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サブプライムローン危機の成因と分析

—長期的な金利変動に基づく視点

202C10012 姚嘉敬

序論

第1章 サブプライムローン危機の背景・経緯

1-1 米国住宅金融の枠組み

1-2 サブプライムローン危機の経緯

第2章 主な先行研究

2-1 金融機関監視の緩和

2-2 投機の熱狂

2-3 ミンスキー融資方式に基づく評価

第3章 先行研究への検討

3-1 米国住宅市場における疑問

3-2 金融不安定性仮説の長い循環視点

3-3 サブプライムローンに関する証券

本論

第4章 分析方法

4-1 ミンスキー融資方式の数式分析

4-2 現金残高方程式

4-3 金融アクセラレーター理論(financial accelerator Theory)

4-4 フィードバックリング

4-5 バランスシート不況理論:「陽」と「陰」局面
第5章 金融市場は“病気”になり始めた

5-1 “病変”の過程:債務拡張段階の終了

5-1-1 長期な利下げ回廊の突き当たり

5-1-2 債務対資本比と違約率の上昇

5-1-3 住宅価格指数の緩やかな動き

5-2 “病気”の悪化:債務収縮段階の開始

5-2-1 債務返済能力の減退と未済債務の減少

5-2-2 ミンスキー・モーメント

結論

第6章 まとめ

第7章 今後の課題
はじめに

2008 年、リーマン・ブラザーズの破綻が生じた後で、世界における金融市場の崩

壊とその後の世界景気の停滞について、この危機について分析するといった観点か

らは多くの分析がなされている。その中で、ミンスキー(1985)の「金融不安定性

仮説」が人口に膾炙するようになり、「ミンスキー・モーメント」という言葉も知

られるようになってきた。それ以外にも、これまでの研究によると、金融機関監視

の緩和、革新的な金融派生商品の問題点、投機の熱狂および債務規模の拡大と収縮

などさまざまな原因に検討も行われている。特に、長期的には、債務の規模が拡大

から収縮へ転換する期間は、もし大手機構の債務返済能力が衰退すれば金融市場の

崩壊の始まりだ。この危機に対する分析中で、重要な学説には、ミンスキー

(1985)の「金融不安定性仮説」、フィッシャー(1933)の「債務デフレ理論」、

ベン・バーナンキ(1995)の「金融アクセラレーター理論」とリチャード・クー

(2006)の「バランスシート不況」である。

筆者はいくつかの先行研究に対する検討に鑑みると、本稿において問題提起が 3

つある。まず、なぜ米国全体の住宅価格の伸び率は 2000 年以降に急激に増加する


のだろうか。次に、米国資産担保債券市場では、なぜ 2000 年から 2006 年まで

ABS の発行部数が 6 年も上昇し続けたのか。最後に、米国資産担保債券市場では、

なぜ 2007 年から 2009 年にかけて ABS の発行部数が激減したのか。筆者の分析を

通じて 2008 年の世界金融危機の諸特徴――1)住宅価格を上昇させ続けるために、

住宅市場へ刺激的な購入政策を提出し、2)米国の信用格付け制度の下で、より多く

の家庭に融資を提供するために金融規制が緩和されており、3)貨幣市場には、サブ

プライム機構の借入金利と貸出金利、それらの間の金利差はフェデラル・ファンド

(Federal Funds)レートの低下に伴って拡大する可能性――を示したことがわ

かった。

本稿では米連邦基金の基準金利を見ると、1982 年から約 30 年間の基準金利が波

の形で下に移動していること(長期の利下げ回廊)が分かり、次に、前述の理論を

根拠として、長期的な金利変動の視点に基づいて 2008 年世界金融危機について検

討する。筆者の分析を通じ――1)2000 年から 2008 年まで不動産担保証券(以下

MBS)と資産担保証券(以下 ABS)規模の拡張と収縮が推進される要因、2)2005

年以降のサブプライム関連証券の違約率と在庫サブプライム証券規模などのデータ
が大幅に増加した原因、3)最初の米国金融市場崩壊から世界金融危機に変わる原因

――を示すことが分かる。

本稿の目的は、2008 年世界金融危機の原因――以上の分析を通じ、サブプライム

証券化機構は、長期にわたって多額の債務を累積した後で、貨幣市場の長期な基準

利下げ回廊の突き当たりにより、ABS の規模を拡大することで、債券の違約リスク

を海外の金融機関に移した後で、米国の住宅市場を最後の熱狂に押し上げ、金融市

場の「ミンスキー・モーメント」を引き起こす――を説明する。

本稿の構成は、第 1 章では、サブプライムローン危機の背景・経緯を述べている。

第 2 章では、サブプライムローン危機に関する先行研究を簡単にまとめる。第 3 章

では、先行研究を検討し、米国住宅市場に関する疑問を提出している。第 4 章では、

第 3 章で検討した問題の分析方法を提出し、金融市場の崩壊という原因を詳しく述

べている。第 5 章では、第 4 章からの分析方法を使用し、米国の金融市場がなぜ“病

気”になったのかを完全に説明する。第 6 章では、全体をまとめる。第 7 章では、今

後の研究課題である、バランスに基づく詳しいデータ分析から、リーマンなどサブ

プライム証券化機構が最後に破綻しなければならなかった原因に関して述べている。
第1章 サブプライムローン危機の背景・経緯

1-1 米国住宅金融の枠組み

住宅担保貸付市場の構造

米国の住宅担保貸付市場は、政府機構が保険を提供するかどうかによって、政府

の担保貸付市場と伝統的な担保貸付市場に区分されている。政府の住宅担保貸付市

場では、連邦住宅管理局、退役軍人管理局が貸付に担保保険を提供しているが、政

府抵当公庫はそれらの保険で保証された住宅抵当権を購入している。 伝統の担保貸

付は政府機構の保証や保険を受けておらず、この市場では連邦住宅管理局の貸付規

定に合致しているかどうかによって標準的な担保貸付市場と非標準的な担保貸付市

場に分けることができる。標準的な担保貸付市場の主な経営機構は、連邦抵当金庫、

連邦住宅貸付抵当公社、および米連邦住宅ローン銀行の 3 つの機構である。非標準

的な担保貸付市場の主な経営機構は、普通銀行、保険銀行、商業担保貸付機構など

であり、それらが提供する非標準的な担保貸付には、サブプライム貸付(Subprime

Mortgage)、Alt-A 貸付、および多額の貸付(Jumbo Mortgage)が含まれる。 1

(表 1.1 に示す)

1
サブプライムローン波乱の研究課題ゼミ 2008・4 「Subprime mortgage crisis」page.24
表 1.1 米国住宅担保貸付市場の構造 2

政府の担保貸付 伝統の担保貸付

非標準的な担保貸付
連邦住宅管 退役軍人管
標準的な担保貸付
理局貸付 理局貸付 プライム Alt-A 多額

政府ルート 連邦ルート 機構ルート

連邦抵当金庫 普通銀行

政府抵当公庫 連邦住宅貸付抵当公社 保険銀行

米連邦住宅ローン銀行 商業担保貸付機構

(表 1.1 はサブプライムローン波乱の研究課題ゼミ 2008・4 「Subprime mortgage crisis」により抜粋)

担保貸付の証券化と担保貸付の支援証券

金融機関が住宅担保貸付の発行をする際に直面するという担保貸付リスクを分散

させるために、国際的に一般的な方法としては、担保貸付の証券化が挙げられる。

担保貸付の証券化(Mortgage Backed Securitization、MBS)とは、金融機関が発

行した住宅担保貸付を集約し、一定の構造配置を通じて住宅担保貸付におけるリス

クと収益要素を分離・再編し、それに対応する信用保証と高める格付けを組み合わ

せ、金融市場で販売・流通できる証券に転換して資金を融通させ、そして、住宅担

保貸付のリスクを多くの投資家が負担の過程に分散させる。

本質的には、支援証券の発行は、貸付を発行する機構の債権譲渡行為であり、担

保貸付の発行者は担保貸付の借り手に対する担保権を証券投資家に譲渡する。 担保

貸付の支援証券は、借り手の毎月の返済キャッシュ・フローが収益の源である貸付

への保証の証券である。主な役割は、機構の資金調達能力をさらに高めることだ。

2
Kumiko Yoshinari, Evolution of U.S. Mortgage Securitization Market Sizing,
http://www.iadb.org/exr/bs/0503/KYoshinari.
担保貸付の支援証券を発行する抵当権は、1 級市場不動産抵当権であってもでき

るし、2 級市場から購入した抵当権であってもできるし、単一の大額不動産抵当権

であってもできるし、多くの抵当権が集中し、規則に従ってパッケージされた後の

抵当権集合(Mortgage Pool)であってもできる。ほとんどの場合、発行した担保

貸付の証券を支援するのは、2 級市場で多くの 1 級または 2 級抵当権者から購入さ

れた抵当権集合である。3

住宅担保貸付の信用格付け

インターネット株の高騰による株式市場の繁栄が 2000 年ごろに崩壊した後、米

国経済は衰退の兆しを見せ始めた。総需要の伸びを刺激するため、 FRB は短期間で

連邦基金金利を 5.4%から 1%に引き下げ、史上最低の金利水準を創出することで

2001 年から 2004 年までの米国不動産市場の繁栄を直接促進した。高利差により、

不動産金融機関は利益のために、住宅担保貸付の供給を拡大する衝動が強い。良質

な顧客の担保貸付の需要を満たした後、不動産金融機関は住宅担保貸付を申請する

資格がなかった潜在的な住宅購入者層、つまり、サブプライム市場と Alt-A 市場に

目を向けてきた。

米国の不動産金融機関には顧客の質を区別する 3 つの指標がある。1 つ目の指標

は顧客の信用記録や信用スコア(FICO)であり、2 つ目の指標は借入者の債務対収

入比率(Debt to Income Ratio,DTI)であり、3 つ目の指標は借入者が申請した住

宅担保貸付価値対不動産価値比率(Loan to Value Ratio,LTV)である。この 3 つ

3
サブプライムローン波乱の研究課題ゼミ 2008・4 「Subprime mortgage crisis」page.28-29
の指標により、米国の住宅担保貸付に関する信用力は、プライム、Alt-A、サブプラ

イムの 3 つに分類されている。(表 1.2 に示す)4

表 1.2 “FICO”信用格付けの標準

信用力 格付け FICO DTI LTV

プライム A+A- 550+ 35-38 94-100

A 550 44 94
Alt-A
B+B- 520 40 64-84

C+C- 480 44 64

サブプライム D+D- 440 50 50-60

E 420- 54

(表 1.2 はサブプライムローン波乱の研究課題ゼミ 2008・4 「Subprime mortgage crisis」により整理)

