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第 7 課 「平等」と「対等」

長谷川 宏 













標 次

し 紹

1 .評論について学習する。
学習目標

2 .本文を読んで、「平等」と「対等」というよく似た意味の

二つの概念をあえて対比することで、「等しい」という状
態にはまったく異なる二つの様相があることを理解する。
 

3 .「平等」と「対等」のように意味のよく似た二つの言葉を
取り上げ、その違いについて発表する。
出典と筆者紹介
【文章のジャンル】 評論 

【トピック】 社会に生きる

【出 典】 『高校生のための哲学入門』

【筆 者】 長谷川 宏     
     
学習の見出し

第二時限
第四時限
導入部分 まとめ部分
展開部分 アクティブ・
ラーニング
第一時限 第三時限
第一時限
導入・展開部分
学習目標

1. 教材・筆者に関心を持つ。
2. 本文を通読し、文章の構成をつかむ。
3. 第一段落を読み、人となりへの関心は豊かな人間関係の基礎

なることを理解する。
学習活動と指導内容

1. 評論について学習する。
2. 筆者についての知識を学習する。
3. 「高校生のための哲学入門」というタイトルを取り上げ、哲学と
は何か考える。
4. 指名により音読する。
5. 形式段落に番号をふり、全体の構成を考えて三つの意味段落に
  分ける。
学習目標 -1  文章の話題に興味を持つ

「高校生のための哲学入門」というタイトルを取り上げ、
哲学とは何か考えよう。
学習目標 2    文章全体の構成をつかむ

本文を四つの意味段落に分け、小見出しをつけなさい。
第一段落
(初め~と浮びあがらせたいp 110 ・下 15 )

語句・文脈の解説

まとめ
課題
第一段落

語句・文脈の解説
第一段落の重要語句

趣
~ことはない
優劣
くっきり
     趣  [ 名・形動 ]   (p109 ・下6 )
意味 1 そのものが感じさせる風情。しみじみとした味わい。

例 1 :冬枯れの景色も趣がある。
例 2 :自分とはずいぶん趣の違う人間だが、そこがおもしろ
い。
意味 2 全体から感じられるようす・ありさま。

例 1 :異国的な趣のある街。
例 2 :大陸とは趣を異にした文化。
質問:「そこがおもしろい」 (p109 ・下 6) の「そこ」が指す内容を
     説明しなさい。

 自分とはずいぶん趣の違うところ。(問 1 の答え) 
                     
質問:「人となりへの関心はそんなふうに相手の存在の内部へ内部へ
    とむかうのこと」 (p109 ・下 3) とはどのようなことか。

相手がどのように生きてきたのかというような興味や関
心を抱くことを通して、相手の人間像が次第に具体性を
持つということ。                 
     
質問:「人となり」 (p109 ・下 3) と同じ意味の二字熟語を文中から
     抜き出しなさい。    

 
「人となり」 = 人柄    (問2の答え)     
              
質問:「そうやって」( P109 ・下1)とは具体的にどのようなこと
か。

人となりへの関心が相手の存在の内部へ向かい、相手の
具体的な人間像が明確になること。         
            
質問:「そういう判断が上下関係や優劣関係を固定する方向にむかう
    ことはない。」( P110 ・ 4 )のはなぜか。

上下や優劣の意識は、相手の人柄への関心に吸収されて
いくから。                    
            
質問:「そういう判断」( P110 ・ 4 )の指す内容を説明しなさい。
    

相手と自分とを比較して、どちらが優れているかを見
定める判断。          (問 3 の答え) 
                  
文型: ~ことはない 【 N3 】 ( p 110 ・ 5)

例文
【接続】 V [辞書形]+ことはない    
【意味】~する必要がない・~しなくてもいい
【解釈】

ある行為について、その必要がない、しなくてもよい、という意味。

人を励ましたり忠告したりする時によく使う。
例文

〇 たくさん頑張ったんだから、できなくてもがっかりすることはないよ。

〇 彼は顔は怖いけど、とても優しいから怖がることはないよ。
〇 コンビニまで歩いて3分だし、人も少ないし、わざわざ化粧していくこ
とはないんじゃない。

〇 そういう判断が上下関係や優劣関係を固定する方向にむかうことはない。
    優劣  [ 名 ]   (p110 ・ 6)
意味 すぐれていることと、おとっていること。まさりおとり。

