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マンデー・ミーティング・メモ

2023 年 3 月 20 日 (Vol.738)

野村総合研究所 リチャード・クー

§SVB 破綻の原因とその対策の評価、FRB の今後の金融政策


先週末に発生した米国第 16 位のシリコンバレーバンク(SVB)の破綻は、米国のみ
ならず、世界の市場に大きなショックをもたらした。実際に SVB 危機は地球の反対側
にあるスイスの金融大手クレディ・スイスにまで飛び火し、同行は同じスイスの競争
相手である UBS に吸収合併されることになった。

そして、危機がここまで広がったのは SVB が抱えていた問題、つまり、リーマンシ


ョック以降の量的緩和がもたらした超低金利下で購入した長期債の含み損が、全ての
金融機関で大なり小なり発生していたからだと思われる。

そこで本レポートは、私自身が米国で 1982 年に起きた中南米債務危機と、日本で


1990 年代に起きた銀行危機に直接関わってきた経験を踏まえて、今回の危機に対して
打ち出されている政策の評価と、今後の注意点について考えてみたい。

§預金額の振れが大きいスタートアップにとって重要な存在だった SVB
まず震源地となった SVB だが、もしも顧客から本当に評価されている銀行があると
すれば、同行は間違いなくその中の一行であった。

つまり同行は、大手行を含む一般の商業銀行があまり積極的ではないスタートアッ
プ企業をメインの顧客とし、多くの分野で、これらの企業の特殊なニーズに対応した
金融サービスを提供していたのである。実際に、スタートアップのメッカであるシリ
コンバレーで、SVB の顧客ではないスタートアップを探す方が難しいくらい、同行は

このレポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的に作成したものではありません。銘柄選択、投資の最終決定は、
ご自身の判断でなさるようお願い致します。このレポートは、野村総合研究所および野村グループから直接提供するという方法でのみ配布しております。
提供されたお客様限りでご使用下さい。このレポートのいかなる部分も一切の権利は野村総合研究所および野村グループに帰属しており、電子的または機
械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送を行わないようお願い致します。
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リチャード・クー 2023.3.20

スタートアップのエコシステムの重要な一部だった。

例えば、スタートアップ企業の預金額は、どうしても振れが大きくなる。これはス
タートアップに投資しているベンチャーキャピタル(VC)が、そのスタートアップが
ある程度の売り上げに達するまで大きな資金を彼等に渡し、またそれを受けたスター
トアップは、(損益無視で)その目標に向けてがむしゃらに売り上げを増やすことが
求められているからである。

その結果、例えば VC からの出資金割り当て(capital allocation)が 6 カ月単位で入


ってくるとすると、それが入った当初は巨額な資金がそのスタートアップの預金に入
ってくるが、その預金は、6 ヶ月後はほとんどゼロになる。そして、次の出資割り当て
を受けてまた預金が急増する、というパターンが繰り返されることになる。

このようなパターンになるのは、VC 側が、そのスタートアップが開発した新商品が
市場に広く受け入れられるものかを確認するためであり、この時のスタートアップは、
とにかく最短期間で同社の商品が大きな売り上げにつながることを証明することが求
められる。

そして、それを証明できた企業は、さらに大きな資金を VC からもらって大きな可
能性を手に入れることになるが、それが証明できなかった企業は身売りするか退場を
迫られることになる。そして、実際に消えていくスタートアップの数は半端ではない。

§預金という負債のリスクが大きい SVB は安全性の高い資産で運用


このような、通常の実業界では考えられないような資金の出入りの激しいスタート
アップを顧客とする SVB は、同行のバランスシートの負債側にある預金に大きな不安
定要因があるなかで、バランスシートの資産側のリスクを最低限に抑える経営戦略を
採った。

つまり SVB の資産側の大きな部分は、一番安全と思われていた米国債や MBS(不動


産担保証券)を満期まで保有するという形で運用されていたのである。

ここは、2008 年のリーマンショックから始まった前回の金融危機と大きく違う点で
ある。前回の震源地は、実際は大変リスクの高いサブプライムローンを含む CDO(債
務担保証券)という商品を、多くの金融機関がこぞって買ってしまったことから始ま
ったからである。

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また、前回そのような事態になったのは、規律が緩んだ格付け会社がそのような CDO
に最上位の格付けを乱発し、その格付けを見た金融機関が安心して CDO を購入してし
まったという問題もあったが、今回はそのような事態は発生していない。

§金融引き締めに伴う国債や MBS の価格低下が今回の危機の引き金に


その一方で今回は、一番安全だと思われていた米国債や MBS の時価が、インフレ退
治に走った FRB(連邦準備制度理事会)の高金利政策を受けて顕著に下がってしまっ
たことが、危機のトリガーとなってしまった。

つまり SVB 側は、満期までの保有が前提であり、また満期になれば 100 ドルの元本


はちゃんと 100 ドルで返ってくるので、保有期間中の金利変動リスクをそれほど注意
していなかったようだが、ここに大きなミスマッチがあることに気付いた一部の預金
者が、同行は危ないということで資金を引き揚げ始めたことで、今回の危機が発生し
てしまったのである。

しかも、昨今のオンライン化で預金の引き出しはパソコン上で瞬時にできてしまい、
銀行の窓口で列に並ぶ必要もなくなったなかで、巨額の資金が 1 日にして同行から流
出してしまった。

つまり、以前の取り付け騒ぎであれば、金融当局が現金輸送車で数台乗り付けて、
銀行の前に集まっている預金者達に大量の現金を見せれば落ち着いたが、オンライン
化が進んだ今では、そのような対応は全く使えなくなっていたのである。

またこうした変化は、銀行危機が発生した時に、当局に与えられた時間が以前に比
べ大幅に縮小していることを意味し、このことは、今回の米国やスイス当局の対応を
より一層難しくした。

§当初はペイオフで対応しようとしたが、すぐに預金の全額保護へ修正
そして今回も、当初の米国当局の対応は決して好ましいものではなかった。つまり
FDIC(連邦預金保険公社)は、通常の銀行の破綻処理マニュアル通りに、ペイオフで
対応しようとしたのである。