信用力の特徴

プライムの A+A-は過去 2~4 年は信用記録が優等で、2 年以内に支払いを延期す

る行為は発生せず、過去 2~10 年は倒産記録がないことを表す。Alt-A には二つの

格付けがある。その中、A は 50 日間延期されたモーゲージローンはなく、過去 2 ~

4 年以内に倒産記録はないことを表す。B+B-は過去 2-4 年間に倒産記録はなく、違

約の経験はあるが信用を再建することを表す。サブプライムには三つの格付けがあ

る。C+C-は過去 1~2 年以内に破産処理記録がないことを表す。D+D-は過去 12 ヶ

月以内に破産処理記録はないことを表す。E は破産に直面したり、抵当物の償還を

放棄したりする可能性があることを表す。

住宅担保貸付の支援証券の規模

住宅担保貸付の支援証券は 1950 年代の米国で生まれた最初の資産証券化銘柄で

ある。60 年代初め、米国の住宅担保貸付は一定の規模に達し、 三つの大手担保貸付

会社として政府抵当公庫、連邦抵当金庫、連邦住宅貸付抵当公社が大量の担保貸付

4
张明 2006「the evolution logic and risk implication of sub-prime loan crisis」
を買収し、多くの銀行の住宅担保貸付に保証を提供した。 80 年代末以降、住宅担保

貸付の支援証券の発展は絶頂に達し、それ以来高い発展速度を維持してきたが、い

まだに停滞の兆しは見られない。

米国の住宅担保貸付の支援証券が最初に発生した要因は、2 級市場において住宅

担保貸付の活性化にある。長年にわたって米国の 1 級住宅担保貸付の市場は預金機

構に依存してきたが、1950 年代末、米国社会の住宅担保貸付に対する需要は大幅に

上昇し、当時の預金機構の融資能力をはるかに上回った。住宅融資における資金不

足と流動性不足の問題を解決するため、米政府は住宅担保貸付の 2 級市場を始動さ

せ、活性化させることを決めた。住宅担保貸付が最初に証券化された資産となった

のは、住宅担保貸付の総額が非常に大きく、返済サイクルが長いためだ。資産を証

券化し、新しい流動性通貨を派生させ、通貨の使用率を高める。1950 年代末、金融

危機の出現により、政府と金融機関は金利リスクの移転と市場の流動性向上のため

に資産証券化に着手し、リスク管理を行い、金融規制を避けることができた。 80 年

代末から 90 年代初めにかけて、米国の住宅担保貸付の支援証券市場は急速な発展を

遂げ、1992 年から住宅担保貸付の支援証券市場の残高は国債残高に次いで、米国資

本市場で最も重要な投資財となった。1990 年代末になると、発行量や残高にかかわ

らず、住宅担保貸付の支援証券市場は米国最大の債券市場に躍進した。5

1-2 サブプライムローン危機の経緯

バブル

1994 年から 2001 年の間、インターネットバブルが膨張してから破裂するまでに

5
サブプライムローン波乱の研究課題ゼミ 2008・4 「Subprime mortgage crisis」page.31-32
よる景気後退で、米政府は経済を牽引し続けるために他の産業を選択する必要が

あった。1995 年、クリントン政権は「全国住宅所有権戦略」を打ち出した後で、こ

れは住宅市場が経済を牽引する重責を担っていることを意味する。米国のインター

ネット市場による経済戦略の成功で、世界の各金融機関は次の住宅市場による経済

推進策に期待を寄せているのかもしれない。2000 年から 2003 年の間、FRB が連邦

基金金利を大幅に引き下げ、ブッシュ政府は「アメリカンドリーム頭金法案」に署

名し金融機関が多額の債務を発行し MBS に投資した。

しかし、2004 年末、米国証券監視会が上位 4 大投資銀行の純資本制度を一時停止

した。米国の住宅市場に関する評価指数について、2004 年第 4 四半期から 2005 年

第 1 四半期にかけて、米国の住宅価格の中央値は 3.3%下落した。2005 年 5 月には、

米国の住宅建築指数は前年同期比の 40%以上下落した。次に、JP モルガン・チェー

スのジェイミー・デイモン CEO は、自社にサブプライムローンへの開放性を減らす

よう指示した。ゴールドマン・サックスは、この時点でサブプライムローンへの開

放性を減らし始め、空き家住宅市場を作り始めたと主張しながらも、顧客に CDO を

販売し続けている。

2006 年から新世紀金融会社は、傘下のサブプライムローン事業が崩壊し、米国最

大のサブプライムローン機構として破産保護を申請した。続いて、ベルステン社傘

下の 2 つの CDO ヘッジファンドも破産保護を申請した。危機は各国に広がり、世界

の各中央機構は危機のさらなる悪化を抑制し、協調して流動性を高めることを行っ

た。このうち、FRB は 430 億ドル、ECB は 1450 億ユーロ、日銀は 1 兆円を出資し

た。2006 年 9 月、米国の雇用データでは、非農業雇用が 2003 年 8 月以来初めてマ

イナス成長を示した。
世界大手金融機関への影響

JP モルガン・チェースはベアーストンを買収し、FRB はベアーストンの可能性の

ある損失を補うために 300 億ドルを提供した。連邦政府は連邦抵当金庫と連邦住宅

貸付抵当公社を引き継ぎ、国有化した。バンク・オブ・アメリカがメリルリンチを

買収した後、リーマンも破産保護を申請した。続いて、ムーディーズとスタンダー

ドが AIG 格付けを引き下げ、モルガン・スタンレーとゴールドマン・サックスが普

通銀行への転換を迫られ、FDIC はシティグループが米ユナイテッド銀行の銀行事業

を買収すると発表した。6

6
平安証券 2022・05「危機シリーズ報告(一):サブプライムローン危機の回顧と啓示」
第2章 主な先行研究

2-1 金融機関監視の緩和

融資基準を緩和または事実上廃止し、住宅購入者に便利な 担保貸付を提供する。

2003 年以来、米国の金融機関は借入金の前期負担を軽減する新たな措置を取ってサ

ブプライムローン顧客を誘致してきた。典型的なものは調整可能な金利担保貸付

(ARM)で、例えば 30 年期の住宅ローンは、借入金の最初の 3 年間は市場より低

い固定金利で利子を支払ったり、後の 26 年間は変動する市場金利で元金を返して利

子を払ったりしなければならない。調整できる金利担保貸付は米サブプライムロー

ンの約 90%を占めている。

貸付機構は借り手がいかなる収入、資産などの証明書類を提供しないだけでなく 、

その真実の返済能力を考慮しないだけでなく、時には借り手が虚偽を弄することを

甘やかすこともある。借り手が頭金を支払うことができない場合、銀行は第 2 回担

保権ローンを使って頭金を間に合わせることを推進した。そのため、信用記録の悪

い低所得世帯が住宅担保貸付市場に参入できた。保証条件が緩和された住宅ローン

は、2004 年上半期の 100 億ドルは 2006 年上半期の 1100 億ドルに増加した。

一方、住宅担保貸付の支援証券では、2003 年末、米国の金融監視管理者は住宅担

保貸付機構が融資基準を緩和したことに注目し始めたが、金融監視管理部門は直ち

に介入しなかった。反対に、FRB は金利を上げ続けながらも、融資機構の金利調整

可能な融資の開発と販売を推進し続け、多くのリスクの高い金融商品を拡散させて

いる。
また、政府はサブプライムローン債券という金融派生商品の評価と 監視責任を民

間債券格付け機構に完全に譲り渡し、これらの民間機構に多くの操作空間を残しな

がら、これらの機構が採用している格付け基準が信頼できるかどうかを監視しない

など、自己矛盾した行為が今後の危機の踏み台となっている。7

最後に、世界の大手金融機関に支援証券を売却するため、CDO の開発を進めてい

るが、金融派生商品の革新的な欠点もある。監視管理を回避するための複雑な金融

派生商品といった設計をするのは、リスクの分散がリスクの解消ではなく、広範囲

に渡って違約をした時に、支援証券の発行機構が巨額の債務を返済できずに倒産す

るリスクに直面するだろう。

7
李兰 2008.02「米国サブプライムローン危機と我が国の普通銀行の貸付業務に対する警告」
2-2 投機の熱狂

所有権社会

ブッシュ米大統領はかつて、米新社会を「所有権社会(ownership society)」と

呼んでいたが、2004 年に再選に成功した選挙演説で、ブッシュ氏はこの概念を際立

たせた。ブッシュ大統領は住宅所有権の拡大が社会財産権の主要な構成部分になる

ことを望んでおり、「所有権社会」という政治は私有財産をその伝統的な範囲をは

るかに超え、福祉や教育などの分野にまで広げている。しかし、このような政治理

念は住宅ローンの規制における政府の重要性を強調しておらず、今後の危機に禍根

を残している。

このような所有権の傾向の下で、国民はますます自分の資産に依存せざるを得な

いことに気づき始め、安心感が失われてきた。目まぐるしく変化する世界的な雇用

市場に押し込まれていると感じている国民は、豊かになるかもしれないが、急に貧

しくなるかもしれない。このような不安感のため、国民は投資を通じて将来の可能

性の変化に対応したいと考えているが、この投資は実際には国民が不安要素に対応

するための平均貯蓄レベルを低下させている。これは投資需要の増加による資産価

格の上昇であり、このような虚高な価格はまた国民に投資資産の増値に伴って、貯

蓄額が増加していると勘違いさせている。

21 世紀初頭、米国の不動産市場で時価総額の伸びは貯蓄の伸びをはるかに上回っ

た。2001 年から 2003 年の間、家庭が所有する不動産の時価総額の増加は、米国の

家庭財産の増加における平均貢献が貯蓄の 10 倍になった。実際、それらの不動産保

有者にとって、将来の需要に備えて給与を貯蓄するかどうかは重要ではない。なぜ
なら、彼らが不動産を購入し、保有すると、何もしなくても不動産の時価総額は増

え続けるからだ。8

熱狂

熱狂は実質的に増幅メカニズムであり、フィードバックリング(feedback loop)

により、過去の価格上昇は投資家の自信と期待を高め、これらの投資家は期待でき

る資産価格の上昇のため、普段より高い価格で購入すると考える。最後に資産の表

面的な高価格によるという富の幻想はさらに多くの投資家を引きつけ、この循環は

絶えず進み、最終的には原始的な誘発要因に対する過激な反応をもたらした。これ

はいわゆる自然発生したポンツイ詐欺過程である。9

クロスフィードバックリング(Cross feedback loop)

歴史的に米国株式市場の価格変化は不動産市場の価格変化とほとんど関連してい

ない。しかし、1994 年に株式市場が大幅に上昇し始め、数年後の 1998 年には不動

産市場が繁栄し始めた。国際市場にとって、住宅価格は株式市場が繁栄してから数

年で高騰することが多いことにも注目している。これらはある程度、株式市場と不

動産市場の間にクロスフィードバックが存在する可能性があることを意味している 。

社会の変遷に伴い、不動産市場はますます投機的になり、不動産市場と株式市場と

のクロスフィードバックをさらに激化させる可能性がある。

実際、株式市場が活況を呈した数年後に住宅価格が上昇し始めたのは不思議では

ない。株式市場の繁栄は投資家の富の増加をもたらし、富の増加は投資家が彼らの

8
Robert J. Shiller 「Irrational Exuberance」(Revised and Expanded Third Edition)
中国語翻訳本 page.58
9
同上 page.83
住宅にもっとお金を使うことを推進し、住宅価格も高くなる。 人々は数年かけて住

