもない。
164
00:13:26,417 --> 00:13:34,758
それなら 金か。
あくまで 金が目当てか。

165
00:13:34,758 --> 00:13:37,361
いいえ 違います。

166
00:13:37,361 --> 00:13:39,830
この店が いつも
借金取りに追われている事は・

167
00:13:39,830 --> 00:13:43,767
ご近所の誰もが ご存じです。
そんな お金が目当てだなんて。

168
00:13:43,767 --> 00:13:50,767
より江! 何だね 余計な口出しを。
あっち行きなさい。 行きなさい!

169
00:13:59,049 --> 00:14:05,422
お前のとこの主人とおかみは
あまり 仲が良くないようだな?

170
00:14:05,422 --> 00:14:07,491
私は 奉公人ですから・

171
00:14:07,491 --> 00:14:10,091
そういう事には
お答えできません。

172
00:14:16,467 --> 00:14:22,239
(お杉)ちょうど 今頃でした。
あの日も夕焼けで。

173
00:14:22,239 --> 00:14:26,910
(おはる)えっ もうちょっと
遅かったわよ。 もっと暗かった。

174
00:14:26,910 --> 00:14:31,315
(お杉)何言ってるの?
こんなもんよ。 明るかったわ。

175
00:14:31,315 --> 00:14:35,619
男の着物は棒縞だったな?
はい。

176
00:14:35,619 --> 00:14:39,857
おはる お前も
人さらいを見たそうだな?

177
00:14:39,857 --> 00:14:44,762
はい。 顔は見ていませんが
背の高い 大きな人でした。

178
00:14:44,762 --> 00:14:49,633
背の高い?
嘘。 そんなに高くなかったわ。

179
00:14:49,633 --> 00:14:54,004
でも とても大きく見えたもの。
あんた 臆病だからよ。

180
00:14:54,004 --> 00:14:59,604
怖くて 大きく見えたのね。
だって…。

181
00:15:07,151 --> 00:15:17,795
(拍子木の音)
・火の用心!

182
00:15:17,795 --> 00:15:21,165
分からん…。

183
00:15:21,165 --> 00:15:24,368
えっ?

184
00:15:24,368 --> 00:15:30,107
子守り女がいる。

185
00:15:30,107 --> 00:15:36,207
17だというのに
もうすっかり大人だ。

186
00:15:39,216 --> 00:15:46,216
お前さん… 17の時 何してた?
187
00:15:55,566 --> 00:16:01,972
なぜ? なぜ そんな事
聞くんですか?

188
00:16:01,972 --> 00:16:05,472
うん?

189
00:16:07,845 --> 00:16:13,945
ねえ… 起きて。
起きて飲みましょう。

190
00:16:18,288 --> 00:16:20,888
女の17…。

191
00:16:25,128 --> 00:16:31,428
私 売られたんですよ
根津権現下の岡場所に。

192
00:16:38,542 --> 00:16:43,680
「客は取らせない
行儀見習の女中奉公だ」って・

193
00:16:43,680 --> 00:16:47,017
口利きの人に
だまされたふりして・

194
00:16:47,017 --> 00:16:51,221
親も私も承知で
売られていったんですよ。

195
00:16:51,221 --> 00:16:57,427
いつか きっと その日が来る。
男に買われて・

196
00:16:57,427 --> 00:17:01,827
高いお金で水揚げされる日が
来るんだって…。

197
00:17:04,234 --> 00:17:10,140
ううん… 私 それは それで
しかたない事だと思ってた。
198
00:17:10,140 --> 00:17:14,778
だって 貧乏なうちに
生まれたんだもん。