これは、預金保険の上限(米国の場合は 25 万ドル)以上の預金については、その銀
行の保有する資産を売却することで得た資金を割り当てるという手法だが、スタート

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アップの預金がほとんどの同行は、90%以上の預金が 25 万ドルの上限を超えていた。
そのようななかで、FDIC がペイオフで対応するという話が出た時は、それこそシリコ
ンバレーの経済は一大パニックに見舞われた。

実際に、ここで当局が SVB にある預金をペイオフという形で処理してしまうと、そ


こから発生する損失と混乱で、米国が得意とするイノベーションが長期にわたって停
滞、または後退してしまうリスクがあったのである。

§長期債保有がもたらした今回のシステミック危機
しかも、SVB と同じような長期債の含み損を抱えている金融機関は他にも多数ある
可能性があり、それらの銀行から大口預金者が一斉に資金を引き揚げようとしたら、
それこそ米国は一瞬にして大きな金融危機に陥る危険性があった。

実際に過去 10 年間に発行されたドル建て長期債のほとんどは、短期金利が 5%前後


になっている今では含み損を抱えており、そのことは、これらの債券を保有している
スイスを含む全世界の金融機関の財務内容を直撃していることになる。

しかも、同様の問題は米国だけでなく、中央銀行がインフレ退治のために政策金利
を上げているユーロ圏やイギリスでも発生している、

そのように、多くの銀行が同じ問題を抱えているシステミック危機で、SVB をペイ
オフで対応しようとすると、全世界の大口預金者が不安になり、またそうなると全世
界の銀行システムが不安定化しかねなかった。

§リーマンショックの経験を活かした預金全額保護への軌道修正
おそらく、このような懸念が FDIC、FRB、そして OCC(米通貨監督庁)をして、今
回は預金を全額保護するという正しい政策に向かわせたのだと思われる。

しかもその政策変更が、週明け後のアジアで市場が始まる直前の時点で発表された
ということは、当局も前述の時間的余裕がないことに気付き、超スピードで当初のペ
イオフから預金の全額保護に政策をシフトしたものと思われる。

このように FDIC がマニュアル通りにペイオフに動くのを 1 日で撤回したのは、彼


等がリーマンショックの経験を活かしたからだと言えよう。そのような政策シフトの

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発表が遅れると、事態はそれこそ、とてつもない速度で悪化してしまうからだ。

こうして見ると、今回の SVB の資産側の構成はリーマン・ブラザーズとは違い、本


来はリスクの低い米国債や MBS だったが、同じような問題を多くの金融機関が抱えて
いるシステミックな危機であるという点では、リーマンと同じであったと言えよう。

§リーマンショックとそれがもたらした世界金融危機の本質
リーマンショックの本質は、破綻したリーマン・ブラザーズが大き過ぎたから大問
題になったのではなく、同行以外の金融機関も皆、同じ問題を抱えていたことが、あ
のような悲惨な事態をもたらした主因であった。つまり、どの金融機関も価格が激減
した CDO を大量に保有していた結果、全ての金融機関が相手先金融機関の財務の健全
性に疑念を持たざるを得なくなり、そこで金融界内の相互不信が急拡大してしまった
のである。

図表 1:FRB からの銀行貸出の推移(月中平均、2023 年 1 月まで)


(10億ドル、月中平均)
700 6988億ドル

600

500

400

300

1245億ドル
200

FRBからの
100
銀行貸出の合計

0
1959 1963 1967 1971 1975 1979 1983 1987 1991 1995 1999 2003 2007 2011 2015 2019 2023

(出所)FRB, Fredのデータより野村総合研究所作成 (年)

その結果、リーマンショック時は、他行を信用できなくなった多くの銀行が余剰資
金をインターバンク市場に放出しようとせず、インターバンク市場が機能不全に陥り、
決済が出来なくなった銀行は、FRB から資金を借りざるを得なくなった。

その結果、通常は 2 億ドル程度の FRB から民間銀行への貸し出し(total borrowings)

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は、この時最大で 6988 億ドルまでおよそ 3500 倍にもなるという、とんでもない事態


が発生した(図表 1)。

今回も、FRB による銀行への貸出は急増しており、前述の total borrowings のなかに


含まれるプライマリー・クレジットの残高は 3 月 8 日時点では 45.8 億ドルだったのが、
SVB の破綻を受けた 1 週間後の 3 月 15 日時点では過去最大の 1528.5 億ドルと 33 倍に
まで拡大している(図表 2)。

図表 2:FRB からの銀行貸出(うちプライマリー・クレジット)の推移
180 (10億ドル、水曜日時点)

160 2023年3月15日
1528.5億ドル
140

120

100

80

60

40

20

0
03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23
(出所)FRB, Fredのデータより野村総合研究所作成 (年)

また、これとは別に、FRB が急遽、銀行に融資を行うために 3 月 12 日に設立したバ


ンク・ターム・ファンディング・プログラム(BTFP)の残高が 15 日時点で 119 億ドル
あるほか、SVB などの破綻に伴って FDIC が設立したブリッジバンクへの貸出も 1428
億ドル発生している。これらの数字は、今回の危機が個別行の問題ではなく、多くの
銀行が同じ問題を抱えているシステミック危機であることを示している。

つまり、もしも、問題を抱えているのがリーマン・ブラザーズや SVB だけだったら、


金融界全体が相互不信に陥るという状況にはならなかったはずであり、またその場合
は、1984 年に倒産した当時米国第 7 位のコンチネンタル・イリノイ銀行のように、当
局が瞬時に国有化するといった手法で問題を抑え込むことが出来た。

ところが、そのような手法は、多くの銀行が同じ問題を抱えている時は使えず、そ

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のような事態になったら、当局は全行を救うことを考えなければならないのである。

その観点から見ると、今回のクレディ・スイス救済劇で、同行が発行した AT1 債(そ


の他 Tier1 債)の保有者が大きな損失を被ることになっているというのは、ベストの政
策とは言えないだろう。SVB のケースでも、米国当局は同行が発行した一部の債券は
保証の対象外だとしている。しかし、そのような政策を採ると、全世界で同様な債券
を持っている投資家が不安になり、そのような債券を買わなくなると、資本の調達が
難しくなった発行側の銀行が貸し渋りに走る可能性が出てくるからだ。