宅交換計画を決める必要があるため、この影響は数年後に現れることが多い。しか

し、このような現象の背後には、株価が大幅に下落した後でも、不動産価格が急速

に上昇するフィードバックメカニズムがあるとは考えにくい。10

まとめ

以上、以前は国民生活はとても簡単で、人々は貯蓄して、そして適切な時間に住

宅を購入した。人々が住宅を購入するのは、住宅が正常な生活の一部であり、住宅

価格が変化することを心配していなかったからだ。人々が住宅を転売したり賃貸し

たりすることで追加の収入を得ることができるようになると、住宅も消費財から投

資財に変わり、住宅市場は社会と経済の重要な構成部分となり、人々の生活を根本

的に変えた。住宅価格の変動は過去には地域で高速道路、運河、鉄道の建設などの

事件の影響を受けただけで、その後ますます全国的、ひいては国際的になり、今日

も様々な「新景気時代」の物語が続いている。住宅価格の変化は国民の不動産価値

に対する印象の変化を反映させ、投機的な価格変化に対する国民の関心が高まって

いることを体現している。 11 最後に、時間が経つにつれて、フィードバックリング

の役割によって、不動産への投資は熱狂的な投機になりつつある。

2-3 ミンスキー融資方式に基づく評価

10
同上 page.106
11
同上 page.36
ミンスキー(1975;1986;1992)は、安定的な資金調達アレンジメント期間と

金融不安定期間との間の経済振りを定義する循環理論を提唱した。有名なのは、

「安定が不安定を生む」健全な金融循環は慢心や、より大きなリスクにつながり、

時間の経過と共に金融は脆弱性を増していくからだ。12

ミンスキーは、企業が展開する融資に関する分類を確立した:ヘッジ融資(予想

収益フローには利子と安全限界が含まれる見込みで、企業の利益は負債と利子を支

払うことができる)、投機融資(短期収益フローは利子のみを含むが、それは融資

コストが低下し、収益フローが上昇することが予想されるが、あるいは資産はより

高い価格で売ることができ、その場合、収益は売却を支払うのに十分である)とポ

ンツイ融資(短期収益は利子を支払うのに十分ではないので、債務が増加する)。

フリー(2003)はミンスキーの金融不安定仮説をモデル化した。

企業の資金源は当期利益 R と新規貸付 B であり、当期投資 I と当期債務利子支払 F

に用いられると仮定すると:

R+ B=I + F … … ( 2. 1 )

という形の方程式。

金融不安定仮説定義によると、3 つの融資の条件は次のように表すことがある:

➀ヘッジ融資 R ≥ F + I → 0 ≥ B … … ( 2. 2 )

すなわち、企業の利益 R は当期の投資 I と前期の債務利子 F を支払うことができる。

② 投機融資 I + F> R ≥ F → I > B>0 … … ( 2. 3 )

すなわち、企業の利益 R は前期の債務利子 F を支払うことができるが、同時に投資 I

を完全に支払うことはできない。

12
Leila E. Davis 2017「An empirical analysis of Minsky regimes in the US economy」page.2
③ポンツイ融資 F> R→ B> I … … ( 2. 4 )

すなわち、企業の利益 R は前期債務の利子 F さえ支払うことができない。

以上、B と I の関係によって企業がどのようなタイプであるかを判定できること

がわかる。13

13
D.K. Foley 2003「Financial Fragility in Developing Economies」page.6
第3章 先行研究への検討

3-1 米国住宅市場における疑問

まず、米国の固定収益市場を検討する。

米国の固定収益市場には、市政債、米国債、住宅ローン関連債券、企業債、連邦

機構証券、資産支援債券の 6 つの構成要素がある。表 3.1 から分かるように、住宅

ローン関連債券の発行額は、1996 年から 2003 年までは上昇した状態で、2003 年

から 2005 年までは緩やかな状態で、2005 年から 2008 年までは下降した状態で、

2008 年から 2019 年までは緩やかな状態だった。つまり、1996 年から 2003 年に

かけて、米国の固定収益市場ではほとんどの資金が住宅ローン市場に流入している

ことがわかる。

表 3.1 1996 年~2022 年の米国固定収益市場の各種債券発行額の割合

100%
90%
80%
70%
60%
50%
40%
30%
20%
10%
0%
96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16 18 20 22
19 19 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20

米国 : 債券の発行額 : 住宅ローン関連債券 米国 : 債券の発行額 : 米国債


米国 : 債券の発行額 : 企業債 米国 : 債券の発行額 : 連邦機関証券
米国 : 債券の発行額 : 市政債 米国 : 債券の発行額 : 資産支援債券

(資料データは wind によって、それから筆者は自分で絵を描いた。)

また、住宅価格については、表 3.2 から分かるように、米国 CoreLogic 住宅価格


14
指数 は 1996 年 1 月から 2006 年 6 月までは上昇した状態で、2006 年 7 月から

2007 年 6 月までは緩やかな状態で、2007 年 7 月から 2009 年 5 月までは下降した

状態で、3 年間の横ばいを経て、2012 年 6 月から上昇を続けている。

15
ABS については、1987 年、市場には企業ローンと債券を基礎資産とする CDO

金融派生品が登場した。CDO の資産プールには各種債権やローンが含まれているた

め、本来証券市場に参入できなかった商品の多くが証券化された後、大きなキャッ

シュフローと流動性をもたらし、ABS の発展を大規模に押し上げたが、そのリスク

管理が複雑なため、2007 年の低格付け CDS によるサブプライムローン危機にも禍

根を落とした。表 3.3 から分かるように、1993 年以来、ABS 規模は急速に発展し

ていることがわかる。特に、ABS 発行額が 2004 年から 2006 年にかけて大幅に上

昇したことだ。ABS は狭義の資産支援証券、例えば自動車ローン ABS、クレジット

カードローン ABS、学生ローン ABS などを含み、担保債務証券(CDO)も含む。

CDO は再証券化商品として、主に債券担保債券(CBO)とローン担保債券(CLO)

の 2 種類がある。一般的に、その中で最も在庫規模が大きいのは CDO/CLO で

53.09%を占め、次いで自動車ローン ABS、学生ローン ABS でそれぞれ 14.01%と

9.56%を占めているほか、予想収益権を基礎資産とする商品も極めて少ない。

14
米国の住宅価格の水準を示す指数で、正式名称は「S&P CoreLogic Case-Shiller Home Price
Indices(S&P コア・ロジック・ケース・シラー住宅価格指数)」。
15
Asset Backed Securities の(資産担保証券)略称で。従来は、有価証券を発行する会社は、発行会
社全体での信用力や収益力を裏付けに資金調達していたが、所有する不動産や債権など資産の信用力や
キャッシュフローを裏付けにして、債券やコマーシャルペーパー等を発行して、資金調達することが可
能となった。
表 3.2 米国 CoreLogic 住宅価格指数

350.00

300.00

250.00

200.00

150.00

100.00

50.00

0.00
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 01
96- 97- 98- 99- 00- 01- 02- 03- 04- 05- 06- 07- 09- 10- 11- 12- 13- 14- 15- 16- 17- 18- 19- 20- 22-
19 19 19 19 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20

CoreLogic 住宅価格指数
(資料データは wind によって、それから筆者は自分で絵を描いた。)
表 3.3 米国資産担保債券(ABS)発行額合計

800000

700000

600000

500000

400000

300000

200000

100000

0
1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012

米国:資産担保債券( ABS )発行額:合計 単位 10 億ドル


(表 3.3 は「前瞻数据库」(https://d.qianzhan.com/)によって、それから筆者は自分で絵を描いた。)

最後に、筆者は米国住宅市場のデータの特徴に基づいて以下の 3 つの疑問を提示した。

第一に、なぜ米国全体の住宅価格の伸び率は 2000 年以降に急激に増加するのだろう

か。第二に、米国資産担保債券市場では、なぜ 2000 年から 2006 年まで ABS の発行部

数が 6 年も上昇し続けたのか。第三に、米国資産担保債券市場では、なぜ 2007 年から


2009 年にかけて ABS の発行部数が激減したのか。次の第 5 章では、第 4 章の分析方法

を通じてこれらの問題を詳しく検討する。

3-2 金融不安定性仮説の長い循環視点

金融不安定性仮説に対して、循環期間に基づく視点から、デービス( 2017)は非

金融企業グループのミンスキー融資タイプを実証的に適用することにより、米国経

済についてのミンスキー動態を分析する。要約すると、これらの結果は、金融不安

定性仮説の文献におけるミンスキー循環の継続期間に関する重要な問題を示してお

り、ミンスキー動力学は長波の形をとるかもしれないが、ビジネス循環(短波)の

周波数では運行しないという主張を特に支持している。16

デービスによると、1970 年以降の時期には、小企業はポンツイ融資の形でサンプ

ルに入る可能性が高まっており、会社規模の中位以上の会社は投機融資からポンツ

イ融資に移行する可能性が高い。また、ポンツイ融資の約 30%はサンプルからの撤

退に伴い終了した。注目すべきは、ヘッジや投機融資の制約に従うよりも、ポンツ

イ融資の一定期間後に会社が撤退する可能性が高いことだ。米国企業が利用可能な

データの期間は長期循環を決定するのに十分ではないが、これらの結果は、1970 年

以降の米国企業の脆弱性が長期的に拡大していることを示している。

デービスはポンツイ融資の発生率が長期的に上昇している証拠を補足し、一連の

計量経済学の結果は、ミンスキー動態が米国経済において短期(ビジネス循環)周

波数で運行しているわけではないことを示している。17

すなわち、金融不安定性仮説に基づき、金融脆弱性を分析するのは、短期循環の

16
Leila E. Davis 2017「An empirical analysis of Minsky regimes in the US economy」page.1
17
同上 page.3
視点に限定されると、金融危機の誕生メカニズムを全面的に理解することができな

い可能性がある。2008 年金融危機の検討文献において、筆者はデービスの実証研究

の結果に基づき、長期的な金利の変化傾向から着手し、この金融危機の顛末を分析

すれば、より現実的な解釈を得ることができるのではないかと考えている。 次の第 4

章では、ミンスキー融資方式の数式分析の結論を用いて、長期の基準金利が波の形で上

昇すれば、ほとんどの米国企業をポンツイ融資状態に導くことが分かった。

3-3 サブプライムローンに関する証券

まず、サブプライムローンに関する資産証券化の設計構想は、貸付の ポートフォ

リオまたは貸付のパス・スルー証券(Pass Through Securities)を担保に、担保資

産のキャッシュフローを再編し、異なる投資家の需要に適応することである。実際

にサブプライムローン債券は特別目的機構(Special Purpose Vehicle,SPV)の負

債であり、投資家は SPV に対して債権を持ち、商業銀行などのローン発行機構はそ

れに基づいてバランスの内部融資を実現することができる。具体的な証券化の過程

で、サブプライムローン債券の主な操作手順は 6 つの部分がある。それぞれは

キャッシュフロー分析と資産プール集約、資産の売却と譲渡、信用強化、信用格付

け、債券発行と取引、サービスと管理である。 18 本質に、資産証券化では、発行者

の資本を最大利用させ、発行者の収入を増やし、その資本収益率を高め、「倒産隔

離(Bankruptcy Remoteness)」が存在することで融資の安全性と融資対象を拡大し、

融資期間を延長し、発行者の資産負債の管理に役立つ。19

次 に 、 RMBS 、 CDO 、 CDS な ど 証 券 に つ い て 簡 単 に 説 明 す る 。 RMBS は

18
サブプライムローン波乱の研究課題ゼミ 2008・4「Subprime mortgage crisis」page.87-90
19
吴海峰 2003・06「資産証券化理論と実践研究」page.14-17
Residential Mortgage-Backed Securities(住宅ローン担保証券)の略称であり、