199
00:17:14,778 --> 00:17:19,716
仲良しの友達も
みんな そうやって・

200
00:17:19,716 --> 00:17:22,252
人に買われて・

201
00:17:22,252 --> 00:17:25,222
いつの間にか
風に さらわれたように・

202
00:17:25,222 --> 00:17:29,660
どっかに
消えていってしまったんだもの。

203
00:17:29,660 --> 00:17:34,560
女なら
そんな事 当たり前だと思ってた。

204
00:17:39,236 --> 00:17:42,940
でも ほれた亭主に
そそのかされて・

205
00:17:42,940 --> 00:17:46,310
一緒に駆け落ちした時は…・

206
00:17:46,310 --> 00:17:51,815
それこそ 生きるか死ぬかの
瀬戸際だったけど…。

207
00:17:51,815 --> 00:17:56,253
とにかく 向こうの親が
始末をしてくれて・

208
00:17:56,253 --> 00:17:59,990
ここに これだけの店まで
持たせてもらって・

209
00:17:59,990 --> 00:18:03,360
「なんて お津世は
運の強い女だ」って・

210
00:18:03,360 --> 00:18:05,860
みんなに羨ましがられたのに…。

211
00:18:08,198 --> 00:18:14,371
捨てられたのか 嫌われたのか
まるで神隠しに遭ったみたいに・

212
00:18:14,371 --> 00:18:20,744
亭主は姿を消したきり
もう3年…。

213
00:18:20,744 --> 00:18:27,484
・~

214
00:18:27,484 --> 00:18:33,023
何だ? 栄坊。 起きたのか?
おしっこ。
215
00:18:33,023 --> 00:18:36,623
はいはい
おしっこ おしっこ はい。

216
00:18:49,840 --> 00:18:53,710
どうした? お八重は
まだ見つからんのか?

217
00:18:53,710 --> 00:19:00,784
ああ まだだ。
ふん。 町方なんぞ
役人のくずだ。 無駄飯ばかり。

218
00:19:00,784 --> 00:19:04,554
あんた お八重がさらわれたのを
承知で・

219
00:19:04,554 --> 00:19:07,057
あの日 菊屋に
ゆすりに行ったのか?

220
00:19:07,057 --> 00:19:11,461
ばかを言うな。
仮にも俺は菊屋の身内だぞ。

221
00:19:11,461 --> 00:19:16,266
では 菊屋の内緒を
知ってたか?
内緒?

222
00:19:16,266 --> 00:19:24,674
台所が火の車だって事だよ。
承知よ。 そんな事は百も承知だ。

223
00:19:24,674 --> 00:19:28,974
なぜだ?
なぜ 貧乏所帯を苦しめる?

224
00:19:33,383 --> 00:19:38,483
おい ばばあ。
酒だ。 酒を出せ。

225
00:19:42,793 --> 00:19:48,598
俺は 妹の亭主野郎が
どうにも許せねえ。

226
00:19:48,598 --> 00:19:53,570
菊屋が あんたに何をした?
女を囲っていやがる。

227
00:19:53,570 --> 00:19:59,242
女?
ああ 女だ。
それも 金のかかる女だよ。

228
00:19:59,242 --> 00:20:03,113
商売が下手で
さんざ 妹を泣かせてきた上に・

229
00:20:03,113 --> 00:20:07,617
女を囲って
店まで持たせたという噂だ。

230
00:20:07,617 --> 00:20:12,022
それが むかついて 我慢ならん。
菊屋をゆすれば・

231
00:20:12,022 --> 00:20:16,760
困るのは 台所を預かる
あんたの妹じゃないのかね?

232
00:20:16,760 --> 00:20:21,631
金なら 万年町の本家に
うなってら。

233
00:20:21,631 --> 00:20:23,631
本家だ?

234
00:20:25,869 --> 00:20:28,772
(菅生)江戸でも指折りの
ろうそく問屋だ。・

235
00:20:28,772 --> 00:20:32,709
本家がなけりゃ
八幡町の菊屋なんざ・

236
00:20:32,709 --> 00:20:35,612
とうの昔に潰れてるさ。・

237
00:20:35,612 --> 00:20:43,353
俺の妹だって
本家の金で買われたんだ。

238
00:20:43,353 --> 00:20:47,457
長患いの貧乏浪人だった
俺の親父は・

239
00:20:47,457 --> 00:20:52,429
50両の支度金に目がくらんで。

240
00:20:52,429 --> 00:21:00,804
嫁入りの日
妹は… より江は泣いてたよ。

241
00:21:00,804 --> 00:21:05,609
今になって
妹を邪魔者扱いしやがって。
242
00:21:05,609 --> 00:21:12,516
許せねえ… 菊屋の野郎だけは
俺は許せねえ!

243
00:21:12,516 --> 00:21:17,220
見かけによらず 妹思いだな。

244
00:21:17,220 --> 00:21:23,360
当たり前だ。
2人きりの兄弟だからな。

245
00:21:23,360 --> 00:21:28,260
俺にも妹がいた。
いた?

246
00:21:31,601 --> 00:21:33,637
邪魔したな。

247
00:21:33,637 --> 00:21:43,937
・~
248
00:21:46,116 --> 00:21:49,416
ありがとうございました!