例 1 :優劣を争う。
例 2 :二人の能力に優劣はない。
例 3 :そういう判断が上下関係や優劣関係を固定する方向
   にむかうことはない。
質問:「その意味」( P110 ・ 9 )とはどのような意味か。

上下の意識や優劣の意識が人柄への関心のうちに吸収さ
れていくという意味。               
      
質問:「人となりへの関心を基軸としてなりたつ人との交わりは、対
     等の関係だということができる」 (P110 ・ 9) のは、なぜか、

由を説明しなさい。

相手を自分と比較することにより生じる上下関係や優劣関係
の意識は、一時的・部分的であり、相手の人となり(人柄)
への関心の方が強くなっていくから。  (問 4 の答え)
    くっきり  [ 副 ]   (p110 ・ 14)

意味 物の姿や形が非常にはっきりとしているさま。

例 1 :くっきり(と)した画像。
例 2 :うす青い空に、西の山々がくっきりと黒く浮かんで
見えていました。
例 3 :二つの違いを見すえるなかから、対等の関係の輪郭
をくっきりと浮びあがらせたい。
質問:「対等の関係の輪郭をくっきりと浮びあがらせたい」
( P110 ・ 14 )とはどのような意味か。

 対等の関係をはっきりと明らかにしたいという意味。
                     
質問:「ここにいう『対等』は『平等』とは違う。」( P110 ・
12 )
とあるが、筆者は結論部分でこの両者をどのようにまとめて
いるか、それぞれ説明しなさい。

上下の意識や優劣の意識が人柄への関心のうちに吸収さ
れていくという意味。               
      
第一段落のまとめ
    第一段落の要旨          

   
人となりへの関心は相手の存在の内部へとむかい、たとえ上
下関係や優劣の関係があっても固定はされない。したがって、
人となりへの関心を基軸としてなりたつ人との交わりは対等
の関係と言える。「平等」とのちがいから「対等」な関係を
明確にしたい。
本日の課題 1

「人となりへの関心を基軸として成り立つ人との交わりは、
対等の関係だということができる」 P110 ・ 9 の理由を考
えよう。
本日の課題 2

本文の構成について考えよう。
第二時限
展開部分
学習目標
第二段落を読み、「平等」と「対等」の違いから「人となりへの関
心を基軸としてなりたつ人との交わり」について理解する。

学習活動と指導内容
1. 指名により音読する。
2. キーワードとなる「平等」と「対等」などは辞書を引いておく。
3. 主題である「人となりへの関心を基軸としてなりたつ人との交
わり」について理解し、「平等」と「対等」の対比を把握する。
4. 文中から「平等」と「対等」の際を明確にする。
第二段落
(「平等」というp 110 ・ 15
        ~証でもあるのだp 111 ・下 5 )

語句・文脈の解説

まとめ
課題
第二段落

語句・文脈の解説
第二段落の重要語句

謳う
もって
囚われる
剥ぎとる
証
    謳う  [ 他五 ]   (p110 ・下 8)
意味 多くの人々が褒めたたえる。謳歌する。

例 1 :太平の世を謳う。
例 2 :新しい国王は、名君だと謳われている。
例 3 :いつまで待っても白鳥は一羽きりで、旅立つ気配も、
   仲間が迎えにくる様子もなかった。
質問:「謳っている」( P110 ・下8)とはどのような意味か。

 明確に述べているという意味。          
           
質問:「言う人は高みに立って万人を上から見下ろすようにして、みん
な同じだ、といっている」 (p110 ・下7 ) とはどういうことか。

それぞれの人に備わる特殊性を剝ぎとり、すべての人間を
抽象的な存在としてとらえるということ。(問 6 の答え)
                 
質問:「万人が平等だというとき、なにをもって平等だというのか」
( P111 ・ 2 )とはどのようなことか、説明しなさい。

人それぞれに備わる違いにとらわれず、各人の違いが全
く見えなくなるような抽象的な存在として人間をとらえ
ること。                     
質問:「万人が平等だというとき、なにをもって平等だというのか」
    ( P111 ・ 2 )の「なに」の内容を説明しなさい。