モーゲージ証券(MBS)の種類の一つで、住宅ローンを担保として発行される証券

のこと。CDO は Collateralized Debt Obligation(債務担保証券)の略称であり、

社債や貸出債権(ローン)などの資産を担保として発行される資産担保証券の一種

で、証券化商品である。CDS は Credit default swap の略称であり、企業の債務不

履行にともなうリスクを対象にした金融派生商品である。対象となる企業が破綻し

金融債権や社債などの支払いができなくなった場合、CDS の買い手は金利や元本に

相当する支払いを受け取るという仕組み。20

市 場 に は CDO の タ イ プ が 多 く 、 取 引 構 造 に よ っ て は 、 キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー

CDO(Cash Flow CDO)、合成型 CDO(Synthetic CDO)、混合型 CDO(Hybrid

CDO)の主要な品種に細分化されている。キャッシュフロー型 CDO 構造では、証

券の収益は基礎的な資産プール(RMBS プール)によるキャッシュフローに依存し、

基礎的な資産プールの時価は証券価値に影響しない。合成型 CDO 構造では、発行者

(SPV)は実際に基礎的な資産プールを所有するのではなく、格付けな CDS を通じ

て間接的に基礎的な資産プールの与信限度額を所有し、借り手の信用リスクを CDO

投資家に移し、投資家は保険金として収益を得る。合成 CDO 証券の価値は、主に基

礎的な資産プールの価値を参考にした後、信用格付けを行った結果である(高い信

用格付けにより、合成 CDO 証券の価値は高くなる)。混合型 CDO は、キャッシュ

フロー型 CDO と合成型 CDO の混合製品として大まかに見ることができ、キャッ

シュフロー型 CDO として部分の基礎的な資産プールは買い切られ、合成型 CDO と

して部分の価値は保証された RMBS プールの価値と信用格付けの結果を参照する 。

20
野村証券・「証券用語解説集」より抜粋
21

次に、キャッシュフローでキャッシュフロー CDO を例に分析して説明する。

最初の融資機構は、RMBS プールを SPV に売却し、証券化した後で、キャッシュ

フローは異なるシェア(tranche)に割り当てられる。一般的に、すべてのシェア価

値の加算は資産プールの総価値に等しく、各シェアには独自の格付けがあり、格付

けが高いほどシェア価値も高くなるが、そのシェアの収益率も低くなる。つまり、

同じ資産プールでは、シェアの格付けは価値と正方向に関連し、シェアの格付けは

収益率と負方向に関連している。簡単に説明するために、この資産プールでは、上

位層シェア(senior tranche)、中間層シェア(mezzanine tranche)、および持

分層シェア(equity tranche)の 3 つの部分と仮定する。実際に 2000 年後の米国

サブプライム市場では、同じ資産プールには多くの異なるシェアが存在している。

RMBS プ ー ル 証 券 化 し た 後 で 、 キ ャ ッ シ ュ フ ロ ー は い わ ゆ る 滝 の 形 式

(waterfall)で割り当てられる。つまり、RMBS プールから元金と利子支払いは、

異なる滝の形式で割り当てられる。元金の支払いはまず上位層シェアに割り当てら

れ、上位層シェアの元金がすべて返済された後、中間層シェアへの割り当てが開始

され、中間層シェアの元金がすべて返済された後、最後に持分層シェアへの元金の

支払いが開始される。利子の支払いも、上位層シェアが元金を返済していないすべ

ての約束した利子を受け取るまで、上位層シェアに割り当てられる。もし、キャッ

シュフローが上位層シェアに約束した利子を返済してから、利子の支払いを中間層

シェアに割り当てることができる。最後に、中間層シェアが約束した利子も満たさ

れ、資金が残っている場合、持分層シェアに割り当てられる。22

21
サブプライムローン波乱の研究課題ゼミ 2008・4 「Subprime mortgage crisis」page.98-99
22
John C. Hull「OPTIONS,FUTURES,AND OTHER DERIVATIVES(10th edition)」page.185-
キャッシュフロー CDO プールについて、損失を負担する形式から考えると、持分

層シェアはまず損失を負担し、それから中間層シェアで、最後に上位層シェアであ

る。このような形式の損失は、実は「時間差」によるものである。違約事件が発生

した場合、投資銀行は借り手の住宅を競売にかけて売却した後、投資家が当期に支

払うべき配当を補充することができるからだ。しかし、住宅の回収、競売、売却に

は数ヶ月かかる可能性があり、現在投資家に配当金を支払わないと、対応する証券

違約事件が発生する。したがって、関連証券の売却中には、上位層シェア価値が中

間層シェア価値より大きく、中間層シェア価値が持分層シェア価値より大きくなる。

関連資料(ABS 発行部数など)から推定して、SPV は中間層シェアと持分層シェ

アの売却価値を高めるために、保険制度を通じて、全てのシェア(中間層シェアと

持分層シェアだけでない)価値を保証するために、CDS を購入し(保険者としての

他の金融機関は CDS を発行する)、CDS を資産プールの基礎資産の 1 つとして合成

型 CDO を作成し、合成型 CDO と中間層シェアと持分層シェアを混合し、格付けを

通じて混合型 CDO を作成した。明らかに、CDS を購入するのは、このような「時

間差」による証券価値の低下を解消するためである。したがって、筆者の推測によ

ると、キャッシュフロー型 CDO と合成型 CDO は、混合型 CDO のために大量に作ら

れたものである。

一般的に、CDS 発行者は 2 つの状況に直面する。1 つは違約事件が発生しない場

合、CDS 保有者は CDS 発行者に保証費用を支払う、もう 1 つは、違約事件が発生し

た場合、CDS 発行者は CDS 保有者に賠償資金を支払う。しかし、サブプライムロー

ンでは、米国のローン格付け制度により、中間層シェアと持分層シェアにおける借

186 より抜粋
り手として、実際には低所得だったり、安定した収入がなかったりしてい る。その

ため、中間層シェアと持分層シェアでは違約事件が発生する確率は非常に大きい。

23
保険者として抵当品 を得られずに CDS を発行すれば、大きな損失に直面するだ

ろう。そこで、取引決済におけるリスクを減らすために、抵当品(通常、サブプラ

イムローン契約)が必要である。

したがって、住宅ローン契約を保証対象とする CDS について、CDS 発行者と

CDS 保有者には担保契約があり、違約事件が発生していない場合、 CDS 保有者

(CDS 購入者)は定期的に CDS 発行者に保証費用を支払うことになり、この費用は

中間層シェアと持分層シェアのキャッシュフローから支出することができる。借り

手が最初のサブプライムローン契約を履行できない場合、CDS 保有者はこの契約を

CDS 発行者に譲渡(「時間差」を CDS 発行者に移す)するとすぐに投資家に支払う

ための資金を得ることができ、CDS 発行者は住宅競売で得た資金を損失(CDS 保有

者への賠償金)の補償として、住宅価格が大幅に上昇した条件下で、住宅を競売に

かけて得た資金の額は、証券を作るコストを除いた後、住宅購入時に融資した資金

の額よりも大きい(「時間差」で住宅の割増金を交換する)。つまり、住宅価格が

上昇する時期に、違約事件が発生したかどうかにかかわらず、保険者として金融機

関は CDS を発行した後、将来的にキャッシュフローを得ることができる。このキャ

ッシュフローの存在により、保険者は CDS を発行し続ける考えが出てきた。そのた

め、合成型 CDO うちのあるシェアを加えて、大量の中間層シェアと持分層シェアの

売却価値が向上した。最終的には、新しい資産プール、いわゆる混合型 CDO(或い

23
抵当品は現金(通常は利子を稼ぐ)または有価証券であることができる。異なる金融機関の間の抵
当品協議は金融監督管理局が決定する。違約が発生した場合、取引は優先処分権を獲得する。非違約者
は、他方から提供された抵当品を保留する権利がある。通常、高価で時間のかかる法的手続きはない。
(出所)John C. Hull「OPTIONS,FUTURES,AND OTHER DERIVATIVES(10th edition)」page.557
より抜粋
は ABS CDO)が作成された。

混合型 CDO では、住宅価格が上昇し続けている条件下で、違約事件が発生しない

場合、関連証券の設計が合理的であれば、全体シェアも CDS 発行者に支払われた保

証費用を相殺するのに十分なキャッシュフローを生成することができる。また、 全

体シェアの中で最も原始的な借り手も「住宅価値の上昇」により、毎月の返済を保

証するために尽力している。違約事件が発生した場合、CDS 発行者からの賠償金は

長期な配当として混合型 CDO 保有者に支払うこともできる。混合型 CDO 発行者と

しての投資銀行は国民住宅ローン違約事件に対するリスク嫌悪はリスク好みに変わ

る。すなわち、違約発生による損失が利益に変わり、混合型 CDO におけるすべての

シェアの価値が向上し、混合型 CDO は低リスクで収益が安定した証券となった。住

宅価格が上昇し続ける限り、混合型 CDO を購入するのは投資家にとって損をしない

商売だ。そのため、混合型 CDO は世界中の投資家に人気を集めている(収益率が同

等格付けの債券より高い)。その上で、金融機関は基礎資産である RMBS の規模と

違約賠償保証である CDS の規模を拡大し続けている。以上より、サブプライムロー

ン関連証券の設計分析を通じて、住宅価格の持続的な上昇がこれらの証券価値の保

証であることが明らかになった。また、サブプライムローンについて、RMBS 及び

関連 COD の収益率の実証データ研究は、筆者が今後展開する課題の 1 つとなるだろ

う。
第4章 分析方法

4-1 ミンスキー融資方式の数式分析

メイレレス(2003)はミンスキーの金融不安定仮説に基づいて数式分析モデルを

構築した。要約すると、ポストケインズ主義を基礎とした生産能力の利用と成長に

関するマクロモデルを展開し、その中で与信貨幣の供給は内生的であり、企業の債

務状況及び経済の金融脆弱性は明確にモデル化されている。生産能力利用率、利益

率、成長率に対する金利と負債の影響、および金融脆弱性に対する貯蓄と投資関数

の影響を深く分析した。ポストケインズ主義の貨幣方法に従うと、与信貨幣の供給

は任意の時点で内生的であり、需要は外部から与えられた名目金利によって決定さ

れる。基本的な仮定は、任意の所与の時点で、銀行はその貨幣市場(貸し手)の価

格策定者と数量受付者であり、その債券市場(借り手)の価格受付者と数量策定者

である。モデルは閉鎖的で政府の財政活動のない経済を構築している。投資財でも

消費財でもある商品は、資本と労働力の 2 つの要素を通じて生産されている。モデ

ル式を固定係数で表現する。

生産資本家(資本保有者)の投資計画は、投資需要の関数として表示される:

d
g =α + βr − γi ......(4.1)