249
00:21:55,125 --> 00:21:57,994
お前さん! もう少し
力 加減しなきゃ。

250
00:21:57,994 --> 00:22:00,964
やかましい!
だって 痛がってるよ。

251
00:22:00,964 --> 00:22:04,334
痛くねえよな?
顔 見て…。

252
00:22:04,334 --> 00:22:08,104
あっ 神谷の旦那。

253
00:22:08,104 --> 00:22:10,440
ごめんよ。
254
00:22:10,440 --> 00:22:15,245
ご苦労さまでございます。
あ~ ひどい ほこり。

255
00:22:15,245 --> 00:22:19,916
春先の風はねえ。
さあさあ どうぞ。

256
00:22:19,916 --> 00:22:22,416
お上がり下さいまし。
邪魔するよ。

257
00:22:25,422 --> 00:22:29,726
どうだ? 直吉の筋は。
いや~ どうも いけませんや。

258
00:22:29,726 --> 00:22:33,630
どこに消えちまったんだか
手がかり一つ つかめねえ。

259
00:22:33,630 --> 00:22:35,999
そうか。
へえ。 えっ?

260
00:22:35,999 --> 00:22:39,936
お声に いつもの張りが
ござんせんね。
そうかい?

261
00:22:39,936 --> 00:22:43,273
ヘヘヘヘッ。 まあ いささか・

262
00:22:43,273 --> 00:22:46,176
おつきあいも
長うござんすからねえ。

263
00:22:46,176 --> 00:22:52,515
ばれちゃあ しかたがねえ。
実は こっちも行き詰まった。

264
00:22:52,515 --> 00:22:58,855
今のところ 見えてきたのは
まず かどわかしたのは男だが・
265
00:22:58,855 --> 00:23:01,858
野郎一人の仕業じゃなさそうだ。

266
00:23:01,858 --> 00:23:04,160
仲間がいるんで?

267
00:23:04,160 --> 00:23:08,398
次に 借金だらけの菊屋の娘を
さらったのは・

268
00:23:08,398 --> 00:23:12,636
本家の金が目当てらしい。
へえ~。

269
00:23:12,636 --> 00:23:18,108
そこまでは つかめたが
そっから先が進まねえ。

270
00:23:18,108 --> 00:23:21,711
なぜ 直吉まで
消えちまったのか?

271
00:23:21,711 --> 00:23:26,611
はあ… 分からん。 お手上げだ。

272
00:23:29,586 --> 00:23:36,293
いいや やはり 直吉は菊屋の筋で
消えたような気がしてならねえ。

273
00:23:36,293 --> 00:23:39,129
親分。
へい!
動けるかい?

274
00:23:39,129 --> 00:23:44,634
何をすりゃ よろしいんで?
菊屋の内情を調べてくれ。

275
00:23:44,634 --> 00:23:50,106
それと もう一つ…・

276
00:23:50,106 --> 00:23:52,509
こいつは
気色のよくねえ仕事だが…。

277
00:23:52,509 --> 00:23:55,512
何でがしょう?
弥之助を洗ってくれ。

278
00:23:55,512 --> 00:23:59,683
弥之を?
仲間同士で 気乗りの
しない勤めだろうが・

279
00:23:59,683 --> 00:24:08,058
直吉と菊屋の線を
つなぐとすれば あいつだ。

280
00:24:08,058 --> 00:24:10,058
へい。

281
00:24:18,702 --> 00:24:24,274
床を取りますか?
いや 帰る。

282
00:24:24,274 --> 00:24:27,877
お2階のお客さん
そろそろ お開きですよ。

283
00:24:27,877 --> 00:24:34,050
いや 今日は帰る。 帰らんと
ばあさんの機嫌が悪い。

284
00:24:34,050 --> 00:24:36,450
そう。

285
00:24:44,094 --> 00:24:47,794
怒ってるんですか?