§79 年末に始まる S&L 問題も金融引き締めによる含み損の発生が引き金


それでは、運用資産自体は低リスクの商品でも、マクロ的な環境の変化(今回はイ
ンフレの台頭)で当局が政策金利を上げた結果、業界全体で大きな含み損が発生して
しまったケースが過去にあったかだが、1980 年代に発生した貯蓄貸付組合(S&L)の
危機がまさにそのようなケースであった。

つまり、1979 年 10 月に当時のボルカーFRB 議長が、既に 2 桁になっていた米国の


インフレ率を抑えるために強烈な金融引き締めに走るが、その結果、同国の短期金利
(FF レート)は一時 22%まで上昇した。

ところが S&L という業界は、もともと住宅ローンをメインの業務とすることが法律


で決められており、しかも当時の同ローンは 30 年の固定金利がほとんどであった。し
かも当時の住宅ローン金利は 7%前後であった。

短期の資金調達コストが最高 22%まで上がった一方で、資産側の利回りは 7%しかな


かったということは、これらの S&L はその時点で全て実質破綻していたことになる。

しかしこれは、S&L の経営判断が間違ったから起きたのではなく、彼等のビジネス
モデルが法律でそのように規定されていたということが原因であった。

§インフレの鎮静化によって S&L 問題は一旦は落ち着きを取り戻すが・・・


そこで当時の米国当局は、実際は破綻しているにも拘わらず、これらの S&L は大丈
夫だという「支払能力証明書(certificate of solvency)」を発行して、取り付け騒ぎが起
きるのを防いだ。

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つまり当時の当局者の判断は、FRB の金融引き締めでインフレが落ちつけば短期金
利は下がり、そうなれば逆ザヤは解消され、これらの S&L の財務も健全化するので、
それまでの時間稼ぎが必要だというものであった。

この手法は効を奏し、当時大きく騒がれた S&L 問題は落ち着きを取り戻し、数年後


に(後で述べる中南米債務危機で)金利が下がって来た時点で、当初の問題は解消に
向かい始めた。

§規制緩和によるハイリスク投資が 80 年代末の S&L 危機再来につながる


また当局は、このような事態に S&L が陥ったのは、法律で決められた彼等の業務が
あまりにも限られていたからだと感じ、S&L も商業銀行と同じように住宅ローン以外
にも多くの業務に携われるようにした。

ところが、実質的に破綻状態にあり、株価がほぼ無価値となっているこれらの S&L
の一部は、多くの業務が出来るようになったことを利用して、ハイリスク・ハイリター
ンの投資に走った。

彼等は、ハイリスクの投資で大きく儲かれば、その利益は自分達のポケットに入る
が、損をすれば、それは連邦貯蓄貸付保険公社(FSLIC)の負担になることに目を付け
たのである。

これらのハイリスク・ハイリターンに走った S&L が 80 年代末期に次々と問題を起


こし、これが 1989 年の 2 回目の S&L 危機と言われる事態につながった。ここで政府
は信託整理公社(RTC)という清算機関を作って、かなりの公的資金をつぎ込んで、一
気に 747 行の S&L を清算処理することになったのである。

この RTC の苦い経験から、FRB、FDIC そして OCC の銀行検査官は全ての銀行に対


する検査を厳格にするようになるが、ここで振り子が反対に振れたことが、1991~92
年の米国経済を直撃した、銀行の貸し渋りによる「検査官不況」をもたらすことにな
った。

§多くの金融機関が含み損の問題を抱える今は預金の全額保護が正解
今回の SVB に始まる問題も、79 年当時の S&L 問題と同じく、FRB がインフレ退治の
ために急激に政策金利を上げたことが、直接的な原因であった。しかも両者とも資産

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側は安全性の高い国債や住宅ローンであり、特にハイリスクの商品に投資したわけで
もなかったことも共通している。

現時点で保有債券の評価損が主因で経営が行き詰ったのは SVB だけのようだが、こ


の問題は固定金利の長期債を保有している全ての金融機関に共通していることを考え
ると、今回のように早い時点で預金の全額保証を打ち出したのは、正解であったと言
えよう。

つまり、同様の問題を抱えている金融機関が多数存在する可能性が高い場合は、最
初から、当局が預金の全額保護を打ち出すことで、SVB で発生したような取り付け騒
ぎが発生するのを未然に防ぐことが出来るからだ。

その意味では、何故、今回のスイス当局が当初からその方向に動かなかったのかが
疑問である。もしも当初からそのように動いていれば、その後のクレディ・スイスか
らの資金流出は避けられた可能性があるからだ。

また今回の預金全額保護の発表に、イエレン財務長官だけでなく、バイデン大統領
まで言及しているということは、彼等も今回の SVB で発生した問題が他の金融機関で
も発生しかねないことに気付いているからだと思われる。

当局としては、まず預金の全額保護を打ち出して時間を稼ぎ、その間にインフレを
抑制し、その結果、金利も下がってくれば、この問題は最終的に乗り越えることが出
来ると読んでいるものと思われる。

そしてその間は、S&L 救済の時に発生したモラルハザード問題(=救済中の金融機
関がハイリスク・ハイリターンの投資に走ってしまうリスク)を最小限に抑えるべく、
当局による金融機関の検査をしっかり実施することが望まれる。

§システミック危機時のモラルハザード論は百害あって一利なし
これに対し、一部の欧米の論者からは、当局が預金の全額保護を打ち出すと、預金
者からのチェックがなくなった銀行の経営が甘くなるので、そのような保護は止める
べきだという、上述とは別の意味でのモラルハザード論が出てきている。

これは、1990 年代後半の日本の銀行危機の時に、とにかくペイオフを実施すべきだ
と主張した竹中平蔵氏と同じ発想だが、このような考え方は、多くの銀行が同じ問題

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を抱えているシステミック危機では混乱を助長するだけであり、百害あって一利なし
である。