ここで、α 、 β 、 γ は正のパラメータであり、 gd は期待的な投資と現物資本保有

量 K の割合である。r は利益率、i は金利である。また、 β は投資需要の利益率に対

する反応係数であり、 γ は投資需要の市場金利に対する反応係数であり、 α は資本

保有量の固定成長率である。カレキ(1971)とロビンソン(1962)は仮に、期待

的な投資は、利益率に対して正の相関であり、金利に対して負の相関である。労働
者はすべての賃金を消費に使い、貯蓄はしない。生産資本家は収入のうち給与を超

えた部分の利益(surplus)を自身の利益として受け取る。24 25

そこで、資本家の産出 X は:

X =(W / P) L+ R ......(4. 2)

このうち、W は労働者の名目賃金、P は製品価格、L は雇用状況、R は生産利益で

R
ある。式(4.2)から、利益率(r = )次のように表すことがある:
K
WL X
r =(1 − ) =(1 −V a) u...... (4. 3)
PX R
このうち、V は労働者の実質賃金、 a は労働産出比率、u は生産能力利用率であ

る。

期待的な利益率には、次のように表すことがある:

r =r p +r f ......(4.4)

このうち、r p は生産資本家の期待的な利益率(自身で保有する部分)、r f は金融

資本家の期待的な利益率(他人に支払う部分)である。

生産資本家の場合、その貯蓄率が s であると仮定すると、投資供給の関数は次の

ようになる:

s
g =s r ......(4.5)

投資需要と投資供給がバランスをとる傾向にある場合、すなわち gd =gs は、式

(4.1)、(4.3)、(4.5)を利用して、次のように表すことがある:

(α − γ i)
u∗ = ......(4.6)
( s − β )(1− Va)
(α − γ i)
r ∗= ......(4.7)
(s − β)
s (α − γ i)
g∗ = ......(4.8)
(s− β)

24
KALECKI(1971)「Selected essays on the dynamics of the capitalist economy」
25
ROBINSON(1962)「Essays in the Theory of Economic Growth」
このうち、 u∗ はバランス生産能力利用率、 r ∗ はバランス利益率、 g∗ はバランス

資本伸び率である。

dD
第 2 章では、式(2.1) R+ B=I + F から、D は債務保有量、新規貸付 B は で
dt
あり、次のように表すことがある:


I =g K ......(4.9)

F=iD ......(4.10)

R=rK ......(4.11)

そこで、新規貸付 B 次のように表すことがある:


B=R −( I + F )=rK − g K −iD ......(4.12)
D
また、式(4.4)r =r p +r f のうち、r f =i δ 、 δ は債務対資本比 である。
K
ミンスキー(1982)金融不安定仮説定義によると、3 つの融資の数式分析は次

のように表すことがある:

融資タイプ ミンスキーの仮説定義 メイレレスの数式分析

R ≥ F +I 、0≥ B r ≥ iδ +g 、 r p ≥ g ......(4.13)
ヘッジ融資(H)

I + F> R ≥ F 、 I > B>0 r <i δ + g 、 r p < g ......(4.14 )


投機融資(S)

F> R 、 B> I r ≤ iδ 、 r p ≤ 0......(4.15)


ポンツイ融資(P)

融資タイプはヘッジ融資から投機融資への限界時、債務対資本比はδ ℎeであり、投

機融資からポンツイ融資への限界時、債務対資本の比はδ ep である。そこで、次のよ

うに表すことがある:

(1 − s)α 1 (1 − s) γ
r =iδ ℎe + g ∗ 、 δ ℎe = × − ......(4.16)
(s − β ) i (s − β )
α 1 γ
r =iδ ep 、 δ ep = × − ......(4.17)
( s − β ) i (s − β )
表 4.1 から分かるように、A はヘッジ融資区域であり、B は投機融資区域であり、

C はポンツイ融資区域であり、債務対資本比がかなり低い場合、2 つの限界線が互い

α
に接近すると、すなわち δ → 0 の場合、i δ = 0= がある。また、同じ債務対資本比
γ
δ 0 では、金利の上昇に伴い、融資タイプはヘッジ融資→投機融資→ポンツイ融資か

ら転換される。仮定に金利が固定されると、企業の債務対資本比が上昇し、融資タ

イプもヘッジ融資→投機融資→ポンツイ融資から転換される。26

第 3 章では、金融不安定性仮説の長い循環視点に基づく視点から、デービスの実

証なデータ分析結果を結合し、金利が波の形で動き、長期的な上昇傾向に入ると、

ポンツイ融資以外の融資タイプを行っている米国企業に対しては、債務対資本比が

変わらなくてもポンツイ融資タイプに入ることになる。特に、長期的な視点の下で、

もし企業が利益最大化の経営戦略の下で、自身の債務対資本比を高め続けて、外部

融資を獲得し、金利上昇傾向を加えると、相乗効果が生まれ、企業の債務返済能力

がさらに衰退する。

表 4.1 ミンスキーの三つの融資区域

(ミンスキーの三つの融資区域は式 4.16、式 4.17 によって、それから筆者は自分で絵を描いた。)

26
Meirelles 2003「Debt, Financial Fragility and Growth:A Post-Keynesian Macromodel」
4-2 現金残高方程式

ケンブリッジの現金残高方程式は伝統的な貨幣数量論の方程式の一つである。ピ

グ(1917)に代表されるケンブリッジ学派は、貨幣需要の問題を研究する際に、ミ

クロ主体の行為を重視している。この論証は、経済システムの中にある個人の貨幣

に対する需要は、実質的にどのような方法で自身の資産を維持するかを選択する問

題であると考えている。人々が貨幣をどれだけ持っているかを決めるのは、個人の

富のレベル、金利の変動、貨幣を持っている可能性のある便利さなど多くの要素が

ある。しかし、他の条件が変わらない場合、すべての人にとって、名目貨幣需要と

名目所得レベルの間には常に安定した比例関係が維持されている。

ケンブリッジの現金残高方程式は次の形で表される:

M =k PY ......(4. 18)

このうち、Y は(実質)国民所得であり、P は物価水準であり、P×Yは(名目)

国民所得になり、k はマーシャルの k とよばれる定数であり、M はマネー・サプライ、

つまり発行される貨幣の量であり、マーシャルの k は貨幣の流通速度(V)の逆数で

1
あり、つまり、k = である。
V
次に、方程式の両側に自然対数を取り、以下を得る:

¿ M =¿ P+¿ Y − InV ......(4.19)

上式の 2 辺を微分し、項目を移動し、得ることができる:

∆ ∈P=∆∈M −(∆∈Y −∆ InV )......(4. 20)

∆InM は貨幣供給の伸び率でなり、 ∆InP は物価水準の伸び率でなり、 ∆InY は

(実質)国民産出の伸び率になり、∆InV は貨幣の流通速度の変化率であり、取引市
場において、貨幣の流通速度は単位時間当たりに取引された商品の数と考えること

ができし、∆InV は取引された商品の数の変化率でなる。27 28

ある期間、完全に競合する市場では、価格はすべて商品の供給と需要によって決

定され、人々が価格の受付者であると仮定する。また、商品を買いだめする行為は

ない。したがって、 「 ∆∈Y −∆ InV 」は在庫商品の伸び率でなり、 式(4.20)

∆ ∈P=∆∈M −(∆∈Y −∆ InV )に対して、以下の解釈がある:

物価水準の伸び率= 貨幣供給の伸び率 − 在庫商品の伸び率 ......(4. 21)

特定商品の全体取引市場にとって、「物価水準の伸び率」は「商品価格の伸び

率」と考えられるため、次のことができる:

商品価格 の伸び率= 貨幣供給の伸び率 − 在庫商品の伸び率 ......(4. 22)

また、長期には、安定した経済体の中で、市場構造の変化が少ないため、「在庫

商品の伸び率」は変わらないと考えられており、つまり、「貨幣供給の伸び率」が

増加すると、「商品価格の伸び率」は増加する。すなわち、特定商品市場への安定

した貨幣供給を維持することで、その市場における商品価格の安定した成長を維持

することができる。そのため、米国住宅市場の住宅価格指数の成長を検討するには 、

第 5 章では米国住宅市場の貨幣供給状況を探る必要がある。

4-3 金融アクセラレーター理論(financial accelerator Theory)

多くの経済学者の経済変動に対する研究は、完全な与信市場の仮定に基づいて構

築されており、すなわち与信市場に摩擦は存在しない。例えば、伝統的な

27
奥山忠信 2012「貨幣数量説における交換方程式の考察」
28
山崎匡毅 1983・8「貨幣の流動性と交換方程式」
29
RBC(Real Business Cycle)理論 は、金融市場と与信市場が実際の経済に影響

を与えないと仮定し、この理論は生産技術革新の衝撃と政府購入の衝撃などの実際

の変数が経済総量に与える影響を強調している。有名な MM(Modigliani-Miller)定

理(1958 年)30 も、金融部門の構造が実際の経済運営に影響を与えないと指摘して

いる。しかし、現実経済はそうではない。現実的には、多くの経済危機が発生した

原因は金融与信市場と関係があることが分かった。また、伝統的な RBC 理論は、現

実の経済的な大きな変動の一部しか説明できない。

これは、実体経済と金融市場との間のつながりは、企業が実体投資の需要を満た

すために外部資金を必要とすることに由来しているからだ。企業の貸借能力は基本

的にその純資産の市場価値にかかっている。理由は、貸し手と借り手の間の情報が

非対称であるためだ。貸し手は、特定の借り手の信用レベルをあまり知らない可能

性がある。そのため、貸し手は通常、借り手に担保資産として返済能力を証明する

よう要求している。したがって、資産価格と純資産の変動は企業の貸借対照表に影

響を与え、さらに、その信用レベルにも影響を与える。

例えば、資産価格の下落による企業貸借対照表の悪化は、金融市場における借入

能力に影響を与える。企業の新たな投資需要が満たされず、経済市場全体の活動に

悪影響を与えることになる。現在経済活動の低下により資産価格がさらに下落し

(資本に対する需要の低迷)、資産価格の低下、貸借対照表の悪化、貸付条件の引

き締め、新たな経済活動の低下のフィードバックリングを引き起こした。この悪循

環を金融アクセラレーター(この場合は負のフィードバックリング効果)と呼ぶ。

29
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
30
Miller and Modigliani 1958・6「The Cost of Capital,Corporation Finance and the Theory of
Investment」
これは金融市場のわずかな変化から始まり、経済状況の大きな変化を引き起こす可

能性がある金融フィードバックリング(あるいは与信フィードバックリング)だ。

バーナンキ、ガトラー、ギリアリスト(1994)は金融アクセラレーターの概念を

正式に提案した。金融アクセラレーター効果は非対称性とされ、経済成長期に比べ

て経済下降期の金融アクセラレーターが顕著である。景気低迷時に企業の貸借対照

表状況が悪化して純資産が低い場合、外部融資コストが大幅に増加し、企業の投資

と生産量が減少し、企業の貸借対照表状況がさらに悪化するためだ。経済成長期に

おける企業貸借対照表の状況は良好であり、同時に企業自身の内部資金が十分であ

る場合、企業の外部融資数は少なく、外部融資コストは大きな変化がないため、外

部融資が企業投資に与える影響の程度は大きくない。1998 年、バーナンキ、ガトラ

ー、ギリアリストは貸借対照表の状況と企業の資本需要の関数を結びつけた。 金融

アクセラレーターがある場合、企業の資本に対する需要方程式は次の通りである:

j j j
Bt +1=Qt K t +1 − N t +1 ......(4. 23)

