You are on page 1of 31

生物学II

第7回:遺伝子発現の制御と遺伝子工学

エッセンシャル・キャンベル(第6版)の第11章「遺伝子の発現制御」の「遺伝子発現
制御の目的と機構」と第12章「DNAテクノロジー」の「遺伝子工学」および「DNA鑑定
と科学捜査」を予習しておいてください
セントラルドグマ:
すべての細胞は遺伝情報をDNA→RNA→タンパク質の
向きで発現する

転写(transcription)
→DNAにヌクレオチドで書か
れた情報を, RNAにヌクレオ
チドを用いて写し取る

翻訳(translation)
→RNAにヌクレオチドで書か
れた情報を, アミノ酸に変換
する
遺伝子発現の調節の様々な段階

真核生物の遺伝子発現におけるさまざまな調節
遺伝情報の流れと転写開始の調節
原核生物の転写のonまたはoffによる調節

転写調節機構の理解は細菌やファージを用いて、特定の遺伝子
発現をonまたはoffに出来ない突然変異体の単離と解析からもた
らされた

・転写をonにできない変異体→野生型であれば,転写しなければ
いけない条件でも転写が起こらない
・転写をoffにできない変異体→野生型で,転写してはいけない条
件でも転写が起こり続ける
転写のonまたはoffによる調節
原核生物の転写のonまたはoffによる調節
転写調節機構の理解は細菌やファージを用いて、特定の遺伝子
発現をonまたはoffに出来ない突然変異体の単離と解析からもた
らされた

・転写をonにできない変異体→野生型であれば,転写しなければ
いけない条件でも転写が起こらない=( )の調節が異常
・転写をoffにできない変異体→野生型で,転写してはいけない条
件でも転写が起こり続ける =( )の調節が異常
転写のonまたはoffによる調節
転写のonとoffの組み合わせによる調節
真核生物における転写調節

基本転写因子以外に,数多くの遺伝子調節タンパク質がはたらくことによって,
特定の遺伝子の発現が可能になる
遺伝子調節タンパク質
・原核生物と同様で,転写を活性化するもの(遺伝子活性化
タンパク質)と転写を抑制するもの(遺伝子抑制タンパク質)
がある。
・遺伝子調節タンパク質は,DNA結合ドメインと転写活性化
(抑制)ドメインからなる。これらのドメインは,単一のタンパク
質に含まれる場合もあれば,それぞれが独立のタンパク質と
して発現し,細胞内で結合することではたらく場合もある。
転写調節の仕組み
調節配列

活性化
タンパ
ク質
遺伝子活性化タンパク質は
RNAポリメラーゼを
プロモーターに呼び寄せる

複数の遺伝子調節タンパク質が1つの
遺伝子の転写調節に関わる

1つの遺伝子調節タンパク質が複数の
遺伝子の転写調節に関わる

遺伝子調節タンパク質の組み合わせに
より遺伝子発現の程度が調節される
プロモーターにおける情報の統合
遺伝子のクローニングと利用
制限酵素(Restriction endonuclease)

二本鎖DNAを特定の塩基配列部位で
切断して、断片化する

もともとは、細菌がファージなどの外来
性DNAから身を守るため、それらを分
解・排除するべく産生する酵素として発
見された

EcoRI:Echerichia coli R(大腸菌R株)


HindIII:Haemophilus influenzae d
(インフルエンザ菌d株)

歴史的にインフルエンザの原因菌として同定されたこと
で、この名称がついている
(現在は原因菌としては否定されている)
DNA断片どうしをつなげる

DNAに用いられる酵素
は,
DNAリガーゼです

DNAリガーゼはこの授業
で既に扱っています。
・・どこで出てきたか思い
出せるでしょうか?
制限酵素をつかうと何が出来るのか?
→DNAの断片化やクローニング
組換えDNAだけを選抜する
‥薬剤耐性の付与や栄養要求性の相補が一般的
組み換えDNAを増やす

こうすることで、目的のDNA断片を理論上無限に得ることができる
ゲノム断片のより強力な取り出し方
→PCR(Polymerase chain reaction)
①PCRでは,高温でDNAを処理することで2本鎖を分離する

(細胞内でのDNA複製では,染色体中の複製起点の2本鎖
を特別なタンパク質が1本鎖にする)
②増幅したい配列の両端の配列をもつ短いDNA(プライ
マー)と鋳型を結合させる

鋳型DNAの5’末端 鋳型DNAの3’末端

自分で増幅したいDNA
(右図の紫色の↔︎部分)の
末端と同一の配列を持つ
プライマーを加える 解離したDNA

鋳型DNAの3’末端 鋳型DNAの5’末端
③プライマーの3’末端からDNAポリメラーゼによるDNA合成が始まる

鋳型DNAの5’末端 鋳型DNAの3’末端

鋳型DNAの3’末端 鋳型DNAの5’末端
DNAの長さによる分析

・核酸は負の電荷を持っている
ので、水溶液中では,陰極から
陽極へ移動しようとする。これを
利用した分析法が,電気泳動で
ある。

・数百塩基以上のDNA分子の
分析にはアガロース(高度に精
製した寒天)のゲル,それより短
いものはポリアクリルアミドのゲ
ルが用いられる。ゲル中では,
大きな分子の移動が遅く,小さ
な分子は速く移動する。
DNAの電気泳動
PCRと電気泳動を組み合わせた
DNA鑑定
PCRと電気泳動を組み合わせた
DNA鑑定
新型コロナウィルスのPCR検査

「PCR検査」は,毎日のように話題になっています

このPCR検査は,今日説明したPCRを用いています。

しかし,単にコロナウィルスを反応液に入れてPCRのサイクルを
回しても,何も検出されません・・・。

なぜでしょう?

それは,新型コロナウィルスがRNAウィルスであり,PCRで
用いるDNAポリメラーゼは,RNAを鋳型にすることができな
いからです。

では,どうやっている検査をしているのでしょう?
逆転写酵素(reverse transcriptase)

HIVウィルスとゲノムの挙動
一部のRNAウィルス(レトロウィル
ス)はRNAのゲノムを鋳型としてDNA
を合成する。
このときはたらく酵素が逆転写酵素
である。

逆転写酵素を使うことで,コロナウィ
ルスのゲノム(RNA)と相補的な配列
を持つDNAを合成できる。

現在では,モロニーマウス白血病ウィルス(M-MLV)やトリ骨髄芽球症
ウィルス(AMV)由来のものが市販されており,研究や検査の現場で用
いられている。
復習のポイント
今回の講義の中心部分は,エッセンシャル・キャンベル(第6版)の第11章「遺伝子の発現制
御」の「遺伝子発現制御の目的と機構」と第12章「DNAテクノロジー」の「遺伝子工学」および
「DNA鑑定と科学捜査」です。

・転写調節の仕組み(正と負の調節とは?その組み合わせで,どのよ
うな調節が可能になるのか?)

・遺伝子クローニングの原理(どのような手順?)

・PCR法の原理(なぜ,PCR法で特定のDNAを増幅することができる
のか?など)

・DNA断片の分析法(電気泳動でDNAがなぜ長さに応じて分離できる
のか?)

・新型コロナウィルスのPCR検査の原理(微量のRNAをどうやって検
出しているのか?)

You might also like