図表 3:ペイオフの実施が困難なほど低かった 2002 年当時の邦銀の※信用格付け

ムーディーズによる銀行財務格付
A
- ● ●
+
B ●
- ● ●
+
C
-
+
D
- ● ●
+ ● ●
E ● ● ● ● ● ● ● ● ●

バ J み
ン P ず

ク モ メ ほ み U
シ バ 東 三 三 住 央
・ ル ロ U み コ あ ず F

テ ン 京 井 大 新 菱 友 三

オ ガ ン F ず さ ほ J
ク 三 住 和 生 信 信 井
ブ ン ・ J ほ ポ ひ 信 信
バ ・ 菱 友 銀 銀 託 託 信
・ ・ バ 銀 銀 レ 銀 託 託

ン ワ 銀 銀 行 行 銀 銀 託
ア チ ン 行 行 行 銀 銀
ェー

ク ン 行 行 行 行 銀
メ ク ト 行 行

リ 銀
カ ス 行

(注)2002年11月1日時点。※は無登録の格付業者が付与した格付け。
(出所)Moody’sより野村総合研究所作成

実際に、当時の邦銀の格付けは図表 3 にあるように、最低格付けの「※D」と「※E」
しかなく、このような状態でペイオフを実施したら、大口預金者は安心できる格付け
を持った邦銀が一行もないなかで、大パニックになっていた可能性があったのである。

(注)※は無登録の格付業者が付与した格付け。

ところが、当時の竹中氏のマスコミ世論に対する影響力は大きく、当局側も銀行側
もペイオフ延期を言い出せない状況が続き、事態の悪化を招いた。

しかし、最後のギリギリのところで日本でもペイオフ延期の必要性が認知され、前
述の竹中氏が金融担当大臣になった時もペイオフは 1 回も実施されなかった。

また、今回も欧米のマスコミで「当局の銀行検査官は居眠りをしていたのか!」と
言った批判が多数出ているが、そのように叩かれた検査官が逆の極端に振れて、1991

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~92 年の米国で発生したような貸し渋りが起きないようにすることも注意が必要だろ
う。

§どこの国でも不人気な銀行救済には高い専門性と勇気が必要
ところで、この銀行救済という作業はどの国でも大変不人気な政策であり、実際に
救済に関わった当局者も多くを語ろうとしない傾向が強い。銀行救済は、それ以前の
銀行行政の失敗を意味するからだ。その結果、過去の教訓が正しく次世代に伝わらず、
たまたま危機の現場にいた担当者の資質や見識によって、その対応策が大きく振れて
しまうことが多い。

しかも、銀行救済の正しい実施には、かなりの専門知識と勇気が求められる。

例えば、2008 年 9 月のリーマンショックは、欧米だけで 1600 万人が失業する世界金


融危機というとんでもない事態をもたらすが、当時の登場人物が少し違っていたら、
必ずしもあのような悲惨な事態にならなくても済んだ可能性はあった。

というのも、同ショックの半年前にベア・スターンズという米国の大手投資銀行が
破綻に追い込まれるが、当時の米国財務省には、ロバート・スティール氏というこの
種の問題にどう対応すべきかという見識を持ち合わせていた人物がいた。

その同氏は、ベア・スターンズ社の株を一株 10 ドル(当初のオファーは 2 ドル)で


JP モルガン社が購入するようにし、またベア社の損失が当初の想定を超えた場合は、
米国政府がそれなりの補填(backstop)をするというスキームを作った。このスキーム
に則ってベア社が処理されたため、同社の破綻から大きな金融危機が発生することは
なかった。

ところが、同氏は 2008 年 7 月に財務省を辞めてしまい、リーマン・ブラザーズの問


題が表面化した同年 9 月には、そのようなスキームを作って強く推し進める人物が当
局内にいなかった。そしてこのことが、その直後に発生した世界金融危機という大き
な悲劇をもたらす一因となったのである。

§表に出ることなく時間をかけて処理された 1982 年の中南米債務危機


またリーマンショックは、CDO を保有する全世界の何百という金融機関が関わって
いたが、同様のことは、シンジケートローンに参加した全世界の何百という銀行が関

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わっていた 1982 年の中南米債務危機でも発生していた。

この時は、同年 8 月のメキシコを皮切りに、中南米の全ての国がデフォルト状態に
なり、同地域に大きな融資をしていた大手米銀 8 行のうち 7 行が債務超過に陥るとい
う、リーマンショック顔負けの一大危機であった。

ところが、この危機に直面したボルカーFRB 議長(当時)は、FRB の実働部隊であ


るニューヨーク連銀に当初から次々と指示を出し、シンジケートローン担当だった私
は、その指示を受けた一人であった(この指示の内容については拙著 Pursued Economy:
Understanding and Overcoming the Challenging New Realities for Advanced Economies, John
Wiley & Sons, 2022 の第 8 章を参照)。

そして、同議長の適切な指示が実践された結果、大手米銀の大半が実質破綻に陥っ
ていたにも拘わらず、経済にも金融市場にも大きな混乱は発生しなかった。そして、
時間こそ 10 年近くかかったものの、納税者のカネは一銭も使わず、大半の国民は巨大
な銀行危機が起きていることさえ知らないまま、この問題は解消されたのである。

§中南米債務危機の教訓は 2008 年の FRB 内に残っていなかった


しかし 2008 年の時点で、1982 年当時のボルカーFRB 議長が、どうやって何百行と
ある世界中の銀行を一つに束ねて巨大な護送船団を作り、この問題を克服したかを知
っている人物は、FRB 内に一人もいなかった。

実際に私が 2010 年に、FRB の幹部に当時のボルカー議長が私を含むニューヨーク連


銀 の スタ ッフ にどのような指示を出していたかの話をしたら、みんなびっくりして
「我々FRB が 1982 年にそんなことをやっていた事実を我々は全く知らなかった」と言
ったのである。