( ) ( )
j j
N t +1 N t +1
E {R k
t+1 }=s i t+ 1 、 s '
< 0......(4. 24)𝐸𝑀𝐵𝐸𝐷 𝐸𝑞𝑢𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛 . 𝐾𝑆𝐸𝐸 3 ¿ 𝑀𝐸𝑅𝐺𝐸𝐹𝑂𝑅𝑀𝐴
Qt K tj+1 Qt K tj+1

そのうち、t 期では、企業 j は t+1 期に使用するために資本を購入する。購入した

資本の数を K tj+1とし、下のマーク t+1 は資本が実際に使用されている期間を示し、

上のマーク j は企業を示す。t 期の単位資本による支払価格は Q t である。t 期末(t+

1 期に入る前)に、企業 j は利用可能な純価値 N tj+1を持っている。資本支出Q t K tj+1と

純資産 N tj+1との差額を支払うために、企業 j はローン Btj+1を借入することが必要だ。

また、総資本利益率は Rkt +1、無リスク貸借金利は i t +1、企業の外部融資報酬因子は


( )
j
N t +1
s j である。31
Qt K t +1

2003 年、ガトラー、ギルクリスト、ナタルチは、企業の資本に対する需要方程式

を次のように変形する:

[ ( )] {
Bt +1

Et {1+ Rkt +1 }= 1+ χ
Pt
N t +1
P
}
E t (1+i t ) t ......(4. 25)
Pt +1

( )
Bt +1
' Pt
χ > 0 、 χ ( 0 )=0 、 χ ( ∞ )=∞ ......(4. 26)𝐸𝑀𝐵𝐸𝐷 𝐸𝑞𝑢𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛 . 𝐾𝑆𝐸𝐸 3 ¿ 𝑀𝐸𝑅𝐺𝐸𝐹𝑂𝑅𝑀𝐴𝑇
N t +1

( )
B t+1
そのうち、 Pt は 企 業 の 外 部 融 資 報 酬 因 子 、 Pt は t 期 の 消 費 価 格 指 数 、
χ
N t +1

{
Et (1+ it )
Pt
P t+1 }
は与信市場摩擦のない融資の総コスト、(1+i t )
Pt
Pt +1
実質金利総額であ

る。 Et {1+ Rkt +1 }は t 期に取得した資本を使用した後、t+1 期に発生した予想総収益率

である。32

式(4.4)r =r p +r f から分かるように、企業の貸借対照表の状況が好転すると、

金融資本家に支払うリターン率 r f (外部融資の総コスト )が減少し、企業の貸借対照

表の状況が悪化すると、金融資本家に支払うリターン率 r f (外部融資の総コスト)が向

上する。r f が増加すれば、新たな投資としてのr p が減少することは明らかだ。

4-4 フィードバックリング

31
BERNANKE,GERTLER and GILCHRIST 1999「THE FINANCIAL ACCELERATOR IN A
QUANTITATIVE BUSINESS CYCLE FRAMEWORK」page.1342-1385
32
Gertler,Gilchrist and Natalucci 2003「External constraints on monetary policy and the
financial accelerator」
金融の内生不安定性:正のフィードバックリング

李黎力(2017)はミンスキーのすべての経済理論を整理した後、金融の内生不安

定性についてまとめた。要約すると、金融不安定性の主旨には 2 つの意味が含まれ

ている:第一に、現代資本主義経済の安定成長は自然とキャッシュフロータイプの

変化を生み、金融構造の内生地が穏健から脆弱に向かうことを招き、第二に、繁栄

期間の正常的な経済運営は金融脆弱性を簡単に金融危機に変える可能性がある。

経営の不確実性に直面して、企業は資本資産の保有と投融資という「投機的な意

思決定」を行う際には、正常な予測可能な負債資本比を確定しなければならない。

キャッシュフローの視点から見ると、これは企業がキャッシュフロー支払承諾と

キャッシュフロー流入との間の適切な関係を決定することを要求している。その本

質は、合理的な負債構造と安全限界を必要とすることである。つまり、ミンスキー

の 3 つの融資分類であるヘッジ融資、投機融資、ポンツイ融資。それは企業家や銀

行家の慣例にかかっている。自身の利益最大化を目指し、経済活動の融資を行う。

景気の拡大が続く間、このような通常の負債資本比は上昇し続け、合理的な負債構

造は緩和されるが、安全限界は徐々に狭くなる。言い換えれば、企業から見れば、

この時負債資本比を高めることは利益を増やす便利な方法である。

表 4.2 に示すように、債務融資が投資増加を促進したと仮定すると、簡略化され

たカレキ利益方程式によると、総投資(I)の初期増加は同量の総利益( Π )の増加

をもたらす。ミンスキーの投資金融理論によると、実現した利益の増加は 3 つの効

果によって投資を増やすことになる:

第一に、投資準備期間の内部資金( Q IF)を改善したため、金額を増加した、第二

に、資本資産導入投資が生産に使用された後にもたらす予想利益を高めたため、資
本資産価格、すなわち投資の需要価格( P Id=P K =C K ( Π e ))を「急上昇」させた、

第三に、将来の利益が債務を上回る自信(Conf)を高めたため、借り手リスクと借

り手リスクを下げ、許容できる負債資本比を高め、さらに債務融資能力を高めた。

この 3 つの効果の共通作用は投資の 2 回目の増加をもたらし、その一部は内部融資

( I IF )、一部は外部債務融資( I EF )によって実現された。この 2 回目の投資の増加

は、出発点の総投資(I)に戻った後、過去の予想を裏付けることで予想利益、資産

価格、新たな投資の増加をさらに招き、正のフィードバックリングを形成した。33

33
李黎力 2017「ミンスキーの経済思想研究」page.213-218
表 4.2 ミンスキーの正のフィードバックリング

(表 4.2 は李黎力 2017「ミンスキーの経済思想研究」により抜粋)

債務デフレ理論:負のフィードバックリング

フィッシャー(1929)はウォール街崩壊とその後の大不況の後に債務デフレ理論

を提案した。債務デフレとは、デフレがすべての債務の実際の価値を増やし、消費

者ローンや担保ローンの返済を滞らせ、景気後退や不況を招くという理論である。

違約や抵当品の価値低下が銀行資産を侵食し、銀行の倒産が急増し、融資が減少し、

最終的に支出が減少した。

分析の起点は、経済はある時点で「過剰債務」の状態にあり、債務者や債権者は

慎重になるため、債務の返済を引き起こすことが多い。①債務返済による資産の廉

価売却、および②預金通貨の収縮(銀行ローンの返済のため)、および通貨の流通

速度の低下。預金通貨の収縮と通貨流通速度の低下は、資産の廉価売却の場合、③

価格水準の低下、すなわち通貨の購買力の上昇を引き起こす。取引市場は外来の

「再インフレ」の増分通貨介入がないため、必然的に④企業資産の純価値のさらな

る低下があり、これは企業の倒産と⑤利益の低下を加速させた。これはまた、営業

損失に陥った企業が⑥産出、取引、雇用労働を減らすことにつながる。企業の損失 、

倒産、失業は、⑦悲観的な感情と自信の喪失を引き起こし、これらは逆に⑧通貨の
買いだめ行為と預金通貨の流通速度の更なる低下を招いた。以上の 8 つの変化のう

ち、⑨金利も複雑な変動、すなわち名目金利の低下と実質金利の上昇を生じる。実

際のデフレでは、これら 9 つの変化が発生する時間的な優先順位は上記の論理的な

優先順位と異なり、いくつかの変化が繰り返される可能性がある。34

4-5 バランスシート不況理論:「陽」と「陰」局面

バーナンキ、ガトラー、ギリアリスト(1998)はバランスシート(貸借対照表)

の変化に基づいて融資コストの変化をもたらす金融アクセラレーター理論を提案し

た後、リチャード・クー(2006)もバランスシートの不況に基づく景気サイクル理

論を提案した。要約すると、バランスシートの不況の誘因は全国的な資産価格バブ

ルの崩壊であり、これらのバブルの発生は一般的に民間部門の経済見通しに対する

過度な自信に由来している。景気過熱による資産価格の高騰は必然的に社会の批判

を呼び、政府や中央銀行に通貨政策の引き締めを迫ることでバブルの崩壊を招いた 。

もちろん、バブルが崩壊したのは、自身の過度な膨張によるものもある。バブル崩

壊による資産価格の暴落は、企業のバランスシートに深刻な破壊をもたらし、企業

に債務返済を強要し、企業の信用需要を抑制する。

リチャード・クー(2006)のバランスシート不況理論によると、資産価格バブル

をこのサイクルの起点とすると、サイクル全体の過程は以下のようになる:

(0)資産バブル。

(1)金融政策の引き締めによるバブル崩壊。

(2)資産価格の暴落により企業債務が資産を上回り、全体経済がバランスシート不

34
Irving Fisher 1932「BOOMS & DEPRESSIONS: SOME FIRST PRINCIPLES」中国語翻訳本
況に陥った。

(3)企業は利益最大化から負債最小化の経営戦略に転換し、金融政策が失効し、政

府は財政政策に頼って総需要を維持しなければならない。

(4)やがて企業が債務返済を完了し、バランスシート不況が終わった後、企業の負

債拒絶症が残り、金利の低迷が続き、経済活動が元の調子に戻らない。

(5)企業の負債拒絶症が徐々に解消し、積極的に資金調達を開始する。

(6)民間部門の資金需要が再び回復し、金融政策が再び効力を発揮する。同時に、

35
財政赤字による民間投資のクラウディングアウト が問題になる。

(7)金融政策は財政政策に代わって政府の主要な経済政策となる。

(8)景気が好況であると同時に、民間部門は活力に満ち、自信を取り戻す。

(9)民間部門の過信が次のバブルを引き起こす。

リチャード・クー(2006)はこのサイクルを「陰」の局面と「陽」の局面の 2 つ

の部分に分けた。(1)から(4)の段階は「陰」の局面を構成し、(5)から(9)

は「陽」の局面を構成している。また、「陰」と「陽」の局面の最も主要な違いは

民間部門の財務状況である。36

35
crowding out 〔押し出す意〕政府が資金需要をまかなうために大量の国債を発行すると,それに
よって市中の金利が上昇するため,民間の資金需要が抑制されること。「MOJI 辞書」より抜粋
36
リチャード・クー 2006「“陰”と“陽”の経済学」page.200-206
第5章 金融市場は“病気”になり始めた