286
00:24:53,803 --> 00:25:01,244
怒ってる。
何もかも うまくいかぬ。

287
00:25:01,244 --> 00:25:06,416
八方塞がりだ。

288
00:25:06,416 --> 00:25:12,722
こんな時は お前さんと
一杯やるのが一番だが・

289
00:25:12,722 --> 00:25:17,122
今夜は それもできぬ。

290
00:25:19,362 --> 00:25:23,833
だから 俺は怒ってる。

291
00:25:23,833 --> 00:25:28,772
いや… 子どもが 目を…。

292
00:25:28,772 --> 00:25:34,577
ねえ 髪を…
髪を壊さないで…。

293
00:25:34,577 --> 00:25:41,777
・~
294
00:25:44,521 --> 00:25:47,121
お帰りなさい。

295
00:25:59,736 --> 00:26:02,372
何だ?
匂いますよ。

296
00:26:02,372 --> 00:26:05,275
酒か?
女です。

297
00:26:05,275 --> 00:26:09,746
女のおしろいの… いい匂い。

298
00:26:09,746 --> 00:26:15,746
おさくさん
鼻だけは達者で よかったな。

299
00:26:27,964 --> 00:26:39,576
・~
300
00:26:39,576 --> 00:26:45,248
14年ですよ あの日から。

301
00:26:45,248 --> 00:26:50,086
まさか お忘れだったとは
思いませんけど・

302
00:26:50,086 --> 00:26:55,486
今日は お母様と邦江様の
祥月命日です。

303
00:26:57,827 --> 00:27:01,927
今日ぐらい
早く帰ってくると思ったのに。

304
00:27:06,202 --> 00:27:12,642
<玄次郎の母と妹は
無残にも何者かに惨殺された。・

305
00:27:12,642 --> 00:27:19,842
しかし 今に至るも
事件は解決をみていない>

306
00:27:23,620 --> 00:27:32,362
(勝左衛門)ウノ~! 邦江!

307
00:27:32,362 --> 00:27:43,262
・~

308
00:27:53,917 --> 00:27:55,917
失礼致します。

309
00:28:01,658 --> 00:28:05,258
旦那様 今 お店に使いの人が。

310
00:28:08,064 --> 00:28:14,337
来た。 来ました。 鳥飼様。
うん 来たか。

311
00:28:14,337 --> 00:28:16,537
お待ち下さい!
312
00:28:18,541 --> 00:28:21,210
鳥飼様 どうぞ こちらで。
お願い致します。

313
00:28:21,210 --> 00:28:24,247
ばかを言うな。
ここで取り逃がしたら。

314
00:28:24,247 --> 00:28:27,483
(弥之助)旦那。
町方の旦那の姿を見られたら・

315
00:28:27,483 --> 00:28:31,888
何もかも ぶち壊しだ。
あっしが つけます。

316
00:28:31,888 --> 00:28:35,758
任せてもらいやす。
そうか…。

317
00:28:35,758 --> 00:28:40,930
弥之助の店でさ。
はあ 大した景気だな。

318
00:28:40,930 --> 00:28:44,267
まあ 表向きはね。
ん?

319
00:28:44,267 --> 00:28:50,607
中身は 菊屋と同じ 火の車でさ。
建て直しは始めたものの・

320
00:28:50,607 --> 00:28:54,310
普請の金は
高利貸しから借りた金で・

321
00:28:54,310 --> 00:28:58,548
本当に払いきれるかどうか
怪しいもんでさ。

322
00:28:58,548 --> 00:29:04,721
それと 旦那が妙に気になすってた
菊屋の子守り女。

323
00:29:04,721 --> 00:29:10,721
お杉か。
へえ。 あれは弥之助の女でさ。

324
00:29:13,463 --> 00:29:20,203
<その夜 鳥飼の連絡を受けた
玄次郎は菊屋に赴いた>

325
00:29:20,203 --> 00:29:23,539
それで 金の用意はできたのか?

326
00:29:23,539 --> 00:29:26,576
はい。 とりあえず
本家に用立ててもらいました。

327
00:29:26,576 --> 00:29:30,676
万年町の
菊屋政右衛門でございます。

328
00:29:33,182 --> 00:29:35,685
弥之助。
へい。

329
00:29:35,685 --> 00:29:39,555
この使いは どうした?
へえ。 すぐ 後をつけて・

330
00:29:39,555 --> 00:29:41,891
浅草寺の境内で
追いつきましたが・

331
00:29:41,891 --> 00:29:44,794
あちこち引き回されて
一向に らちが明きません。

332
00:29:44,794 --> 00:29:47,997
しかたなく とっ捕まえて
問い詰めたところ・

333
00:29:47,997 --> 00:29:52,735
「顔も知らねえ どっかの男に
小遣いもらって その手紙を・

334
00:29:52,735 --> 00:29:55,638
菊屋の旦那に届けるように
頼まれただけだ」と・

335
00:29:55,638 --> 00:30:00,109
言い張りやして。 お上に嘘の
つけるような男じゃございやせん。

336
00:30:00,109 --> 00:30:03,613
そうか。

337
00:30:03,613 --> 00:30:11,220
それにしても遅いなあ。 そろそろ
何か言ってきそうなもんだが…。

338
00:30:11,220 --> 00:30:13,222
(作太郎)神谷様。

339
00:30:13,222 --> 00:30:17,126
うん? 何だ?