それもそのはずで、中南米債務危機発生時の私は、大学院の博士課程を終えてニュー
ヨーク連銀に入った「新卒一年生」だったが、同危機対策の陣頭指揮にあたっていた
人々は当然、私よりずっと年上であった。そして、これらの人達は(私を含めて)その
26 年後に発生したリーマンショック時には誰一人 FRB 内に残っていなかったのであ
る。

その結果、2008 年時点で 1982 年に発生した中南米債務危機の教訓やノウハウ(=


institutional memory)は FRB 内で完全に失われており、またそのことが世界金融危機を

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野村総合研究所 マンデー・ミーティング・メモ
リチャード・クー 2023.3.20

あそこまで大きくしてしまったのである。

§今回の素早い政策対応につながったリーマンショック時の教訓
S&L の問題は今から 43 年前に発生しており、当時の失敗やその教訓を覚えている人
は少ない。

ただ今回は、世界金融危機に繋がったリーマンショックから 14 年しか経っておらず、
あの当時の初動のまずさが問題をあれだけ大きくしてしまったという教訓は、預金全
額保護が極めて早い段階で打ち出されたという形で活かされたと思われる。

日本でも「住専国会」と言われるほど、銀行救済には反発があったように、この種の
政策はどの国でも大変不人気であり、今回の米国の措置に対しても、既に野党共和党
から多くの批判が出て来ている。

また、そのような攻撃に対し不慣れな担当者が不適切な発言をして、マーケットが
動揺するということも今後発生しよう。ただ、米国当局が今回の件を SVB 固有の問題
と捉えず、他にも保有している長期債に含み損が発生している金融機関があるかもし
れないという前提で預金の全額保護を打ち出したことは評価に値しよう。

§金融引き締めによる長期債の含み損リスクを FRB は軽視?


ただここで一つ気になるのは、わずか数ヶ月前までパウエル議長を含む FRB 幹部が、
当局が急速に金融を引き締めても、米国の金融機関はリーマンショック時に比べ、ず
っと体力が向上しているので、リーマンショックのような危機が起きる可能性は低い
と発言していた点である。

このことは、当局も政策金利を大幅に上げたら、長期債を保有している多くの金融
機関に含み損が発生し、またそのことが、今回のような金融不安につながるリスクを
過小評価していたことを示唆している。

今から 1 年前の FRB はインフレリスクを過小評価したということで叩かれたが、そ


れを受けた彼等は急速に政策金利を上げて、その遅れを取り戻そうとした。今回の件
で FRB が金融システムの健全性を過大評価していたと叩かれたら、彼等はその間違い
を正そうと、自分達が担当している民間銀行の検査を大幅に厳格化しかねない。

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野村総合研究所 マンデー・ミーティング・メモ
リチャード・クー 2023.3.20

しかしそうなったら、30 年前の S&L 危機の教訓が生かされず、米銀の貸し渋りが発


生し、90 年代の前半に米国で発生した「検査官不況」のようなことが起きかねない。

そのような展開は、インフレ退治を最優先する FRB にとっては必ずしも悪いことで


はないのかもしれないが、銀行の貸し渋りは経済的弱者を直撃するところがあり、決
して望ましいことではない。

§金融引き締めの効果を落とした量的緩和による流動性供給
また、今回の銀行危機をマクロ的な観点から見ると、FRB を含む多くの中央銀行が
10 年以上も量的緩和で長期債を買い続けたことで、債券価格が長期にわたって異常な
ほど上がってしまったのも、今回の危機の一大要因であったと言えよう。

しかも、その量的緩和で巨額な流動性が市中に供給された結果、銀行はいくらでも
資金を貸せるようになり、その結果、FRB がいくら金利を上げても、金融がなかなか
引き締まらないという状態が発生した。

例えば昨年 10 月ごろまでの FRB のベージュブック(地区連銀経済報告)には、過


剰準備が溢れている民間銀行は、FRB が政策金利を上げているにも拘わらず、熾烈な
貸し出し競争を演じ、なかには貸し出し基準を緩めてまで貸し出しを増やそうとして
いる銀行があったことが報告されている。

§長期にわたる量的緩和とそれをオフセットするための急激な利上げが
長期債の含み損を増幅させた
しかし、民間銀行がそのような行動を取っていると、FRB は通常(=量的緩和をし
なかった場合)よりもずっと高いところまで金利を上げないと金融引き締めの効果は
期待できないことになる。そして実際に FRB は、当初の市場が想定していた利上げの
最終到達点(ターミナルレート)を大幅に上回るところまで、政策金利を上げてきた。

つまり通常の状態なら、例えば金利を 3%上げれば充分な引き締め効果が期待できて
も、量的緩和を実施した後の今回は、金利を 5%かそれ以上、上げないと同様な効果は
期待できないということである。

しかし短期金利をそこまで上げると、それまでの量的緩和で高騰していた長期債の
価格は暴落し、今回の SVB のような問題が起きてしまうのである。つまり、FRB が量
的緩和をやっていなかったら、短期金利があそこまで上がる理由も、長期債の価格が

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野村総合研究所 マンデー・ミーティング・メモ
リチャード・クー 2023.3.20

あそこまで下がる理由もなかった可能性があるのである。

また、FRB は量的緩和の解除のため、量的引き締めを昨年 6 月から実施しているが、


これも市中の債券の供給を増やすことで債券の価格を押し下げることになる。

これらの問題はどれも、量的緩和を実施した後に金融政策を正常化することが如何
に難しいかを示している。

§FRB にとって今後の金融政策をどうするかは難しい課題だが・・・
ところで市場の注目点は、今回表面化した銀行危機が今後の FRB の金融政策にどの
ような影響を及ぼすかだが、実のところ、当の FRB もこの件では相当困っていると思
われる。

例えば、SVB の問題が表面化したことで、市場では FRB の利上げにブレーキがかか


るのではないかとの思惑から長期債が買われ、長期金利は直近のピークである 3 月 2
日から 0.6%ポイント以上も下がった。

この長期金利の下落は、SVB や同行と同じ問題を抱えている銀行にはプラスだが、
インフレを抑え込みたい FRB にとっては大きなマイナスである。今回の金融引き締め
は、巨額な過剰準備が市中に溢れているなかで、短期金利の引き上げはほとんど引き
締め効果を持たず、長期金利の上昇だけが住宅ローンなどを介して効いているからだ。