5-1 “病変”の過程:債務拡張段階の終了

5-1-1 長期的な利下げ回廊の突き当たり

FF レート(フェデラル・ファンド金利)とは、米国のフェデラル・ファンド市場

の金利のこと。FF 市場とは、米国の銀行が中央銀行に預けている預金を貸し借りす

る市場のこと。FF 市場にて米国の銀行間で無担保で 1 営業日で貸し借りを行い、資

金融通している。米国金融市場では、FF レートの重要な特徴の一つは、FF レートが

米国の中央銀行の政策金利である点である。伝統的な金融政策は中央銀行が短期金

利を操作するとされるが、この短期金利とは米国では FF レートを指す。37

38
インター・バンク市場 では、FRB は自身の貸し借り金利だけを調節できるた

め、最初からインター・バンク・レートを調節する能力を持っているわけではない 。

その作用メカニズムは、FRB が FF レートを下げると、FRB への貸し借りのコスト

が低く、普通銀行間の貸し借りが普通銀行と FRB 間に移行するため、インター・バ

ンク・レートが低下することになるはずだ。FRB が FF レートを引き上げると、市場

資金が比較的不足している場合、インター・バンク・レートが上昇圧力にさらされ

るため、FRB の FF レートとともに上昇するのは必然的である。しかし、市場資金が

比較的緩和されている場合、FRB は FF レートを引き上げ、FRB に貸し借りしてい

る普通銀行は他の普通銀行に移り、FRB のこの時の FF レート引き上げ行為は期待で

服部孝洋 2022「フェデラル・ファンド(FF)市場および FF レート(FF レート)入門」


37

金融機関などの限定された市場参加者が資金の運用と調達を行う市場のこと。「銀行間取引市場」と
38

もいい、外国為替を対象とする市場と短期資金を取引するコール市場や手形市場といった短期金融市場
がある。市場といっても取引所があるわけではなく、電話やネットワークを通じて取引される。金融機
関と短期金融市場で金融機関同士を仲介する短資会社がインターバンク市場の参加者である。それに対
し、金融機関が輸出入業者や個人を相手に外国為替を取引する市場を対顧客市場という。
(出所)「三井住友 DS アセットマネジメント」より抜粋
きない。しかし、FRB は公開市場で国債を売却し、普通銀行の過剰な超過準備金を

吸収することができ、インター・バンク市場の資金難をもたらし、インター・バン

ク・レートと FRB の FF レートの同時上昇を余儀なくさせた。FRB にはこのように

インター・バンク市場に介入する能力があり、何度も操作を繰り返すと、合理的な

インター・バンク市場予想が形成され、FRB が FF レートを高める限り、インター・

バンク市場が相応の行動をとるからだ。39

以上、FF レートの上昇は、銀行の FRB への借入金の融資コストを増加させ、

FF レートの下降は、銀行の FRB への借入金の融資コストを減少させることになる。

また、3-2 の金融不安定性仮説の長い循環視点に基づき、金利変動を検討する時間

帯を延長する。表 5.1 に示すように、1982 年から 2022 年までの FF レートの変動

グラフ。

表 5.1 FF レートの変動グラフ

(資料データは wind によって、それから筆者は自分で絵を描いた。)

表 5.2 に示すように、筆者は FF レートの動き曲線を一つの「回廊」に入れた。約

35 年の間に FF レートが波の形で下降し、この「回廊」に閉じ込められていること

39
Baidu 百科「連邦基金金利」より抜粋
がわかる。それを「長期的な利下げ回廊」と呼ぶ。 2009 年から 2016 年までの間、

FF 金利の運動曲線によって金利が下がらないことが分かった。「回廊」が行き止ま

りになったので「長期的な利下げ回廊の突き当たり」と呼ぶ。

表 5.2 FF レートの長期的な利下げ回廊

(資料データは wind によって、それから筆者は自分で絵を描いた。)

5-1-2 債務対資本比と違約率の上昇

表 5.3 に示すように、2000 年にサブプライム住宅優遇政策が実施された後、4-4

のフィードバックリングにより、サブプライムローン事業に従事する金融機関は自

身の利益最大化を目指し、経済活動の融資を行うので、米国民の負債対資本比は大

幅に上昇した。しかし、4-1 のミンスキー融資方式の数式分析によると、3 つの融資

方式の判定に基づいて、検討が必要な要素は金利と負債比がある。表 5.4 に示すよ

うに、サブプライムローン政策が推進された 2000 年から金融危機勃発後の 2017

年まで、債務対資本比と FF レートを組み合わせて分析したところ、FF レートの変

動は 2000 年 3 月から 2004 年 3 月までの下降段階、2004 年 4 月から 2007 年 6 月

までの上昇段階に分けられ、また、債務対資本比は 2000 年から 2008 年までの間、


大幅に上昇段階のみにあることが分かった。

表 5.3 米国国民部門の債務対資本比

表 5.4 債務対資本比と FF レートの組合せ

(表 5.3、表 5.4 は wind によって、それから筆者は自分で絵を描いた。)

表 5.5 に示すように、ミンスキー融資方式の数式分析図により、企業については 、

金利i Aを起点として分析し、 i Aを維持し、債務対資本比が δ A 1 →δ A 2 → δ A 3 に徐々に

上昇すると、融資方式はヘッジ融資→投機融資→ポンツイ融資になる。ケース 1 で
は、金利が i A →i D →i E に上昇し、企業がポンツイ融資区域に深く陥り、融資構造が

さらに不安定になり、違約事件が発生する確率が増大した。ケース 2 では、金利が

i A →i B → i Cに下がり、企業はポンツイ融資区域から抜け出して最終的にヘッジ融資

区域に入り、融資構造が安定した。表 5.4、表 5.5 から分かるように、債務対資本

比の上昇段階で FF レートの下向き運動は、金融構造の不安定性を低下させる。債務

対資本比の上昇段階で FF レートの上向き運動は、金融構造の不安定性を高める。表

5.2、表 5.3、表 5.5 から分かるように、30 年にわたる債務の蓄積により、金融構

造の安定性は、金利の変動の影響を受けやすくなる。最終的には、FF レートが少し

上昇すれば、4-3 の金融アクセラレーター因子の特性に応じて、最後の借り手(ロー

ンで住宅を買う人)に渡される金利が大幅に上昇し、金融構造をさらに脆弱にするの

があるという現象が存在する可能性がある。つまり、この時期に大量の違約事件が

発生する可能性が高い。
表 5.5 ミンスキー融資方式の数式分析図では金利の動き

(数式分析図は式 4.16、式 4.17 によって、それから筆者は自分で絵を描いた。)

以下のデータから上記の推論を検証することができる。表 5.6 に示すように 、

2006 年 6 月以降、サブプライム貸付の違約割合は大幅に上昇し始めた。表 5.7 に示

すように、2006 年 6 月以降、全部銀行、資産上位 100 位銀行と資産ランキング

100 以外銀行の違約率は大幅に上昇し始めた。表 5.8 に示すように、データの一部

が欠落しているためだが、2006 年 9 月から住宅ローン受戻権喪失の事例数の上昇は

金融危機が終わった 2010 年 9 月まで続いていることもわかる。


表 5.6 米国住宅市場ではプライム貸、ALT-A 貸付とサブプライム貸付の違約割合

18.00
16.00
14.00
12.00
10.00
8.00
6.00
4.00
2.00
0.00
03 03 04 04 04 05 05 05 06 06 06 07 07 07 08 08 08 09 09 09 10
/ 20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
/0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0
06 10 02 06 10 02 06 10 02 06 10 02 06 10 02 06 10 02 06 10 02

米国 : 全体違約割合 : プライム貸付 単位 : %
米国 : 全体違約割合 :ALT-A 貸付 単位 : %
米国 : 全体違約割合 : サブプライム貸付 単位 : %

表 5.7 米国住宅市場では全部銀行、資産上位 100 位銀行と資産ランキング 100 以外銀行の違約率

14.00

12.00

10.00

8.00

6.00

4.00

2.00

0.00
95 96 97 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17
/ 19 /19 /19 /19 /19 /19 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
/0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0
03 02 01 12 11 10 09 08 07 06 05 04 03 02 01 12 11 10 09 08 07 06 05 04 03

米国 : 違約率 : 住宅担保貸付 : 全部銀行 単位 : %


米国 : 違約率 : 住宅担保貸付 : 資産上位 100 位の銀行 単位 : %
米国 : 違約率 : 住宅担保貸付 : 資産ランキング 100 以外の銀行 単位 : %
表 5.8 米国では住宅ローン受戻権喪失の事例数

400000

350000

300000

250000

200000

150000

100000

50000

0
06 07 07 08 08 09 09 10 10 11 11 12 12 13 13 14 14 15 15 16 16 17
/ 20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20 /20
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
/0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0
09 03 09 03 09 03 09 03 09 03 09 03 09 03 09 03 09 03 09 03 09 03

米国 : 住宅ローン受戻権喪失の事例数

(表 5.6、表 5.7、表 5.8 は wind によって、それから筆者は自分で絵を描いた。)


5-1-3 住宅価格指数の緩やかな動き

なぜ債務対資本比と違約率の上昇が始まったのかは 2006 年 6 月以降だが、2007

年 2 月になってようやく米国の住宅ローンリスクが浮上し始めた。主に、表 3.2 か

ら分かるように、米国 CoreLogic 住宅価格指数は 2006 年 7 月から 2007 年 6 月ま

では緩やかな状態である。

3-3 のサブプライムローンに関する証券によると、合成型 CDO は、他のサブプラ

イム関連証券の価値を保証しているが、「時間差」は移行されただけで、解消され

ていないことが分かった。保険会社や銀行として住宅ローンの契約を手に入れて

オークションで販売するにも、一定の時間がかかるため、また、同時期に違約事件

が大量に発生した場合、住宅購入市場では、競売にかけられた住宅を引き受けるた

めの資金がさらに必要になり、住宅価格の上昇が続くにつれて、予想される住宅購

入者が「住宅価格が高すぎると思う」ために待つことを選ぶ可能性も大幅に上昇し

ている。すると、保険会社や銀行がキャッシュフローと引き換えに「違約の契約」

を利用できない場合、新しい CDS の発行を停止する可能性が高い。そうであれば、

後続の合成型 CDO および混合型 CDS の数は減少する。

4-2 の現金残高方程式によると、表 5.9 から分かるように、2000 年から 2006 年

の間、住宅空室ユニット合計の伸び率は S&P/CS 住宅価格指数と家庭資産の資産

担保債券発行額(ABS CDO)の伸び率より明らかに小さく、2000 年からの急速な

上昇時に金融機関が発行した住宅ローン債務によって推進されたことを説明した。

つまり、金融機関は発行された住宅ローン債務を通じて、この時期の住宅価格の上

昇を推進した。
表 5.9 住宅空室ユニット合計、S&P/CS 住宅価格指数、家庭資産の資産担保債券発行額

(資料データは「前瞻数据库」(https://d.qianzhan.com/)によって、それから筆者は自分で絵を描いた。)

歴史資料によると、2007 年 2 月 13 日に HSBC ホールディングスは在米サブプラ

40
イムローン事業のために 18 億ドルの貸倒引当金 を増加させ、Countrywide

Financial Corp (米国最大サブプライムローン 会社)は融資を減少させ、 New

Century Financial(米国第 2 位サブプライムローン機構)は利益警報を発表し 、

2007 年 3 月 13 日に New Century Financial は破産寸前と発表し、米国株は急落し、

ダウは 2%、スタンダードは 2.04%、ナノは 2.15%下落した。2007 年 4 月 4 日に

従業員の半数を削減した後、New Century Financial は破産保護を申請した。2007

年 4 月 24 日の米国 3 月の住宅販売台数は 8.4%減少した。41 違約事件の増加と住

宅価格の伸びの鈍化により、サブプライムローン事業に従事する一部の金融機関が

赤字になった。そのため、多くの金融機関はサブプライム関連債券の発行を縮小せ

40
売上債権(受取手形、売掛金)の回収不能による損失に備える引当金のこと。将来の回収不能額を個
別の債務者ごとに見積もった個別貸倒引当金と、過去の貸倒実質率などに基づいて計上された一般貸倒
引当金の 2 種類がある。実際に受取手形や売掛金などが回収不能となった場合はその債権の金額を貸倒
損失として費用計上し、貸倒引当金と相殺する。(出所)野村証券・「証券用語解説集」より抜粋
41
Baidu 百科「2008 年米国サブプライム危機」より抜粋
ざるを得なくなるだろう。最終的に、2007 年に家庭資産の資産担保債券発行額は減