340
00:30:17,126 --> 00:30:20,063
私どもは
お八重の命が助かるなら・

341
00:30:20,063 --> 00:30:22,932
5百両の金も
惜しいとは思っておりません。

342
00:30:22,932 --> 00:30:26,335
取り引きの申し出が
ございましたら・

343
00:30:26,335 --> 00:30:32,141
どうか 私どもの思うように
進めさせて頂きとうございます。

344
00:30:32,141 --> 00:30:37,547
お願いでございます!
(より江)お願い致します。
345
00:30:37,547 --> 00:30:41,084
言うなりに金を払う
というのだな?

346
00:30:41,084 --> 00:30:43,019
はい。

347
00:30:43,019 --> 00:30:47,256
つまり 我々を
信用できんというのか?

348
00:30:47,256 --> 00:30:53,362
去年の暮れ 日本橋で お奉行所の
お指図に従ったあげく・

349
00:30:53,362 --> 00:30:57,133
人質が殺されるという騒動が
ございました。・

350
00:30:57,133 --> 00:30:59,936
あの二の舞は
ご勘弁願いたいのです。

351
00:30:59,936 --> 00:31:04,273
ばかを言うな! あれは
奉行所の裏をかき・

352
00:31:04,273 --> 00:31:08,611
土地の顔役と 陰で話をつけよう
として起きた一件ではないか!

353
00:31:08,611 --> 00:31:11,547
我々に落ち度はない!
そんな事より お八重の命が…。

354
00:31:11,547 --> 00:31:14,984
黙れ 黙れ!
お前らのようなヤツらが・

355
00:31:14,984 --> 00:31:20,884
悪党を のさばらせるんだ!
お上を なんと心得ているんだ!
356
00:31:23,426 --> 00:31:25,928
(お杉)旦那様 ちょっと…。
何だ?

357
00:31:25,928 --> 00:31:30,099
あの… お店のくぐり戸に これが。
いつだ? いつ来たんだ?

358
00:31:30,099 --> 00:31:32,668
さあ? たった今 気が付いて。
(より江)あっ!

359
00:31:32,668 --> 00:31:37,907
(鳥飼)何だ? 見せろ。

360
00:31:37,907 --> 00:31:42,607
「お奉行所に知らせたら
娘を殺す」と言っています。

361
00:31:44,680 --> 00:31:48,251
何とぞ… 何とぞ!
362
00:31:48,251 --> 00:31:52,688
貴様!
鳥飼 落ち着け。

363
00:31:52,688 --> 00:31:59,295
こうなっては 口出しもできぬ。
任せるより ほかはないだろう。

364
00:31:59,295 --> 00:32:01,764
神谷…。

365
00:32:01,764 --> 00:32:06,269
誰が行く?
弥之助親分か。

366
00:32:06,269 --> 00:32:09,105
あっしが? いや あの…。

367
00:32:09,105 --> 00:32:13,905
お願いだ! 弥之助さん。
(より江)お願い致します。

368
00:32:32,662 --> 00:32:34,697
さてと…。

369
00:32:34,697 --> 00:32:38,467
帰るのか?
いても しかたがねえだろう。

370
00:32:38,467 --> 00:32:42,271
(ため息)
そう むくれるな。

371
00:32:42,271 --> 00:32:49,745
面白え芝居だったじゃねえか。
芝居? 何だ? 芝居って。

372
00:32:49,745 --> 00:32:54,845
明日には 幕が引かれる。
お前さんの出場は それからだ。

373
00:33:01,891 --> 00:33:05,391
お気を付けて
お帰り下さいませ。

374
00:33:23,613 --> 00:34:44,113
・~

375
00:34:49,398 --> 00:34:54,570
ここか?
へえ。 多分 菊屋の妾の家でさ。

376
00:34:54,570 --> 00:35:01,570
そうか。 よし 裏に回ってくれ。
一人も逃がすな。
へい。

377
00:35:04,880 --> 00:35:10,519
どうで? とっつぁん。
5百両もの金 拝んだ事あるかい?

