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1125332032 木村有希

② ウォーラーステイン
フェアトレードと世界システム論

1.)テーマを選んだ理由
 SDGs をはじめとし、貧困問題をはじめとする南北格差はグローバル社会において最も焦点の当
たっているトピックの一つである。人道支援などはなされているが、根本的な解決策が提示され、実
行に移されているとは考え難い。私はかねてより、世界の食料の流通と分配の問題について勉強し
たいと考えていた。このテーマを選択した理由は、世界システム論を深めることによって、歴史的な
経緯とマクロな視点を持った上で世界の構造について考えられるようになると思われたためであ
る。
2.)授業の要旨
 ウォーラーステインは当時の資本主義社会の分析単位を主権国家や民族社会ではなくよりマク
ロな視点、すなわち世界全体からグローバル史に基づいて重層的に、単一のものとして認識するた
めの枠組みを提示した。実効支配を通じて中央集権的に領域を広げた世界帝国とは異なり、世界
経済は国家の枠組みにとらわれない、経済的なつながりを持った統一体である。域内には帝国を
はじめとするさまざまな国家を内包し、さらに、世界経済はその統一体の外部を資源として巻き込
み際限なく拡大する。彼は世界経済をもとに 16 世紀農業資本主義の分業体制について、中核部・
半辺境・辺境の三つに分けた考え方を提示した。いずれを取り上げても、彼の議論はヨーロッパ中
心の性格が否めず、アジア地域の勃興は彼の理論の中でも大きな課題として取り上げられていた。
3.)本論
 本論ではウォーラーステインの理論に基づいて、自由貿易について考えたい。自由貿易は国家
間の交渉に基づいて取り決められた貿易ルールがあって初めて行われる。そもそも、国家単位での
貿易政策の策定は、近代主権国家の登場以前には起こらなかったものである。ウォーラーステイン
は近代主権国家が近代世界システムにおいて発案された概念とする。また、彼は国家ごとの相対
的な強さを、「世界システムの競争的な環境のなかで自律的に行動しうる程度」(Wallerstein, 2006,
山下訳)で測った。全ての国家は主権的であるとする一方で、強力な国家は弱体な国家の国内政
策に対して容易に「干渉」できるとする考え方である。自由貿易は比較優位に基づく交渉であり、双
方に利益があるものとされている。しかし、彼はこれを強力な国家の弱体な国家に対する「干渉」の
一例として挙げている。実際に「開発ラウンド」と称された GATT のドーハ・ラウンドでは、途上国に
とっての多くの関心事が議題に上がった一方で、実現された課題はごくわずかであった。また、ウル
グアイ・ラウンドは大きな成果をあげたラウンドとして取り上げられることもあるが、成果を得た国家
のほとんどは先進国であり、途上国は被害を受けると推計されていた。このような不平等な交渉が
押し進められてしまう原因に、先進国はラウンドで以外の交渉手段を仄めかせることが挙げられる。
議席の数は周辺国家の方が多かったとしても、実際の交渉は強力な国家システムを持つ国家が
優位に立った状態で進んでしまう。また、南北問題の解決策の一つとして挙げられるフェアトレード
も、強力な国家の政策に依存したものである。世界=経済のシステムは、ヘゲモニーの交代こそ起
これど、経済成長をもたらす資源のない周辺国にとっては状況を改善することが極めて苦しいもの
のように思われた。
4.)レポート作成を通じて
 社会学や経済学の理論は広く共有された古典が既にあり、これからの研究はその上の積み上
げに過ぎず、なぞっているだけなのではないかと漠然と感じていた。現にそういう部分が大きいと私
は考える。しかし、世界全体を分析単位とするという考え方が画期的とされたのがわずか数十年前
であることや、20 世紀の後半になっても資本主義の成り立ちについての研究で新しい学説を提示
できることなどから、古典を踏まえた上で新たな学問領域を生み出すことも不可能ではないように
感じられてしまった。また、方法論の話になってしまうが、主義主張を理解および検討する際には、そ
の主張がなされた時代背景や著者の境遇、立ち位置などを踏まえた上でなければ、納得できるレ
ベルにまで理解するのは難しいように思われた。彼の主張をより深く理解するためにグローバル史
についての理解と、彼が大きな影響を受けたとされる 1968 年の時代背景及びブローデルの主張
について、しっかりと学びたいと思った。

参考文献
川北稔(2001).『知の教科書 ウォーラーステイン』講談社.
イマニュエル・ウォーラーステイン, 山下範久訳(2006)『入門・世界システム分析』藤原書店, p.137
ジョセフ・スティグリッツ, 高遠裕子訳(2007)『フェアトレード 格差を生まない経済システム』日本
経済新聞出版社

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