日本国憲法でいう「人種、信条、性別、社会的身分また
は門地により、…差別されない」ということ。それぞれに
備わる違いにとらわれず、各人の違いが全く見えなくな
るような抽象的な存在として人間をとらえること。  
                   
                         
  (問 7 の答え)
文型: ~をもって 【 N1 】 ( p 111 ・ 3)

例文
【接続】N+をもって    
【意味】~を用いて・~で
【解釈】

「~によって」の意味。話しことばで議会など公式の場で用いる。
書きことばとしても、書類などで用いるかたい表現。「~とみな
す」
という意味の文とともによく使う。
例文

〇 本書類の提出をもって、正式な応募とみなします。
〇 期末レポートをもって、成績を決めます。
〇 メンバーの脱退をもって解散してはいけない。
〇 万人が平等だというとき、なにをもって平等だというのか。

〇 日本国憲法では「人種、信条、性別、社会的身分又は門地にり、……
差別されない」ことをもって、平等の要件だとしている。
    囚われる  [ 自下一 ]   (p111 ・ 8)
意味 1 つかまえられる。とらえられる。

例 1 :敵に囚われる。

意味 2 固定した価値観や考え方などに拘束される。
例 1 :先入観に囚われる。
例 2 :目先のことに囚われる。
例 3 :人間の間には人種、信条その他の違いがあるが、そ

   にとらわれないのが「法の下の平等」だというのだ。
    剥ぎとる  [ 他五 ]   (p111 ・ 10)
意味 1 付着しているものをはがして取る。

例 1 :船底のフジツボを剥ぎとる。
例 2 :人それぞれに備わる特殊な人種、信条、性別、……
をすべて剥ぎとる。

意味 2 着ている衣服や持っている金品を奪い取る。

例 1 :強盗に身ぐるみ剥ぎとられるに囚われる。
例 2 :目先のことに囚われる。
質問:「透明」( P111 ・ 12 )とはどのようなことか、説明しなさ
い。

人それぞれに備える性質がなく、どれも同じように見え
るということ。                  
                         
          
質問:「ただの点としてあるような人間」( P111 ・下 12 )を端的

示した部分を文中から抜き出しなさい。

 抽象的な存在( P111 ・ 13 )           


       
                          
         
質問:「平等の原風景」( P111 ・下 10 )とはどのような風景か。

無限遠点から、すべての人間がただの点として同じ存在に見
えるような抽象的な風景。               
   
                           
        
    証  [ 名 ]   (p111 ・下 5)
意味 ある事柄が確かであるよりどころを明らかにすること。証明。
証拠。

例 1 :身の証を立てる。
例 2 :それは、近代精神がそれだけの抽象思考に耐えられる
ようになった証でもあるのだ。
質問:「近代精神がそれだけの抽象思考に耐えられるようになった証
    でもある」( P111 ・下 7 )のは、なぜか、説明しなさい。
   

近代精神は法の下の平等という近代法の基本原則の上に
成り立ち、平等をイメージするためには、人間を抽象化
した存在にまで切りつめて考えなければならないから。
                     
                         
  (問 8 の答え)
 
第二段落のまとめ
    第二段落の要旨     
   
近代法の基本原則である万人平等は、高みに立って人間はみ
んな同じだと謳っている。人それぞれの具体性をすべて剝ぎ
とり、抽象的な存在にまで切り詰めた上で万人は平等だと言
えるのであり、法の下の平等とは、近代精神に極限の抽象思
考が可能になったことを示している。
本日の課題 1

「平等」な関係を言い換えている部分を第⑦段落からすべて
抜き出しなさい。
第三時限
まとめ部分
学習目標
1. 第三段落を読み、「具体」と「抽象」という概念を理解する。
2. 身近な言葉について深く考えることによって、自分なりの物の

方を発展する。
3. 主題について考える。
学習活動と指導内容
1. 前時の確認をする。
2. 「具体」と「抽象」という概念を理解する。
3. 身近で似通った言葉を二つ取り上げ、その違いの中から新たな意
味を考える。
第三段落
(「対等」はp 111 ~最後)

語句・文脈の解説

まとめ
課題
第三段落
     
語句・文脈の解説
第三段落の重要語句

交わり
ひっくるめる
らしき
質問:「そういう抽象化の果てに立ちあらわれる観念」( P111 ・下
4)
    を一語で答えなさい。

 平等。  ( 問9の答え )      