378
00:35:10,519 --> 00:35:12,922
いや 初めてだ。
379
00:35:12,922 --> 00:35:18,828
結構重いんだぜ こりゃ。
肩が こちこちだ。

380
00:35:18,828 --> 00:35:24,533
(お糸)うまくいったじゃないか。
これで 菊屋の旦那も・

381
00:35:24,533 --> 00:35:28,371
やっと 一息つけるというもんさ。
危ねえ綱渡りよ。

382
00:35:28,371 --> 00:35:30,339
俺が十手持ちだから
うまくいったものの。

383
00:35:30,339 --> 00:35:35,911
それにしてもな
菊屋の旦那は大した役者よ。

384
00:35:35,911 --> 00:35:39,415
奉行所の役人2人を
まんまと手玉に取って・

385
00:35:39,415 --> 00:35:46,188
だまし抜いたからなあ。
全く 千両役者よ。 ヘヘヘッ!

386
00:35:46,188 --> 00:35:51,027
ガキ どうした?
泣きくたびれて 寝ちまったよ。

387
00:35:51,027 --> 00:35:54,330
ホントに
うるさいったらありゃしない。

388
00:35:54,330 --> 00:35:56,665
(鎌吉)連れていくのか?
(弥之助)ああ。

389
00:35:56,665 --> 00:36:02,038
今夜中に連れ戻さなきゃ
芝居の幕が引けねえ。

390
00:36:02,038 --> 00:36:05,908
ヤツは どうする?
ああ? 直吉か?

391
00:36:05,908 --> 00:36:11,614
そうさなあ
明日にでも始末するか。

392
00:36:11,614 --> 00:36:15,251
な~に あのまま
大川へ放り込んじまえば・

393
00:36:15,251 --> 00:36:22,024
あっさり おだぶつよ。
任しときな。 ヘヘヘヘッ。

394
00:36:22,024 --> 00:36:24,960
・そいつは考えものだぜ。・

395
00:36:24,960 --> 00:36:31,233
人殺しとなると
ずし~んと罪が重くなる。

396
00:36:31,233 --> 00:36:37,673
誰でえ?
弥之助 とんだ猿芝居だったな。

397
00:36:37,673 --> 00:36:44,780
誰に頼まれて仕組んだ狂言だ?
菊屋の亭主か? それとも・

398
00:36:44,780 --> 00:36:49,480
お前さんの入れ知恵か?
野郎 つけやがったな。 くそ~!

399
00:36:52,521 --> 00:36:54,521
くたばれ!

400
00:36:59,895 --> 00:37:02,398
待ちやがれ!
コノヤロー!
401
00:37:02,398 --> 00:37:40,503
・~

402
00:37:40,503 --> 00:37:43,303
あ… あ…。

403
00:37:55,985 --> 00:37:58,220
(板戸を蹴る音)

404
00:37:58,220 --> 00:38:01,123
旦那。
(板戸を蹴る音)

405
00:38:01,123 --> 00:38:08,931
ふん! 弥之さん
とんだ幕切れだったね。 ちっ!

406
00:38:08,931 --> 00:38:13,369
(板戸を蹴る音)
407
00:38:13,369 --> 00:38:16,639
ううっ…。

408
00:38:16,639 --> 00:38:20,442
直吉! おい!

409
00:38:20,442 --> 00:38:24,446
ううっ… ああ…。

410
00:38:24,446 --> 00:38:28,046
大丈夫か? おい 俺だ。 銀蔵だよ。

411
00:38:30,119 --> 00:38:36,892
<事の発端は 菊屋の借金だった。
総額が千両を超えて・

412
00:38:36,892 --> 00:38:40,696
菊屋は
にっちもさっちも行かなくなり・

413
00:38:40,696 --> 00:38:48,103
主人 作太郎は泥棒すらしかねない
心境に追い込まれていた。・

414
00:38:48,103 --> 00:38:52,942
お八重をさらって
本家の金を引き出す狂言を・

415
00:38:52,942 --> 00:38:58,347
百両で請け負ったのは
出入りの岡引 弥之助であり・

416
00:38:58,347 --> 00:39:02,518
その知恵を弥之助に授けたのは・

417
00:39:02,518 --> 00:39:09,518
なんと 17歳の子守り女
お杉であったという>

418
00:39:12,261 --> 00:39:16,432
(鳥飼)
捕らえてみれば 我が子なり。
419
00:39:16,432 --> 00:39:21,070
弥之助が
あんな悪事を働くとはなあ。