少し始めた。資金の供給が不足し、住宅価格が大幅に下落し始め、危機が広がり始

めた。2007 年 8 月 11 日、世界各地の中央銀行は 48 時間以内に 3262 億ドルを超

える資金を投入した。8 月 14 日、米国の欧州と日本の 3 大中央銀行は再び 720 億ド

ルを超える救済ドルを注入した。8 月 22 日、FRB は金融システムに 37 億 5000 万

ドルを追加出資した。8 月 23 日、FRB は再び金融システムに 70 億ドルを投資した。

8 月 28 日、FRB は再び金融システムに 95 億ドルを投資した。8 月 29 日、FRB は

金融システムに 52.5 億ドルを追加出資した。8 月 30 日、FRB はさらに金融システ

ムに 100 億ドルを投資した。10 月 13 日、米財務省は、苦境に陥っている担保証券

を購入するために、各金融機関が 1000 億ドル相当の基金を設立するのを支援した。

11 月 9 日、約 2 カ月後、米銀行、シティバンク、モルガン・スタンレーの 3 行は、

少なくとも 750 億ドルを出して市場のサブプライムローン危機から脱出することで

合意した。11 月 26 日、バンク・オブ・アメリカはシティ、JP モルガン・チェース

を率いてスーパーファンドに 800 億ドルを拠出し始めた。12 月 19 日、FRB は市場

に 28 日間 200 億ドルの資金を注入した。42 2008 年から家庭資産の資産担保債券

発行額は急激に減少したが、住宅価格指数はこれ以上下落しなかったのは、米政府

が 2007 年後半以降に住宅市場に流動性を注入し始めたからだ。2007 年 12 月 6 日、

ブッシュ米大統領はホワイトハウスで、米政府と金融機関が立案したサブプライム

ローンの解消計画を発表した。この民間企業の合意は、返済難に直面している家主

が再び変動金利ローンを申請することに協力し、より高額な借金の返済を回避し、

現在の金利を「一定期間」凍結することに同意する。これにより、100 万戸以上の

42
同上
ローン購入者が今後 2 年間、裁判所の住宅競売を免れて償還権を失うことになる見

通しだ。43

しかし、これらの措置は、危機の蔓延を完全に抑制するものではなかった。表

5.10 から分かるように、高すぎる家庭資産の資産担保債券発行額( ABS CDO)対

住宅ローン関連債券発行額(RMBS)比により、米政府の措置は住宅価格の大幅な

下落を避けることができるが、サブプライムローンの泥沼に陥っている一部の金融

機関を救うことはできない。これで、2000 年から始まったサブプライム市場の債務

拡張段階(陽局面)は終わり、2007 年からサブプライム市場は債務収縮段階(陰局

面)に入った。

表 5.10 家庭資産の資産担保債券発行額対住宅ローン関連債券発行額比

600000 200.0
181.5 186.6 180.0
500000 171.1
160.0
400000 140.0
120.0
300000 97.9 100.0
89.7
80.0
200000 61.9 60.5 67.3 60.0
100000 40.0
2.7 1.0 2.3 2.4 2.0 20.0
0 0.0
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12
/ 20 / 20 / 20 / 20 / 20 / 20 / 20 / 20 / 20 / 20 / 20 / 20 / 20
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
/0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0 /0
01 01 01 01 01 01 01 01 01 01 01 01 01

米国:債券発行額:住宅ローン関連債券 単位: 10 億ドル


米国:資産担保債券発行額:家庭資産 単位: 10 億ドル
米国:家庭資産の資産担保債券発行額対住宅ローン関連債券発行額比

(資料データは「前瞻数据库」(https://d.qianzhan.com/)によって、それから筆者は自分で絵を描いた。)

5-2 “病気”の悪化:債務収縮段階の開始

5-2-1 債務返済能力の減退と未済債務の減少

表 5.6、表 5.7、表 5.8、表 5.11、表 5.11 から分かるように、大量に発生した違

43
サブプライムローン波乱の研究課題ゼミ 2008・4 「Subprime mortgage crisis」page.171-172
約事件は、サブプライムローンの借り手として、満期の債務を支払うことができな

いほど返済能力が衰えていることを示している。フィッシャー(1929)の債務デフ

レ理論によると、現在の時点で「過剰債務」の状態にあり、違約事件が発生する前

は借り手が収入で債務を返済していたが、違約事件が発生した後は借り手は自分の

資産を売却してキャッシュフローと引き換えに債務返済に使わざるを得なかった。

住宅担保貸付の信用格付けによると、サブプライムローンの借り手として、彼らの

価値ある資産は、ほとんどローンで購入した住宅しか残っていない。 住宅ローン受

戻権喪失について、金融機関は住宅の競売などの処理を行い、得た資金は先にロー

ンを返済する。しかし、競売時の住宅価格が購入時の住宅価格を下回ると、債務超

過になる。サブプライムローンの借り手の「債務超過と未済債務の減少」の存在で

金融機関の貸借対照表が悪化し始めた。フィッシャー(1929)の債務デフレ理論と

リチャード・クー(2006)のバランスシート不況理論によると、金融機関は債務デ

フレの段階に入っており、「陰」の局面とも言える。
表 5.11 米国国民の住宅ローン未済債務

表 5.12 米国国民の住宅ローン未済債務対 GDP 比

(表 5.11、表 5.11 は wind によって、それから筆者は自分で絵を描いた。)

5-2-2 ミンスキー・モーメント

債務収縮段階が進むにつれて、資産価格が崩壊する時刻、いわゆる「ミンス
キー・モーメント」が発生する。歴史資料によると、ウォール街からの 174 億ドル

の強制債務に対して、米国第 2 位のサブプライムローン会社であるニューセンチュ

リーフィナンシャル(New Century Financial Corp)は 2007 年 4 月 2 日、破産保

護を申請し、従業員の 54%を削減すると発表した。2007 年 8 月 2 日、ドイツ工業

銀行は利益警報を発表し、その後、傘下の 127 億ユーロ規模の「ラインランド基

金」(Rhineland Funding)と銀行自身が米国の不動産サブプライムローン市場業

務に少量参加したため、82 億ユーロの損失が発生したと推定された。米国第 10 位

の住宅ローン機関である米国住宅ローン投資会社は 2007 年 8 月 6 日、新世紀金融

会社に続いて米国で再び破産を申請する大型住宅ローン機関として裁判所に破産保

護を申請した。2007 年 8 月 8 日、米国第 5 位の投資銀行ベアーストーンは、同じく

サブプライムローンの嵐のために傘下の 2 つのファンドが倒産したと発表した。

2007 年 8 月 9 日、フランス第一銀行のパリ銀行は傘下の 3 つのファンドを凍結する

と発表した。同様に米国のサブプライム債に投資したことで大きな損失を被った。

日本第 2 位の銀行みずほ銀行の親会社であるみずほグループは 2007 年 8 月 13 日、

米サブプライムローン関連損失 6 億円を計上したと発表した。日、韓銀はすでに米

サブプライムローンの嵐で損失を出している。UBS 証券ジャパンの試算によると、

日本の 9 大銀行が保有する米国のサブプライムローン担保証券は 1 兆円を超えてい

る。その後、シティグループも 2007 年 7 月のサブプライムローンによる損失が 7

億ドルに達したと発表した。44

44
Baidu 百科「2008 年米国サブプライム危機」より抜粋
第6章 まとめ

筆者は前に出した 3 つの疑問に答えた。

まず、なぜ米国全体の住宅価格の伸び率は 2000 年以降に急激に増加するのだろ

うか。これは、米政府がインターネットバブルが終わった後も、景気浮揚を継続す

るために住宅市場の規模を拡大することを選択したため、サブプライムローン政策

を推進しているためだ。金融機関は借り手の融資条件を下げることで、サブプライ

ム関連証券を大量に発行し、住宅市場に大量の資金を提供しているため、住宅価格

が急速に増加している。

次に、米国資産担保債券市場では、なぜ 2000 年から 2006 年まで ABS の発行部

数が 6 年も上昇し続けたのか。これは、信用格付け制度の下でサブプライムローン

を行う国民は、その違約事件が発生する確率が高いためである。そのため、金融機

関は資産証券化ツールを利用して、低リスクかつ安定した収益を持つサブプライム

ローン関連 ABS 証券を作成している。サブプライム関連商品をより国際市場で販売

することを目的としている。

最後に、米国資産担保債券市場では、なぜ 2007 年から 2009 年にかけて ABS の

発行部数が激減したのか。これは、長期的な FF レートの低下傾向により、国民の負

債比が上昇し続け、外部融資コストが増加し、借り手の返済能力が衰退したためで

ある。住宅市場ではポンツイ融資の割合が上昇し、市場の金融構造の脆弱性が高

まっている。違約事件が大量に発生すると、住宅市場は債務収縮の段階に入らざる

を得なくなる。

債務拡張段階と債務収縮の段階について、3-2 の記述から、金融の不安定性分析
は長期的な循環視点に基づいていることがわかる。ミンスキーの 3 つの融資方式間

の転換は、金融構造が「安定状態」から「不安定状態」に入り、4-1 の金融不安定

仮説の数式分析では、「不安定状態」が実質的に「返済能力の衰退」であることが

分かった。4-2 の現金残高方程式によると、商品価格に影響する 2 つの重要な要素

を探究する。また、商品価格は資本資産の収益率と密接に関連している。金融アク

セラレーターのメカニズムでは、外部融資コストは、貸借対照表の状況が好転する

につれて増加し、貸借対照表の状況が悪化するにつれて減少する。また、 バーナン

キ、ガトラー、ギリアリスト(1994)の研究によると、景気の下降循環の金融アク

セラレーター因子効用は、景気の上昇循環の金融アクセラレーター因子効用よりも

大きい。健全な信用システムにおいて、外部融資コストと債務返済能力は負の相関

関係である。そのため、長期的な視点と債務返済能力の強弱に基づいて、 リチャー

ド・クー(2006)の「陰・陽の経済学」で検討すると、2 つのフィードバックリン

グが存在する。1 つは正のフィードバックリングであり、債務返済能力の強勢期の

債務拡張段階(陽の局面)、すなわち資本資産の累積時期である。もう 1 つは負の

フィードバックリングであり、債務返済能力の弱体期の債務収縮段階( 陰の局面)、

すなわち資本資産の処分時期である。具体的な運転状況を表 6 に示す。
表 6 債務規模の拡大段階と収縮段階のまとめ
第7章 今後の課題

以上の研究に基づいて、筆者は今後実証分析を通じて、VAR パネルモデルを利用

して、サブプライムローン市場の関連データについて討論し、長期的な視点から見

て、基準金利の低下傾向が終わった後、企業や個人は大量の債務を蓄積したため、

債務返済能力の衰退に伴い、債務の拡張期を終了したことをさらに証明したいと考

えている。
参考文献

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