そのようななかで長期金利が下がると、インフレ抑制に必要な金融引き締めの効果
がその分、薄れてしまうのである。

従って、銀行問題で長期債が買われれば買われるほど、インフレ抑制を目指す FRB
はさらなる政策金利の引き上げを強いられるという、大変困った事態に直面すること
になる。

§インフレが収まって金利が下がらないと銀行問題も解決しない
ただ、最終的にはインフレの台頭が今回の金融引き締めをもたらしたのであり、そ
のインフレを抑え込まないことには金利は下がらず、金利が下がらないと今回の銀行
問題も解決しないことになる。

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野村総合研究所 マンデー・ミーティング・メモ
リチャード・クー 2023.3.20

しかも、現時点でのインフレ率が 6.0%もあり、労働市場も依然として逼迫している
となると、FRB としても安易に金融引き締めを止めるわけにはいかない。ここでイン
フレ抑制に失敗すると後でもっと厳しい金融引き締めを強いられることになるからだ。

実際に FRB と同じような状況にある ECB(欧州中央銀行)は、彼等が前回や前々回


の理事会後の記者会見で約束した通り、今回 3 月の理事会で 0.5%ポイントの利上げを
実施している。

§ペースの調整はあっても FRB が金融引き締めを止める可能性は低い


もちろん過去に、インフレ退治中の FRB が金融危機に直面して政策金利を下げた例
はある。例えば、前述の 1982 年の中南米債務危機に直面した FRB は、その直後から
政策金利を大幅に下げている。

ただ、この時は 1979 年 10 月から始まった強烈な金融引き締めを受けて短期金利は


22%まで上昇し、その結果、その 3 年後の 1982 年 10 月の時点で、米国の失業率は 10.4%
まで上がり、インフレ率は 5.1%まで下がっていた。このようなインフレ退治の実績が
あったからこそ、当時の FRB は政策金利を下げることが出来たのである。

パウエル FRB 議長は、事あるごとにボルカー元 FRB 議長を引き合いにして自身の


インフレファイターとしてのイメージアップを図っているが、そのような議長にとっ
て、失業率が 3.6%でインフレ率が 6.0%の現時点で、一部の米銀に問題が発生したから
と言って金融政策を大きく変えることは難しいのではないかと思われる。

こうして見ると、今回の SVB から始まる銀行危機を受けて、FRB が若干利上げの


ペースを調整することはあっても、インフレが落ち着くまでは、よほど貸し渋りのよ
うな状態が起きない限り、金融引き締めを止めたり、金融緩和に向かったりする可能
性は低いと思われる。

このレポートの内 容は、リチャード・クー個人 の見解 に基づいています。ご質問 、送 付・配布 先 の変 更等 につきまして


は、レポート配信元である野村グループの各部・各支店へご連絡ください。

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野村総合研究所 マンデー・ミーティング・メモ
リチャード・クー 2023.3.20

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本資料は、NIplc により英国において投資リサーチとして配布することを認められたものです。NIplc は、英国のプルーデンス規制機構に


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料は、英国の適用される規則の意味する範囲での個人的な推奨を成すものではなく、あるいは個々の投資家の特定の投資目的、財務状
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下の有限責任会社として組織された会社であり、ドイツ連邦金融監督庁(BaFin)の監督下にあります。

本資料は、香港証券先物委員会の監督下にある NIHK によって、香港での配布が認められたものです。本資料は、香港で適用される規


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ん。本資料は、オーストラリアで ASIC の監督下にある NAL によってオーストラリアでの配布が認められたものです。また、本資料は NSM
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定をする前に、自身の特定の投資目的、金融の状況又は特定の必要性を考慮する必要があります。
本資料は米国においては 1933 年証券法のレギュレーション S の条項で禁止されていない限り、米国登録ブローカー・ディーラーである
NSI により配布されます。NSI は 1934 年証券取引所法規則 15a-6 に従い、その内容に対する責任を負っております。本資料を作成した
会社は、野村グループ内の関連会社が、顧客が入手可能な複製を作成することを許可しています。

野村サウジアラビア、NIplc、あるいは他の野村グループ関連会社はサウジアラビア王国(「サウジアラビア」)での(資本市場庁が定めると
ころの、)「オーソライズド・パーソンズ」、「エグゼンプト・パーソンズ」、または「インスティテューションズ」以外の者への本資料の配布、アラ
ブ首長国連邦(「UAE」)においては、(ドバイ金融サービス機構が定めるところの、)「マーケット・カウンターパーティー」または「専門的顧
客」以外の者への配布、また、カタール国の(カタール金融センター規制機構が定めるところの、)「マーケット・カウンターパーティー」、また
は「ビジネス・カスタマーズ」以外の者への配布を認めておりません。サウジアラビアおいては、「オーソライズド・パーソンズ」、「エグゼンプ

このレポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的に作成したものではありません。銘柄選択、投資の最終決定は、
ご自身の判断でなさるようお願い致します。このレポートは、野村総合研究所および野村グループから直接提供するという方法でのみ配布しております。
提供されたお客様限りでご使用下さい。このレポートのいかなる部分も一切の権利は野村総合研究所および野村グループに帰属しており、電子的または機
械的な方法を問わず、いかなる目的であれ、無断で複製または転送を行わないようお願い致します。

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野村総合研究所 マンデー・ミーティング・メモ
リチャード・クー 2023.3.20

ト・パーソンズ」、または「インスティテューションズ」以外の者、UAE の「マーケット・カウンターパーティー」または「専門的顧客」以外の者、
あるいはカタールの「マーケット・カウンターパーティー」、または「ビジネス・カスタマーズ」以外の者を対象に本資料ならびにそのいかなる
複製の作成、配信、配布を行うことは直接・間接を問わず、係る権限を持つ者以外が行うことはできません。この規定に従わないと、サウ
ジアラビア、UAE、あるいはカタールの法律に違反する行為となる場合があります。