420
00:39:21,070 --> 00:39:26,742
おかげで 上役には どなられるし
ご同役には笑われるし。

421
00:39:26,742 --> 00:39:31,914
鳥飼道之丞 一生の不覚。

422
00:39:31,914 --> 00:39:37,720
神谷 お前が解決してくれて
ホントに助かったよ。

423
00:39:37,720 --> 00:39:41,090
はあ… そう言われると
あっしも面目ねえ。

424
00:39:41,090 --> 00:39:44,860
弥之助の本性が見抜けずに
手伝いに行かしたばっかりに・

425
00:39:44,860 --> 00:39:47,696
こいつを
とんだ目に遭わせちまった。

426
00:39:47,696 --> 00:39:51,567
あっしの目は
節穴も同然でえ。

427
00:39:51,567 --> 00:39:56,405
さあ どうぞ。
ところで 旦那…。

428
00:39:56,405 --> 00:40:00,276
旦那は 何で
子守り女のお杉が怪しいと?

429
00:40:00,276 --> 00:40:04,146
お杉は 人さらいの着てた着物が
棒縞だったと言うが・
430
00:40:04,146 --> 00:40:09,051
夕暮れの あの時刻に着物の柄まで
はっきり分かる訳がねえ。

431
00:40:09,051 --> 00:40:14,223
どうも お杉が臭いと その目で
あの女の動きを見てると・

432
00:40:14,223 --> 00:40:18,823
ぼんやり
筋書きが読めてきたんだ。

433
00:40:21,730 --> 00:40:25,567
それより 直吉 お前が
弥之助を臭いと思ったのは・

434
00:40:25,567 --> 00:40:27,936
どういう訳だ?
そりゃあ 旦那。

435
00:40:27,936 --> 00:40:31,140
あの人 はなっから
菊屋を見張っていなかった。

436
00:40:31,140 --> 00:40:33,442
そば屋の2階で
将棋なんか指したりして・

437
00:40:33,442 --> 00:40:37,379
本気じゃないんですよ。 こいつは
何か裏があるなと思って・

438
00:40:37,379 --> 00:40:42,051
後つけたら
ドジ踏んで とっ捕まっちまった。

439
00:40:42,051 --> 00:40:46,055
それで よかったんだ 直吉。
お前さんが片づけちまったら・

440
00:40:46,055 --> 00:40:50,759
俺たちの見せ場がなかった。
なあ 親分。

441
00:40:50,759 --> 00:40:55,664
旦那 それを言っちゃ おしめえだ。

442
00:40:55,664 --> 00:40:59,902
(笑い声)

443
00:40:59,902 --> 00:41:02,604
(おしの)ありがとうございました。
あ~ ごちそうさん!

444
00:41:02,604 --> 00:41:05,140
おう 勝っつぁん うまかったよ。

445
00:41:05,140 --> 00:41:07,109
ありがとうございます。
おしのちゃん またね。

446
00:41:07,109 --> 00:41:10,709
今夜は 泊まって下さいな。
447
00:41:15,584 --> 00:41:18,020
皆さん また おいで下さいましな。

448
00:41:18,020 --> 00:41:21,790
はいよ。 さあ 行こう 行こう。

449
00:41:21,790 --> 00:41:26,729
(鳥飼)これから夜の大立ち回りか。
早く行け。
お気を付けて…。

450
00:41:26,729 --> 00:41:29,965
(直吉)ああ 夜風がいい心持ちだ。

451
00:41:29,965 --> 00:42:01,630
・~

452
00:42:01,630 --> 00:42:11,073
・~
453
00:42:11,073 --> 00:42:23,585
・~

454
00:42:23,585 --> 00:42:32,861
・~

455
00:42:32,861 --> 00:42:41,003
<神谷玄次郎 28歳。
北町奉行所 定町回り同心。・

456
00:42:41,003 --> 00:42:45,741
自他ともに許す
奉行所きっての怠け者だが・

457
00:42:45,741 --> 00:42:50,612
剣は直心影流 酒井良佐の高弟で・

458
00:42:50,612 --> 00:42:54,812
その三羽烏の一人に
数えられていた>

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