                 
                 
            
質問:「そういう抽象化」( P111 ・下 4 )とはどのようなことか。

人それぞれに備わる性質をすべて剝ぎとって、各人の違いが
まったく見えなくなるまで具体性を消し去ること。    
              
                           
        
    交わり [ 名 ]   (p111 ・下2 )

意味 つきあい。交際。

例 1 :交わりをもつ。
例 2 :水魚の交わり。
例 3 :人となり(人柄)に関心をもつ交わりのなかで自分

相手が「対等」だと感じる。
質問:「はじまりの段階では内容が不確定で希薄だった人間像が、し
    だいに確定的で濃密な内容をもってくるような関係。」
    ( P112 ・ 5 )とはどのようなことか、説明しなさい。

人それぞれに備わる違いにとらわれず、各人の違いが全
く見えなくなるような抽象的な存在として人間を捉える
こと。 (問 10 の答え)
                         
                
  ひっくるめる  [ 他下一 ]   (p112 ・
10)

意味 一つにまとめる。包括する。総括する。

例 1 :全体をひっくるめて考える。
例 2 :すべてひっくるめて計算する。
例 3 :差別的な内容もそうでない内容もひっくるめて。。。
質問:「相手の興味深い人間像」( P112 ・下 11 )と同じ内容を意

する言葉を文中から二つ抜き出しなさい。

 人となり & 人柄               
                         
                  
質問:「多様で複雑な様相」( P112 ・下 7 )とはどのようなことか。

人となりへの関心を基軸とする交わりでは、関係の糸が縦横
にはりめぐらされていて、上下や優劣の意識に縛られない豊
饒な関係が築かれるということ。            
      
                           
        
質問:「上下や優劣に縛られない関係」( P112 ・下 4 )を結ぶ上で
    大切なことは何か、説明しなさい。

相手の人となり(人柄)への関心と理解を深めていくこと。
                           
                           
   
   らしき  [ 接尾 ]   (p112 ・下 2)
意味 それと推察されるさまなどを意味する表現。意味は「らし
い」と同じで、特に体言にかかる。接尾語「らし」の連体形。

例 1 :遺書らしきもの。
例 2 :日本人らしき 人はいない。
例 3 :対等性らしきものが成り立っているとでもいうしか

   いのだ。
質問:「そんな関係」( P113 ・ 7 )とはどのような関係か。

差別や上下関係や優劣の関係を含みながらも、総体として
はお互いが相手にふさわしいと思えるような関係。   
               

                          
         
第三段落のまとめ
     第三段落の要旨  
   
「平等」は差別を排除し、抽象化された人間関係であるが、
他方で「対等」は次第に相手の人間像が具体化していくよう
な人間関係のことである。差別的な内容も含みながらも、上
下や優劣に縛られない豊かな人間関係をさして、「対等」と
言うことができる。 
本日の課題 1

本文の叙述に沿って、「平等」と「対等」との違いを整理し
よう。
本日の課題2

 空欄を埋めながら、本文の要旨を理解しよう。
本日の課題 3

 本文の構成図を完成しなさい。
第四時限
アクティブ・ラーニング
学習目標
似通った二つの言葉の違いについて発表する。

学習活動と指導内容

1 .第三時限にて取り上げた身近で似通った言葉について話し合う。
2 .上記のことについて自分の考えを発表する。
3 .相互評価シートの活用により、効果的な評価を図る。
アクティブ・ラーニングのねらい

 似通った言葉について話し合う。
 「平等」と「対等」のように意味のよく似た二つの言葉を
取り上げ、その違いについて発表する。
アクティブ・ラーニングのために

《学習課題と実践方法》
 課題
   1. 似通った言葉について話し合う。
   2. 「平等」と「対等」のように意味のよく似た二つの言葉を取り上げ、その違
いについて発表する。
 学習活動と指導上の留意点
   1 .第三時限にて取り上げた身近で似通った言葉について話し合う。
   2 .上記のことについて自分の考えを発表する。
   3. 相互評価シートの活用により、効果的な評価を図る。
   4. 「平等」と「対等」のように意味のよく似た二つの言葉を取り上げ、その
    違いについて発表する。

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