インドネシア共和国の法律に基づいて公募増資を行う場合、本資料はインドネシア国内での配布、インドネシア共和国域内での流通やイ
ンドネシア国民(居住地または所在地にかかわらず)への流通、もしくはインドネシアの法人や居住者への提供はできません。本資料に言
及されている証券のインドネシア国内における募集もしくは販売、インドネシア国民(居住地または所在地にかかわらず)への募集もしくは
販売、あるいはインドネシア共和国の法律に基づいて公募増資を行う場合におけるインドネシアの法人、居住者への販売もしくは売却は
行われない場合があります。
台湾上場企業に関するレポートおよび台湾所属アナリスト作成のレポートについて:本資料は参考情報の提供だけを目的としています。
お客様ご自身で投資リスクを独自に評価し、投資判断に単独で責任を負っていただく必要があります。本資料のいかなる部分についても、
野村グループから事前に書面で承認を得ることなく、報道機関あるいはその他の誰であっても複製あるいは引用することを禁じます。
「Operational Regulations Governing Securities Firms Recommending Trades in Securities to Customer」及びまたはその他の台湾
の法令・規則に基づき、お客様が本資料を関係者、関係会社およびその他の第三者を含む他者へ提供すること、あるいは本資料を用い
て利益相反があるかもしれない活動に従事することを禁じます。NIHK 台湾支店が執行できない証券または商品に関する情報は、情報の
提供だけを目的としたものであり、投資の推奨または勧誘を意図したものではありません。

本資料は、野村グループ若しくはその子会社・関連会社(以下総称して「オフショア会社」)が作成したものであり、銘柄のリサーチ提供に
ついて中華人民共和国(「中国」(この資料では、香港、マカオ、台湾を除く))からライセンスを受けていません。本リサーチ・レポートは中
国国内での配布を承認されていない、もしくは配布を意図されていません。中国 A 株に関連する分析(もしあれば)は、中国に居住もしくは
所在する者を対象に作成されたものではありません。利用者は、投資判断を行うに当たり、本リサーチ・レポートに含まれる如何なる情報
にも依拠してはいけません。また、オフショア会社はこれに関して責任を負いません。

本資料のいかなる部分についても、野村グループ会社から事前に書面で同意を得ることなく、(i)その形態あるいは方法の如何にかかわら
ず複製、撮影、再生成、または重複することあるいは(ii)再配信、再発行、再配布することを禁じます。本資料が、電子メール等によって電
子的に配布された場合には、情報の傍受、変造、紛失、破壊、あるいは遅延もしくは不完全な状態での受信、またはウィルスへの感染の
可能性があることから、安全あるいは誤りがない旨の保証は致しかねます。従いまして、送信者は電子的に送信したために発生する可能
性のある本資料の内容の誤りあるいは欠落に対する責任(過失による、そうでなければ、全体または一部において)を負いません。確認を
必要とされる場合には、印刷された文書をご請求下さい。

日本で求められるディスクレイマー

無登録格付に関する説明書
格付会社に対し、市場の公正性・透明性の確保の観点から、金融商品取引法に基づく信用格付業者の登録制が導入されております。
これに伴い、金融商品取引業者等は、無登録の格付業者が付与した格付を利用して勧誘を行う場合、金融商品取引法により、無登録の
格付業者が付与した格付(以下「無登録格付」といいます)である旨及び登録の意義等を顧客に告げなければならないこととされておりま
す。

○登録の意義について
登録を受けた信用格付業者は、①誠実義務、②利益相反防止・格付プロセスの公正性確保等の業務管理体制の整備義務、③格付対象
の証券を保有している場合の格付付与の禁止、④格付方針等の作成及び公表・説明書類の公衆縦覧等の情報開示義務等の規制を受
けるとともに、報告徴求・立入検査、業務改善命令等の金融庁の監督を受けることとなりますが、無登録の格付業者は、これらの規制・監
督を受けておりません。

○格付業者について
スタンダード&プアーズ
・格付業者グループの呼称等について
格付業者グループの呼称:
S&P グローバル・レーティング(以下「S&P」といいます。)
グループ内の信用格付業者の名称及び登録番号:
S&P グローバル・レーティング・ジャパン株式会社(金融庁長官(格付)第5号)
・信用格付を付与するために用いる方針及び方法の概要に関する情報の入手方法について
S&P グローバル・レーティング・ジャパン株式会社のホームページ(http://www.spglobal.co.jp/ratings)の「ライブラリ・規制関連」の「無登
録格付け情報」(http://www.spglobal.co.jp/unregistered)に掲載されております。
・信用格付の前提、意義及び限界について
S&P の信用格付は、発行体または特定の債務の将来の信用力に関する現時点における意見であり、発行体または特定の債務が債務不
履行に陥る確率を示した指標ではなく、信用力を保証するものでもありません。また、信用格付は、証券の購入、売却または保有を推奨
するものでなく、債務の市場流動性や流通市場での価格を示すものでもありません。
信用格付は、業績や外部環境の変化、裏付け資産のパフォーマンスやカウンターパーティの信用力変化など、さまざまな要因により変動
する可能性があります。
S&P は、信頼しうると判断した情報源から提供された情報を利用して格付分析を行っており、格付意見に達することができるだけの十分
な品質および量の情報が備わっていると考えられる場合にのみ信用格付を付与します。しかしながら、S&P は、発行体やその他の第三
者から提供された情報について、監査、デュー・デリジェンスまたは独自の検証を行っておらず、また、格付付与に利用した情報や、かか

このレポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたもので、投資勧誘を目的に作成したものではありません。銘柄選択、投資の最終決定は、
ご自身の判断でなさるようお願い致します。このレポートは、野村総合研究所および野村グループから直接提供するという方法でのみ配布しております。
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リチャード・クー 2023.3.20

る情報の利用により得られた結果の正確性、完全性、適時性を保証するものではありません。さらに、信用格付によっては、利用可能なヒ
ストリカルデータが限定的であることに起因する潜在的なリスクが存在する場合もあることに留意する必要があります。
この情報は、2023 年 1 月 1 日現在、当社が信頼できると考える情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を当社が保証する
ものではありません。詳しくは上記 S&P グローバル・レーティング・ジャパン株式会社のホームページをご覧ください。

ムーディーズ
・格付業者グループの呼称等について
格付業者グループの呼称:
ムーディーズ・インベスターズ・サービス(以下「ムーディーズ」といいます。)
グループ内の信用格付業者の名称及び登録番号:
ムーディーズ・ジャパン株式会社(金融庁長官(格付)第2号)
・信用格付を付与するために用いる方針及び方法の概要に関する情報の入手方法について
ムーディーズ・ジャパン株式会社のウェブサイト(https://ratings.moodys.com/japan/ratings-news)の「規制関連」のタブ下にある「開示」
をクリックした後に表示されるページの「無登録格付説明関連」の欄に掲載されております。
・信用格付の前提、意義及び限界について
ムーディーズの信用格付は、事業体、与信契約、債務又は債務類似証券の将来の相対的信用リスクについての、現時点の意見です。
ムーディーズは、信用リスクを、事業体が契約上・財務上の義務を期日に履行できないリスク及びデフォルト事由が発生した場合に見込ま
れるあらゆる種類の財産的損失と定義しています。
信用格付は、流動性リスク、市場リスク、価格変動性及びその他のリスクについて言及するものではありません。また、信用格付は、投資
又は財務に関する助言を構成するものではなく、特定の証券の購入、売却、又は保有を推奨するものではありません。ムーディーズは、
いかなる形式又は方法によっても、これらの格付若しくはその他の意見又は情報の正確性、適時性、完全性、商品性及び特定の目的へ
の適合性について、明示的、黙示的を問わず、いかなる保証も行っていません。
ムーディーズは、信用格付に関する信用評価を、発行体から取得した情報、公表情報を基礎として行っております。ムーディーズは、これ
らの情報が十分な品質を有し、またその情報源がムーディーズにとって信頼できると考えられるものであることを確保するため、全ての必
要な措置を講じています。しかし、ムーディーズは監査を行う者ではなく、格付の過程で受領した情報の正確性及び有効性について常に
独自の検証を行うことはできません。
この情報は、2023 年 1 月 1 日現在、当社が信頼できると考える情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を当社が保証する
ものではありません。詳しくは上記ムーディーズ・ジャパン株式会社のウェブサイトをご覧ください。

フィッチ
・格付業者グループの呼称等について
格付業者グループの呼称:フィッチ・レーティングス(以下「フィッチ」といいます。)
グループ内の信用格付業者の名称及び登録番号:
フィッチ・レーティングス・ジャパン株式会社(金融庁長官(格付)第7号)
・信用格付を付与するために用いる方針及び方法の概要に関する情報の入手方法について
フィッチ・レーティングス・ジャパン株式会社のホームページ(https://www.fitchratings.com/ja)の「規制関連」セクションにある「格付方針
等の概要」に掲載されております。
・信用格付の前提、意義及び限界について
フィッチの格付は、所定の格付基準・手法に基づく意見です。格付はそれ自体が事実を表すものではなく、正確又は不正確であると表現し
得ません。信用格付は、信用リスク以外のリスクを直接の対象とはせず、格付対象証券の市場価格の妥当性又は市場流動性について意
見を述べるものではありません。格付はリスクの相対的評価であるため、同一カテゴリーの格付が付与されたとしても、リスクの微妙な差
異は必ずしも十分に反映されない場合もあります。信用格付はデフォルトする蓋然性の相対的序列に関する意見であり、特定のデフォル
ト確率を予測する指標ではありません。
フィッチは、格付の付与・維持において、発行体等信頼に足ると判断する情報源から入手する事実情報に依拠しており、所定の格付方法
に則り、かかる情報に関する調査及び当該証券について又は当該法域において利用できる場合は独立した情報源による検証を、合理的
な範囲で行いますが、格付に関して依拠する全情報又はその使用結果に対する正確性、完全性、適時性が保証されるものではありませ
ん。ある情報が虚偽又は不当表示を含むことが判明した場合、当該情報に関連した格付は適切でない場合があります。また、格付は、現
時点の事実の検証にもかかわらず、格付付与又は据置時に予想されない将来の事象や状況に影響されることがあります。
信用格付の前提、意義及び限界の詳細にわたる説明については、フィッチの日本語ウェブサイト上の「格付及びその他の形態の意見に
関する定義」をご参照ください。
この情報は、2023 年 1 月 1 日現在、当社が信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、その正確性・完全性を当社が保証
するものではありません。詳しくは上記フィッチのホームページをご覧ください。

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レポート本文中の格付記号の前に※印のある格付けは、金融商品取引法に基づく信用格付業者以外の格付業者が付与した格付け(無
登 録 格 付 け ) で す 。 無 登 録 格 付 け に つ い て は 「 無 登 録 格 付 に 関 す る 説 明 書 」
https://www.nomura.co.jp/retail/bond/noregistered/index.html をご参照ください。
当社で取り扱う商品等へのご投資には、各商品等に所定の手数料等(国内株式取引の場合は約定代金に対して最大 1.43%(税込み)
(20 万円以下の場合は、2,860 円(税込み))の売買手数料、投資信託の場合は銘柄ごとに設定された購入時手数料(換金時手数料)およ
び運用管理費用(信託報酬)等の諸経費、等)をご負担いただく場合があります。また、各商品等には価格の変動等による損失が生じるお
それがあります。商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面、上場有価証券等書面、目論
見書、等をよくお読みください。

野村證券株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第 142 号

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加入協会/日本証券業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人 第二種金融商


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れない)やチャイニーズ・ウォールの維持・管理、社員教育を通じてリサーチ資料の作成に関わる相反を管理しています。
本資料で推奨されたトレードについて、その構築に用いられた手法や数理・解析モデルに関する追加情報が必要な場合は、表紙に記載さ
れた野村のアナリストにお問い合わせください。ディスクロージャー情報については下記のサイトをご参照ください。
http://go.nomuranow.com/research/globalresearchportal/pages/disclosures/disclosures.aspx
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